リモートワークの新常識

第4回

リモートワークで1人だとモチベーションが上がらない… 解決策は「内発的動機付け」と「そもそも」思考

1人だとモチベーションが上がらない……リモートワークのこんな悩み、抱えていませんか? 今回は、リモートワークにおける心の健康について説明していきます。

 心身が健康で充実しており、かつ仕事へのモチベーションが高い状態を維持することが重要です。そのために、自分の興味や関心を知り、動機付けを行いましょう。

▼この記事のポイント

  1. 内発的動機付けでモチベーションを維持する
  2. 「そもそも」思考で働く
  3. モチベーションに影響されないしくみをつくる

1. 内発的動機付けでモチベーションを維持する

モチベーションを高く維持する

 リモートワークに限らず、日々の業務においてモチベーションが低下することがあります。しかし、モチベーションが低いときに高める方法を考えるのではなく、常に高いモチベーションを維持する方法を考えるほうがよいでしょう。モチベーションの高い状態を維持する方法には「外発的動機付け」と「内発的動機付け」があります。

外発的動機付けは短期的で長続きしない

 外発的動機付けとは、自分の興味や関心などではなく、外部からもたらされる報酬や評価、昇進などを目標として、その目標を実現するために行動することです。たとえば、「子どもがお小遣いをもらうために家事を手伝う」のは、典型的な外発的動機付けです。仕事では、たとえば「成果報酬や昇進などを目標に仕事をする」ことなどが、外発的動機付けといえます。

 一般的に外発的動機付けの効果は短期間といわれています。そのため、長期間にわたって携わる仕事や自己鍛錬などにおいて、高いモチベーションを維持することには、あまり向いていないという側面があります。そこで必要とされるのが内発的動機付けです。

内発的動機付けでモチベーションを長く保つ

 高いモチベーションを長期間にわたって維持する場合、その行動自体に関心を持ったり楽しいと感じたりする必要があります。

 外発的動機付けが、外部からもたらされる報酬などを目標に起こす行動とすると、内発的動機付けは、自分の内部にある興味や関心などをもとに行動を起こすことです。子どもの例でいえば、スポーツやゲームなどが典型的です。スポーツやゲームをするとき、一般的には何らかの報酬がもらえるから行うわけではありません。純粋にスポーツやゲームが楽しいから行うのです。

 このように、興味や関心を持ったり楽しんだりする内発的動機付けがあることが、高いモチベーションを維持することにとても重要です。

[外発的動機付けと内発的動機付け]
外部からもたらされる報酬や評価、昇進などを目標として、その目標を実現するために行動すること
自分の内部にある興味や関心などをもとに行動を起こすこと

2.「そもそも」思考で働く

仕事の向き合い方を変えて興味や関心を見つける

 内発的動機付けを持って働くためには、その仕事に興味や関心を持つ必要があります。仕事への興味や関心という観点では、大きく2つがあります。


    ①現在取り組んでいる仕事に興味や関心を持つ
    ②自分が興味や関心を持ちやすい仕事を把握する

 ②は、さまざまな仕事について、ある程度の量をこなす(経験する)ことで、少しずつわかってくるものです。まだ経験が浅いうちは、個々の仕事を「おもしろい」「つまらない」ですぐに判別しようとせず、その仕事を完了させるためにさまざまな作業を行ったり、いろいろな進め方を試したりするなかで、自分はどういう作業や進め方をおもしろいと感じるかを把握していきましょう。

 ①の、現在取り組んでいる仕事に興味や関心を持つためには、仕事に対する向き合い方をいろいろと変えてみることが必要です。単に依頼された作業を行っているだけでは、もともとの興味や関心がない限り、つまらない仕事にしかなりません。

「そもそも」で仕事の目的を考える

 筆者の会社でよく出るワードに「そもそも」があります。仕事を依頼されたとき、すぐに作業に取りかかるのではなく、「そもそもこの仕事は何のために行うのか」と考えるのです。「そもそも」と言って仕事の目的を考えることで、その仕事の達成目標、行う理由、見込まれる成果などが腹落ちし、「単なる作業」が「意義ある仕事」に変わります。

