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管理者不在のオフィスや店舗に最適! 現地訪問なしにPoEカメラの再起動や自動復帰ができるTP-Link 「Omada Central Essentials」を試す

TP-LinkのOmada対応製品なら、クラウドから無料で管理できる

 TP-Linkの「Omada Central Essentials」は、同社のOmada対応ネットワーク製品と監視システムソリューションであるVIGIを一元管理できる“無償”のクラウドプラットフォームだ。

 同社では、元々「Omada Cloud」というOmada対応製品を一元管理できるクラウドプラットフォームを用意していたが、Omada Central Essentialsでは、ネットワークカメラの「VIGI」シリーズも管理可能となり、通信機器だけでなく、監視ソリューションでの活用の幅も広がった。スイッチ+カメラという最低限の構成を現場に設置するだけで、機器の設定や状態確認、再起動、ファームウェアアップデートなど、さまざまな管理ができる。小規模な環境を想定した実際の管理機能を試してみた。

「現場の困りごと」を解消するOmada Central Essentials

 これなら、中小規模のオフィスはもちろんのこと、ホテル、店舗、工場、倉庫、建設現場、介護施設、教育現場など、あらゆる場所のネットワーク管理が楽になる。

 TP-LinkのOmada Central Essentialsは、規模が小さくても、現地に管理者不在でも、予算に余裕がなくても、ネットワークの管理が可能となる、無料のクラウドネットワーク管理プラットフォームだ。

TP-Linkの無料のクラウドネットワーク管理プラットフォーム「Omada Central Essentials」

 昨今の法人向けネットワーク機器は、無料の管理ソリューションが提供されることが、ひとつのトレンドになっているが、Omada Central Essentialsは、こうしたソリューションの中でも、以下のように比較的自由度が高く、豊富な機能を提供しているのが特徴となる。

  • 追加費用なし
  • オンプレミスコントローラー、VM不要
  • 多拠点の管理規模を無制限に拡張可能
  • ルーター・スイッチ・AP・カメラ・NVR・ソーラー給電システムをカバー
  • 無償で使える監視向けネットワーク機能(多拠点対応)

 限られた機器の限られた機能のみが無料で提供されるソリューションと異なり、TP-LinkのOmada対応製品であれば全て無料で管理可能。拠点がいくつあっても、将来的に増えても、無料のまま対応できる。アクセスコントロール/VPN(無償版ではWireGuardのみ、有償版でそのほかのVPNにも対応可能)など高度な機能を利用したい顧客には機能の制限があるものの、ハードウェアコントローラーや、Standardへのアップグレード(ライセンス費有)によって対応することができる。

 このソリューションが具体的にどのようなケースで役立つかというと、例えば以下のようなケースが考えられる。

機器の導入、設置がかんたん

 現地では箱から機器を取り出してネットワーク(DHCPサーバがありインターネット接続可能なもの)につなぐだけでOK。対応するアクセスポイントなどは、ネットワークに接続するだけで自動的に管理対象として登録可能。また、パッケージや本体に記載されているDevice IDやシリアル番号をスマートフォンのカメラで撮影するだけで機器を登録することもできる。

ネットワークの状態が見える

 管理者不在で混沌となったネットワークを再整理可能。ネットワークに接続された機器を可視化し、インベントリや全体の設計に役立てることが可能。ダッシュボードから全体の状況を把握したり、トラフィック上位のスイッチやアクセスポイントを把握したりできる。また、トポロジーによってネットワークの接続状況を図として表示したり、接続されているクライアントをリストアップしたりできる。

機器のメンテナンスが楽になる

 脆弱な機器が取り残されてしまうことを防止。管理下の機器のファームウェアバージョンを把握し、アップデートがあれば適用したり、複数機器を段階的にアップデートしたりできる。また、個々の機器の詳細な状態、例えばスイッチのポートの接続状況やPoEの消費電力なども把握可能となっている。

トラブル時の初期対応が楽

 トラブルの初期対応なら現地への出張は不要。遠隔地の機器の再起動を管理画面から簡単にできる。また、スイッチのポートを指定してケーブルテストを実施したり、PoEポートの電力をオン/オフすることで接続機器(サードパーティー製カメラなどでもOK)を遠隔操作で再起動したりできる。さらに、後述する「IntelliRecover」を利用することで、カメラの状態を定期的に監視し、応答してない場合に自動的に再起動することもできる。

