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「働き方の選択肢を持つことが大切」、Dropboxがニューノーマルの働き方を調査

自社で取り組んだ新たな働き方「バーチャル・ファースト」の結果も紹介

Dropbox Japan代表取締役社長の梅田成二氏

 Dropbox Japanは、「ニューノーマルの働き方(Future of Work)調査」を実施し、その結果について発表した。また、Dropbox自らがコロナ禍において新たな働き方に挑んだ「バーチャル・ファースト」の取り組みについても説明した。

 Dropbox Japanの梅田成二社長は、「社内でのバーチャル・ファーストの実践や、今回の調査を通じてわかったのは、働き方の選択肢を持つことが大切であるという点。だが、理想の働き方は、業種、業態、担当業務で変わるため、何が理想かということは押しつけられず、それぞれの会社の経営陣が考えなければならない。Dropboxは自らの知見を活かして、会社ごとの理想の働き方の構築に貢献することできる」などと述べた。

 今回の「ニューノーマルの働き方調査」は、2022年4月7日~10日に、日本国内の20~69歳の男女1500人を対象に実施。最初の緊急事態宣言から2年が経過し、人々の働き方や価値観の変化を捉えたものになっているとする。

「リモートワークしたい」は48%も、現実の活用率は30%

 同調査によると、リモートワークを実施していない人は70%となり、リモートワークを活用している人は30%に留まった。だが、リモートワークをしたいという人は48%となっており、ここに経営陣と社員との意識にギャップがあると指摘した。

「現実」のリモートワーク活用率以上にリモートワークをしたい人は多く、「理想」とのギャップがある

 また、リモートワークを行いたい人に、理想の頻度を聞いたところ、毎日行いたいという人は10%強であり、全体の40%以上が週に1日以上のリモートワークを希望しているという。選択肢のひとつとしてリモートワークの導入に期待していることがわかった。

 リモートワークによって満足している点では、55%の人が「通勤時間の短縮」、46%の人が「自分のペースで仕事ができる」、30%の人が「時間と場所の制約がない」と回答。また、不満な点では、「プライベートと仕事のメリハリがつけられない」が31%、「水道光熱費や食費の増加」が30%、「書類の印刷ができない」が24%となった。また、女性や子育て世代に限定すると、「仕事と並行して家事や育児をしなくてはならない」という不満が高いという傾向が見られたという。

リモートワークを活用中の人の、満足している点と不満な点。このほか、女性や子育て世代では「仕事と並行して家事や育児をしなくてはならない」という不満点も

 リモートワークに対する企業側のサポートについては、チャットやオンライン会議システムなどの整備、セキュリティ対策のための整備、オフィス外から業務に必要なファイルにアクセスできる環境の整備などでは満足度が高かった。

 一方、ネットワークの高速化や大型モニターの導入などによる自宅の就労環境を整備するための補助金、仕事の成果にもとづいた働き方を評価する仕組み、ワーケーションなどの自由な働き方を奨励する制度については満足度が低かった。これに関しては「リモートワークの基本環境整備は進んでいるものの、リモートワークを行うために、より優れた環境の整備や、リモートワークに適した制度および仕組みに対する関心が高まっている」と分析する。

基本的なツールの整備が進んで、ネットワーク環境の整備や人事制度に関心が移っている

 ワークライフバランスについては、仕事の比重が高いとした人が、コロナ前の52%から、コロナ禍では48%に減少。とくに、経営者および役員では仕事の比重が高いとした人は56%から43%に減少。リモートワークを週に3日以上行っている人でも、同様に65%から46%に減少したという。「リモートワークを行っている層でのプライベート比率が増していることがわかった」とした。

