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法人向けネットワーク機器は「ひとケタ」高いに一石投じる、TP-Linkの法人向けソリューション「Omada」を試す
「必要な性能を適正な価格で」、ホテルで人気の隠れたヒット作とは
- 提供:
- ティーピーリンクジャパン株式会社
2023年12月25日 06:00
値ごろ感で知られるTP-Linkだが、そんな同社の法人向けネットワークソリューションが「Omada」だ。
VPNルーターやスイッチ、アクセスポイントといったネットワーク機器だけでなく、継続的な利用料なしで使えるコントローラーが用意されており、どこからでもブラウザやアプリでネットワーク機器を一元管理できるようになっている。つまり、「値段が高い」「複雑」といった理由で、法人向け製品を避けていた企業のニーズにマッチしたソリューションといえる。そして実際、ホテルのWi-Fi向けなど、かなり大規模に利用されている例も多いという。
そうした同社の法人向け製品の目的や概要の話を聞きつつ、実際にどれくらい簡単なのかを試してみた。
「必要なものを適正な価格で」
「法人向けのネットワーク機器の導入を検討されたことがある方の中には、見積もりの金額が、文字通り、『ひとケタ違う』と驚いて、導入を断念された方も少なくないのではないでしょうか?」
そう語り始めたのは、ティーピーリンクジャパン株式会社 ディストリビューションマネージャー 木下裕介氏(以下、木下氏)だ。
法人向け製品の営業を統括する立場の同氏が、現場から耳にするのは、こうした既存の法人向けネットワーク製品やサービスと、顧客ニーズとのミスマッチだ。
ネットワークに求められる性能や機能は、環境によって異なる。しかしながら、現状の法人向けネットワーク市場は、「SASE」「SD-WAN」「マルチクラウド」などのコンセプトばかりが先行し、その実態が見えにくく、特に中小の環境では、本当に必要な製品やサービスをユーザーが適切に選択することが難しい。
場合によっては、自社の環境やニーズに対して、明らかに過剰なスペックや価格の機器やサービスに対してコストをかけ続けている企業もある。
木下氏は、こうした状況を変え、「必要なものを適正な価格で提供したい」と訴える。
「顧客が本当に求めているのは、どのような製品なのか?」「その製品やサービスに対してどれくらい支払うのが妥当と考えているのか?」。こうした現場の生の声や状況は、なかなかメーカーへと届きにくい。
特に海外メーカーでは、日本市場ならではの状況が伝わりにくいが、ティーピーリンクジャパンでは、こうした状況を自らの足で集め、それを改善する具体的な製品やサービスを本社から引き出すことに注力している。
宿泊先のホテルで使ってたかも? 法人向けで日本市場を開拓したヒット作
こうした地道な取り組みが結実したのが、同社が取り扱っている壁面取り付け型のアクセスポイント(EAP615-Wallなど)だ。
木下氏によれば「もともと海外のジャンクションボックス向けに設計された製品ですが、日本のコンセントにも形状が合っているうえ、PoE+給電で本製品を動作させた場合に、ダウンリンクPoEポートから他の機器に対して給電することができます」とのこと。
それゆえ「例えば、アクセスポイントとして動作させつつ、IP電話や映像配信用のセットトップボックスなどにも給電できるので、ホテルなどに必要な設備をまとめて構成することができます」と人気の理由を続ける。
これにより、このコンセントサイズの壁掛け型アクセスポイントは、国内の複数のホテルに大規模に導入されている。残念ながら机の裏などに隠されて設置されてしまっているそうなので、隠れたヒット作ということになるが、著名なホテルも含まれるので、おそらく、読者の方も使ったことがある可能性が高い。
「我々は、もともとコンシューマー向け製品でスタートした企業ですが、日本市場における『法人向け』として認知してもらえるようになったのは、この製品が日本の市場、そして実際の企業の現場のニーズにマッチしたからと言えるでしょう」と木下氏は語る。
木下氏が法人市場を担当した当初は、アクセスポイントがいくつかしかなかったという法人向けモデルのラインアップも、現在はVPNルーター、スイッチ、アクセスポイントと、そのジャンルもモデルも大幅に増加し、むしろ性能や機能の違う豊富なラインアップから製品を選べる状況になっている。
その結果、「日本市場での状況を本社に伝えて、日本市場に合った製品として『EAP615-WE』も開発しました。JIS規格のマルチメディアコンセントに準拠したコンセント埋め込み型のモデルです」と木下氏は新製品を紹介してくれた。
