【編集部から】
　　インターネットユーザーにとって、1日たりとも欠かせないのが検索エンジン。その検索エンジンをディープに使い尽くすために欠かせない情報を、毎回詰め込んでお届けします。

日本語版の出版元であるオライリー・ジャパンのWebサイト

　夏枯れというわけでもないんだろうけれど、ここ数週間は検索エンジン業界にあまりビッグなニュースはなかったみたいだね。まあでも、ちょっと興味のありそうな話はいくつか拾えた。 　「Google Hacks――プロが使うテクニック＆ツール100選」という日本語タイトルがつけられているこの本は、英語版が今年2月に出版され、つい先日には日本語版も刊行された。製品検索やイメージ検索、ニュース検索、ニュースグループ検索などGoogle独自の機能を使いこなすためのテクニックが掲載されている。検索エンジンの仕組みと同じ位の分量で、Google Toolbarについて詳しく書かれているのも興味深いところ。他には、Google APIを使ったプログラミングについての記載もある。Googleの検索結果ランキングで上位に入る方法についても説明されているけれど、それはこの本の主たる目的ではないようだ。「GoogleでSEO（検索エンジン最適化）する方法」というタイトルじゃないしね。

　先週、カリフォルニアのサンノゼでSearch Engine Strategies（検索エンジン戦略）と題した会議が開かれた。講演の中でMSNの副社長が、MSNサーチについてこう語った。 　「わが社の情報としての面を考えれば、検索エンジンはわれわれの戦略の礎になっていることは間違いない。われわれはこの部分のリサーチをガッチリと進めている」 　もっとも、マイクロソフトがどの程度の予算と人員を新しい検索エンジンの研究に割いているかについては、はっきりしたコメントはなかった。 　ところでこの「検索エンジン戦略会議」は、欧米の検索エンジン業界ではきわめて大きな注目を集めていた。なんといっても英語圏の検索エンジン業界の“ロックスター”たちが星の数ほど馳せ参じていたのだ。たとえばSearch Engine Watch.comの編集者であるダニー・サリバン（Danny Sullivan）やGoogleの共同創設者であるセルゲイ・ブリン（Sergey Brin）、Yahoo!の検索エンジン担当副社長であるジェフ・ワイナー（Jeff Weiner）といった面々だ。 　この会議が東京でも開かれたら……エキサイティングな想像だと思わない？　僕は先日、セミナーの主催者であるJupiter Media宛てにメールを送っておいた。東京で同じような会議を開く気持ちはないかって。返事が来るのを期待してるよ。

　米国勢調査局（US Census Bereau）が最近、今年第2四半期の電子商取引マーケットの規模についてまとめた。米国内の市場は124億8,000万ドルに達しつつあり、昨年同期と比べて27.8％の増加となっている。第1四半期と比べても、11.2％の増加。これに比べると、リテール全体の市場は昨年よりわずか4.9％増でしかない。オンラインコマースがいかに爆発的な成長を続けているかわかるというものだ。 　この第2四半期のリテール全体の市場規模は、8,578億9,000万ドルだった。このうちオンラインコマースが占めているのは1.5％。1999年に政府が市場調査をスタートさせた際は、0.7％しかなかった。そのころと比べれば、約2倍に成長していることがわかる。 　このあたりの数字は、日本ではどうなんだろう？　もしご存じの方がいらっしゃったら、メールで教えていただけると嬉しい。

　検索エンジンのAllTheWebからもニュース。AllTheWebは知ってるよね？　Googleに匹敵する検索能力を持つといわれるノルウェーのFAST（Fast Search & Transfer）のエンジンだ。同社の検索エンジン部門は今年、Overtureに買収され、そしてOvertureは最近、Yahoo!に買収された。だからAllTheWebは、今やYahoo!の持ち物ということになる。そのAllTheWebの検索可能ページが32億ドキュメントに達し、世界最大の検索エンジンになったというリリースが8月21日に流された。AllTheWebとGoogleは、検索ページ数で抜きつ抜かれつの大競争を繰り広げており、とりあえず現状は僅差でAllTheWebがトップに出ているということだ。Overtureはこれによって潜在的な顧客に売り込むための大きなマーケティングツールを得たことにもなり、なかなか刺激的な状況が生まれてきそうだ。

　オーガニック（Organic、有機）という名前がつけらている商品は世の中にたくさんある。この場合のOrganicとはもちろん、「自然に近い」とか「ナチュラル」とかそういう意味。 　じゃあオーガニックな検索エンジンって何だろう？　オーガニックな検索エンジンマーケティングというと、米国ではSEO（検索エンジン最適化）のことを意味するようになっている。広告を使ってマーケティングするのではなく、解析によって純粋にマーケティングする仕組みだからだ。 　検索エンジン業界では最近、PPC（Pay Per Click）と呼ばれる広告型の検索ビジネスがポピュラーになってきている。OvertureのスポンサードサーチとかGoogleのAdWordsなんかがそうだ。でも広告型があまりにも広まりすぎて、今度は有料の広告型エンジンと自然な検索エンジンを区別させる必要が出てきた。検索結果に表示されているこのリストは、検索エンジンの純粋なデータベースから届けられたもので、企業がおカネを払った広告とは本当に違うものなのか？　多くの検索エンジンでは、オーガニックな検索結果と同じぐらいの分量の広告検索結果を表示させるようになってきている。でもあまりにこの状況が進みすぎて、検索結果のほとんどすべてが広告になってしまったら、やっぱりユーザーは検索エンジンから離れてしまう結果になるだろうね。

【著者プロフィール】
	・文＝ジェフ・ルート（Jeff Root） 　ECジャパン株式会社のSEOチーフスペシャリスト。日本には出たり入ったりで早や10年。メールアドレスは「jeff@ecjapan.jp」。日本語もOKなので、気軽にメールをくれると嬉しい。
	・翻訳＝佐々木俊尚 　元全国紙社会部記者。その後コンピュータ雑誌に移籍し、現在は独立してフリージャーナリスト。東京・神楽坂で犬と彼女と暮らす。ホームページはこちら。

(2003/8/26)

[Reported by ジェフ・ルート＆佐々木俊尚]