インタビュー

便利な「USB Type-Cのディスプレイ」、でも相性問題も? 最新ディスプレイのポイントをiiyamaに聞いてみた

リフレッシュレート75Hzがオフィス向けでも主流に

 デスクトップPCにおいては必須、ノートPCでも使うことが増えている「ディスプレイ」。業務や日常でもマルチディスプレイを活用する方も増えている。ディスプレイはPC周辺機器の中でも比較的長期間使い続けるものだろう。

 いざ購入したいというとき、ディスプレイのトレンドが分からなくなっていることもある。また、外観からは数年前のものと最新世代とでなにも変わらないように見えてしまいがち。しかしゆっくりとだが着実に進化している。

 そうした最新ディスプレイのお話をメーカーにうかがってきた。訪れたのはマウスコンピューター。うかがったのは現在マウスコンピューターのブランドであるiiyamaディスプレイを担当しているマーケティング本部 製品部 プロダクトマネージャーの松山 順一氏だ。

 iiyamaは2つのブランドでディスプレイ製品を展開している。ホーム&ビジネス向け汎用ディスプレイの「ProLite」とゲーマー向けのゲーミングディスプレイ「G-MASTER」だ。

リフレッシュレートの主力はオフィス用でも「75Hz」100Hzモデルも登場

マウスコンピューター マーケティング本部 製品部 プロダクトマネージャー 松山 順一氏

――ディスプレイの進化が大きいのはやはりゲーミングかと思いますが、「G-MASTER」「ProLite」それぞれのシリーズについて教えてください。

松山氏G-MASTERはゲーミングに求められる機能を盛り込んだディスプレイです。

 暗いところから突然敵が現れるようなシーンは醍醐味ですよね。1つ目の特徴は高いコントラスト比、引き締まった黒の表現です。次は高速な応答速度です。FPSゲームなどの動きが激しいシーンでもボヤけることなくクリアな映像を楽しめます。そしてなにより100Hzを上回る高リフレッシュレートが特徴です。

G-MASTERシリーズのG-MASTER GB2770HSU-B5A

 サイズとしては23.8~27型が中心で、これはG-MASTERがエントリーゲーマー層をターゲットにしているためです。ECセット販売モデルではありますが、トレンドに沿って湾曲モデルなども取り扱っています。

松山氏: また、ProLiteはいわゆるスタンダードなスペックのディスプレイです。

 汎用スペックのパネルと言うと、リフレッシュレートが75Hzのものがメインですが、最近は100Hzというスペックのものもあります。これを使えば、ご自宅で「リモートワークしつつ、オフタイムにはゲーム」といった用途でも、100Hz対応ディスプレイ1台で済ませるといったことが可能です。

 汎用ディスプレイのラインアップ内ではハイエンドになりますが、こうした選択肢もご提案していきたいです。

ProLite XUB2792HSU-B6。リフレッシュレートは100Hzに対応している

USB Type-Cで利便性が大きく向上、ただし意外にある「相性」問題検証リストも公表中

――最近のトレンドというものはありますか

松山氏:長年ディスプレイの担当をしていると、「変わってきたな」と感じるのがインターフェースですね。

 D-Sub、DVIを搭載するのはすでに一部の特定用途向けモデルくらいで、現在はHDMIとDisplay Portに置き換わっています。その上で新たに登場したのがUSB Type-Cです。

USB Type-C(Display Port Alt-Mode、USB PD 最大65W)に対応するProLite XUB2792QSN-B5H。PCと1枚目の液晶ディスプレイはUSB Type-Cで接続し、1枚目と2枚目の液晶ディスプレイはDisplay Portでデイジーチェーン接続している。このようにすると、PCと1枚目の液晶ディスプレイを接続するだけで、すぐに2枚の液晶ディスプレイが利用できる。

デモ機はデイジーチェーン構成だったのでDisplay Portケーブルも接続されているが、その横にある細いUSB Type-C 1本でノートPCのディスプレイを拡張、同時に給電している

 弊社のUSB Type-Cディスプレイは、USB PDの最大65W出力に対応しています。

 PC側の要求が65W以下なら、PCの本来の性能で利用できますが、例えば、USB PD 100Wを要求するPCを接続すると問題が生じることがあります。

 また、USB Type-Cを映像出力として利用するには、Display Port Alt-Modeなど映像信号を送る機能に対応している必要があります。それ以外にも、例えばUSB Type-Cの設計が古いPCもありまして、古い設計のものほど問題が生じやすいのが現実です。

