被害事例に学ぶ、高齢者のためのデジタルリテラシー
それってネット詐欺ですよ!
YouTubeのビットコイン生成ツール動画からウイルスに感染した
2019年6月7日 06:00
ビットコインという仮想通貨を自動的に生成する方法を紹介するという動画がYouTubeで広まっています。「Free Bitcoin Generator」などで検索すると多数ヒットします。
このツールをインストールすれば、1日に0.1~0.7BTCを稼げるというのです。6月1日現在、1BTCは約92万円なので、1日の稼働で9万2000円~64万4000円が稼げると謳っているのです。この時点でネット詐欺だと気が付かない人は要注意です。
最も危険なのが、自分は知識と判断力があると過信しているパターンで、こんなに稼げるわけはないと考えてはいるのですが、話半分、いや4分の1くらいで2万円でも稼げればいいかも……などと手を出してしまう人です。欲望を自分に都合のいい理由で補完しているだけで、ネット詐欺の格好のターゲットになります。
ソフトをインストールすると、稼働している雰囲気は出ますが、実際はビットコインなど掘りません。バックグラウンドでシステムを監視するのです。そしてあらゆる手段で仮想通貨を奪い取ろうと動きます。PCに保存されている各種履歴を漁り、ユーザーのウォレットから残高を送金しようとします。
さらには、クリップボードを監視し、ユーザーが送金するために暗号通貨のアドレスをコピー&ペーストするのを検知します。そして、貼り付ける瞬間にそのアドレスを犯人のものとすり替えます。ペーストされたアドレスは犯人の口座ですが、安心しきっている人にはランダムな文字列を見破ることは難しいでしょう。そして、送金すると犯人に盗られてしまいます。後で気が付いても、暗号通貨を取り返すのはほぼ無理です。
この手のウイルスはトロイの木馬と呼ばれます。ユーザーに知られずに感染させるには大きなプログラムなので、ユーザー自身にインストールさせます。まさしくギリシア神話のトロイア戦争で、トロイア人が自らの手で戦士が隠れている木馬を城内に入れてしまったのと同じです。
対策として怪しいファイルをインストールしないことが重要です。「労せずに稼げる」と謳っている時点でネット詐欺と気が付くべきなのです。あり得ないほど美味しいことは、あり得ません。相手は、話半分なら、とスケールダウンさせればワンチャンスあると思う心理も織り込み済みです。そのため10BTCとも言わず、0.0001BTCとも言わず、絶妙な10万円ラインを狙ってくるのです。繰り返しますが、稼げる金額はゼロです。そのうえ、暗号通貨を根こそぎ奪われる可能性があるのです。
もう1つの対策がセキュリティ機能を有効にすることです。まず、ブラウザーの機能でダウンロード時に警告が出ました。無視してダウンロードしても、Windows 10のセキュリティ機能が自動的に検出し、除去してくれます。最後の防衛線として必ず有効にしておきましょう。
しかし、まだ世に出たばかりのウイルスだと、セキュリティ機能の検知をすり抜ける可能性があります。あまりセキュリティ機能を過信せず、自分でも普段から注意しておくという自衛策を講じておくことも重要です。特に暗号通貨を所有している人は注意してください。
あなたの両親も“ネット詐欺”の餌食になっているかもしれません――その最新の手口を広く知ってもらうことで高齢者のデジタルリテラシー向上を図り、ネット詐欺被害の撲滅を目指しましょう。この連載では、「DLIS(デジタルリテラシー向上機構)」に寄せられた情報をもとに、ネット詐欺の被害事例を紹介。対処方法なども解説していきます。
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NPO法人DLIS(デジタルリテラシー向上機構)
高齢者のデジタルリテラシー向上を支援するNPO法人です。媒体への寄稿をはじめ高齢者向けの施設や団体への情報提供、講演などを行っています。もし活動に興味を持っていただけたり、協力していただけそうな方は、「dlisjapan@gmail.com」までご連絡いただければ、最新情報をお送りするようにします。