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2022夏版、 NAS選びのポイントはココ! はじめても買い替えも要チェック!

多機能なQNAP NAS + 信頼性の高いSeagate IronWolfで実現する新基準NAS

 残りわずかになったスマートフォンの空き容量……、クラウドストレージからの容量オーバーの警告……、増え続けるサブスク課金……。写真・動画・文書など、増え続けるデータをいかに安全に保管するかにも頭を悩ませている人は少なくないことだろう。

 そこで注目が高まりつつあるのがNASだ。複数のユーザーで、複数のデバイスから、複数の目的で利用できる大容量のストレージを初期費用のみで導入することができる。

 ここでは、初めてNASを導入する人はもちろん、NASの買い替えを検討している人に向け、2022年夏時点でのNAS選びの基準、およびNASに欠かせないHDDの選び方を解説しよう。

QNAPの2.5Gbps対応NAS「TS-433」と、障害予防やデータ復旧が行える「Rescueデータ復旧サービス」に対応したSeagateのNAS向けHDD「IronWolf(4TB)」

Amazon.co.jpのSeagateの限定ページでは、QNAPの4ベイNAS「TS-433」や2ベイNAS「TS-233」と「IronWolf」シリーズをセットを、最大8000円オフのクーポン付きで販売している

大容量・初期費用のみが再評価されつつあるNAS

 NASやHDDなどの家庭向けストレージの進化が著しい。

 例えば、NASで言えば、最近は2.5Gbpsネットワークへの対応、写真の顔認識などのAI機能の採用、およびAI向けプロセッサの搭載などを搭載したQNAPの製品が存在感を高めている。

 一方、HDDで言えば、障害予防のための監視機能やデータ復元サービス対応したSeagateのNAS向けHDD「IronWolf」シリーズが高い注目を集めている。

 NASは、家庭内のネットワークに接続して共有フォルダーにデータを保存したり、データのバックアップ先として活用したりできるローカル設置型のストレージだ。

 ただし最近では、こうした機能や性能によって利便性が高まりつつあるし、HDDの進化により、スマートフォンなどで一般的なクラウドサービスとそん色ない信頼性と安心感が得られるようになったおかげで、クラウドストレージからNASへの移行もしやすくなり、より広い活用が可能になりつつある。

 例えば、スマートフォンのストレージの容量不足や、クラウドストレージの課金で悩んでいるユーザーは実際に少なくないと思われる。そうした場合も、NASを導入することで、数テラバイトクラスのデータの保存先を毎月の課金なしで手に入れることができるようになる。

 もちろん、NASのリモートアクセス機能によって外出先からも保存したデータにアクセス可能な上、スマートフォンにアプリを導入すれば、自動的に写真をNASにバックアップしたり、保管した写真をAIによって人物や被写体などで分類したりすることが可能となる。

 つまり、クラウドストレージサービスと同等以上の環境を、自前で持つことができるわけだ。

スマートフォンの写真をNASにバックアップして管理できる

 しかしながら、NASは、もともとビジネス向けから進化した製品ということもあり、家庭向けとしてはハードルが高く感じられることだろう。そこで、最新のNASを例に、初心者でも分かるように選び方を解説していこう。

基本3点+2.5Gbps、AIが今から抑えておくべきNAS選びの基準

 すでにNASを持っているなら、おそらく前半の基本3点は知っていることだろう。その場合は追加のチェック項目に注目して欲しい。

 NASは、通常の外付けHDDと異なり、複数のドライブを搭載して「大容量」かつ「故障に強く」、しかもネットワーク接続によってデータの「共有」が可能で、さらに、さまざまなアプリによって「多目的」に利用できる機器となる。

 国内外のメーカーによって、さまざまな機器が発売されており、実際に購入するとなると迷うところだが、選ぶ基準としては、まず次の3点が基本となる。

ベイの数やCPUだけでなく、ネットワークの速度やAI対応にも注目したい

1.ベイの数

 ベイの数によって、HDDを何台搭載できるかが決まり、これによって、どのレベルのRAID(複数台HDDを利用したデータ保護機能)を利用できるかを左右する。1~4ベイが一般的で、ベイの数が多いほど大容量かつ高速で、信頼性も高くなるが、価格も高くなる。