 そのため弊社では、購入いただく前に互換性の確認ができる、主に自社PCとの互換性リストを公開しています。

 詳しくはリストを見ていただければと思うのですが、USB Type-C接続で正しく充電できるか、映像が映るか、PCの性能が低下しないか、デイジーチェーンや、有線LANなどが正しく動作するかなどの検証結果をのせています。

 PC側が最新の規格に対応していれば、問題なく動くはずですし、USB Type-Cはとても便利なのですが、こうした課題があることを認識していただくと、ストレスなく利用できるのではないかと思います。

 USB Type-Cは多機能で利便性が高い機能です。実際、ディスプレイがUSB Type-C(とUSB PD)に対応していると便利ですよ。ACアダプターを持ち運ばなくても、会社に着いたらディスプレイのUSB Type-Cケーブルを挿すだけで給電されますし映像も出力できます。

 しかしそれゆえに問題が生じることもあり、トラブルシューティングにはある程度の知識も必要という印象です。電力不足についてはどうしようもありませんが、映像が途切れた、充電が途切れたといったような「なにかあったときには抜き挿し」が一番ということです。抜き挿しで再度ネゴシエーションを行うことで解決することがほとんどだと思います。

USB Type-Cなら「電源+画面+有線LAN」も一発接続、Webカメラ付きの製品も

――USBと言えば、PCとUSB接続する前提でディスプレイ側に有線LANを備え、USB Type-Cをつなぐだけで(画面、電源に加えて)1GbpsのLANを利用できるモデルもあるとか

松山氏:はい、あります。

 接続するUSB Type-Cコネクタが「DisplayPort Alt-Mode」と「USB Power Delivery」に対応している必要がありますが、そうした使い方ができる製品をご用意しています。

 昨今のモバイルノートPCは有線LANがなく、Wi-Fiのみのものも増えていますが、やはり安定性は有線LANが有利です。

 PCにUSB-LANアダプターを挿す方法もありますが、USB Type-C対応のディスプレイにつなぐなら、ディスプレイ側にLAN機能を持たせることで安定したネットワーク接続を手軽に実現できます。ケーブル1本で映像から充電、さらにはLANまで利用できればデスク上はシンプルに、いざ移動する際もスピーディに移行できます。

PCとUSB Type-C接続することで1GbEが利用可能になる

そのほかUSBを活用するディスプレイとしてはWebカメラ搭載モデルも

 このほか、USB-Type-Cではないですが、Webカメラを搭載するモデルもございます。シンプルにUSB Type-A接続なので不要な際は外せばセキュアですし、左右スイングで画角調整も行えます。

シンプルにUSB Type-A接続なので不要な際は外せばセキュア。左右スイングで画角調整もできる

応答速度も変化する画質切り替え機能も

――最後にiiyamaディスプレイ全般の特徴を教えてください

松山氏

そうですね、まず機能としては「i-Style Color」というカラーモード切り替え機能が「iiyamaならでは」と言えそうです。

 これは、利用シーンに合わせたモードを選ぶことで、最適なカラーモードにできる機能です。

 例えば「ゲーム」ならすばやい動きに対応した残像を抑えた表示にできたり、「テキスト」なら目に優しい明るさを抑えた表示にしたりといったことができます。こうした機能をワンタッチですばやく呼び出せる「ダイレクトボタン」を備えたモデルもご用意していますし、最近のモデルではこうしたインターフェースまわりも進化し使い勝手がよくなっています。

i-Style Colorで切り替えられるモードの例

また、全般的な点としては「安全規格に対する設計の細かさ」も是非知っていただきたいです。

われわれは欧州でも製品を展開しているのですが、欧州は日本よりも安全規格が厳しく、製品の材質はもちろん、過電流への対策や、スタンドの昇降の際に「手を挟まない、怪我をするような鋭利な箇所がない」といった細かなところまで規格化されています。日本の規格に加え、そうした欧州の規格もクリアした「安心できる製品」を展開しています。

――ありがとうございました