【イベントレポート】
インターネットと自動車に関するワークショップ開催今こそビジネスの立場から
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村井純氏(左)の言う“実空間インターネット”のイメージ。自動車のほか、無線タグもこういった実情報空間を構築する上で有効な手段になるとしている | 道路交通情報、安全運転支援など、これまでサービスの種類ごとに別々に用意されていた車載システム/センターシステムを統合し、必要に応じてセンター側から収集するデータの種類を指定できるようにした「統合型車載システム」。来年度に実証実験を行なう予定だ |
ワークショップではさらに、参加団体らのこれまでの研究成果が紹介された。まず、サイバーソリューションズ代表のキニ・グレン氏が、車両の取得した情報をやりとりするためのプロトコルについて説明。自動車と通信するにあたって解決しなければならないこととして、膨大な車両数の問題、セキュリティやプライバシーの問題があったが、これらはそれぞれIPv6とSNMPv3を使うことで解決可能。残るパケット量の問題についても、オーバーヘッドを圧縮するためのプロトコルをすでにIETFにドラフトとして提出しているという。
慶應義塾大学政策・メディア研究科の植原啓介氏は、携帯電話や無線LAN、DSRC(Dedicated Short Range Communications:狭域無線通信)など複数の通信インフラを、車両位置に応じてシームレスに切り替えるための「Mobile IPv6」の開発状況について説明した。パソコンで使うフルスペックのMobile IPv6はFreeBSDへ実装しており、近日中に公開予定だ。また、組み込み用の軽量なMobile IPv6スタックについても、用途別に機能を絞ったものをいくつか開発し、検証を行なっている模様だ。
このように、移動体通信インフラのコストの問題は残されているものの、インターネットと自動車を連携させるための基盤技術やミドルウェアはすでに技術として確立されている。残るは、これを魅力的なサービスとして普及させるための「身近なアプリケーション」ということになり、「今こそビジネスの立場から考えるべき」(村井氏)時期に来ている。
そういった意味では、JSK企画調査部部長の蓮沼茂氏がコンセプトを紹介した「VHP(Vehicle Home Page)」もそのひとつと言える。これはいわば、車載のWebプラットフォーム上に個々の車両がポータルサイトを開設して、そこでその車両が持つ各種情報を提供しようというものである。例えば、自分の10km先を走っている他の車両のポータルサイトからデータを取得することで、これから通過するであろう位置の渋滞状況が把握できるわけだ。
さらには、こういった車両内の各種センサーからの機械的な情報だけでなく、このポータルサイトでドライバーからも情報も発信することで、駐車場の空き状況や周辺情報なども共有できるコミュニティが構築できる。現在、KDDIや松下電器産業など9社/団体が研究会メンバーとして参加しているが、まずは会員制によるサービスの実現に向けて参加企業を募っているという。
車載ディスプレイに表示されることを想定したVHPのポータルサイトのイメージ | VHPは“移動コンビニ”などのサービスにも活用できる。自分の車両の近くにいる移動コンビニの在庫を確認して注文、配達を依頼するというイメージ |
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(2003/3/12)
[Reported by nagasawa@impress.co.jp]