いまさら聞けない!? ちかごろ話題のサービス・アプリをさくっと解説

みんなが本当はいまさら聞きたかったサービス・アプリ第1位は、あの世界的位置情報ゲーム「Ingress」

 本連載「いまさら聞けない!? ちかごろ話題のサービス・アプリをさくっと解説」でこれまでに掲載した記事の中から、アクセス数の多かった人気記事をピックアップ。みなさんが本当にいまさら聞きたかったと思われるサービス・アプリをジャンル別に振り返ります。

 ラストの今回は、記念すべきアクセス数No.1に輝いた「Ingress」です。

楽しみ方が豊富で、実は奥深い位置情報ゲーム「Ingress」(2016年7月27日掲載)

 掲載のタイミングは、「Pokémon GO」がリリースされた直後。本来なら「Pokémon GOとは?」という視点で書くべきだったかもしれませんが、そこであえてのIngress。Ingressを知っておいたほうが、今後Pokémon GOを取り巻く環境の変化を見ていく上で、参考になるのでは? と考えたからでした。

 記事公開後の反応には、書いた自分ですら驚きました。かなり読んでいただいているという実感はありましたが、後にアクセス数の集計値を教えていただき、さらに驚きました。2位の記事との差がなんと約1.5倍もあったからです。

 純粋にIngressを知りたくてアクセスされた方以外に、すでにプレーされている“エージェント”(プレーヤーのこと)の皆さんが多数アクセスされたのではないかと推測しています。

Ingressとは何か、分かるように簡単に説明するのは難しい

 ただ、Ingressを取り上げるのはちょっと迷いました。なぜなら、理解してもらうためには、“簡単に”説明するのは極めて困難だと思ったからです。ご覧いただいた方の中にも、周りのプレーヤーに質問して説明を受けたけれど、何が楽しいのか分からなかった、という方はかなり多いのではないでしょうか。

 特に、あのSFチックな画面の中で起こることだけを説明されても、その可能性について理解するのは不可能でしょう。実際、自分がゲームを始める前も、「青だ、緑だと陣取りして何が楽しいのか、なんのメリットがあるのかさっぱり分からない」というのが率直な感想でした。分からなすぎたので、むしろ経験した方がいいと考えて、その場でスタートしたほどです(結果的にそれは大正解でした)。

 それゆえ、ゲームの基本的な遊び方やバックストーリーの紹介にとどまらず、多数のプレーヤーを動員できる集客力を持っていること、その可能性を高く評価している提携企業がすでに世界規模で多数存在すること、人を呼ぶためにイベントを実施している自治体があることなどを紹介することで、Ingressというゲームの持つ奥深さと可能性をお伝えできるのではないかと考えました。

 自分がアクティブなプレーヤーであることもあり、結果的に相当な熱量を注いでしまったため、まったく「さくっと解説」にならなかった点はお詫びいたします。

Ingressの面白さを感じるとき

 すでに前回ご紹介した通り、2016年に東京で行われた公式イベントでは、国内外から1万人ものエージェントが参加し、大いに盛り上がりました。

 Ingressには、指定されたポータルを巡って歩き回る「ミッション」と呼ばれるスタンプラリーのような楽しみ方がありますが、その公式イベント「ミッションデー」も、今なお頻繁に開催されており、ミッションファンは遠方だろうが距離は顧みず、足繁く通って楽しんでおられるようです。

 Ingressグッズを作って楽しむ人達も非常に多く、名刺のような“不審者カード”と呼ばれるものから、タオル、アクセサリー、Tシャツ、バッジのほか、実に多彩なものが作られています。もちろん独自の解釈でコスプレを楽しむ人たちもいます。同じゲームをしているようで、実は見ているところがまったく違うというのもユニークです。

 エージェントの知り合いが増えると、統率力のある人、企画力のある人、クリエイティブな人、分析力のある人、行動力・機動力のある人、ムードメーカーなど、多種多様な人達でいつの間にか組織ができるのも面白いところ。それぞれが得意分野を持ち寄り、年齢・性別の枠を超えて、フラットな環境でコミュニケーションし、自発的に活動しているのです。

 中にはIngressを通じて知り合い、結婚する人もいるほどですが、Ingressのおかげで、自分の居場所を見つけられたという声も聞かれます。

 仮想世界でポータルをリンクで結びながら、現実世界では人と人をつなげているところ、そこからさらに新しい出会いと楽しみ方を見つけられるところが、Ingressというゲームのよさではないかと感じています。

これからはPokémon GOでも人を動かす

 Ingressによって、位置情報ゲームで人を呼べることが証明されたわけですが、Pokémon GO周りでも「全国自治体ゲームコラボレーションフォーラム」が開催されたり、宮城県では「ポケストップ」を見つけようという「宮城県×Pokémon GO」イベントを開催したりと、Pokémon GOを活用しようという動きが活発化しています。

 Nianticと株式会社ポケモンは、すべての地方自治体を対象に、「Pokémon GO」を利用した周遊マップを作成するための公認素材、マップテンプレート、利用ガイドラインを無償で提供すると発表しています。

 位置情報ゲームにおいて、訪問先となる場所(Ingressではポータル、Pokémon GOではポケストップ)の数は非常に重要。訪問先がなくては人が来ないのは当然。ですから、Pokémon GOでも、もっとポケストップを増やそうという動きも増えています。

 2017年2月には伊藤園の自販機とタリーズが「Pokémon GO」のポケストップやジムになり、4月には岩手県・宮城県・福島県・熊本県・京都府の1府4県に新しいポケストップとジムが追加され、ファミリーレストランの「ジョイフル」もポケストップやジムになりました。

 Pokémon GOが人を呼ぶための強力なツールとして期待されていることが分かります。ゲームとしても、これから新たな機能が導入されることが予告されていますし、ますます目が離せません。

Ingressはこれからも進化する

 兄貴分のIngressもその進化を止めたわけではありません。2015年9月3日から新規のポータル申請の受付を停止していますが、2016年11月18日から、「Portal Recon」(ポータルリコン)のベータプログラムとして、東北と九州を対象に、レベル16のエージェントの一部を招待するかたちでポータル審査を再開しました。招待されたエージェントの中からテストに合格した者だけが、ポータル審査に参加できるというものです。

 ポータルを審査したエージェントは、世界全体で3671人、レビュー件数は合計114万7900件。結果、新しいポータルとして世界で8863カ所がライブしました(4月11日時点)。さらに、第2弾として、4月12日から日本全国のレベル15とレベル16のエージェントを対象に招待状が送られています(筆者も招待され、テストに合格しました)。

 また、年内には、「Ingress 2.0(仮称)」なる大きな進化も予定されていると言います。ビジュアルや操作性に大きな変化がありそうで、ワクワクします。

 集客という視点で位置情報ゲームに興味をお持ちの方は、これからでも遅くはありません。まず個人でプレーしてみることをおすすめします。そして、個人レベルで仲間になって溶け込んでみてください。きっとプレーヤーの気持ちに寄り添う企画が考えられるはずです。

すずまり

プログラマからISPの営業企画、ウェブデザイナーを経て、現在はIT系から家電関連まで、 全身を駆使してレポートする雑食性のフリーライターに。主な著書に「Facebook仕事便利帳」「iPhone 4 仕事便利帳」(ソフトバンククリエイティブ)など。 睡眠改善インストラクター、睡眠環境診断士(初級)。