木下氏によると、「ティーピーリンクはグローバルなメーカーなので、特定の国に特化した製品を作るには障壁がいくつもありますが、日本の法人向けネットワークの状況や実際にユーザーが求めている製品を伝えることで、ようやく実現できました」という。
このほか、屋外用の5ポートスイッチ「SG2005P-PD」なども、現場のニーズに応えた製品のひとつだ。
屋外設置可能なPoEスマートスイッチで、PoE++の入力を、4ポートのPoE+に給電することができる。木下氏によると、「このスイッチを駐車場や工場など、屋外に設置すれば、そこからカメラ、IoT機器など、複数のPoE+機器を設置することができます」という。
単に法人向けと名付けた製品をリリースするのではなく、市場や現場が求めている製品を具現化している点は、採算性を第一に考える他の法人向けメーカーにはない特徴と言える。
世間ではティーピーリンクが海外メーカーであること対して心配する声も聞かれるが、実際に市場で評価されている製品は、日本法人が日本のユーザーの声を実際に受け取って開発した日本向けの製品となっている。
ここでは書けない本音や苦労話もいろいろあったが、ティーピーリンク“ジャパン”として国内市場と向き合っていることは明らかだ。
地域のSIerからの支持も高まりつつある
もちろん、同社の法人向けの取り組みは、まだ始まったばかりとなる。しかしながら、同社の法人向け製品に注目する企業は多い。
木下氏によると、「現状は代理店とSIer経由での販売がメインで、今後もこの2軸を強化してしていきたいと考えています。まだ、今は日本語化などをはじめたばかりですが、期待の声は多くいただいています」という。
その背景にあるのは、やはり価格的なメリットだ。
コンシューマー向け製品で、すでに同社製品のコストパフォーマンスの高さは広く認知されているが、法人向け製品でもコスパの高さは健在だ。
「弊社の法人向け製品『Omada』シリーズは、基本的に買い切りでの提供になっています。ですので、機器の利用に毎年ライセンス費用がかかるようなことはありません」と木下氏は言う。
冒頭で、法人向け機器の見積もりが「ひとケタ違う」という話をしたが、その理由がまさにこれにある。
そもそも、現状発売されている法人向け製品は、Wi-Fi 6対応のアクセスポイントが2万7000円前後、10Gbps対応のスイッチで16万円前後、10Gbps対応VPNルーターで6万円ほどなので、スペックを考えるとかなりコスパが高い。
また、コントローラーに関してはハードウェアだけでなく、ソフトウェアも提供しており、同社のサイトから誰でもダウンロードして無料で利用することができる。動作させるサーバーのスペック次第ではあるが、最大1500台のアクセスポイントを管理できるため、大規模な環境でも対応可能だ。
小規模な環境ならハードウェアコントローラーの「OC200」が手軽だが、大規模な環境なら無料のソフトウェアを利用するといいだろう。規模が大きくなるほど、安く済むというのも、なかなか面白い逆転現象だ。
ホテルやマンション、工場など、こうした現場へのネットワーク機器導入を支援する地域のITサービス事業者にとって、顧客に安く製品を提供できるだけでなく、自社の利益も確保しやすい構造になっている。ユーザー、ITサービス事業者、メーカーの「三方よし」の関係がうまく回っている印象だ。
▼Omada ソフトウェアコントローラー
TP-Link Omada Software Controller
監視カメラのVIGIもラインアップ
このほか、同社の法人向け製品としては、セキュリティソリューション(監視カメラ)の「VIGI」という製品もラインアップする。
Webカメラもコンシューマー向けと法人向けで、それこそ「ケタ」が違う価格設定となることも珍しくないが、VIGIシリーズは、ネットワークビデオレコーダーと4台のバレット型カメラのセットで10万円以下とリーズナブルな価格設定になっている。
カメラには、パンチルト機能や自動追尾機能などを備えた製品もラインアップするが、木下氏によると、「現場の声を聴いていると、監視カメラは一度設置してしまえば、画角を固定で利用するケースが多く、製品としては単焦点で十分というケースが多くあります。もちろん、高品質なカメラが要求されるケースもありますが、弊社では、実際の現場で必要な機能をリーズナブルに提供することも目指しています」という。
スペック的にもONVIF準拠で、映像を汎用的なNASなどに保存できるなど、自社も含め特定の環境に依存しないようになっている。
価格的にも、仕様的にも、ユーザーに「無理強い」をしないという姿勢は高く評価できる点と言えるだろう。
