被害事例に学ぶ、高齢者のためのデジタルリテラシー

それってネット詐欺ですよ!

ヘッドハンティングの誘いが来た! 会社に不満もあるし、キャリアアップにチャレンジしよう

 ある日、ヘッドハンターと名乗る人からメールが届きます。ある企業からのオファーがあるので、今後のキャリアについて話をしたいといった内容です。ヘッドハンティングは、人材難の現在では活発に行われています。大企業の飲み会などで聞いてみれば、ヘッドタンターから連絡をもらった人が何人もいることでしょう。そのため、そのうち、自分にも連絡が来るかも、と思っているかもしれません。

 話を聞くと、ライバルの大手企業が自分を欲しがっているというのです。名前や連絡先だけでなく、仕事の内容や前職などのキャリアまで把握しており、ちょっと怖いですが、さすがヘットハンティングだと関心してしまいます。さらに、ヘッドハンティングしていることは社内では秘密だし、あなたのためにも口外しないようにと言われて納得です。

 すると、最終決定する前に、セミナーを受講するように言われました。確かに、転職したことがないので、広範な知識がありません。少し高かったのですが、自己啓発として参加しました。最後に、契約書の締結です。乗り気になっていたので、ちょっと高かったですが、保証料も振り込みました。一定期間働けば返金されるそうです。契約書を渡し、あとは出社日の決定を待っていましたが、ヘッドハンターと連絡が付かなくなってしまいました。

 これは、ヘッドハンター詐欺です。会社はもちろん、プライベートのメールにも届くことがあります。ビジネスよりのSNSでメッセージが送られてくることもあります。もちろん、本当のヘッドハンターからの連絡もあるでしょう。企業と人がよりよいマッチングを実現し、Win-Winになることがほとんどです。しかし、お金が絡むとネット詐欺も発生してきます。

 今回の事例では、ヘッドハンターと名乗る者が手に入れた個人情報を元にアプローチし、金銭を得ようとするものです。1つめがセミナーです。転職に必要なノウハウを得るために高額セミナーを受講させます。2つめが、保証金です。先方にもリスクがあるとか、返金するといったような理由を付けます。

 この詐欺が成立しやすいのは、現状の会社と転職先の会社の両方に秘密にしてください、という話が通りやすいことです。話が露呈したら、否定しますし、なかったことになります、と言われたら、そんなものかなと思ってしまうことでしょう。

 この手の詐欺に、引っかからないためには、まずヘッドハンティングの会社を調べましょう。きちんとした会社であればいいのですが、ここが怪しいとNGです。メールアドレスがフリーアドレスだったり、固定電話がなかったりしたら要注意です。その会社についての質問をはぐらかすのも怪しいところ。転職先の情報をある段階まで隠すことはよくありますが、ヘッドハンターの情報を隠す理由はありません。

 大金を失うのも深刻ですが、さらに危険なのが退職してしまったり、転職の意図を同僚などに話してしまった場合です。ヘッドハンティングの話が嘘なわけですから、キャリアに大きな傷が付いてしまうことになります。

 さらに、ネット詐欺に限った話ではないのですが、お金を求めないヘッドハンティング詐欺というものもあります。お金ではなく、退職させることが目的のケースです。依頼者のパターンは2つあります。まずはライバル企業が組織をガタガタにするために、キーパーソンを退職させようとするパターン。そして、恐ろしいのが、働いている会社そのものが依頼しているパターンです。リストラ代わりに辞めてもらうために利用したり、役員登用の前に忠誠心をチェックするために依頼すると言った話も聞きます。転職の話が本当かどうか確認せず、ほいほいと退職を決意すると面倒なことになってしまうのです。

 ヘッドハンターからアプローチがあったら、とにかくそのヘッドハンターと転職先の企業について徹底的に調べることが重要です。担当者の話だけど鵜呑みにせず、聞くべき所はきちんと質問しましょう。

あなたの両親も“ネット詐欺”の餌食になっているかもしれません――その最新の手口を広く知ってもらうことで高齢者のデジタルリテラシー向上を図り、ネット詐欺被害の撲滅を目指しましょう。この連載では、「DLIS(デジタルリテラシー向上機構)」に寄せられた情報をもとに、ネット詐欺の被害事例を紹介。対処方法なども解説していきます。

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NPO法人DLIS(デジタルリテラシー向上機構)

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