Internet Explorer 8のRC版公開、Windows 7ベータの公開期限延長、といった気になるキーワードに混じって、不景気を印象付けるニュースが目立ちました。失職者を狙ったマネーロンダリング求人スパムやクリック詐欺急増のニュースは海外発。国内では、BSAが景気後退により企業内違法コピーが拡大する恐れを指摘しています。
暗いニュースばかりでなく、明るいニュースにも目を向けてみましょう。先週は、グリーとヤフーがそれぞれ増益を発表。国内のネット広告市場は2013年に8510億円規模になるという予想も発表されています。
◆「Internet Explorer 8」のリリース候補版が公開
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2009/01/27/22217.html
1月26日、米Microsoftは「Internet Explorer 8」のRC1を、日本語を含む25言語で一般公開した。同社によると、これは正式版と実質的にほぼ同じ動作をすると考えてよいバージョン。Beta 2からは、「クリック乗っ取り(クリックジャック)」問題への対処や、プライベートブラウズ「InPrivate機能」の変更などが行われている。なお、Windows XP SP3環境では、インストール時に注意が必要とされている。
◆グーグル辻野社長が会見「日本独自戦略」「YouTube収益化」明言
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2009/01/26/22211.html
1月26日、グーグルの辻野新社長は、定例会見にて同社の方針についてコメント。グローバル化が「フェイズ2に移行している」とし、地域の違いを意識した日本独自戦略の展開を表明。ストリートビュー問題にも言及した後、YouTubeの収益化に注力するとの方針も発表した。詳しくは後半で解説します。
◆ドコモ、「パケ・ホーダイ ダブル」でPC利用時も定額対象に
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2009/01/27/22230.html
NTTドコモはパケット定額サービス「パケ・ホーダイ ダブル」で、PCなどを利用したパケット通信についても定額対象とするサービス改訂を発表。4月1日から実施する。パケット通信料の上限は月額1万3650円で、プロトコルやアプリケーションによる制限は行われない。併せて、パケット定額サービスでの通信量が多いユーザーの通信速度を抑えるネットワーク混雑対策も発表した。
◆組織内違法コピーの通報求む、BSAが「違法告発.com」開設
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2009/01/29/22254.html
1月29日、BSAは組織内におけるソフトウェア違法コピーの実態などをまとめた情報サイト「違法告発.com」を公開。マンガによる紹介を含むコンテンツや、違法コピー情報の通報窓口を設けている。発表会では景気後退に起因する違法コピー拡大の恐れを指摘し、サイトを権利者保護と違法コピー利用を強いられているユーザーの環境改善支援につなげるとした。
◆NTTドコモ、18歳未満のユーザーにフィルタリング自動適用を開始
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2009/01/30/22272.html
1月30日、NTTドコモは18歳未満のiモード契約者に対し、フィルタリングサービスの自動適用を順次開始した。フィルタリングはブラックリスト方式の「iモードフィルタ」によるもので、全ユーザーに適用されるのは2月13日から。他キャリアでも順次フィルタリングの自動適用が開始となる。
● 新方針を掲げたグーグルの未来はどうなる? 直近の動きと課題
1月26日、グーグル新社長の辻野晃一郎氏は同社の新方針を発表。「日本独自戦略」と「YouTube収益化」という2つの柱を打ち出しました。
「日本独自戦略」とは、これまでの米国本社を中心とした「One Google」によるグローバル展開でのイメージがすでに定着したことと、米国以外の売り上げが約50%を占めるようになったことを踏まえ、今後は各国の現地法人が地域の特色を意識して展開するという方針です。「Googleの戦略を日本政府に説明する活動を強化したい」というコメントもありました。
具体的な日本独自戦略として、まず注目したいのはGmailです。Gmailは、日本法人発の絵文字機能のように、Googleのプロダクトの中でも日本法人の動きが目立つサービスであり、2008年12月には岸本プロダクトマネージャーより、絵文字とモバイルUI開発への注力、そして(携帯電話ユーザーは日本が利用数世界一ということもあり)要求の厳しいユーザーに向けて改良を重ねていくという説明がありました。これは、単純に「地域の特色を活かす」という話に留まらず、日本での事例を元に世界で展開することまでを見据えた方針と考えられます。
また、辻野氏はストリートビュー問題についてもコメントしましたが、「いろんな意見をすべて真摯に受けとめて対応を進めたい」とし、具体的な対応については明言していません。
もう1つの柱「YouTube収益化」は、従来のような高成長が見込みにくい「AdWords」や「AdSense」に次ぐ新たな広告メディアとして、YouTube経由の広告収入増を狙うという方針です。これは2008年末に、米Google副社長からも説明があったもの。昨年までで著作権問題対策を整えて地ならしができたところで、本格的な収益化を目指すものです。
具体的な広告商品としては、パートナー企業向けには動画に広告を表示できる「マネタイズ」機能や、自社所有の動画にiTunesやAmazonでの購入リンクを付与できる「Click-to-Buy」などを用意。動画投稿者向けには動画内広告「In-Video」を用意しています。今後は、著作権所有者がコンテンツを管理するための「コンテンツIDシステム」の機能充実を図っていく方針とのこと。また、日本語のキャプションを自動的に外国語に翻訳するシステムの提供など、閲覧数を伸ばすためのシステムも予定されています。
Googleの基本戦略は、新たな広告商品の開発と広告の表示機会増加=各サービスの利用者数増加です。米法人の大幅減益も発表されており、厳しい情勢ではありますが、辻野氏がいみじくもストリートビューで「Googleマップのユーザーが飛躍的に増えた」と述べたように、表示機会増加のための施策は次々と飛び出しています。先週も、検索の「もしかして」機能改善や、Gmailのオフライン機能など、魅力的な新機能が登場しました。
より重要な課題は、新しい広告商品の開発でしょう。その面ではYouTubeの「のびしろ」は非常に大きと予想され、今後、要注目のテーマと言えそうです。
2009/02/02 13:32
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小林祐一郎 プログラマ、編集者、Webディレクター等を経て、ライター・編集者として活動。興味のあるテーマは「人はどうすればネットで“いい思い”ができるのか」 。ごく普通の人の生活に、IT技術やネットのコミュニケーションツールがどんな影響を与え、どう活用できるのかを研究している。近著「Web2.0超入門講座」(インプレス) |
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