リモートワークの新常識

第2回

リモートワークでは、オフィスワークより生産性が下がった気がする… 解決策は「小口化」

オフィスワークより生産性が下がった気がする……リモートワークのこんな悩み、抱えていませんか? 今回は、リモートワークにおける仕事の生産性について説明していきます。

 リモートワークでは、小口化により、小さな単位に分けて頻繁に行動すると、メンバーや上司と仕事を進めるうえで生産性を高められます。

▼この記事のポイント

  1. タスクを小口化して手戻りを少なくする
  2. コミュニケーションを小口化する
  3. 小口化して仕事を習慣にする

1. タスクを小口化して手戻りを少なくする

勤務時間の小口化

 リモートワークでは、場所にとらわれず働くことができます。たとえば子どもの急な発熱で保育園に迎えに行かなければならないときも、その日のタスクを調整するなどして柔軟に対応できます。通常であれば半休などを申請して対応しなければならないことも、1~2時間の時間休で済みます。

 また、ワーケーションのように、旅行中などに働く場合も、勤務時間を小口化することでプライベートと仕事の両立がしやすくなります。

プロジェクトやタスクの小口化

 筆者の会社では、システム開発をメイン事業として行っているため、システム開発の例で解説します。通常、システム開発というと、最初にシステムに必要な機能を決め、システムの仕様が決まったら開発を開始します。たとえば、半年間、開発を行い、システムが完成したら、問題がないかをテストしてリリースする、といった具合にプロジェクトが進みます。この流れは、一見すると効率的に見えます。しかし、実際には順調に進まずに、問題が発生することもあります。

  • 半年の開発期間で状況が変わり、不要になってしまった
  • 完成したシステムが想像と異なるものだった
  • 開発したものの不要な機能が含まれている

 このような問題は、もっと早く確認していれば防げたものです。問題が発生しないように開発を進める方法の1つがアジャイル開発です。仕様を決めて一気に開発を進めるのではなく、少しつくって確認、少しつくって確認というように、細かい工程で確認を挟みながら開発を進めるシステム開発の方法です。このように進めることで、必要な機能のみを確認しながら順番に開発でき、無駄がなくなって生産性が高まるというわけです。

 みなさんの仕事でも、このアジャイル開発の方法を生かすことができます。システム開発を、自分が今携わっているプロジェクトやタスクに置き換えればよいのです。これはプロジェクトやタスクの小口化といえます。

 大きなプロジェクトやタスクは、作業の分量や時間を考えると億劫になってしまいます。このようにプロジェクトやタスクを小口化することで、見通しが立てやすくなり、精神衛生上も気持ちよく仕事ができます。

[アジャイル開発のイメージ]

2. コミュニケーションを小口化する

チャットでコミュニケーションを小口化する

 LINEを使っている人は、チャットに慣れているかもしれません。ただ、仕事では、まだメールがメインツールとして使われていることが多いと思います。さらに遡れば、メールの前は手紙でやり取りを行っていました。

 手紙やメールの難点はリアルタイム性がないことです。つまり、送信した相手の反応がすぐにはわかりません。また、いつ返信があるかわからないので、より丁寧に、なるべくたくさんの情報を盛り込みがちです。

 この相手に伝えるべき情報を小口化したものがチャットです。手紙やメールは頻度が少なく、分量が多いのが特徴です。チャットはその逆で、頻度が多く、分量が少ないという特徴があり、会話のようにコミュニケーションを行えます。メールほど丁寧に書く必要もないため、手軽に要件を伝えられます。

品質チェックの小口化

 仕事において品質は重要です。品質は高いほどよいものですが、何を差し置いても品質の高さが重要というわけではありません。どれだけ時間をかけても品質を高めてほしいということは稀まれで、品質と作業時間のバランスを見ながら仕事を進めていく必要があります。そのために意識したいのが品質チェックの小口化です。たとえば、100%完成したタイミングで上司のチェックを受けても、求められる品質と異なれば、差し戻されてつくり直しが必要になります。

