イベントレポート
CEATEC 2025
顔写真を撮るだけで、遺伝子情報に基づいた化粧品が選べる時代に。アイススタイル、花王らが展示
2025年10月20日 11:45
10月17日まで開催された「CEATEC 2025」で、RNA共創コンソーシアムのブースで顔写真を撮影するだけで、遺伝子情報や肌のコンディションに合わせて最適な化粧品を提案する肌診断ができた。
同ブースは花王株式会社、美容関連口コミサイト「@cosme(アットコスメ)」を運営する株式会社アイスタイル、キリン株式会社がRNA関連の現在の取り組みや今後の展望について紹介したもの。
ブースで体験できた肌診断は、花王が開発した「皮脂RNAモニタリング技術」を用いたもの。よく知られる「DNA」は人体を構成するための遺伝情報が含まれ、その人固有のものとして一生変化しないのに対し、RNAは人体に必要な酵素やタンパク質をつくるための部分的な設計書のような役割を持ち、そのときの体調や環境によって日々変化するという特徴がある。そのため、肌が今どんなスキンケアを欲しているのかなどを知る手掛かりにもなる。
撮影前に最近の生活習慣に関する簡単な質問に答えた後、顔写真を撮影することで、十数秒ほどで診断が完了する。そして、そのときの肌のコンディションのほか、免疫の強さなどの診断結果が示される。
これまで、RNAを採取するためには皮膚の一部を切除する必要があった。しかし、花王は顔の皮脂にRNA情報が含まれていることに着目。専用のあぶら取りフィルムで皮脂を採取するだけでRNAの抽出・解析が可能な皮脂RNAモニタリング技術を開発した。
解析されたデータを集めて分析すると、遺伝子が発現する(遺伝子の情報が細胞における構造や機能に変換される)パターンが大きく2つに分類されることが分かった。この2つのパターンというのが、「C1」(つるつる期、肌が安定している状態だがスキンケア効果が現れにくい)と「C2」(ぴかぴか期、敏感な状態だがスキンケア効果を感じやすい)だ。
さらに、顔写真を撮影するだけで皮脂のRNA発現を推定できるモデル「肌遺伝子モード」技術を構築した。肌の色や形状の特徴から推定できる機械学習モデルと、顔全体から推定できる深層学習モデルの2つを組み合わせ、遺伝子発現の情報に基づいた上記の「C1」「C2」の2パターンを推定可能だ。
同技術はすでに「@cosme」アプリの肌診断「お肌のケアどき診断」で取り入れられており、こちらは肌状態のみを診断できる。アプリではさらに、自分の肌タイプと同傾向の他ユーザーによる製品の口コミ情報をもとに、おすすめアイテムを提案する。なお、類似した肌診断は、化粧品会社各社でも提供されているものがあるが、おすすめされる商品は自社製品に限られている。「@cosme」アプリで診断することで、メーカー問わずおすすめの化粧品を提案することも大きな特徴だ。
今後、「皮脂RNAモニタリング技術」は会社や学校において個人の体調やメンタルのヘルスチェック、乳幼児の肌トラブルの防止などへの応用が期待されている。