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“ジオ業界”っていったい何をしているところ? いま注目のジオ企業&団体はここだ!
「ジオ展2018」レポート
2018年5月10日 06:00
地図・位置情報関連の展示会「ジオ展2018」が4月20日、都内で開催された。今回は、地理空間情報に関わる“ジオ企業”が現在、どのような製品やサービスを展開しているのか、このイベントのレポートを通じて紹介する。
ジオ展は、2016年11月に6社が参加して第1回、2017年4月に16社が参加して第2回が開催された。3回目となる今回は、出展企業17社に加えて、大学の研究室やNPO法人など11団体も参加した。
一口に“ジオ”と言っても、地図データの提供会社や位置情報ソリューション、エリアマーケティング、位置情報ビッグデータの分析・解析サービスなど、さまざまな役割がある。今回のジオ展2018に出展した企業も、それぞれが提供しているサービスの内容は多種多様だ。
例えば、位置情報サービスを提供する上で背景地図となる地図データを提供する企業としては、インクリメントP株式会社とNTT空間情報株式会社の2社が参加した。この2社はいずれも、紙媒体の地図ではなくデジタルの地図データを提供する企業だ。
インクリメントPは今回、江戸時代の地図と1960年代の地図を書き起こした「Time Warp Tokyo」を展示。この地図は、1964年の東京オリンピック前の地図と、江戸時代の古地図を描き起こしで再現したもの。株式会社コギト、株式会社地理情報開発、東新紙業株式会社の3社が、NHKエンタープライズの協賛を得て古地図のデジタルアーカイブを行っている。古地図といっても絵の古地図ではなく、古地図に掲載されている地物・地形を忠実にベクターデータ化した高精細なデジタル地図となっており、現代地図との位置合わせにより各種位置情報サービスでも利用可能。教育や観光などさまざまな用途での利用を想定しているという。
一方、NTT空間情報は、地番が細かく描かれた「ちばんMAP」を紹介。建物の地番を地図上で調べられるサービスで、土地の筆界まで正確に描かれているのが特徴だ。いずれの地図も他の地図会社では提供していないユニークなサービスであり、独自性のある地図コンテンツとして注目される。
このほか、フリーでオープンな地理空間情報を草の根の力で作るプロジェクト「OpenStreetMap(OSM)」のデータをもとに多彩なデザインの地図を提供する株式会社MIERUNEも出展し、新作の地図デザインなどを紹介していた。
また、団体では、OSMのコミュニティを支援するOpenStreetMap Foundation Japan(OSMFJ)や、災害時にすばやくドローン空撮を行ってOSMを使って地図作りを行う「ドローンバードプロジェクト」(NPO法人クライシスマッパーズ・ジャパン)、地図サービス「地理院地図」を提供するとともに、地図データ「地理院タイル」を提供する国土地理院も出展していた。
さらに、文字通り“3D”の地形模型を製作する株式会社ニシムラ精密地形模型も出展。最近では、テレビ番組「ブラタモリ」に地形模型を提供していることでも知られている。今回はカラー立体地形模型のほか、白い地形模型の上にプロジェクターで地図を映し出し、タブレットに描いた線などをリアルタイムに反映できるプロジェクションマッピングのソリューションも公開していた。
また、ドローン関連のサービスとしては、アクアコスモス株式会社が、ドローンの空撮映像をもとに3D地図を生成する「スカイCVサービス」の展示を行った。
地図会社のほかに目立ったのが、株式会社ナビタイムジャパン、ジョルダン株式会社、株式会社ヴァル研究所などの経路検索サービスを提供する企業だ。
ヴァル研究所は、全国の鉄道網を1枚で表示するウェブベースの路線図「駅すぱあと路線図」、ジョルダンは全国のスポットを検索してルートを案内するアプリ「行き方案内」と、交通事業者向けの時刻表や運賃、経路、バス接近情報案内をワンパッケージ化したウェブサービス「MovEasy」を展示していた。