コロナ禍前後は「仕事の比重が高い」とした人が減少、リモートワークを週に3日以上行っている人の中においても同様に仕事の比重が減少

「同期/非同期」コミュニケーションの使い分けにも注目

 今回の調査では、「同期」と「非同期」の意識的な使い分けができているかという点についても調査した。

 Dropboxでは、会議や電話といった濃密なコミュニケーションを行えるものの、相手の時間を占有することになる仕事の仕方を「同期」とし、メールやチャット、文書などによるコミュニケーションにより、相手に対して、時間に柔軟性を持たせた仕事ができる環境を「非同期」と定義している。

 調査では、全体的に同期と非同期の使い分けを意識していないという回答が多かったが、年代別では、20代男女、役職別では部長クラス(中間管理職)において、同期と非同期を使い分けた働き方に対して意識が高いという結果が出たという。

 「20代では、今後、転職する際の条件として、自分の好きなワークスタイルを選べる会社をあげており、それが反映されていると見ることができる。また、部長クラスでは、会議の前の準備をしっかりと行うことを心がけており、それが、同期と非同期への意識が高い結果につながっている」とした。

時間を合わせる会議や電話などの「同期」コミュニケーションと、時間差があるメールやチャットなどの「非同期」コミュニケーション。2つの使い分けを最も意識しているのは、役職別に見ると部長クラス

社員間の交流を強く意識した「バーチャル・ファースト」の取り組み

 一方、Dropboxが取り組んでいる「バーチャル・ファースト」の取り組みについても説明した。

 バーチャル・ファーストは、Dropbox自らがコロナ禍において挑んだ、新たな働き方に関するグローバルの取り組みであり、「ハイブリッドワークとは考え方が異なる」と位置づけている。また、Dropboxでは、「スマートな働き方を創造すること」をミッションに掲げており、これを実践する取り組みのひとつに捉えている。

 Dropboxでは、コロナ禍から約半年を経過した2020年10月にコンセプトを発表。2021年4月から運用を開始した。2021年6月からは、社員同士のコラボレーションや顧客との打ち合わせスペースとして新たに用意したDropbox Studioを一部再開し、2022年4月には、全世界でDropbox Studioを再開するとともに、出張制限を緩和しながら、現在でもバーチャル・ファーストを実践しているという。

バーチャル・ファーストの取り組みは2020年10月から開始

 「バーチャル・ファーストを開始する以前に実施した社内調査では、約9割の社員が、在宅勤務でも生産性を維持できるため、週5日出社が前提の勤務形態に戻す必要はないと回答した。しかし、企業文化が損なわれるのではないか、コミュニケーションが薄くなるのではないか、共同作業がやりにくくなるのではないかといた懸念も一方にあったという。

 また、出社組とテレワーク組で社内が分断されるのではないか、業績評価が不平等になるのではないかという不安の声もあった。「こうしたことを捉えながら、リモートワークを中心にして改革をしていく手法を検討していったのが、バーチャル・ファーストである」と梅田社長は語る。

 バーチャル・ファーストでは、「同期」と「非同期」の使い分けるためのルールを設定。さらに、出社する場所を、オフィスと呼ばずに「Dropbox Studio」と呼び、同期作業を効率よく行う場所として再定義。新たな働き方のガイドブックとなるバーチャル・ファーストツールキットを公開し、実践していくなかで同ツールを逐次アップデートしていったという。

 「バーチャル・ファーストによる改革は、社員の行動変革が伴わないと実現しない。また、バーチャル・ファーストツールキットは、社外に向けても、オープンに公開した」などとし、「バーチャル・ファーストの実践においては、コミュニケーションの基本を非同期としたこと、仕事に要した時間よりも、アウトプットによるインパクトを重視した。また、チーム一丸を重視する姿勢や、増加する仕事に対しては選択と集中を意識することを徹底したり、対立の解消を目指すことも重視した」という。

 「会議ばかりが続くと、深く考える時間がなくなるといった課題が生まれるが、そうしたことがないように仕事ができる環境づくりを進めた」という。また、資料をどれだけ作ったかというよりも、その資料によって本社を動かすことができたか、より多くの顧客に採用してもらえたかといったインパクトの方を重視し、マネジメントもそれを捉えた評価へと見直した。