アプリで簡単設定。外出先でも状況確認可能
また、手軽さやわかりやすさも、同社製品が支持される理由の1つと言える。
実際、コントローラー「OC200」、10G VPNルーター「ER8411」、10G 4ポートPoE++スイッチ「TL-SX3206HPP」、Wi-Fi 6対応アクセスポイント「EAP650」を試してみたが、はじめてでも簡単にセットアップできた。
コンシューマー向け製品と違って、法人向け製品は、メーカーによって「クセ」のようなものがあり、セットアップの方法や利用するツールなどが異なる。このため、はじめて使う場合は、それなりにドキュメントを読みこんで、準備しておく必要があるのだが、本製品は、そうした準備すら必要ない。
上記の構成であれば、VPNルーターに回線とスイッチを接続し、スイッチからPoEでアクセスポイントとコントローラーを物理的に接続。
この状態で、アクセスポイントが初期設定用のSSIDを表示するので、スマートフォンを接続して「Omada」アプリから初期設定を実行。コントローラー背面のQRコードをスマホのカメラで読み取って設定することができる。
利用する地域や管理するサイト単位などを構成後、自動的に検出されたルーターやスイッチ、アクセスポイントなどの機器を登録し、SSIDなどのWi-Fiの設定をするだけでいい。
もちろん、VLANなどの細かな設定などもできるが、最低限の設定であれば、コンシューマー向けネットワーク機器を設定した経験があれば、迷わず設定できる。
また、外出先からの監視や管理も可能で、ネットワーク上に何かトラブルがあればアプリ上表示されるアラートで確認できるし、ファームウェアのアップデートなども手元からリモートで実施できる。
ホテルのように各部屋、各フロアに多数のアクセスポイントがある環境、飲食店チェーンのように全国に点在する店舗の機器を管理しなければならない環境でも、手元から管理が可能だ。
これがライセンス料なしで使えるのだから優秀だ。確かにホテルなどで重宝される理由がわかる。
法人向けでも市場を席捲する可能性が高い
以上、ティーピーリンクジャパンの法人向け製品の取り組みや製品を紹介した。
実のところ世界でのTP-Linkの法人向けネットワークソリューションの評価としては、ガートナーのEnterprise Wired and Wireless LAN Infrastructureのマジック・クアドランドにおいて、4年連続で特定市場指向型プレイヤーの1社と評価。また、SMB WLAN AP部門では世界シェアNo.1(出荷台数)を記録するなど実績を残している。(※)
その上で、話を聞いて驚くのは、ティーピーリンクジャパンの独自性だ。法人向け市場に対して何ができるのか模索し、それを製品としてきちんと市場に投入している。「法人向け」という大きなくくりでニーズを捉えることなく、「ホテルのWi-Fi向け」「屋外の監視カメラ向け」のような具体的なニーズで製品づくりをしていると言えるだろう。
だからこそ実際のユーザーや地域のITサービス事業者からの支持が集まりつつあると言えそうだ。
もちろん、価格的に圧倒的な魅力があるのはもちろんだが、それだけではない地道な努力が見えてくる。もう数年、いや、来年あたりから、法人向け市場も席巻し始めるかもしれない。その動向に要注目だ。
※ 引用元:Gartner, “Market Share: Enterprise Network Equipment by Market Segment, Worldwide, 2Q23”, Christian Canales et al., 25 September 2023. SMB WLAN AP部門=Small-Business WLAN APs – Hardware + Small-Business WLAN APs – Software Licenses, Sum of Units Shipments basis.
Gartner, “Magic Quadrant for Enterprise Wired and Wireless LAN Infrastructure (known as Magic Quadrant for Wired and Wireless LAN Access Infrastructure during 2019-2020)”, Mike Toussaint, Christian Canales, et al., 21 December 2022.
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