    ・1ベイ
    家庭用の低価格かつ簡易的なストレージ。データのバックアップには、クラウドサービスやUSB HDDなどが必要
    ・2ベイ
    1~2人で利用する家庭用では一般的なモデル。2台のHDDを搭載可能。2台のHDDに同じデータを書き込むことで、1台が故障してもデータを保護できるRAID 1に対応可能
    ・4ベイ
    3人以上の家庭や小規模なオフィスで利用するモデル。RAID 5/6/10などの多彩な方式に対応できる。例えば、データの復元に利用する誤り訂正符号をHDDに分散して書き込むことで、1台のHDDの故障にまで耐えられ、RAID 1より高速かつ容量効率が高いRAID 5の利用が可能

2.CPUとメモリ性能

 NASを稼働させるためのCPUは、大別してARM系とIntel系の2種類がある。家庭向けはARM系、ビジネス向けはIntel系CPUが採用されることが多い。ただし、家庭での利用シーンを想定した場合、実際のパフォーマンスには後述するネットワークの性能の方が大きく影響するので、家庭向けならCPUの違いに神経質になる必要はない。

 どちらかというとメモリの方が重要で、家庭用といえども、写真管理などに利用するなら最低でも2GB、できれば4GBは欲しいところだ。

3.アプリの追加

 NASをスマートフォンから利用したり、写真の分類に使うなど、PCからのファイル共有だけでなく、さまざまな用途での利用を考えている場合は、アプリの追加ができるかどうかが非常に重要だ。

 画面上でアプリを選ぶだけで、スマートフォンのように機能を拡張できるNASを選ぶことで、さまざまな用途に活用できる。海外製のNASの方が対応アプリは豊富だ。

 このような3つの基本条件に加えて、この1~2年で著しく進化してきたNASの状況を考えると、さらに次のような2つのトレンドも、製品選びの基準として考慮する必要がある。

4.[要注目]2.5Gbpsネットワーク対応

 NASにはネットワーク経由でアクセスするため、搭載されるLANポートの対応速度が非常に重要だ。

 従来は1Gbpsが主流だったが、近年、2.5Gbpsの有線LANや2402MbpsのWi-Fi 6に対応するPCが増えてきたため、NAS側のLANポートの速度も1Gbpsでは不足しつつある。家庭向けでも2.5Gbps対応のNASが登場しつつあるので、こうした製品を選ぶのがお勧めだ。

5.[要注目]AI対応

 AIは、画像認識などに身近に採用されているテクノロジーだ。NASでも、写真管理などへの活用が進んでおり、保存した写真を人物や動物などで自動的に分類する際に利用される。

 スマートフォンで撮影した写真を大量に保存することを考えると、こうしたAI機能に対応した写真管理機能を備えていることがNAS選びでは重要だ。

 さらに最近では、AI機能を支援するための専用チップ(NPU)を搭載するNASも登場しつつある。人物などの認識処理を大幅に高速化することで待ち時間を短縮できるため、AI対応アプリ+AI支援チップ搭載が、これからのNASに欠かせない条件と言えるだろう。

その他の対応

 このほか、最近のNASではSSDの活用も進んでいて、前述したHDD用ベイに加えて内部にM.2スロットを搭載する機種も増えている。ただし、ビジネスシーンでは効果的だが、アクセス頻度が限られる家庭用では必須とまでは言えない。価格も高くなるため、ニーズに応じて選ぶといいだろう。

HDD選びは信頼性が最重要

 続いて、NASに欠かせないHDD選びについても見ていこう。こちらも、ここ数年のHDDの進化を考慮した新しい基準で、製品を選ぶことが重要となる。

HDDはNASに対応していることが大前提。その上で、障害予防やデータ復旧サービスへの対応がポイントとなる

NAS向けモデルの選択

 HDDは、PCや家庭用のレコーダーなどでも利用できるため、さまざまなモデルが用意されている。それぞれの用途に適したチューニングがなされており、NAS向けに最適化されたHDDも発売されている。

