リモートワークの新常識

第3回

リモートワークでは、相手の状況がわからなくて相談しにくい… 解決策は「ホウレンソウよりザッソウ」

相手の状況がわからなくて相談しにくい……リモートワークのこんな悩み、抱えていませんか? 今回は、リモートワークにおけるコミュニケーションについて説明していきます。

 仕事をするうえでホウレンソウ(報告・連絡・相談)は大切ですが、リモートワークではザッソウ(雑に相談)がさらに重要です。

▼この記事のポイント

  1. 「相談」したいことがあったらすぐに話しかける
  2. 相談するために必要な「雑談」
  3. ザッソウ(雑に相談)で相談スキルを高める

1.「相談」したいことがあったらすぐに話しかける

報告と連絡は過去のこと

 「ホウレンソウ」とは、仕事で重要なコミュニケーションである「報告」「連絡」「相談」をひとまとめにした言葉ですが、それぞれのコミュニケーションには違いがあります。それは、報告と連絡は過去の事柄に関するものであるのに対して、相談は未来の事柄に関するコミュニケーションということです。

 報告や連絡は、すでに決まった事柄を伝えるだけで、そこに議論の余地はありません。決定事項に対して質問をする程度です。したがって、報告や連絡をするだけであれば、チームメンバーがリアルタイムで集まる必要はありません。もちろん、報告も連絡も、仕事を進めるうえで必要不可欠なコミュニケーションですが、チャットやグループウェアなどで伝えるだけで事足ります。

相談は未来のこと

 一方で、相談は、何かしら相談したい事柄があり、それをチームメンバーに投げかけ、意見をもらうという双方向のコミュニケーションが必要です。そしてこの相談は早ければ早いほどメリットがあります。たとえば、何らかの資料を作成する際、ほぼ完成されたもので相談しても、それが目的と異なるものだった場合、大きな手戻りが発生します。それより、大まかな方針や完成イメージが見えた時点で相談をしたほうが、時間も手間も有効に使えます。

 大量生産が産業の中心だった時代には、誰もが横並びで作業を行い、マニュアルどおりに進めることが重要視されていました。その時代には、決められたとおりに作業を行えばよかったため、報告や連絡が主で、相談は少なかったかもしれません。しかし現在は、商品企画やマーケティング、プログラミング、デザイン、コンサルティングなど、決められたルールのないクリエイティブな仕事が増えています。だからこそ相談のスキルも高めていく必要があります。

相談事があったらメンバーに声を掛ける

 相談をするときに、定期的に行われる会議まで待っていてはスピード感に欠けます。相談は早ければ早いほどメリットがあるので、相談をしたいときはすぐに「ちょっといいですか?」とメンバーに声を掛けましょう。チャットやテレビ会議などを使い、その場で話をすれば、5分で解決することもあります。

[報告・連絡は過去、相談は未来]

 ビジネスの変化が激しい現代において、正解は誰にもわかりません。仕事を依頼する上司が常に正しいわけではなく、むしろ現場の事情に精通した部下のほうが適切な判断ができる場合もあります。マネジメント力のある上司は、部下に相談をすることが多くあります。「こんなことを相談していいのかな?」と考えず、積極的に話しかけて相談をすることが、ビジネスで生産性を上げるうえで必須です。

2. 相談するために必要な「雑談」

 筆者の会社では全員がリモートワークを行っていますが、オフィスワークからリモートワークに切り替えたタイミングでなくなったのが「雑談」でした。オフィスにいれば、ちょっとした機会に生まれていた雑談がなくなってしまったのです。

 短期的に見れば、雑談がないからといって、仕事に影響することはありません。問題なく仕事を進めることはできます。ただ、雑談をしていないと、気軽に話せる人間関係が構築できず、いざ相談しようと思っても話しかけにくいということが生じます。

