急遽テレワーク導入!の顛末記

筆者が選ぶ!! オススメの「データの持ち運び方」はiPhoneをUSBメモリー代わりにする方法――急遽テレワークを導入した中小企業の顛末記 総集編

データの持ち運びをなるべくセキュアに、かつスムーズに行う方法を紹介

 連載4周年ということで、これまで紹介してきたテクニックのなかでも、一番オススメしたいものを紹介する総集編企画。第2回は「データの持ち運び」にフォーカス。自宅=会社間を行き来しながら作業を行うにあたり、筆者がこれまでさまざまな方法を体当たりで試してきたなかでも、一番お気に入りのやり方を紹介しようと思う。

iPhoneをUSBメモリー替わりにすると、ファイルの持ち運びが簡単に

 作業ファイルの持ち出しについて、本連載ではこれまで

など色々な方法を試して、操作の手軽さや通信速度を比較してきた。そのなかでも筆者が一番気に入っているのが「iPhoneをUSBメモリー替わりに利用する」こと。それも、「LocalSend」というフリーソフトを利用する方法だ。

 作業ファイルの持ち運びでは、「紛失時の情報漏洩」が問題になるが、iPhoneならFace IDなどでロックがかけられるので、ある程度のセキュリティを担保できる。さらに、万が一に端末を紛失しても、場所の特定やデータの遠隔削除ができるので、セキュアなポータブルストレージとして利用できるというわけだ。

 なお、iPhoneでのファイルの受け渡しというと、AirDropが手っ取り早くて人気があるが、それと同じ感覚でファイルの受け渡しができるのが、「LocalSend」というフリーソフトだ。利用しているのがMacでなくても、PC=iPhone間で手軽にファイルを受け渡せるので、作業用データを持ち出すときに重宝している。

iPhoneなら万が一に紛失しても、端末の位置を確認したり、遠隔操作でデータを削除できる
「LocalSend」というフリーソフトを使えば、AirDrop感覚でPC=スマホ間でファイルを受け渡せる

容量が多いときはやっぱりポータブルSSD、ただし暗号化はしておきたい

 ただ、作業データが1GBを超えるような大容量ファイルのときには、話は別だ。こういうときは、素直に大容量かつ高速コピーが可能なポータブルSSDなどのUSBドライブを利用する方が、より短時間でファイルを受け渡せる。ちなみに、現時点で最も高速な規格は「USB4」だが、まだまだ価格が高く、対応するPCやデバイスも少ないので、USB 3.2対応製品の方がコスパは良いかもしれない。

 ちなみに筆者の会社のPCはWindowsがHomeエディションのため使えなかったが、ProエディションならBitLockerを使ってUSBドライブを暗号化できる。USBドライブに作業データを保存する際には、BitLockerが使えるか確認しておきたい。

大容量ファイルはポータブルSSDを利用した方が素早くデータをやり取りできるが、可能ならBitLockerでドライブを暗号化しておきたい

メール環境は丸ごと持ち歩くのがオススメ

 “テレワーク時に持ち歩きたい作業データ”というとMS Officeのファイルなど多岐にわたるが、なかでも個人的に「テレワークの快適度をアップさせる」と思っているのが、メール関係のデータだ。筆者はメーラーに「Thunderbird」を愛用しているが、このソフトではメール環境が「Profiles」というフォルダーに全て保存されている。そのため、新しいPCにメール環境を移行するときなどは、このフォルダーを丸ごとコピーすればよいのだが……、これを一歩進めて会社=自宅間を移動する時に同フォルダーを持ち歩けば、メール環境を丸ごと持ち歩くことが可能だ。

「Thunderbird」ではメール環境が「Profiles」フォルダーに保存されている

 PCごとにメーラーを使ってメールを送受信するのではなく、「Profiles」フォルダーを持ち歩くことには、以下のようなメリットがある。

  • メールの「既読」「未読」ステータスをそのまま引き継げる
  • 送信済みメールを1カ所にまとめることができる
  • メールの振り分けルールを一度登録するだけで済む
  • 過去のメールをダウンロードしなくて済む

 なお、長く利用していると「Profiles」の容量が肥大化していくので、データはポータブルSSDなどの大容量かつ高速通信が可能なデバイスに入れて持ち運ぶことになる。とはいえ、いちいち仕事場を移動するたびに「Profiles」フォルダーをコピー/上書きするのも面倒なので、ポータブル版の「Thunderbird」とセットで持ち運ぶか、「Thunderbird」における「Profiles」フォルダーの保存先をポータブルSSDに指定してしまうのがオススメだ。これなら、「Thunderbird」を起動した際に、ポータブルSSDに保存された「Profiles」フォルダーを利用してメールをやり取りできるようになる。

「profiles」という名前のiniファイルの中身を書き換えれば、「Thunderbird」にポータブルSSDやNASに保存された「Profiles」フォルダーを読み込ませることが可能
ポータブル版の「Thunderbird」をポータブルSSDにインストール。同じくポータブルSSDに保存した「Profiles」フォルダーを読み込ませて利用する……という手もある

ファイルコピーのトラブルを防ぐには?

 USBドライブではゴミ箱が使えないので、削除したファイルは即座にドライブ上から消えてしまう。さらに、コピー/移動する際の操作ミスで、新しいファイルを古いファイルで上書きしてしまうと、せっかくの作業がすべて台無しに。とはいえ、ヒューマンエラーをゼロにするのは難しいので、USBドライブ=PC間のファイルの受け渡しは、全て自動化してしまった方がトラブルを防げそうだ。

 ファイルの受け渡しの自動化については、「exeUSB」というフリーソフトが便利だ。常駐させておくことで、PCにUSBドライブが装着されたのをトリガーとして、指定の条件でファイルの移動/コピーを自動化してくれる。「日付の新しいものだけをコピー」することもできるので、持ち運び中に作業したファイルだけを、短時間でPCに上書きさせることも可能だ。

 なお、ファイルの移動/コピーの自動化は、USBドライブ内のファイルのバックアップなどにも利用できる。“「Thunderbird」の「Profiles」フォルダー”のような重要データをUSBドライブで管理していると、万が一に紛失した時にデータを丸ごと失ってしまうので、装着したPCにバックアップを作成するよう設定を行っておきたい。

「exeUSB」なら、USBメモリーをPCに装着した際に、自動でファイルの同期を行うことができる

 ということで、今回は筆者が拠点間を移動する際に、作業環境をどのように持ち運んでいるかを紹介してみた。「USBメモリーではセキュリティが不安」「ファイルのバージョン管理が面倒」「メールをどこまで読んだか分からなくなった」といった悩みを持っている人は、データの持ち運び方を工夫してみてはいかがだろうか?

とある中小企業に勤める会社員、飛田氏による体当たりレポート「急遽テレワークを導入した中小企業の顛末記」。バックナンバーもぜひお楽しみください。

飛田九十九