 NASは基本的に24時間365日稼働させるものだし、複数HDDの同時稼働による共振の影響なども受けやすい。このため、信頼性や耐久性が高いNAS向けのHDDを購入する必要がある。

[要注目]健康状態をチェックできるHDDとNASの組み合わせ

 NASはRAIDでデータを保護できるとは言え、複数台のHDDが同時に故障するとデータが失われる可能性もある。このため、故障してからの対応が重要なのはもちろん、現代では常にHDDの状態を監視し、老朽化やトラブルの前兆をいち早く捉えて、故障する前に交換することが重要になっている。

 NAS用には、こうした監視機能・健康管理機能に対応したHDD自体を選ぶことが重要だが、NAS自体がその機能に対応していないと意味がない。詳しくは後述するが、NASから状態を監視することが可能なHDDを選ぶことが大切だ。

[要注目]データ復元サービスへの対応

 RAIDや監視機能を活用して気を付けてはいても、HDDが故障してしまうこともある。こうした場合に備え、データ復元サービスに対応したHDDを選ぶことが重要だ。

2022年夏の注目の最新NASとHDD

 ここまでの条件を考慮し、2022年夏の時点での注目の製品をピックアップしてみよう。

NASの注目モデル

 まずはNASだが、QNAPの最新モデル「TS-x33」シリーズに注目だ。2022年3月発売の2ベイモデル「TS-233」に加え、1ベイの「TS-133」と4ベイの「TS-433」が8月に発表されて1/2/4ベイのラインアップが揃っている。中でもお勧めが、4ベイの「TS-433」だ。

2.5Gbpsに対応するQNAPの4ベイNAS「TS-433」。AI向けのNPUも搭載する

 TS-433の特徴は、2.5Gbpsのネットワークに対応している点だ。前述したように、家庭内で高速な通信を実現するには、もはや2.5Gbps LANが不可欠だが、本製品は家庭向けの比較的リーズナブルなモデルながら、2.5Gbps×1と1Gbps×1の2つのLANポートを標準搭載している。

2.5Gbps対応のLANポートを搭載している
2.5Gbps接続時(左)と1Gbps接続時(右)の速度の違い。約2倍の速度でデータを転送できる
4つのベイに4台のHDDを搭載可能。RAID5なら1台故障してもデータを保護できる

 4ベイは過剰なように思えるかもしれないが、家族みんなで使うには大容量が必要となる上、HDDの安全性や速度を考えるとRAID 5が使えるメリットは大きい。

 家庭用NASながら、標準で4GBのメモリも搭載しており、大容量の処理にも余裕がある。CPUも最新のクアッドコア、2GHzのARM系CPUで処理能力に問題はない。

 もちろん、スマートフォンからも利用可能で、写真をバックアップしたり、外出先からでも簡単に自宅のデータにアクセスすることができる。

アプリを利用してスマートフォンの写真を簡単にNASにバックアップして管理できる
「QuMagie」の画面

 そして、注目したいのがNPU(ニューラルネットワーク処理装置)の搭載だ。これにより、AIを利用したアプリのパフォーマンスが大幅に向上している。例えば、「QuMagie」と呼ばれる写真管理アプリでのAIを利用した顔・物体認識機能は、従来モデル比で5~6倍と、大幅に高速化されている。

 NASに写真を大量に保存したものの、顔認識などの処理が長くかかり、写真の整理に時間を要したり、ファイル共有など、ほかの処理に影響が出てしまったりしては意味がない。その点、TS-433ならファイル共有やバックアップだけでなく、内部のAI処理も高速化され、ストレスなく利用できることになる。