 相談はリモートワークに欠かせないもので、雑談がないことにより、相談もしにくくなるという事態に陥ります。相談だけをすればよいのではなく、雑談と相談は切っても切り離せない関係なのです。

3. ザッソウ(雑に相談)で相談スキルを高める

仕事と雑談を明確に分けない

 雑談をするうえで気をつけたいのが、仕事をする場所と雑談をする場所を明確に分けてしまうことです。たとえば、仕事は仕事ときちんと分け、仕事の話のなかにプライベートな話や趣味の話が入ることを嫌う人がいます。

 また、よくあるのが、仕事用のツールと雑談用のツールというように、ツールそのものを分けてしまうことです。これは失敗しやすいといえます。なぜなら、雑談とわかって意図的に雑談をすることは、かなり勇気がいることだからです。そのため、雑談用のツールを用意しても、使われなくなることが多いです。また、雑談と仕事を切り離すことで、雑談のなかでは雑談に終始し、仕事のアイデアに発展しにくいということも起こり得ます。雑談を仕事と切り離して考えるのではなく、仕事の延長にあるものとして捉えるとよいでしょう。

ザッソウとは「雑に相談すること」

 雑談を仕事の延長として捉えるのに、便利な考え方があります。それが「ザッソウ」です。ザッソウとは「“雑”に“相”談する」という意味です。相談の重要性はすでに述べましたが、仕事と関係のない雑談がしにくかったら、たとえば、「まだふわっとしたアイデアですが、Webサイトのアクセス数を増やす施策を思いついたので相談にのってもらえませんか?」などのように、雑な状態で相談するのです。

 ザッソウがチーム内に定着すると、まだ十分に煮詰まっていない状態での相談ですが、相談の量は確実に増えます。相談の量が増えることで、チーム内に相談しやすい雰囲気ができ上がります。それにより、アイデアも出しやすくなるでしょう。このようにして、まだ思いつきのアイデアなども、相談として歓迎するカルチャーをつくっていきましょう。リモートワークにおいては、雑に相談できる人ほど、相談のスキルが高いといえます。

[雑談で相談をしやすくする]

※この記事は、書籍『テレビ会議で顔を出せ! リモートワークの新常識45』(リモートワーク研究所所長 八角嘉紘 著/リモートワーク研究所顧問 倉貫義人 監修/株式会社インプレス 発行)より、内容の一部を抜粋・再構成してお届けするものです。

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本書は、コロナ前から全社リモートワークを実践し、リモートワークに関する知見を10年以上に渡って貯めてきたリモートワーク研究所のノウハウに、コロナを経てさまざまな会社のリモートワーク相談に著者が応えていくなかでブラッシュアップを重ね、まとめられたニューノーマル時代の働き方マニュアルです。オフィスワークのイメージがなく、参考になるモデルがない新社会人の方は、ぜひ本書を使って、新しい時代の働き方を、素早く身に付けみてはいかがでしょうか。

著者:八角 嘉紘(ほすみ よしひろ)

大手コンサルティング会社で事業推進に関するコンサルティングを経験。現在はリモートワーク研究所所長、「仮想オフィス」のプロダクト責任者を務めている。全社員リモートワークで事業運営を行いながらも成果を上げてきたノウハウを、広く世の中に提供する活動をしている。千葉県成田市にてリモートワーク中。

監修者:倉貫 義人(くらぬき よしひと)

リモートワーク研究所顧問。大手SIerにて経験を積んだのち、社内ベンチャーを立ち上げる。2011年にMBOを行い、株式会社ソニックガーデンを設立。月額定額&成果契約で顧問サービスを提供する「納品のない受託開発」を展開。全社員リモートワーク、オフィスの撤廃、管理のない会社経営など新しい取り組みも行っている。著書に『ザッソウ-結果を出すチームの習慣』(日本能率協会マネジメントセンター)、『管理ゼロで成果はあがる』(技術評論社)、『「納品」をなくせばうまくいく』(日本実業出版社)などがある。