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【使いこなし編】第191回

Synology「BeeStation」でスマホの写真を管理。トラブル回避のコツは「編集前に忘れず複製」

 本連載では、Synologyのパーソナルクラウド「BeeStation」の活用を第185回から実践している。今回も前回に続き、スマホアプリ「BeePhotos」を使ったスマホの写真や動画のバックアップや管理する方法を実践していく。

 一昔前のデジカメの感覚だと、カメラのメモリカードからPCやNASに移した写真(画像ファイル)を、また同じメモリカードにコピーすれば、全く同じ写真として扱える。何を当たり前のことを言い出すのかと思うかもしれなないが、スマホの写真の場合は、この事情が少し異なる。

Synologyのパーソナルクラウド「BeeStation」。ちょうど3.5インチ外付けハードディスクと同じサイズ

複製機能を使って編集前の写真を別に残しておこう

 というのも、デジカメと違い、スマホは自身が写真の編集機能を持っていて、編集した写真を自由に編集前のオリジナルの(撮影直後の)状態に戻すこともできるようになっているのだ。例えばiPhoneの「写真」アプリでは、編集機能の[元に戻す]から[オリジナルに戻す]を選択すれば、それまでの編集内容を取り消してオリジナルに戻せる。

 これが、どのように実現されているかというと、画像ファイル自体には最新の編集内容が反映されているが、それとは別に、スマホがオリジナルのデータを保持しているのだ。このように、元のデータを保持したままで編集できることを「非破壊編集」といい、特定の機種の特定の写真編集アプリ内でだけ使える。[※1]

[※1]……なお、iPhone、iPad、MacといったApple製品の間で、iCloudによる写真の同期、またはAirDropを使ってファイルを共有した場合は、別のデバイス間でも非破壊編集が可能だ

 BeePhotosを使ってバックアップしたとき、BeeStationに保存されるのは、最新の編集内容が反映された画像ファイルのみとなる。その後、スマホからその写真を消し、あらためて画像ファイルをスマホに戻しても、非破壊編集を可能にするデータは失われ、オリジナルに戻すことはできない。

 以上のように、スマホの写真編集に慣れていると当たり前の「オリジナルに戻す」が、一度BeeStationにバックアップしてスマホから消してしまった写真に対しては、使えなくなり、非常に不便になってしまう。オリジナルに戻せるだろうと思っていたら戻せなくなってしまった! というトラブルは避けられるようにしておきたい。

 そのための方法は、いくつか考えられる。1つは、編集したい写真はスマホから消さないことだ。前回の最後でスマホに保存された全ての写真を削除する方法も紹介したが、もうスマホで編集することがない写真だけを選んで、削除するといい[※2]

[※2]……なお、スマホから写真を削除してBeeStationだけに写真が保存された状態になると、BeeStationの故障などのトラブルにより写真が消えてしまうリスクがある。以降の回でBeeStation内のファイルをバックアップする方法も紹介するので、バックアップ体制を整えるまではスマホにも写真を残しておけば、万が一のリスクを回避できる

 もう1つの方法は、編集する前に、写真の複製機能を使って、オリジナルの写真を別に保存しておくことだ。編集する前のファイルを別に残しておくのは、PCで写真を編集をする感覚なら当たり前なのだが、スマホの感覚に慣れていると、ちょっと手間ではある。

 ちなみに、写真を複製すると、当然ながら写真の点数が増えるので、スマホのストレージを圧迫する。BeeStationは容量が4TBもあるので気になることもないと思うが、スマホの容量が気になるときは、オリジナルを複製したらすぐにBeeStationにアップロードし、消してしまうといい。

 以下に、iPhoneで複製機能を使いながら写真を編集する手順を見ていこう。

iPhoneの「写真」アプリで、一覧からサムネイルをロングタップし、表示されたメニューから[複製]を選択することで、その写真を複製できる。複数の写真を選択して、右下の[…]メニューから[複製]を選択すれば、複数点をまとめて複製できる
ここでは、1点の写真を3つに複製した
複製した写真のいずれかを開き、「編集」をタップする
編集画面が表示された。この時点で、右上に「元に戻す」ボタンが表示されたら、この写真はすでに編集が行われているので、オリジナルに戻そう。[元に戻す]をタップする
[オリジナルに戻す]をタップすると、撮影直後に状態に戻せる
複製したほかの写真は、自由に編集したり、過去に行った編集のままにしておいてOKだ。編集したときは、右上チェックマークをタップして完了する(編集内容を確定させる)
[お気に入り]機能を使うと、写真を選択しやすい。ここでは、オリジナルの写真も編集済みの写真もお気に入りにしている(左がオリジナルで、ほかは編集済み)
なお、写真アプリで編集を行った写真を探したい時には、[ライブラリ]で右上の[…]から[フィルタ]の[編集済み]を選択するといい

iPhoneではオリジナル写真の書き出しもできる

 iPhoneで、すでに編集済み写真が大量にあって、オリジナルに戻すのが大変な場合には、「写真」アプリで写真を選択し、共有アイコンから[未編集のオリジナルを書き出す]をぶと、特定のフォルダ(大量に書き出す場合は空き容量に注意!)や外部ストレージに、オリジナルの写真を書き出すこともできる。

 書き出した後は、[ファイル]アプリを使って画像ファイルを選択し、共有アイコンから[BeePhotos]を選んでアップロードすると、BeePhotosを使ったバックアップができる。

BeePhotosを起動し、[…]から[アップロード]を選択
アップロード時に上部中央(画面の赤枠部)から[お気に入り]を選択することで、お気に入りにした写真だけを表示するようにできる。先ほどのオリジナルと、編集した写真を選択してアップロードする
同じ写真の3つのバージョンがアップロードされた
続けて、編集済みバージョンをBeeStationからスマホにダウンロードして、オリジナルに戻せるかチェックしてみよう
[写真]アプリで編集すると[元に戻す]が表示されず、オリジナルに戻せないことがわかる
[写真]アプリで情報を見てみると、カメラ情報などが消えていて、BeePhotosから転送されたことが分かる

 こうした、写真の元バージョンを残しておく使い方は、Androidスマホでも同様となる。例えば、Pixelシリーズの「フォト」アプリでは、写真を編集してから保存しようとすると必ず[コピーを保存]になり、オリジナルとは別に保存される仕様になっている。この場合は、両方をBeePhotosにアップロードしておけばいいわけだ。

Pixelシリーズの「フォト」アプリで編集すると必ず[コピーを保存]になる
編集後にもオリジナルの写真は残しておくことが肝心

今回の教訓(ポイント)

iPhoneの「写真」アプリには非破壊編集機能があるため、バックアップにコツがいる
写真を編集したときは、オリジナルも別途残すようにしよう

村上 俊一

1965年生まれ。明治大学文学部卒。カメラマン、アメリカ放浪生活、コンピューター雑誌編集者を経て、1995年からIT系フリーライターとして活動。写真編集、音楽制作、DTP、インターネット&ネットワーク活用、無線LAN、スマホ、デジタルガジェット系など、デジタル関連の書籍や雑誌、ウェブ媒体などに多数執筆。楽曲制作、旅行、建築鑑賞、無線、バイク、オープンカー好き。