顔認識パフォーマンスの比較
NPUありNPUなし
所要時間(分)58306

※画像ごとの誤差やバラツキなどを平均化するため、画像1万2774点の顔認識にかかった時間を計測した

 このほか、最新の「QTS 5」と呼ばれる独自のNAS用OSにより、デスクトップライクなGUI画面で初心者でも直感的にNASを扱えたり、「App Center」から豊富なアプリを追加することで、リモートアクセスを可能にしたり、ビジネスやエンターテインメントなどの機能を追加したりできる。

 OneDriveやGoogle Driveなどのクラウドストレージとも連携できるため、クラウドサービスからのデータ移行もスムーズだ。

豊富なアプリを追加可能。クラウドストレージとの連携や移行もスムーズ

HDDの注目モデル―IronWolf

 一方、2022年夏時点でのHDDのお勧めは、Seagateの「IronWolf」だ。同社のラインアップの中ではNAS向けとして位置付けられているモデルで、160を超える厳しい品質テストをクリアした製品となっている上(詳しくはこちらを参照)、データを保護するための数々の機能が搭載されている。

 IronWolfシリーズのメリットとして、まず挙げられるのが、「IHM(IronWolf Health Management)」と呼ばれるHDDの監視機能だ。HDDの監視機能としてはS.M.A.R.T.が有名だが、IHMは、さらに詳細な数百ものパラメーターをHDDから取得し、分析可能となっていて、HDDの健康状態を確実に見抜くことができる。

Seagateの「IronWolf」。写真は4TBモデル

 これにより、データ損失の危険をいち早く検知してユーザーに知らせ、実際にHDDの故障が発生する前に、交換などの対処をすることができるようになる。例えば、異常な温度、HDDの物理的な接続の不具合、NASへの衝撃、設置場所が不安定な場合の振動などが検知できる。

 さらに、IronWolfシリーズならではのメリットと言えるのが「Rescueデータ復旧サービス」だ。これにより、3年の間に無料で1回、データ復旧のサービスを受けることができる。万が一のトラブルでも、大切な写真や文書などが失われる可能性を低くできるわけだ。

 また、振動を検知するRVセンサーを搭載しており、複数HDDの搭載で共振などが比較的発生しやすいNASでも安定した動作を実現。写真データなどのランダムリード、ライトでの安定したパフォーマンスも実現できる。

 なお、IHMの機能は、HDDの分析情報をNAS側がきちんと受けられないと意味がない。QNAPではSeagateと協力し、筐体設計を行っていて、今回レビューしているTS-433もIronWolfのIHMやRescueデータ復旧サービスに対応しているので、これらの機能をNASの管理画面から簡単に利用できる。

IHMにより、NASの管理画面から障害予測やデータ復旧サービスの申し込みが可能

 ローカルのNASでも、クラウドサービス並みの信頼性を手軽に手に入れられるというわけだ。

初期導入費用をシミュレーションしてみよう

 では、実際に、ここで紹介したTS-433とIronWolfの組み合わせを導入する場合に、どれくらいの費用がかかるのかを検討してみよう。

 Amazon.co.jpの販売サイトでは、購入画面でHDDの組み合わせを選択することができるため、何TBのHDDを選んだ場合に、購入費用がいくらになるのかを簡単に見ることができる。

 組み合わせによっては高額になるケースもあるが、冒頭でも触れたように、近年はサブスクへの課金の負担が高くなっているため、家族それぞれが個別に契約しているクラウドストレージの契約を見直すことで、トータルの費用負担を抑えることもできる。

 例えば、テラバイトクラスのクラウドストレージサービスの月額費用が仮に1000円だとして、この費用を3年分、家族4人が節約できるとなれば、単純に14万4000円が浮くことになる。

 もちろん、完全に解約できない場合もあるので一概には言えないが、こうした家族の人数分で必要だったサブスクの費用負担を数年間減らせるとなれば、NASへの投資は高くないと言える。

 このように、NASやHDDの進化によって、ローカルのストレージ環境は、クラウド並みの使いやすさと信頼性を獲得しつつある。この機会に導入を検討してみる価値はあるだろう。