自宅Wi-Fiの“わからない”をスッキリ!

【使いこなし編】第185回

Synology「BeeStation」で、容量4TB・月額0円の「自宅クラウド」を構築する!

今回からSynology「BeeStation」を自宅に設置して活用してみよう

 自宅のWi-Fiを活用する工夫を紹介する本連載だが、今回からは、Synology(シノロジー)が2024年2月に発売した「BeeStation」(ビーステーション)を実際に使ってみようと思う。製品カテゴリーとしては「NAS」と言えるが、「パーソナルクラウドストレージ」と名乗っており、PCやスマホを使って、自宅のLAN経由だけでなくインターネット経由(つまり自宅外から)でも利用できることが特徴だ。

 言い換えれば、Googleドライブなどと同じ役割を果たせる自分用クラウドストレージサービスを、自宅で、毎月のサービス利用料不要で利用できるようになる。大量に保存した写真の整理・検索を助ける機能も搭載している。

手軽にすぐ使えるのが魅力の「パーソナルクラウド」

 考えられる用途は多岐にわたる。4TBもの容量が使えてどこからでもアクセスできるストレージ、しかも月額0円と考えれば、ほかのクラウドサービスからの移行先として魅力的だ。

 このような、いわゆる「パーソナルクラウド」的なサーバーを自分で構築するには、自分でNASを設置し、外部からのアクセスや共有のためにさまざまな設定を自分で行う必要がある。BeeStationは、Synologyの専用のアプリとサービスによって、特別な設定をすることなく、すぐ使い始められるのが魅力だ。容量も4TBあるので、けっこうハードに使っても埋め尽くすのは簡単でない。余裕を持って使えるだろう。

Synology「BeeStation」。外観は一般的な外付けHDDドライブに似ている
BeeStationの背面。有線LAN(ギガビット対応)に接続して利用する

 まず、BeeStationでできることを挙げておこう。写真や動画、各種ファイルを、Wi-Fi(家庭内のLAN)接続時はもちろんだが、外出先からも保存・閲覧できる。アプリはiOSとAndorid、Windows、macOS向けが用意されていて、環境を問わずに利用可能だ。写真用のアプリ「Bee Photos」の使い勝手もよく、操作感はGoogleフォトに近い。AIによる写真の分類機能もある。

 BeeStation内に保存した写真(アルバム)やファイルは、共有用のリンクを作成して、リンクを伝えることで友人などに見てもらうことができる。共有を受けたユーザーは、ユーザー登録やログインなどの操作を行うことなく、ファイルを受け取れる。共有のリンクは、パスワード保護を設定したり、一定期間後に自動消去するように設定したりすることも可能だ。

 また、家族や友人用に複数のアカウントを作って、個別に利用することもできる。アカウントは前述の通り8人分まで作成でき、それぞれBeeStation内に個人用の保存空間を持つこともできる。

BeeStationで写真を保存・閲覧するアプリ「BeePhotos」
こちらはファイルを扱うアプリ「BeeFiles」
PCではGoogleドライブと似た感じで、ウェブブラウザーからファイル操作ができる

 はじめに、LANケーブルをWi-Fiルーターに接続したり、アプリから初期設定をしたりする必要はあるが、それ以上のことは必要ない。一応、本連載では、安定して動作させるためにIPアドレスを固定させる設定をしようと思っているが、やってもその程度なので、安心してほしい。

 この手の、家庭内のLANに接続して外部のインターネットからアクセスする機器で問題となるのは、ルーターに静的アドレス変換などを設定して「ポート解放」したり、「DDNS」(ダイナミックDNS)を設定する必要があるケースが多いことだ。

 こうした設定を適切に行うには、ある程度の専門知識が必要になるし、これらの設定をすると、インターネット上に公開することになるので、セキュリティ上のリスクがつきまとう。このBeeStationでは、ポート解放やDDNS設定をする必要はない[*1]ので、ポートやDDNSに詳しくない人も安心してほしい。

[*1]……Synology製のNASで利用される「QuickConnect」という技術を使い、インターネット経由でBeeStationにアクセスするときは、同社の専用リレーサーバーを中継してアクセスする仕組みになっている。このため少し転送のパフォーマンスは落ちるが、安全に利用でき、利用料金はかからない。なお、詳細の説明は省くが、ポート開放の設定をしての接続も可能だ

 筆者の環境では、「フレッツ光」のIPoE IPv6(IPv4 over IPv6)接続の回線を使っているが、この環境では利用可能なポートが限られるため、ポートに関する知識があってもポート開放を適切に行えず、その他の方法を工夫したりする必要に迫られることもある。しかし、BeeStationでは、そういった心配もいらない。筆者の環境は最大1Gbpsの「フレッツ 光ネクスト」だが、最大10Gbpsの「フレッツ 光クロス」を利用していても、同様なはずだ。

クラウドストレージからの移行で節約も考えられる

 BeeStationが搭載するHDDの容量は、4TB。例えば、クラウドサービスの「Google One」では、2TBまでのストレージを使えるプランが年間1万5600円(月換算1300円)なので、もしもBeeDriveに移行したら、これをそのまま節約することも可能になる。

 もちろん、初期費用(製品の購入価格)は必要になるし、同じ機能や容量ではないので単純比較はできないが、写真や動画などの容量を食うデータをBeeStationに移行することで、クラウドストレージをもっと容量の少ない100GBプランや無料プラン(15GB)で済ませることも可能になるはずだ。AppleのiCloudについても、同様の考え方ができる。ただし、iPhoneやiPadではiCloudバックアップと同じ感覚でBeeStationにバックアップできるわけでない点は注意してほしい。

