【連載】 【編集部から】 ●統合によるパワー
米Yahoo!が7月、広告型検索エンジン大手のOvertureを17億ドルで買収する計画を発表したのはご存じの通り。この買収プランが連邦政府の監督機関の審査を通過し、反トラスト法に抵触しないというお墨付きを得た。あとはOvetureの株主から了承を得ることさえできれば、買収を妨げるものはなくなる。同社は10月7日に株主総会を開き、買収計画の是非を問う投票を行なう予定だ。Yahoo!の見通しでは、買収は今年いっぱいまでに完了することになる。 ●強制力というパワーYahoo!はどこまでパワーを強めていくのだろう? そしてその勢力範囲は、どこまで広がっていくのだろう? ドイツの裁判所がT-Onlineの親会社であるドイツテレコムに対し、T-OnlineのWebサイトでOvertureの広告型検索エンジンを使い続けるようにという命令を出した。T-Onlineは2週間前、Overtureの検索エンジンを外し、代わりにライバル会社であるGoogleの広告型検索エンジン、AdWordsに乗り換えていた。 その理由はもちろん、OvertureがYahoo!に買収されてしまったからだ。ドイツとオーストリア、スペイン、フランス、スイスでサービスを展開しているT-Onlineにとっては、Yahoo!は欧州における最大のライバル。「敵に塩を送る道理はない」という明快な理由でOvertureとの提携を解消したのだが……。 Overture側は、「一方的にGoogleに乗り換えるのは契約不履行だ」とカンカンで、裁判所に訴えた。しかしT-Onlineは「ライバル会社に買収されてしまえば、契約は解消されるのが当然だ」と譲らなかった。今回の裁判所の命令で、Overture側の言い分が全面的に認められる結果となった。 こうした小競り合いは、今後も世界各地で続きそうな気配だね。 ●「統合によるパワー」に抵抗していくパワーNutchは、まだ生まれたばかりの赤ちゃんのような試みだ。それは簡単に言えば、オープンソースの検索エンジンを作っていこうというものだ。 インターネットのナビゲーションにおいて、検索は今やなくてはならないものになっている。ところが人々が検索エンジンへの依存度を高めていけばいくほど、なぜか検索エンジンそのものの数はどんどん減っていくという怪しいジレンマが生じつつある。ここ数年で、有名検索エンジンがいくつ消滅してしまったかを思い出してもらえばいい。いったいどうなっているんだろう? かつてはたくさんあった検索エンジン企業は、いまやわずか3つに集約されてしまっている。Overtureを買収したYahoo!とGoogle、それにMicrosoftのMSNだ。このままでは今でさえ寡占の状態にある検索エンジン業界は、遠からず1社による独占状態にまで突っ走ってしまうかもしれない。ただ1社だけが検索エンジンを支配し、その企業の商業的な利益を支えるためだけに検索エンジンが存在している世界――考えただけで、ちょっとうんざりしてしまわないだろうか? ボランタリーな精神と多様性が根本の哲学にあるインターネットの世界には、“独占”という言葉は似つかわしくない。検索エンジンが独占されてしまうのは、ユーザーにとっても少しも良くない状況だ。 そこでオープンソースの登場となる。Nutchのサイトには、こう宣言してある。「オープンソースの検索エンジンだけが、どのような圧力や偏見にも影響を受けず、全幅の信頼を寄せられる検索結果を提供することができるのだ」。Nutchの目指しているのは、検索エンジンの王座を占めるGoogleに退位を促して自分が代わりに市場を支配しよう……ということではない。検索エンジンにオータナティブな選択肢を提供することで、Googleなどの商用検索エンジンに対し、公正な検索結果をきちんと提供させる圧力になろうというものだ。興味深いのは、Nutchは検索のアルゴリズムをすべて公開してしまおうという考え方。オープンソースだから当然といえば当然なのだけれど、ある種のSEOスパムの餌食になってしまわないだろうかという不安は若干残るかも。 Nutchは非営利の民間プロジェクトで、検索エンジン業界の研究者たちが参画している。Overtureも資金協力しているという。NutchはJavaで書かれており、今年6月には1億ページをデータベース化したデモシステムが開発した。もっともこのシステムを一般公開するための十分なハードウェアがまだ用意できていないといい、利用できるまでにはまだ若干の時間がかかりそう。 このNutchの話に、僕はジョンとヨーコの古いこんな歌を思い出す。「パワー・トゥー・ザ・ピープル」(人々にパワーを)。 ●SEOのツールをどう使う?検索エンジンという新しいテクノロジーをどう扱うか。そのパワーについて、いろいろ考えてみた。みんな、どう受け止めてくれたかな? さて話題を変えて、SEOのツールの使い方について少し話そう。 もし自分のサイトのトラフィックを増やしたいと考えているのなら、これが便利かもしれない。先日、僕は友人のひとりから、AllAboutJapanのページを教えてもらった。SEOの強力なツールがまとめて紹介してあり、お勧めだ。 たとえば検索エンジンを使う際のキーフレーズのランキングや、キーフレーズの出現頻度、他の競合サイトの検索エンジンへの出現率チェックなどがある。ただGoogleのランキングをチェックするプログラムを使う場合は、気をつけた方がいい。Googleは、この種のツールを使うなと言っている。利用規約にはこうある。 「ページの登録やランクの確認などに、不正なコンピュータプログラムを使用しないようにします。このようなプログラムの使用はコンピュータのリソースを消費し、Googleの利用規約に違反します。Googleは、自動化またはプログラム化されたクエリをGoogleに送信するWebPosition Goldのような製品の使用は推奨していません」 ●ところで余談だけど……英国のBBCが、「日本人がストリートでもっともクールだと考えているのは、NTTドコモのWRISTOMOだ」と言っている。WRISTOMOというのはご存じの通り、NTTドコモが今年5月に発売した腕時計型のPHS端末だ。でも本当にみんな、これが最高にクールだと思ってるの? ぜひ感想を聞かせてほしい。「他にもっとクールなストリートアイテムがあるよ」といった意見も。
(2003/9/9) [Reported by ジェフ・ルート&佐々木俊尚] |
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