 リモートで働いていると、たまたま隣の席で見ていた上司から完成の途中でアドバイスをもらうといったことはありません。オフィスで一緒に働いている場合より、品質チェックの機会は減っているのです。そのため、リモートワークでは、全体の10%ほどの完成度でも、だいたいのイメージのすり合わせのためにフィードバックをもらうくらいがちょうどよいのです。

3. 小口化して仕事を習慣にする

サラサラで健康的な仕事やチームを目指す

 小口化のイメージとしては、人間の血管を流れる「血液」が近いかもしれません。不摂生な生活習慣などにより血液がドロドロの状態になると、血液中の白血球がくっついたり血小板が凝縮したりして、血液の流れが悪くなります。一方、健康的でサラサラな状態の血液であれば、白血球が粘着することなどがなく、毛細血管の細い隙間もスムーズに流れていきます。

 仕事やチームもこれと一緒です。作業やコミュニケーションの流れがサラサラで停滞することがなければ、スムーズな進行が可能で、何らかの問題があってもすぐに気づいて対処できます。なるべく大きな塊にならないように小口化することで、健康的な仕事やチームを維持できるのです。

小口化して日常的な業務の1つに落とし込む

 仕事が大きな塊のままでは、精神的な重荷となります。そのような仕事に取り組むには相当の意気込みが必要とされますし、時間と労力もかかります。そのため、たとえ重要な仕事とわかっていても、「時間を確保できるときにやろう」などと考え、放置することになりかねません。

 そこで、まず行うのが小口化です。仕事の塊を切り分け、細かいタスクに小口化することだけを考えるのです。最初の一歩を踏み出せたことで精神的な重荷が減り、仕事に取りかかるハードルも下がります。あとは切り分けたタスクを進めていくことで、日常的な業務の1つとして習慣化していきましょう。その仕事が習慣になれば、意識しなくてもどんどん進められます。

[1 on 1ミーティングも小口化]

※この記事は、書籍『テレビ会議で顔を出せ! リモートワークの新常識45』(リモートワーク研究所所長 八角嘉紘 著/リモートワーク研究所顧問 倉貫義人 監修/株式会社インプレス 発行)より、内容の一部を抜粋・再構成してお届けするものです。

  1. リモートワークのこんな悩み、抱えていませんか? その解決策とノウハウを紹介
  2. オフィスワークより生産性が下がった気がする… 解決策は?(この記事)
  3. 相手の状況がわからなくて相談しにくい… 解決策は?
  4. 1人だとモチベーションが上がらない… 解決策は?

本書は、コロナ前から全社リモートワークを実践し、リモートワークに関する知見を10年以上に渡って貯めてきたリモートワーク研究所のノウハウに、コロナを経てさまざまな会社のリモートワーク相談に著者が応えていくなかでブラッシュアップを重ね、まとめられたニューノーマル時代の働き方マニュアルです。オフィスワークのイメージがなく、参考になるモデルがない新社会人の方は、ぜひ本書を使って、新しい時代の働き方を、素早く身に付けみてはいかがでしょうか。

著者:八角 嘉紘(ほすみ よしひろ)

大手コンサルティング会社で事業推進に関するコンサルティングを経験。現在はリモートワーク研究所所長、「仮想オフィス」のプロダクト責任者を務めている。全社員リモートワークで事業運営を行いながらも成果を上げてきたノウハウを、広く世の中に提供する活動をしている。千葉県成田市にてリモートワーク中。

監修者:倉貫 義人(くらぬき よしひと)

リモートワーク研究所顧問。大手SIerにて経験を積んだのち、社内ベンチャーを立ち上げる。2011年にMBOを行い、株式会社ソニックガーデンを設立。月額定額&成果契約で顧問サービスを提供する「納品のない受託開発」を展開。全社員リモートワーク、オフィスの撤廃、管理のない会社経営など新しい取り組みも行っている。著書に『ザッソウ-結果を出すチームの習慣』(日本能率協会マネジメントセンター)、『管理ゼロで成果はあがる』(技術評論社)、『「納品」をなくせばうまくいく』(日本実業出版社)などがある。