【連載】 【編集部から】 ●Microsoftの新しい検索エンジンをめぐる噂
という2つの機能を実現しようとしているのだ。そして彼らは新検索エンジンの開発にあたり、他社を買収して技術を得るのではなく、自社開発の道を選んだ。でもこれには、Googleを買収しようというMicrosoftの非公式のオファーが、Google側から拒否されたためという説もあるらしい。 現状では、若い技術者が実験的に検索エンジンのロボット「MSNBot」を作っているという。この現行バージョンはかなり挙動不審で、クロールされたサイトのログを見ていると、同じデータを何度も何度も要求してきたりする。まだ研究開発の段階で、製品化には至っていないということだろうね。 ちなみに僕はこうした情報を今回、Microsoftの人間から直接聞いた。NDA(守秘契約)にサインしろとは言われなかったので、大丈夫だろう。話していたのは、MSN Searchの部隊のジェネラルマネージャーだけどね。 “自社開発”という決定をマイクロソフトが行なったことには、不安に感じる人も少なくないだろう。同社がこれからGoogleとどう競争していくのかを想像すると、数年前に起きたNetscape社との戦いを思い出してしまうからだ。……いま、この記事を読むのに、Netscapeを使っている人がどれだけいるだろう? とはいえ、強力な検索エンジンが登場してくるのは、市場競争的にはすばらしいことだ。GoogleやYahoo!にあまりにもシェアが集中している現状は、決して良い傾向とは言えない。MSN Searchが25~35%のシェアを占めるようになれば、かなりいい感じの状況が生まれてくるだろう。でもそのシェアが75~85%にまで達してしまうと、今度は状況は悪化してしまう。 MSNBotはあなたのサイトも訪れているかもしれない。そのIPアドレスは「131.107.163.xx」なので、一度チェックしてみよう。 ●「Google AdSense」という言葉から何を感じる?
Webサイトの内容に合った広告を配信するというGoogleのサービス「Google AdSense」が、より小さなサイトのオーナーでもセルフサービス方式でサインアップできるようになった。今年初めにAdSenseがサービスインした当初は、最低20万の月間ページビューがあることが契約の条件になっていたが、その制限が取り払われたわけだ。 AdSenseは、広告を掲載するサイトの側がセルフサービス方式で申し込むことができ、承認されるとGoogleからHTMLのコードが提供される。サイト管理者はこのコードを自分のWebに埋め込むことで広告を表示させ、そのクリック率に応じて広告料金を受け取るシステムだ。広告を提供するクライアント企業は10万社に達しており、掲載するサイトのコンテンツに応じた内容の広告を表示させることができる。だから、「コンテンツターゲット型」といった名前が付けられている。 AdSenseでは、人間の編集者が広告掲載の申し込みがあったサイトを実際に見て、そのサイトがAdSenseのガイドラインに適合しているかどうかをチェックする。ガイドラインによれば、以下のような内容のサイトは受け入れられない。
注目すべきは、ポップアップを排除しようとしていること。Googleがこの不愉快で(しかもほとんど効果のない)ポップアップ広告と戦おうとしているのはすばらしい。 AdSenseは、アフィリエイトがさらに進化した形といえるかもしれない。なぜならGoogleのこの広告プログラムは、(1)自動的にそのサイトのテーマを認識・分類する、(2)そのサイトのコンテンツに合わせた内容の広告を提供する、というこれまでのアフィリエイトにはなかった新しい機能を持っているからだ。 ところで、AdSenseという言葉からは、複合的なさまざまな意味合いが感じ取れる。僕のような英語圏の人間にとっては、さまざまな意味を組み合わせた語呂合わせか言葉遊びのように受け取れる単語だ。
だからAdSenseという言葉を見ると、こんな風に感じるんだ。――テキストベースの広告(advertisement)を僕のサイトに加えて(add)、小銭(cents)を稼ぐことができる。そしてGoogleは、どの広告が僕のサイトに適合しているかを自動的に認知し(sense)、そしてそのシステムはとても知性的(sense)だ。 おわかりいただけたかな(Does this make sense)? なおAdSenseは今のところ、英語以外では提供されていない。 ●PPC広告の合併劇で業界はどう変わる
一方、買収されたEspottingは、欧州では1、2位を争うPPC広告企業だ。「Yahoo! UK」と「Yahoo! Ireland」、「Ask Jeeves」、「UK Plus」、「easyInternetCafe」などにエンジンを提供している。同社はペイドリスティング(検索キーワード型広告表示)を補完するために、Inktomiの検索結果も利用している。 この買収合併劇によって、広告型検索エンジンのグローバルな市場順位は以下のようになった。
市場の大半を占有しているのは、1位のGoogle AdWordsと2位のOvertureだ。でもFindwhatとEspottingの合併は、ガリバー2社に立ち向かえるだけのパワーを持った企業になる可能性を秘めている。 PPC業界を見ていてもうひとつ興味深いのは、日本の企業が1社も入っていないことだ。日本市場でも、PPC業界は欧米の企業だけが活動している。
(2003/6/24) [Reported by ジェフ・ルート&佐々木俊尚] |
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