急遽テレワーク導入!の顛末記

筆者が選ぶ!! 中小企業にオススメの「リモートデスクトップ」はどれだ?――急遽テレワークを導入した中小企業の顛末記 総集編

PCを遠隔操作して、それをリモートデスクトップで操作するにあたり、筆者が利用しているテクニックを紹介

 2020年4月7日、新型コロナの感染拡大によって緊急事態宣言が発出された。弊社も急遽テレワークを余儀なくされ、突然のことに当初は右往左往させられたものだが、そのドタバタの模様を記事にしてほしいと始まったのがこの連載だ。

 「いつになったらオフィスに戻れるのだろう?」などとテレワークを始めた頃は思っていたが、あれから4年、最近ではテレワークと出社のイイとこ取りをしたような、“アフターコロナの働き方”がすっかり定着している。それと同時に、そろそろこの連載でも試したいことは一通りやり尽くしてしまった。

 そこで、今回からは顛末記の総集編として、これまで体当たりで試してきた“テレワークを快適にするテクニック”の中でも、筆者が一番オススメしたいと思うものを厳選してお届けしようと思う。

 第1回目は“データを自宅/会社に置き忘れた”ときに役立つ「リモートデスクトップ」について、最もお手軽かつ便利なやり方を紹介したい。

リモートデスクトップには2つの工程がある

 リモートデスクトップを使って、離れた場所にあるPCを遠隔操作する工程は、大きく2段階に分かれる。それは……

  • その1:PCの電源を遠隔操作でONにする
  • その2:PCをリモートデスクトップで遠隔操作する

 というフローだ。リモートデスクトップでは基本的に電源の入ったPCしか遠隔操作できないので、操作前にはまず電源を入れるという段階を踏む必要がある。「それなら、PCの電源を入れっぱなしにすればいいのでは?」と思う人もいるかもしれないが、電気代がかかる上に、PCの寿命が縮むので、あまりオススメはできない。特にノートPCの電源を入れっぱなしにしておくと、夏場などはバッテリーが膨張する恐れもあるので、注意が必要だ。

「インテル vPro プラットフォーム」に対応したPCであれば、遠隔起動から遠隔操作までを専用のアプリで行える

 ちなみに、「インテル vPro プラットフォーム」なら、PCの電源の遠隔操作からリモートデスクトップまで、全ての工程を1つのサービスで行うことができる。ただ、vProを利用するには、対応するPCが必要になる。中には「導入したPCが期せずしてvPro対応だった」、といったケースもあるようだが、そうでなければ、PCをリプレイスするタイミングに合わせて導入を検討すると良いかもしれない。

電源の遠隔操作にはアレクサがオススメ

 さて、リモートデスクトップの工程をおさらいした所で、現在の筆者宅・オフィスにおけるリモートデスクトップ環境を紹介したいと思う。

 まずは、第一工程の“PCの電源を遠隔操作でONにする”だが、これについてはアレクサを利用している。具体的には、自宅とオフィスにAlexaデバイスを設置して、アレクサの「Wake-on-LAN」というスキルに遠隔起動したいPCのMACアドレスを登録。あとは、Alexaデバイスに「パソコンつけて」と話しかけるか、「Amazon Alexa」アプリの定型アクションを使って、PCを遠隔起動させるという仕組みだ。

アレクサで「Wake-on-LAN」というスキルを有効にして、初期設定を行うと、PCを声で遠隔起動できるようになる
「Amazon Alexa」アプリで定型アクションを作成すれば、スケジュールなどを指定して自動起動させることも可能
Wake on LANを利用するには、遠隔起動させるPCでの初期設定が必要

 なお、この仕組みではAlexaデバイスからLAN経由でマジックパケットを送信するため、利用するAlexaデバイスがWake on LAN機能をサポートしている必要がある。さらに、遠隔起動させるPCでWake on LANのための設定も行うことになるが、これについては関連記事で紹介しているので、参考にしてもらいたい。

 これまで、本連載ではほかにも

 など、さまざまな方法でPCを遠隔/自動起動させてきた。ただ、これらの方法は「利用できるPCが限られる」「常時起動しているデバイスが必要になる」「ルーターの設定変更でセキュリティリスクが発生する」というように、環境によっては利用できないケースが出てくる。しかし、アレクサを利用するなら、遠隔起動したいPCと一緒にAlexaデバイスを置いておくだけでOK。最近ではAmazonのセール時期に、Alexaデバイスがお得な価格で販売されているので、遠隔起動用のデバイスとして購入するのもアリだろう。

