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JEITA、静岡県三島市と「デザインエコシステム形成プロジェクト」で提携、産官・市民で共有できる課題解決の仕組み作りを目指す

 一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)のデザイン部会は、静岡県三島市と、「デザインエコシステム形成プロジェクト」の実現に向けたパートナーシップを10月7日に締結した。デザイン部会が地方自治体と共同の事業を実施するのは今回が初めて。

 デザインエコシステム形成プロジェクトは、デザインアプローチの手法によって、解決したい社会課題などを可視化して明確にし、課題解決のための道すじをつける、新たな事業だ。

 同日、三島市役所にて協定締結式およびプロジェクト概要説明会が開催された。

左から、JEITA デザイン部会 エコシステムトライアルグループ プロジェクトマネージャー/富士通株式会社の稲垣潤氏、JEITA デザイン部会 エコシステムトライアルグループ/株式会社ニコンの中島麻里氏、三島市長の豊岡武士氏、JEITA デザイン部会 部会長/キヤノン株式会社 理事 総合デザインセンター 所長の石川慶文氏、JEITA デザイン部会 エコシステムトライアルグループ/コニカミノルタ株式会社の宮澤恵美氏、JEITA デザイン部会 エコシステムトライアルグループ/三菱電機株式会社の福高新作氏
調印の様子

 三島市長の豊岡武士氏は締結式において、「三島市には地域の課題に積極的に参加する市民や企業、団体が多く存在している。また優秀な方々が新幹線通勤やテレワークで移住してきている。そうした人たちが課題を共有し、目指すべき町の姿を、共感できるようになればありがたいと思っている」と挨拶した。

 なお今回の協定は、JEITAのデザイン部会が取り組みに関心を持つ自治体を探していたところに、経済産業省を介して三島市が手を挙げたことから話が進み、決定した。

三島市 市長 豊岡武士氏

 JEITA デザイン部会の部会長であるキヤノン株式会社 理事 総合デザインセンター 所長の石川慶文氏は、「われわれデザイナーは、日ごろからユーザー視点で物事を考え、問題をわかりやすく整理し可視化して、さまざまなステークホルダーと柔軟に共同できる特性を持っている。その特性を三島市の皆様とのプロジェクトに活かしていく」と挨拶した。

JEITA デザイン部会 部会長/キヤノン株式会社 理事 総合デザインセンター 所長 石川慶文氏

22件の課題から「子育て」「移住」の2つに絞り、仮説を特定

 プロジェクト概要については、JEITA デザイン部会 エコシステムトライアルグループ プロジェクトマネージャーである富士通株式会社 デザインセンター 戦略企画部シニアマネージャーの稲垣潤氏が説明した。

JEITA デザイン部会 エコシステムトライアルグループ プロジェクトマネージャー/富士通株式会社 デザインセンター 戦略企画部シニアマネージャー 稲垣潤氏

 JEITAのデザイン部会は、24社のデザイン部門やデザインセンターが参加するJEITAの構成組織だ。

 その中で、今回のデザインエコシステム形成プロジェクトが新たに立ち上がった。現在の社会課題は複雑化し、1社では課題解決が難しくなっていることが背景にある。そこで、デザイナーの知見やノウハウによって、課題を発見してわかりやすく伝えることに貢献すると稲垣氏は説明した。

 活動としては、世の中たくさんある社会課題の中から、本当に解くべき“本質的課題”を特定し、できれば市民といっしょに、解決策とセットで世の中に公開するところまでを、デザイン部会で行う。「解決はやらないのか、と思うかもしれないが、それは地元の企業やコミュニティなど解決できる方がやっていく。われわれはそのために、課題を特定していくことで、課題が解決していくというエコシステムを作っていきたいと考えている」(稲垣氏)。

デザインエコシステム形成プロジェクト

 三島市との活動としては、2024年3月から市役所とワークショップを開き、4月に市長に報告。そこから市民へのヒアリングなどを行い、三島市が公開している課題22件から2件に絞り込んだ。その2件は、「子育て」と「移住」であり、両者は関連しているという。

 今回のパートナーシップ協定締結を機に、この課題をどう解決できるか市民といっしょに考え、世の中に公開していく。考えとしては、三島市以外の自治体や24社以外の企業にも入ってもらい、課題と解決を持ち寄るエコシステムを作っていきたいという。

三島市との活動の流れ
スケジュール案

 デザインアプローチの手法としては、たとえばペルソナ手法によって三島市の子育てをしている人のペルソナを作ったり、そのペルソナに市の政策が届いているかどうかなどをジャーニーマップに整理してどこに問題があるか特定を試みたりした。

 その結果、課題仮説として、「子育ての情報入手と利活用向上」「夫婦間の心理的安全性の維持」「母親の自分時間の創出」「母親のアイデンティティの確保」の4つを特定したと稲垣氏は説明した。

 今後については、今年度の残りの期間で市民と解決策の案を考え、公開するところまで実施したい、と氏は述べた。

デザインアプローチの手法を適用した例
4つの課題仮説