 また、「そもそも」で考えていくと、依頼された仕事を深く考えることができ、工夫の余地を引き出すこともできます。上司から具体的な進め方まで指示されたとしても、「目的から考えると、この進め方のほうがよい」という提案ができるかもしれません。「工夫の余地がある」「裁量がある」ということは、仕事のモチベーションにもつながります。このように、モチベーションは自分の考え方によって高められるのです。

自分の考えを持って決断力を磨く

 「そもそも」と考えていくと、少しずつ仕事への向き合い方が変わってきて、「自分の考え」が生まれてくるようになります。そのようにして生まれた考えは、必ずしも正しいわけではありませんが、そうした考えを持たない限り正しいか誤っているかの判断はできません。「これは上司が考えること」などと考えることを放棄してしまうと、成長の機会は望めません。日頃から自分の考えを持ち、その考えに基づいたさまざまな判断や選択、提案などを行っていくことで、自分が決める立場になったとき、的確な決断ができるようになります。

3. モチベーションに影響されないしくみをつくる

 モチベーションが高い状態を維持していても、たまに気分が乗らないときもあります。そのため、モチベーションが仕事の成果に影響しないようなしくみを考えておくことも大切です。

 筆者の会社では、新しいプロジェクトが始まると、週1や隔週で定例ミーティングを開催しています。担当者だけに進捗を任せるのではなく、話し合う場を事前に設定するのです。あまり気が進まない仕事でも、定例ミーティングで「何も進捗がない」という報告をするわけにはいきません。少しでも進めようという気持ちになるでしょう。

 また、社内のチームメンバーだけでは、つい甘えが出てしまい、進捗が鈍くなるときがあります。そのような場合は、外部の人を定例ミーティングに加えることもあります。外部の人に迷惑をかけられないので何とかして進めようと思わせる、仕事の進捗を促すしくみです。

 このように本人だけのモチベーションに頼らないしくみをつくり、「モチベーションがないと仕事が進まない」のではなく、「モチベーションがあるとよりよい」状態にしておくことが望ましいでしょう。

モチベーションに影響されないしくみの例

  • 定例ミーティングという報告の場を設定する
  • 次回までのタスクを明確にする
  • 外部の人を巻き込むことで「甘え」を発生させない

※この記事は、書籍『テレビ会議で顔を出せ! リモートワークの新常識45』(リモートワーク研究所所長 八角嘉紘 著/リモートワーク研究所顧問 倉貫義人 監修/株式会社インプレス 発行)より、内容の一部を抜粋・再構成してお届けするものです。

  1. リモートワークのこんな悩み、抱えていませんか? その解決策とノウハウを紹介
  2. オフィスワークより生産性が下がった気がする… 解決策は?
  3. 相手の状況がわからなくて相談しにくい… 解決策は?
  4. 1人だとモチベーションが上がらない… 解決策は?(この記事)

本書は、コロナ前から全社リモートワークを実践し、リモートワークに関する知見を10年以上に渡って貯めてきたリモートワーク研究所のノウハウに、コロナを経てさまざまな会社のリモートワーク相談に著者が応えていくなかでブラッシュアップを重ね、まとめられたニューノーマル時代の働き方マニュアルです。オフィスワークのイメージがなく、参考になるモデルがない新社会人の方は、ぜひ本書を使って、新しい時代の働き方を、素早く身に付けみてはいかがでしょうか。

著者:八角 嘉紘(ほすみ よしひろ)

大手コンサルティング会社で事業推進に関するコンサルティングを経験。現在はリモートワーク研究所所長、「仮想オフィス」のプロダクト責任者を務めている。全社員リモートワークで事業運営を行いながらも成果を上げてきたノウハウを、広く世の中に提供する活動をしている。千葉県成田市にてリモートワーク中。

監修者:倉貫 義人(くらぬき よしひと)

リモートワーク研究所顧問。大手SIerにて経験を積んだのち、社内ベンチャーを立ち上げる。2011年にMBOを行い、株式会社ソニックガーデンを設立。月額定額&成果契約で顧問サービスを提供する「納品のない受託開発」を展開。全社員リモートワーク、オフィスの撤廃、管理のない会社経営など新しい取り組みも行っている。著書に『ザッソウ-結果を出すチームの習慣』(日本能率協会マネジメントセンター)、『管理ゼロで成果はあがる』(技術評論社)、『「納品」をなくせばうまくいく』(日本実業出版社)などがある。