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マイクロソフト副社長が語るプログラミング教育、「導入期には失敗もあり得る」

「教師・生徒がともに試行錯誤していく中で成果を」

米Microsoft教育部門担当副社長のアンソニー・サルシト氏

 日本におけるプログラミング教育の導入を巡っては、ここ数年、議論が続けられてきたが、3月に公示された新しい学習指導要領の中で、2020年度から小学校において必修化することが盛り込まれた。教育関係者は、開始までの残り3年間で具体的な教育法・カリキュラムを策定しなければならず、大きな課題となっていくものと予想される。

 そんな中で4月11日、学習・教育プラットフォームの普及活動を手がける団体「ICT CONNECT 21」が、小学校におけるプログラミング教育必修化をテーマとしたセミナーを開催。米Microsoftの教育部門担当副社長であるアンソニー・サルシト氏が講師として登壇し、海外における導入事例を紹介するとともに教育の変革の必要性を訴えた。

 サルシト氏は、Microsoftの幹部ではあるが、教育の高度化や社会貢献を目指す立場からさまざまな企業との協力を推進。ICT CONNECT 21によれば、英国の「Computing At School(CAS)」制度の確立に尽力した。

 「どの国に住んでいても、どんな経済状況であっても、子どもたちは教育を受けられるべき」と訴えるサルシト氏は、年間で30~40カ国ほどの国を訪問。教育を必要としている人の数が増大していることを、教育関係者との面談を通じて痛感したという。

セミナーには多くの聴講客が集まった

仕事に求められるスキルは時代とともに変化、教育現場も変革すべき

 教育現場へのIT導入については慎重論も多い。しかしサルシト氏は、仕事のスタイルがそもそもITを前提としたものに変化した以上、教育現場もまた変革していくべきだと主張する。今まさにサルシト氏が講演会場で掲示しているスライドを、聴講者がメモ代わりにスマートフォンで撮影していること――それ自体がすでに変化の象徴であるとサルシト氏は語った。

 ほかにも、かつてトップダウン型だった仕事は複数名の合議によるネットワーク型が当たり前になった。また、1つの市場で製品の優劣を競うよりも、未開拓の新市場の創出を意識した製品開発も浸透してきた。社会人に求められるスキルについては、単にマニュアルを遵守するだけだった時代から、より効率的なルーチンの策定・施行の時期を経て、現在はアブストラクト(抽象的)なタスクの達成能力が重要になっているとした。

仕事のスタイルが大幅に変わってきている
時代の変化に応じて、仕事に求められるスキルもまた変わる

教師のサポートが課題、英国では必修化にあわせて体制整備

 こういった見地からは、Microsoftでは「ATCS(ASSESSMENT & TEACHING 21st CENTURY SKILLS)」「New Pedagogies for Deep Learning」などの教育手段研究プロジェクトに参画。その成果の1つが英国におけるCASだと説明する。

 英国では従来、コンピューター関連の授業を選択制としていたが、16歳以上になると女子の履修率が下がり、ほぼ男子だけが受講している状況だったという。このため、英国では必修化へと移行。あわせて、教師をサポートするための体制も用意した。

 このほか、英国では公共放送局「BBC」がプログラミング学習用キット「Micro:bit」を開発するなど、積極的な動きが続いている。とはいえ、サルシト氏は「(導入期ならば)失敗は当然あり得る。それを許容しなければ」とも言及。プログラミング教育との親和性が高いとされるゲーム「Minecraft」を引き合いに出し、教師・生徒がともに試行錯誤していく中で成果を上げていこうと呼び掛けた。

プログラミング教育にあたっては、教師をどうサポートするかも課題