 さらに、意見が食い違った場合には、リモートだと対立を回避する方向にいきがちだが、面倒くさがらずに、腹落ちするまで、徹底的に議論することを徹底したという。

1年間の取り組みで学びを得、72%の社員が生産性アップを実感

 こうしたバーチャル・ファーストの取り組みを、Dropbox社内で1年間にわたって実施した結果、「なにもしないと、明らかに他部門との交流が減ること」、「管理職のリーダーシップが鍵になること」、「社員の行動変革を促すことが重要である」という学びを得たという。

 「他部門との交流を行える場を率先して作ること、管理職がロールモデルとなることが、これまで以上に重要になっていることがわかった。また、オフィスで働いている場合には、社員が孤立しないように配慮ができたが、リモート環境では従来以上に社員の変化にアンテナを張る必要がある」などとした。

 その一方で、バーチャル・ファーストの取り組みによって、生産性が向上した社員は72%、作業効率が向上した社員は80%、ワークライフバランスが向上した社員は72%と高い成果をあげていることも報告した。

「バーチャル・ファーストによって、生産性とウェルビーイングが向上している。また、大事なのは、社員に働き方の選択肢を与えることであると実感した」としたほか、「Dropboxに新たに入社した社員の90%が、バーチャル・ファーストを導入している点を入社理由にあげているた」とも述べた。

Dropboxが1年間のバーチャル・ファーストで得た学び

「仕事を人間らしく」を人事制度に反映、日本法人では独自の取り組みも

 今回の説明会では、Dropbox JapanのJapan & APAC HRリードである高橋美智子氏が、同社の人事制度について説明。「Dropboxのコアバリューは、仕事を人間らしくする(Make Work Human)ことであり、この考え方を人事制度に反映することが社員の価値を最大化することにつながる」と語り、「よりスマートな働き方」「つながりの醸成」「人間的なパフォーマンスマネージメント」の3点からの取り組みを紹介した。

Dropbox Japan Japan & APAC HRリードの高橋美智子氏

 「よりスマートな働き方」では、「場所を問わず業務可能な環境と仕組みの提供、フレキシブルな休暇制度の採用、ウエルネスやファミリーケア、在宅勤務をはじめとして個人のニーズにあわせて組み替えできる補助金制度、社員と扶養家族のメンタルヘルスプログラムなどを用意している」とした。

「よりスマートな働き方」に向けた取り組み

 「つながりの醸成」では、「全社の使命や戦略と、部門および個人の目標をリンクするかたちで設定し、数カ月に一度のペースで、目標に対する進捗状況を確認した」という。このようにすることで、リモート環境でも個人の方向性を見失わずに済むとする。また「強いつながりの醸成のためにニュースレターやグループチャットなどを通じて、心理的な安全性を訴求している」という。

 さらに、バーチャルファーストツールキットの提供と、DEI(Diversity:多様性、Equality:平等性、Inclusive:包摂的・インクルーシブ)な文化の浸透、各社員の勤務地ごとのつながりを醸成する「Dropbox Neighborhoods」といった取り組みも行っているという。

「つながりの醸成」のための取り組み

 「人間的なパフォーマンスマネージメント」としては、「結果だけでなく、仕事の成果の影響力や、社内で設定した5つのバリューに沿っているかどうかを評価したり、リアルタイムのフィードバック文化を育成したりすることで、社員の可能性を解き放し、才能を伸ばし、成長を可能にする環境を用意している」とした。

「人間的なパフォーマンスマネージメント」のための取り組み

 このほか、日本における独自の取り組みとして、管理職社員によるDropbox Studio有効活用検討会の実施などを紹介。顧客やパートナーとともに、未来に向けたスマートな働き方を考えるバーチャル・ファーストアンバサダープログラムの導入、全社員を対象に毎週10分間開催しているバーチャル・ファースト・ツールキット勉強会を実施しているという。

日本で独自に行った取り組み