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リモートデスクトップなどのソリューションで「働きやすい世界を創造する」。TeamViewerが事業戦略を発表

TeamViewerジャパン株式会社 代表取締役 マネージング・ディレクター 藤井一弘氏

 リモートデスクトップ製品などを開発するTeamViewr社の日本法人であるチームビューワージャパンは、7月20日に記者発表会を開催。2022年12月に日本の代表に就任した藤井一弘氏が、日本市場での事業戦略について語った。また、ビジネス開発部長の小宮崇博氏が、TeamViewerの最新の国内外の事例を紹介した。

生産や物流などの現場の課題へのサポートに事業を拡大

 藤井氏はまずTeamViewer社の概要を紹介した。2005年にドイツで設立。PCに遠隔地から接続して操作できるリモートデスクトップ製品で、主に個人や小規模なユーザーに広がってインストール数を伸ばした。

 2018年にはエンタープライズ向けのリモートデスクトップ製品「TeamViewer Tensor」や産業向けARソリューション「TeamViewer Frontline」を発表した。2020年にはAR技術のUbimax社を買収。「これが功を奏して、SAPやSiemensなど製造業に強いソフトウェア企業と戦略的提携を結び、ソフトウェアを互いに連携させて事業を展開していった」、と藤井氏は説明した。

TeamViewerの沿革

 TeamViewerが今年発表したパーパスは「Creating a world that works better(働きやすい世界を創造する)」。これについて藤井氏は「オフィスワーカーがITで生産性を高めることは言われているが、生産や医療などの現場ではまだまだITが活用されているとは言えず、そこに強く着目している」と説明し、「IoT機器や自販機など、つなげられるものはつないで、現場で働いている人たちを支援していく」と語った。

TeamViewerが発表したパーパス「Creating a world that works better(働きやすい世界を創造する)」

 日本法人の組織としては、現在、藤井氏の下に、東京とアデレード(オーストラリア)にメンバーがいる。中でも藤井氏は、デリバリーやポストセールスのソリューションエンジニアの部分をこれまでパートナーに依存していたのを、チームビューワージャパンで対応できる体制を強化したと強調した。さらに、エンタープライズ顧客へのサポートを拡大していきたいと語った。

日本法人の組織構成

 パートナーエコシステムについても藤井氏は紹介した。SAPやSiemens、Salesforce、Microsoftなどと連携し、ヘッドマウントディスプレイのRealWearとも強い関係を結んでいるという。また、ディストリビューターとの提携により地方まで多くの顧客に浸透。さらに、付加価値を提供するリセラー/OT(Operational Technology)パートナー/ローカルSIとの提携を増やしていくことにより、現場で悩んでいる課題を聞き出してソリューションを提供していきたいと藤井氏は語った。

パートナーエコシステム

 日本における事業戦略としては、これまで特に中堅の顧客に長くサブスクリプションのライセンスを販売してきた事業をベースに、大手企業へのビジネスを拡大していきたいと藤井氏は述べた。

 そのための4つの柱を藤井氏は挙げた。顧客の業務が2つ、チームビューワージャパンの体制が2つだ。

 1つ目は「保守・保全業務の改革」。これは製造業の生産設備だけでなく、ロボットや自動販売機なども含めたさまざまなデバイスの保守業務を指す。こうしたものは遠隔地にあることも多いため、不具合時にリモートから状況を確認したり直せるものは直したりするソリューションのニーズが高いという。

 また、現地で修理する場合などにも、スマートグラスやタブレットなどでリモートのサポートを受けたりデジタルのマニュアルを見たりしながら作業できる。こうした作業について写真などで作業内容を自動的に記録して保存することで、継続的改善やコンプライアンス・ガバナンスにも役立つという。

 2つ目は「倉庫・物流現場の改革」。特にフォーカスしたいのは、多品種で季節などの変化が多いため自動化が難しい物流の入出庫作業だと藤井氏は言う。こうしたところの人間の作業を、やはりスマートグラスやタブレットを使って効率化し、トレーサビリティも提供するというソリューションだ。

「お客様のストーリーとして(物流と入出庫作業の)2つを挙げているが、お客様と対話していけばそれ以外にも出てくるかもしれない。こういったところを私どものテクノロジーで徹底的な改革を提供していきたい」(藤井氏)