ニーズに合わせたネットワーク設定が可能

 設置場所ごとにネットワーク機器の設定がバラバラになってしまうことを回避可能。組織全体で共通のネットワーク設定(Wi-Fi接続設定、VPN設定、アクセス制御など)を簡単に機器に適用できる。組織や場所ごとのWi-Fiプロファイルを用意して使い分けることも可能。もちろん、個別の設定も可能で、遠隔地に設置したスイッチでも、VLANやQoSなどの設定が簡単に可能。監視カメラ用のネットワークを分離したり、監視カメラの通信を優先処理して安定的に映像を伝送したりできる。

監視ソリューションも無料

 店舗や倉庫の監視もおまかせ。Omada Central Essentialsでは、監視カメラソリューションとして「Omada Guard」も利用可能。同社のVIGIシリーズに対応し、多拠点対応のカメラライブビュー、イベント検知による監視などができる。

 このように、Omada Central Essentialsを利用することで、現場の困りごとの多くを解決できる可能性があるわけだ。

対応スイッチ1台とカメラで始めてみよう

 それでは、実施にOmada Central Essentialsをどう使えばいいのかを具体的な手順で見てみよう。

 まずは、今回の構成を確認する。Omada Central Essentialsは、小規模な環境でも使いやすいソリューションとなっているため、極端な話、スイッチ1台あれば始められるが、今回は、これに加えて監視カメラも用意した。想定としては「店舗や倉庫などの小規模な環境のネットワーク管理と監視を始めたい」というケースになるだろう。

ES205GP

 Omadaで利用可能なPoE+対応イージーマネージスイッチ。1Gbps×5ポートの小型の製品で、4ポートが各30W、合計65W給電に対応している。金属筐体を採用し、ファンレスで動作する。

PoE+対応のイージーマネージスイッチ「ES205GP」

InSight S485PI

 4K(8MP)対応のパノラマタレット型ネットワークカメラ。180度のパノラマビューで広範囲をカバーするカメラ。人物や車両などの分類、分析にも対応する。IP67防水・防塵で、SmartVidという映像補正技術に対応しており、明暗差や夜間の露出オーバーなどの補正が可能。

パノラマタレット型ネットワークカメラ「InSight S485PI」

STEP0:Omada Central Essentialsの準備

 Omadaの管理画面には、以下のリンクからアクセスできる。利用にはTP-Link IDの登録が必要だが、メールアドレスから無料で、簡単に登録できる。

 ログイン後、画面の指示に従って、オーガニゼーションとサイトを作成しておく。オーガニゼーションは会社名などで作成し、サイトはネットワーク機器を設置する拠点ごとに作成するのが一般的だろう。

 また、機器の登録やリモート管理用に スマートフォン向けのOmadaアプリもインストールしておく。

▼Omada Central Essentials
https://omada.tplinkcloud.com

Omadaの管理画面。オーガニゼーションとサイトを作成しておく
機器の登録に便利なのでスマートフォンアプリもインストールしておく

STEP1:機器の登録

 さて、いよいよ機器の登録となる。登録は自動登録とスマートフォンのカメラを使った方法があるが、今回はスマートフォンのカメラを使った登録方法を紹介する。

 まずは、既存のネットワーク(インターネット接続が必要)にスイッチの「ES205GP」を接続し、本体底面、もしくはパッケージに記載されているコード(未初期化時はDevice ID、初期化後はシリアル番号)をスマートフォンのOmadaアプリで読み込む。

 スイッチが認識されたら、このPoEポート(5番以外)にカメラのInSight S485PIを接続する。接続できたら、Omadaの管理画面からカメラソリューションの「Omada Guard」を開き、こちらにカメラを登録する。

本体底面のDevice IDやパッケージのシリアル番号から登録できる
カメラはOmada Guardで登録。登録後、Omada Network上に自動的に表示される

STEP2:機器の状態を確認する

 無事に登録できたら機器の状態を確認してみよう。「ダッシュボード」を開くと、接続されている機器の一覧が表示される。今回はスイッチのみとなるが、アクセスポイントなどがあればそれも表示される。

 「トポロジー」をクリックすると、機器の接続をグラフィカルに表示可能で、ここから機器の管理もできる。今回はシンプルな構成だが、スイッチが複数台ある場合や、アクセスポイントが存在する場合など、ネットワーク全体の構成を見やすく表示できるのがメリットだ。