ナビタイムジャパンは、ナビアプリ「NAVITIME for Japan Travel」の移動ログデータを活用したインバウンド動態分析など、ビッグデータを活用した分析事例を展示していた。
このほかビッグデータ関連としては、ヤフー株式会社が参考展示として、スマホ用ナビアプリ「Yahoo!カーナビ」のプローブ情報の活用事例を紹介。このプローブ情報はアプリユーザーの走行データを収集・集計したもので、道路開通の影響調査や、人や車の移動の起点・終点を把握するためのOD調査など、さまざまな用途に活用できる。
動態管理サービスや保守管理支援サービスなど、地図や位置情報を活用したソリューションも展示されていた。
Google Mapsのパートナー企業として、「Google Maps APIs Premium Plan」を取り扱う株式会社ゴーガは、動態管理システム「ugomeki」のデモなどを展示。都内で車両やスタッフの現在地を地図上でリアルタイムで確認できる。
マルティスープ株式会社は、保守や調査などのフィールド業務を支援するソリューション「iField」のほか、屋内測位技術を活用してインドアマップ上で行動を可視化する「iField indoor」を紹介していた。
なお、屋内測位技術関連の話題としては、名古屋大学河口研究室による出展の中で、NTTドコモとの共同研究による、永久磁石を使用したマーカーとスマートフォンを組み合わせた屋内測位技術を展示していた。
このほか、VR/MR関連ソリューションの展示も見られた。VRを軸とした事業を展開するLIFE STYLE株式会社は、VR制作ツール「Flic360Make」を紹介するとともに、Googleストリートビューへの店舗写真掲載サービスなどを紹介していた。
また、GISソフトの販売を行っているインフォマティクス株式会社は、さまざまなGISソリューションに加えて、Microsoftの「HoloLens」などを利用したMRソリューション「GyroEye Holo」を展示していた。同ソリューションは、建築現場などで設計図面をホログラムとして投影するシステムで、設計者と現場スタッフとのコンテンツの受け渡しやデータ管理をクラウドで行える。
地図を使ったマーケティング(エリアマーケティング)を行うためのデータとしては、ジオマーケティング株式会社が、居住者ライフスタイルデータ「Geodemo」を展示。同データは、居住者の特性によって全国21万の大字町丁目を10グループ/74セグメントに分類したデータで、「市街地単身地区」「サラリーマンファミリー地区」「高齢化地区」「農山村地区」などさまざまなグループで色分けなどを行える。
また、リクルートと電通のジョイントベンチャーである株式会社ブログウォッチャーが、スマートフォン向け位置情報データサービス「Profile Passport」の紹介を行っていた。同サービスでは、ユーザーの位置情報をもとにしたプッシュ通知やデータ分析を可能にするSDKや、位置情報データを活用したスマートフォンディスプレイ広告、人流解析や生活エリアヒートマップ、競合分析などさまざまなメニューが用意されている。同社はデータ販売や可視化データの作成も行っている。
昨年のジオ展では見られなかった傾向としては、地図・位置情報が専門というわけではない企業が参加した点も挙げられる。株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)は、横浜・川崎エリアで4月19日に正式サービスを開始したタクシー配車アプリ「タクベル」を紹介。また、株式会社電算システムは、Google Cloudを活用したソリューションを中心に、同社が扱うさまざまなITソリューションサービスを展示していた。
地図会社や位置情報サービスの提供会社、分析会社など、多彩な企業が参加した今回のジオ展。展示内容も地図や位置情報ソリューションだけでなく、VRやビッグデータ解析、交通事業者向けサービスやタクシー配車など多岐にわたり、地図・位置情報を核とした製品・サービスがさまざまな分野に広がっていることを実感できた。
さらに、展示会の隣ではジオ業界の就活イベントも開催され、各社の紹介や識者によるパネルディスカッションも行われた。都心においてこれだけ数多くのジオ企業が集まるイベントは貴重であり、来年度も継続的に開催されることを期待したい。