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NEC、大規模言語モデルと画像分析により被災状況を把握する技術を開発、災害対応迅速化への貢献を目指す

 日本電気株式会社(NEC)は8月25日、大規模言語モデル(LLM)と画像分析により、災害発生時における被災状況を把握する技術を開発したと発表した。2025年度中の実用化を目指し、災害対応を担う関係省庁や自治体などに同技術を提供することで、災害発生時の避難誘導や救助活動など初動の迅速化に貢献するとしている。

 自然災害発生時、被災者の避難誘導や救助活動を迅速に行うためには、被災状況を素早く的確に把握することが重要となるという。災害発生時に関係省庁が公開する降水量分布や震度分布、住民から寄せられる被害や安否についてのテキスト情報には、詳細な被災状況や場所の情報が含まれておらず、迅速な初動対応のための課題となっている。

 一方で、自治体などへ提供される被災現場の画像(スマートフォン、ドライブレコーダー、街頭カメラなどで撮影されたもの)には、詳細な被災状況や場所の情報が含まれている。今回発表された技術では、膨大な被災現場の画像から被災状況の把握に必要な画像を素早く的確に絞り込み、それらを番地レベルの正確さで地図上に表示できるという。

現場画像の絞り込みのイメージ
地図上への情報表示のイメージ

 NECでは、同技術の特徴として次の2点を挙げている。

利用者の意図に応じて現場画像を絞り込める

 LLMによる言葉の意味解釈と画像分析による画像の類似性判定を活用することで、膨大な現場画像の中から利用者の意図に合う画像に絞り込む。

 従来、画像の絞り込みには画像認識技術が広く用いられてきたが、あらかじめ学習した対象物しか認識できず、絞り込める画像が限られていた。しかし、LLMを活用することで、フリーワードにより現場画像を絞り込むことができる。さらに、画像分析を活用し、利用者が探したい場面を画像で指定することにより、言葉では表現が難しい場面でも類似した画像に絞り込める。

被災状況・場所を地図上に番地レベルで表示できる

 被災場所が分からない現場画像について、街の広い範囲をカバーする上空画像や地図データと照合することで、現場画像の場所を番地レベルの正確さで推定し、地図上に表示する。

 災害時などの緊急時に提供される現場画像には、必ずしも位置情報が付与されておらず、被災場所の特定が難しい場合がある。同社では、衛星画像や航空写真などの上空画像と地図データの地理情報を合わせて活用することで、世界最高水準の照合精度を達成し、災害時の現場画像でも高精度に場所を推定することが可能になったという。

 同技術は、現場画像から道路、建物、信号機などの領域を自動抽出し、地図のレイアウト情報と照合することで場所を推定する。地震の際は建物よりも損壊リスクの低い道路の情報を積極的に用い、水害の際は道路よりも冠水リスクの低い建物の情報を用いて照合することで、建物の一部倒壊や道路の一部浸水がある現場画像でも高精度に撮影場所を推定することが可能だとしている。