天国へのプロトコル
第5回 デジタル遺品を考えるシンポジウム
デジタル資産について7割超が「万が一に備えていない」――デジタル遺言プラットフォーム「lastmessage」(ラストメッセージ)の狙い
2023年12月19日 07:30
12月7日に実施した「第5回 デジタル遺品を考えるシンポジウム」の模様をお伝えします。2つ目のセッションは、株式会社パズルリングの牛越裕子(取締役CMO)さんが登壇しました。タイトルは「遺言『新時代』到来! デジタル社会に適する『lastmessage』」です。
- 今のままデジタルが遺品になると何が起こるのか?(動画)
(古田雄介) - 遺言「新時代」到来!デジタル社会に適する『lastmessage』(動画)
(株式会社パズルリング 牛越裕子氏) - 相続制度から考えるデジタル遺品(動画)
(弁護士:伊勢田篤史氏) - パネルディスカッション(動画)
(Whatever Co. 富永勇亮氏、株式会社パズルリング 牛越裕子氏、伊勢田篤史氏、古田雄介)
2020年3月スタートのデジタル遺言プラットフォーム
「lastmessage」(ラストメッセージ)は2020年3月に提供が始まったウェブベースのサービスで、同社は「デジタル遺言プラットフォーム」と規定しています。
スマホやPCでサービスにログインすると、自分の没後に特定の相手に託すデータを指定したり、送るメッセージを入力したりできます。「終焉日確定プロセス」という利用者の死を確かめる独自システムにより、没後はそれらの情報を指定した相手に送るところまでフォローしているのが特徴。いわば、死後の伝達機能がついたデジタル版のエンディングノートです。
会員登録や1通までのメッセージ送信設定は無料。月額110円の有料プランに入ると、2通目以降のメッセージが登録できるほか、指定したサービスの死後解約の代行も依頼できるようになります。そのほか、弁護士や司法書士、税理士の監修を受けながら法的拘束力のある遺言書(公正証書遺言)を作成するオプションサービスも用意しています。
セッションでは、lastmessageを通して見えてきたことを紐解いてくれました。
デジタル資産の「万が一」に備えていない、56%の人が「不安」
同社はこのプロジェクトを通して、終活に関する意識調査をたびたび行っています。そこからデジタル資産や将来の備えに関して、まだ認識が薄い実態が明らかになったといいます。
たとえば2022年2月のインターネット調査(全国の15~69歳の男女/有効回答2026人)では、「デジタル資産について、万が一のときに遺族を困らせないよう、備えていますか?」との設問に、72%の人が「備えていない」と回答しています。
一方で、「備えていないこと」について、「とても不安」と「やや不安」と答えた人は過半数に達していました。「回答していただいたことで、不安だということをお気づきになった人もいたのではないでしょうか。デジタル資産は多様化しつつ、全世代に広がっているのですが、万が一に備えている人はまだまだ少なくように感じています」(牛越さん、以下同)
人生のラストに向けて、7割の人が「なにもしていない」
5カ月後の2022年7月には、デジタル資産に限らず、人生のラストに関するインターネット調査(全国の15歳以上の男女/有効回答2000人)を実施しました。
「人生のラストに向けて備えていることはありますか?」という複数回答式の設問でもっとも多かったのは、「なにもしていない」で、やはり7割を超えたそうです。「70歳以上の人に限定しても58%の人が『なにもしていない』という結果でした」
一方で、デジタル遺品に直接関わる「予告なく人生の最期を迎えることになったら、SNSのアカウントをどうするのがよいと思いますか?」という設問では、56.4%の人が「削除して欲しい」と回答しています。
万が一のときにしてほしい(してほしくない)ことは割と明確にイメージしているのに、万が一のときの備えには至っていない――。複数のアンケートを通して、そんないまどきの日本人像が浮かび上がってきます。
「これが日本の今の現実なんじゃないかと思います。しかし、近年はデジタルサービスが多様化して複雑になっています。万が一のときも、家族や友人、お世話になった方々が困らないようにしていただきたい。今日のお話も、その一歩を踏み出すきっかけにしていただけたらと思っています」
「残された人の悲しみを癒す言葉を届けよう」という目的でスタートしたlastmessageですが、そうした情勢を踏まえた上で、「新時代の遺言サービス」を目指すようになったといいます。
ローンチしてからも士業との提携や公正証書遺言作成支援サービスの追加、社外サービスとの提携などを積極的に行っているのはそうした狙いがあるとのこと。万が一の未来に目を向けたとき、時代に即したサービスが選べることに越したことはないでしょう。