 そして3つ目と4つ目が「パートナーエコシステム強化」と「セールスチーム強化」だ。パートナーエコシステムを強化するとともに、社内のメンバーも強化して、顧客とコミュニケーションをとって課題を聞き、その解決に取り組んでいくと、藤井氏は語った。

日本における事業戦略

決済端末からエスプレッソマシン、ロボット、F1チームまで遠隔サポートの事例

TeamViewerジャパン株式会社 ビジネス開発部長 小宮崇博氏

 続いて小宮氏が、最新の国内外の事例について解説した。

 まずTeamViewerの企業向けソリューションとして、中小企業向けのリモート操作ソリューション「TeamViewer Remote」、産業機器を含むエンタープライズ向けのリモート操作ソリューション「TeamViewer Tensor」、スマートグラスやタブレットなどで遠隔の人を支援する「TeamViewer Frontline」の3つを紹介した。

 そのうえで企業のデジタル化についてのグローバルでの調査結果を小宮氏は挙げた。デジタル化には87%が着手し、ERP/PLMなどへの投資はなされているものの、リモートサポートやIT/OT連携への投資などはまだまだ低いという。

TeamViewerのソリューション「TeamViewer Remote」「TeamViewer Tensor」「TeamViewer Frontline」
企業のデジタル化についてのグローバルでの調査結果

 これらをふまえて、TeamViewerの主に非PC分野の遠隔サポートの事例を小宮氏は紹介した。

 まずは、店舗の決済端末で起きた問題を遠隔からリアルタイム解決する、韓国Unospayの事例だ。Unospayではレストランやカフェなどにセルフ決済端末を提供している。そのシステムに障害が起きると収益に直結するため、迅速に解決するためにTeamViewerのソリューションによるリモートサポートを導入した。これにより、月平均3000あったサービスコールが、技術者がオンサイト対応する必要のある4%にまで低減したという。

韓国Unospayの決済端末の事例

 次に、イタリアのエスプレッソマシンのメーカーGruppo Cimbaliの事例だ。コーヒーかすが詰まったといったトラブルの対応のためにTeamViewerのソリューションを採用した。いままでは電話でやりとりしていたところを、操作パネルのSOSボタンからコールセンターにつなぐと、オペレーターが遠隔からマシンをサポートできる。さらに、AR/MRによってメンテナンス手順をサポートするタブレットベースのデジタルマニュアルも予定しているという。

イタリアのGruppo Cimbaliのエスプレッソマシンの事例
AR/MRによってエスプレッソマシンのメンテナンス手順を示す例の動画デモ

 日本のNECネッツアイの事例は、遠隔サポートによる付加価値サービスの例だ。ホテルやレストランで使われるロボットの保守・メンテナンス業務のために、TeamViewerを使ったサポート業務を開始した。特に結婚式のようにフロアレイアウトが毎回変わるときに、NECネッツアイがTeamViewerを使ってリモートから設定を変更するサービスを提供できるようになった。

NECネッツアイのロボットの遠隔サポートサービスの事例

 米Wendy'sでは、食材を加工するサプライヤーへの対応がコロナ禍で難しくなったのをTeamViewerで解決。トレーニングや品質チェックなどをリモートで行えるようにし、その記録も自動で残るようにしてコンプライアンスレポートの自動化も実現した。

米Wendy'sのサプライヤー対応の事例

 F1レースのメルセデス AMG・ペトロナスチームの採用事例もある。チームでは遠隔地のRSR(レースサポートルーム)で情報分析などを行い、サーキットの現場に伝えている。特に2021年シーズン以降は練習走行セッションが短縮されたため、ピット作業の短縮が必要となった。

 そこでTeamViewer Tensorを採用。現場のテレメトリーデータからRSRが戦略を組み、ドライバーもマシンに乘ったままデータにアクセスできるようになったという。「これによって数秒、全体としては数十秒から数分の効率化ができた。ほかのソリューションではうまくいかなかったのが、TeamViewerにしたらうまくいったという事例」と小宮氏は説明した。

メルセデス AMG・ペトロナス F1チームの事例

 これらの事例をふまえて小宮氏は「われわれは遠隔でつないで人を支援して、より良い職場環境を作る技術を提供している。これが私たちのストーリーだ」とまとめた。