■Yahoo!の巨額のマネーが中国へ
Yahoo!が中国のAlibaba.comに約17億ドル出資し、同社株の約40%を所有することに同意した。International Herald Tribuneの記事によれば、Yahoo!が出資したAlibaba.comは未公開企業だが、中国のB2Bマーケットプレイス最大手で、中国製品をワールドワイドに送り出している。同社は一般消費者向けのTaobao.comも運営していて、中国ではeBayの好敵手として知られているという。また同じ記事によれば、Yahoo!は中国国内でのYahoo!の運営についても、同社に7億ドルで譲渡することに合意したという。
この買収が完了すれば、Alibaba.comの株式はYahoo!が40%、日本のソフトバンクが27%、そしてAlibaba managementが33%を分け合うことになる。boston.comの記事によると、「Yahoo!が新たに買収したAlibaba.comは中国のインターネットビジネスの主導権を握る目的で、今後キーとなる新たなビジネスを立ち上げることを目指している。もっとも今のところ、短期的に他社を買収したり、増資を行なう予定は決まっていない」という。
boston.comの記事では、Alibaba.comのCEOであるJack Maにインタビューしていて、「今のところは、中国市場に資金を投入してシェアを拡大する方が重要で、利益を上げることはそれほど重要ではない」という発言を引き出している。
振り返ってみると、1990年代の終わりのネットバブルのころは、どの企業も「カネを儲けるより、ニューエコノミーに参加することの方が重要なんだ」と力説していた。要するに勇気を持ってゲームに参戦しておけば、将来に必ず大きな利益を得ることができるという考え方だった。これと同じことが中国で起きつつあるということなのかな? ロイターによれば、Alibaba.comは2003年には3,000万ドルの売上があり、2004年にはそれが6,800万ドルにまで増えた。だから2005年にYahoo!がAlibaba.comを買収した17億ドルは、2004年の売り上げの15倍にもなる。eBayがAlibaba.comの買収に興味を示したことによってYahoo!の買収金額がかさ上げされてしまったという話もあるようだが、いずれにしても、アメリカや日本の企業が中国でのネットビジネスをどう見ているのかということが、これらの事実から見て取れるんじゃないかな?
中国では最近、ほかにも外国企業からさまざまな投資が行なわれている。
- 2003年、eBayが上海に本拠のあるEachnetに1億8,000万ドルを出資
- 2004年、Interactivecorp(現在はAsk Jeevesも所有している企業だ)が、中国のオンラインリテイラーであるElongに6,000万ドルを出資し、筆頭株主に
- 2004年、Amazon.comが中国のライバル企業であるJoyoに7,500万ドルを出資
そしてまた、MicrosoftとGoogleが中国での事業展開に関する幹部社員の移籍をめぐって、熾烈な法廷闘争を始めている。これは何とも面白い物語だ。もし皆さんが英語でののしる方法を学びたいんだったら、ぜひMicrosoftのCEOであるSteve Ballmerのやり方を勉強するといい。John Battelle's Searchblogで、法廷に提出されたドキュメントが紹介されているけれど、何ともすごい。まるでハリウッドの映画スターみたいな毒づき方だ。
「Fucking Eric Schmidt is a fucking pussy. I'm going to fucking bury that guy, I have done it before, and I will do it again. I'm going to fucking kill Google.」
Eric Schmidtというのはご存知のように、GoogleのCEOの名前。BallmerはEric Schmidtという固有名詞を「fucking」という形容詞で修飾し、そして「pussy」(これはまあ汚いスラングで、弱い男という意味だね)という一般名詞を、またもfuckingで修飾している。
さらにこの「I'm going to fucking kill Google」という表現! この中のfuckingは今度はkillという動詞を修飾する形容動詞で、「本当に」「間違いなく」という意味だ。これは一歩進んだ表現技法だね。
さて、Ballmerの毒づきを日本語に訳すと、こんな風になる。
「くそったれのEric Schmidtのオカマ野郎め! あの野郎、絶対に葬り去ってやる! 今までだって同じようなことをやってきたんだからな、何度でも同じことだ。Googleを絶対にぶち殺してやるぞ!」
これほどまでにプロフェッショナルな毒づき方ができるのは、アメリカの指導者層にもあまりいない。僕の覚えている限りでは、アメリカの国連大使に就任したJohn Boltonや、副大統領のDick Cheneyなんかがそうかな。彼は昨年、議事堂の中で上院議員に向かって、「Fuck yourself!」と言ってのけた。この表現は、fuckを動詞として使ってる。もっとも一般的な使い方だね。それからこんなニュースの映像もある。先週、ハリケーンの被害にあったミシシッピ州で、被災者がCheneyに向かってこんなことを言っているんだ。
「Go fuck yourself, Mr. Cheney. Go fuck yourself」(消えろよ、このオカマ野郎のCheneyさんよぉ!)