ダッシュボードで登録された機器を管理可能
トポロジーで接続も確認できる

STEP3:カメラの接続を確認する

 続いてカメラの接続状況を見てみよう。「デバイス」画面でスイッチをクリックするとサイドバーにスイッチの情報が表示される。ここからも管理が可能だが、今回は「デバイス管理」をクリックして、より詳細な画面を表示する。

 「ポート」タブに切り替えると、スイッチの各ポートに何がつながっているのかを確認できる。今回のケースでは、ポート3がオレンジに点灯し、かつ稲妻のマークが表示されていることが分かる。これは、100Mbpsでリンクし、PoEによる給電が行われていることを示している。

カメラが接続されているポートを確認

STEP4:カメラの映像をチェック

 カメラの映像は、上部のタブを「Omada Guard」に切り替えることで確認できる。カメラの設置場所を登録して地図上で管理したり、複数のカメラの映像をリアルタイムに確認したり、モーション検知などの結果を確認したりできる。スマートフォン向けのOmada Guardアプリを使って映像を見ることもできるので、万が一の場合でも手元で映像の確認が可能だ。

映像をリアルタイムで確認
モーション検出などの結果も確認できる

STEP5:カメラを再起動する

 ここで、仮にカメラの映像が見えなくなるというトラブルが発生したと考えてみよう。管理者不在の店舗やそもそも無人の倉庫の場合、従来はトラブルを解決するために現地に行く必要があったが、Omada Central Essentialsなら、管理画面からリモートで初期対応ができる。

 以下の例では、3番ポートの右側に表示されている電源アイコンをクリックすれば、PoEポートへの給電をいったん停止し、一定時間後にもう一度回復させることができる。カメラは、PoEポートから給電されているため、強制的に電源のオフ→オンが実施された状況となるわけだ。

 仮に店舗や倉庫に人がいたとしても、電話で「そこの隅に四角い機器があるでしょ?」「4番目のポートにケーブルつながってる?」「そう、それを抜いてみて」なんて、やり取りをしなくて済むわけだ。

 なお、今回のES205GPではファームウェアのアップデート(1.0.2)が必要となるが、「ネットワークツール」から「ケーブルテスト」を実施して、ケーブルの不調がないかも確認できる。カメラ本体だけでなく、LANケーブルの正常性もチェック可能だ。

PoEスイッチのポートを制御して電源をオフ→オンできる
LANケーブルのテストも実施できる

STEP6:自動的に再起動するように設定する

 このように簡単にカメラを再起動できるとは言っても、管理者が気づかないうちに停止しているケースもある。その対策として、Omada Central Essentialsでは、「IntelliRecover」という機能も利用できる。

 「IntelliRecover」でオートリカバリを有効化後、「クライアント(今回のケースの場合。機器によってデバイスから登録)」から監視対象としたいカメラを選択する。これで、カメラが応答を停止した場合に、自動的に電源を入れなおすことができる。

IntelliRecoverで監視対象として設定することで、通信が途切れるなどの異常を検知し、自動的にPoEポートのオフ→オンを実行できる

「現地に行かずに済む」でみんな幸せ

 以上、TP-Linkの法人向けネットワーク機器管理プラットフォーム「Omada Central Essentials」を実際に使ってみたが、無料でありながら、かなり高機能な印象だ。

 大規模向けのクライド管理プラットフォームほどではないが、デバイスの設定や状態確認、メンテナンスが可能で、簡易クラウド管理とは一線を画す、本格的な管理ができる印象だ。

 それでいて、スイッチ1台からスモールスタートできる、という手軽さが魅力で、現状、すでにネットワークが存在する環境であれば、Omada対応スイッチ1台買うだけで、すぐに利用を開始できる。

 無料とはいえ、アクセスポイントも、ルーターもと、対応機器をあれこれ揃えなければならないとなると、導入のハードルが高く感じられるが、本製品は、TP-Link以外のカメラが混在する環境でも、柔軟な管理が可能となっている。

 今回、例に挙げたケースのように、カメラだけでもリモート管理したい、というケースであれば、わずかな投資でリモート管理が可能になるのは、予算が限られる中小企業にはありがたいところだ。

 カメラを再起動するだけで数時間がつぶれ、他の業務に影響が出ることを考えると、数万円の初期投資のみで、「現地に行かずに済む」環境が構築できるだけでも、導入を検討するメリットがあるだろう。すでにホテルなどでの導入実績もあるが、店舗、倉庫、工場、イベント会場など、さまざまなシーンで活躍できるソリューションだ。