遠隔起動させるPCに“停電時に電力が復旧した際、自動で電源を入れる”機能があれば、スマートプラグが利用できる
常時起動しているPCやタブレットを遠隔操作して、指定のPCへとマジックパケットを送信し、遠隔起動させることもできる
外出先(LANネットワーク外)からマジックパケットを送信するには、ルーターの設定変更が必要となる

テレワークでの利用なら「Chromeリモートデスクトップ」がベスト

 第一工程をアレクサの力を借りてクリアした所で、いよいよリモートデスクトップについてだが、筆者は「Chromeリモートデスクトップ」というサービスを利用している。

 これは、Googleが提供しているもので、ホスト・ゲストの両PCのブラウザで同じGoogleアカウントでログインすれば、互いにデスクトップの様子を表示して、それを遠隔操作することが可能。操作の遅延も少なく、インターフェイスの使い勝手も良いが、個人的に一番気に入っているのは「相手のPCを一方的に操作できる」ことだ。一言にすると言い方がアレになってしまうが、要は遠隔操作を開始するときに、ホスト側(遠隔操作される側)のPCで「アクセス許可」の操作が必要ないことが、テレワーク環境においては大きなメリットになる。

 リモートデスクトップを行うソフト・サービスの中には、ホスト側のPCで「アクセス許可」の操作が必要なものも多く、その場合には“PCの近くにいる誰かに許可の操作をしてもらう”必要がある。しかし、「Chromeリモートデスクトップ」ならGoogleアカウントでログインし、パスコードを入力すれば、すぐにホスト側のPCを遠隔操作することが可能。このため、誰もいない自宅のPCも、会社から遠隔操作できるというわけだ。

 これと同じ理由で、Android端末を遠隔操作する際に、筆者は「AirDroid」というアプリを使っている。こちらも、ホスト側のデバイスでの「アクセス許可」なしで遠隔操作ができるので、テレワークでは何かと役に立ってくれている。

「Chromeリモートデスクトップ」なら、ブラウザ上に他のPCのデスクトップを表示し、それを遠隔操作できる
「AirDroid」でも「アクセス許可」なしで遠隔操作が可能

セキュリティが気になる場合には……

 ここまで紹介した方法でPCの遠隔操作が可能になるわけだが、人によっては「仕事用のマシンを遠隔操作できる状態にしておくのが怖い」と感じるかもしれない。

 そういう場合には、タブレットやNASに作業データをバックアップして、そのデータに遠隔アクセスするというのもアリだろう。筆者は会社から自宅のPCを遠隔操作している時に、“隣の席にいる同僚にプライベートなファイルを覗き見”されたことがあったが、そんな事故も防げるはずだ。

タブレットかタブレットからアクセスできるNASなどに、作業ファイルを定期的にバックアップしておけば、PCを遠隔起動させずに済む

 ちなみに、筆者の勤めている新宿の中小企業では、VPNルーターも導入されている。これを使えば自宅から会社のネットワークへと安全にアクセスできるのだが……。PCにIPアドレスを振っていないことからNASまでしかアクセスできず、クライアントソフトの操作にも抵抗感があるのか、同僚が使っているのをあまり見たことがない。その点、アレクサと「Chromeリモートデスクトップ」なら、初期設定さえ済ませてしまえば、日常的なインターフェイスの使い勝手がシンプルなので、苦手意識を持たずに使えるのではないだろうか?

VPNルーターを設置すれば、そのルーターが属するLANネットワークに外出先からアクセスできるようになる。ただし、VPNルーターの初期設定にはある程度の知識が必要

 ということで、筆者が日常的に使っているリモートデスクトップ環境について、その構成とメリットを紹介してみた。「自宅に作業ファイルを置き忘れた」、「重いノートPCを持ち帰りたくない」といった悩みを抱えている人は、この機会にリモートデスクトップを使ってみてはいかがだろうか。

とある中小企業に勤める会社員、飛田氏による体当たりレポート「急遽テレワークを導入した中小企業の顛末記」。バックナンバーもぜひお楽しみください。

飛田九十九