【連載】 第38回 A9が「検索ヒストリー機能」をひっさげてやってきた ●A9.comの誇る検索ヒストリー機能の凄さとは ご存じだと思うけれど、A9.comはAmazonの子会社である。最近になって、AmazonはA9の検索エンジンをいよいよ使い始めた。Amazonのこの新しい検索機能がどんなものなのかを、ちょっと見てみよう。 検索エンジンのインデックスについては独自のものを開発するのではなく、GoogleのWeb検索やイメージ検索、キーワード広告のAdWordsのインデックスを利用している。ただそれだけではなくて、そこにまったく新しいインターフェイスをかぶせ、さらにパーソナライズ機能を新規に加えているのがA9の大きな特徴だ。またインデックスはGoogleのものだけでなく、Amazonが持っているInternet Movie Databaseの映画情報やGurunet、Amazonの本業である書籍の本文サーチなども加えられている。 AdWordsについてはAmazonはいつまでも使い続ける気はなくて、独自のPPC(Pay Per Click)システムを開発しようとしているという噂も出ている。そちらの方が当然、Amazonとしては儲かるということなのだろう。だがWebマスターたちにとっては、またもや新しいPPCのアカウントを取得しなければいけないのが面倒だし、Amazon用にキーワード入札を管理するツールを新たに手に入れなければいけなくなりそうだ。 A9に関しては、個人情報の問題も指摘されている。A9の最大の特徴は、ユーザーの検索の履歴(ヒストリー)を収集し、パーソナライズして見せるところにある。A9を使おうとすると、Amazon.comに登録している個人情報を使ってログインすることを勧められる。A9に自分の情報が登録されてしまうわけ。そしてA9を使っていると、Amazonがユーザーの過去の購買履歴を見て「あなたにはこんな本もお薦めです」っていう表示を出すような感じで、ユーザーの検索ヒストリーを参考にお勧めの検索やWebサイトを表示してくれるという仕組みになっている。もしあなたがA9とAmazonの両方のアカウントを持っていてそれぞれのCookieを受け入れると、双方のCookieの関連づけも行なわれるようだ。 そうなると、何が起きるか。それはつまり、あなたが検索エンジンをどう使ったのかという行動と、Amazonでモノを買ったときのクレジットカード情報が結びつけられるということになる。 さらに言えば、あなたの検索ヒストリーはインターネット経由でA9のサーバに送信され、蓄積される。A9のCEOであるウーディー・マンバー(Udi Manber)がeWEEK.comのインタビューに応じた記事を読んでも、A9のデータベースをどのようにしてAmazonの顧客情報と連結させようとしているのかどうかについては明確に答えていない。ただ、A9を使う際、ヒストリー機能を無効にすることは可能なようだ。 アメリカのプライバシー保護運動は、人々が検索エンジンを使った履歴や、どのようなサイトを訪れたのかといった個人情報が、利用者側がコントロールできない形で利用されるようになることを憂慮している。そしてA9やAmazonがこうした個人情報を、アメリカの司法当局や政府機関の求めに応じて任意提出してしまうのではないかということも、心配している。そうしたプライバシーの扱いはブッシュ政権になってどんどんひどくなっているし、すでにアメリカの航空会社は個人情報を政府に渡すようなことを実際に行なっている。 話を戻そう。A9は、検索エンジンの基本的な機能を2つに分けている。ひとつは「RECOVERY」といって、以前にユーザーが一度訪れたことがあるサイト(そしてもちろん、もう一度訪れたいと考えている)の検索。そしてもうひとつは「DISCOVERY」で、訪れたいと思っているけれど、まだ過去には一度も閲覧していないサイトの検索だ。 A9の基本機能を箇条書きにしてみようか。
他の多くの新技術と同じように、A9も社会的な問題を数多くはらんでいる。人々のためになる、あるいは自分のためになると思って作り出したテクノロジが、別のものを犠牲にしてしまう。そうしたケースは少なくない。 ■URLA9.com http://a9.com/ Internet Movie Database http://www.imdb.com/ GuruNet http://www.gurunet.com/ eWEEK.com(A9.comに関する記事) http://www.eweek.com/article2/0,1759,1646765,00.asp ●Businnes.comの大災難 301ではなく302を使っているサイトをGoogleが禁止しているという記事を目にした。つまりHTTPリダイレクトの話である。ご存じだと思うが、HTTPリダイレクトはURLが変更されたことを通知するため、閲覧しようとするユーザーに応答する機能のことだ。 そして、HTTPリダイレクトに用いられるステータスコード301と302には、次のような違いがある。
301:完全にWebページが転居して消滅している Business.comは恒久的に削除されたファイルに302を使っていて、Googleはそれが誤ったリダイレクトだとしてBusiness.comにペナルティを課した。最悪なことに、Business.comはページランクがゼロにされてしまい、おまけにGoogleの検索インデックスから削除されてしまったのである。 でも5分前にBusiness.comのサイトをチェックしてみたら、Business.comはGoogleのインデックスに復活していた。ページランクも8に戻っている。まあ良かったのだろうけれど、こういう事態はBusiness.comの会社の人たちにとってはたいへんな事件だっただろうな。 ■URLBusiness.com http://www.business.com/ (2004/09/28) [Reported by ジェフ・ルート&佐々木俊尚]
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