■URL
International Herald Tribuneの記事
http://www.iht.com/articles/2005/08/15/business/alibaba.php
boston.comの記事
http://www.boston.com/news/world/asia/articles/2005/09/10/alibaba_eyes_growth_no_acquisitions_yet/
Jack Ma氏のプロフィール
http://www.alibaba.com/aboutalibaba/jack.html
John Battelle's Searchblog
http://battellemedia.com/archives/001835.php
ハリケーン被害者のニュース映像
http://www.youtube.com/watch.php?v=V3nuh6mNdH8
■オープンスタンダード運動の行方
eCommerce Timesの記事によれば、世界13カ国の政府幹部職員からなる有志グループが、経済の成長と進歩を促すため、各国がオープンスタンダードなテクノロジーを採用することを求めるレポートを世界銀行に提出したという。ちなみにこのレポートでは、オープンスタンダードはオープンソースソフトウェア(OSS)と同義語ではないと注釈されている。
プロプライエタリな技術を使って富を蓄積することは、どの企業にとっても究極の目標だと思う。しかし貧困の撲滅という観点から言えば、人々の日々の生活を向上させていくためには、こうした過度の富の集中は行なうべきではない。オープンスタンダードを推進することによって、先進国がその世界を開発途上国と分け合う道をつくりだすことができるというわけだ。そしてさらに言えば、オープンスタンダードの推進によって、Webの世界はさらに大きくなっていく可能性を秘めていて、これはヒューマニズムの実現にも寄与できるということになる。
自分自身のWebの使い方を振り返ってみると、Webはいったい何を僕自身にもたらしてくれたのだろう? お金を稼ぐ方法や、知識を得る方法や、創造性を高める方法や、あるいはほかの人たちと出会う方法かな。だったらこうした能力を、多くの人たちと分かち合えた方がいいに決まっている。――つまるところ、こうした気持ちが、サイトを作ったり、検索エンジンを開発するという人々のモチベーションにつながっているんじゃないかと思う。でしょう? もし世の中に無料で使える検索エンジンが存在しないという事態を想像してほしい。検索キーワードを入力するたびに、料金を支払わなければならない検索エンジンなんてものが、想像できるかな?
開発途上国の人々にとっては、オープンスタンダードによって、コンピュータの豊かな世界に参加できるチャンスが増えることになる。そしてコンピュータをうまく使いこなせば、日々の生活をもっと豊かにすることができる。このことに反対する人はいないよね?
問題は、オープンスタンダードが可能かどうかを論じることではないと思う。だってオープンスタンダードはもうすでにそこに存在しているんだから。問題は、それを政府や企業が採用するかどうかということだ。僕はこの問題の専門家ではないけれど、興味のある人は、Lawrence Lessigのブログを読んでみることを勧めたい。
■URL
eCommerce Timesの記事
http://www.ecommercetimes.com/rsstory/46052.html
Lawrence Lessigのブログ
http://blog.japan.cnet.com/lessig/
(2005/09/20)
【著者プロフィール】 |
|
・文=ジェフ・ルート(Jeff Root)
ECジャパン株式会社のSEOチーフスペシャリスト。日本には出たり入ったりで早や10年。メールアドレスは「jeff@ecjapan.jp」。日本語もOKなので、気軽にメールをくれると嬉しい。 |
|
・翻訳=佐々木俊尚
元全国紙社会部記者。その後コンピュータ雑誌に移籍し、現在は独立してフリージャーナリスト。築42年の古い家で、犬と彼女と暮らす。ホームページはこちら。 |
- ページの先頭へ-
|
|
|
Copyright ©2005 Impress Corporation, an Impress Group company. All rights reserved. |
|