 BeeStationを導入して、今後購入するスマホは容量少なめのモデルを選択してコストを抑えていくという使い方もアリだろう。スマホ本体にこれまでの写真や動画をすべて保存しておく必要はなく、BeeStationに保存しておけばいい。PCを持ち歩いている場合も同じだ。すべてローカルディスクに詰め込んでおく必要はなく、もし以前のファイルが必要になったら、出先でもBeeStationに保存してあるファイルを探せばいい。このような使い方も、この後の連載で詳しく触れていく。

本体横にはロゴマークが書かれている
上面はメッシュ構造になっていて排気が考慮されている
セットアップ後の使用時には常に白色のLEDが点灯している

 なお、2月末時点で確認しているBeeStationのAmazon.co.jpでの販売価格は3万6359円。2~3年故障せず使えば、だいたい元をとった気分になれるだろう。製品には3年保証が付いている。ちなみに、筆者はSynologyのNASをすでに10年以上稼働させているのだが、トラブルがまったくないどころか、今でも最新アップデートが配信され続けている。

 ネットワーク製品はセキュリティの観点からも、アップデートがされ続けることがとても重要だ。このような実績からもSynology製品は安心して選んでいいだろうと、筆者は考えている。これまでNASを使ったことのない人は、「Synology」の名前にもなじみがないと思うが、台湾発のNASメーカーとして長い実績がある。海外メーカーとはいえ、操作メニューなどはすべて日本語化さるので、使っていての不安もない。

 BeeStationは誰でも手軽に使えることを最優先としているので、高機能なNASに比べると、端折られている機能もある。例えば、動画や音楽のストリーミング再生や、動画配信の機能は持っておらず、再生するには一旦ダウンロードが必要になる。これらの機能が使いたいなら、ほかのNASを選択した方がいいだろう。

 高機能なNASでは、NASにワープロや表計算、画像編集アプリをインストールし、ウェブブラウザーから「Googleドキュメント」などに近い感覚で保存している文書を編集することも可能だが、BeeStationにこのような機能はない[*2]。基本は、ファイルを保存し、編集などはダウンロードして行うものと考えよう。

[*2]……このあたりのウェブアプリ機能は素直に、Googleドキュメントとか、Office 365とかを活用しておこう。ちなみにSynologyのほかのNASでは、この機能をインストールして使うこともできたりする

 アプリやパッケージで、さまざまな機能を追加するということもできない。NASの中には、PCのような「OS」を搭載し、各種サーバー機能を必要に応じて追加できるものもあり、例えば、動画のストリーミング再生などができるメディアサーバーや、ウェブページを公開できるウェブサーバー、ゲーム用のサーバーなどの機能を持たせることができる。しかし、BeeStationには、こうした機能はない。今後、何らかの機能追加があるかもしれないが、こうした高機能なNASとは位置付けが異なる製品と考えておくのがいいだろう。

 また、万が一のトラブルに備えた冗長性(1つのデータを複数箇所に保存し、トラブルがあっても全部のデータを同時に失うわないようにするなどして、データの安全性を高めること)のための機能もなく、高度なNASが持つ「RAID」などの機能もない[*3]。もしもBeeStationのデータの安全性を高めたいなら、別途バックアップすることは必須だ。本連載では、連載ではこのバックアップ作業も実践していく予定だ。データの保全は自己責任になる点は、注意しておこう。

[*3]……RAIDは複数のドライブを包括的に使って、万一故障時に止めることなくドライブ交換ができるのがメリットで、業務を止めないという点を重視して使うものだ。いずれにしてもバックアップは必要になる。個人利用であれば、ドライブが故障したら一時止まってしまうが、バックアップから戻せばよいのでRAIDまでの必要はないと思う。

参考までに、筆者が使っているSynology製のNASの写真。製品本体にはHDDが付属せず、別途HDDを買ってきてセットする必要がある製品で、「NASキット」とも呼ばれる。BeeStationの場合は、4TBのHDDが最初から入っている
NASキットは、一度分解して自分でHDDをセットしてから使うことが前提。その代わり、自分が必要な容量のHDDを選べるのは利点の1つだ。複数台のHDDに、同時に同じデータを保存するようRAIDの設定を行うことで、冗長性を持たせられる
こちらはBeeStationと付属品。もちろんBeeStationを分解する必要はない。付属品はLANケーブルとACアダプターとシンプル。紙のマニュアルは付属していない(マニュアルはウェブでPDFを見ることもできる)

 BeeStationを開封すると、最近の製品によくあるように、中に紙のマニュアルは入っていない。が、連載では細かく実践していくので安心してほしい。次回から、さっそくセットアップしていこう。

今回の教訓(ポイント)

Synology「BeeStation」を自宅LAN内に設置すると、Googleフォト+ドライブのように使える
ポート開放をしなくてもインターネット外部から使えるので簡単

村上 俊一

1965年生まれ。明治大学文学部卒。カメラマン、アメリカ放浪生活、コンピューター雑誌編集者を経て、1995年からIT系フリーライターとして活動。写真編集、音楽制作、DTP、インターネット&ネットワーク活用、無線LAN、スマホ、デジタルガジェット系など、デジタル関連の書籍や雑誌、ウェブ媒体などに多数執筆。楽曲制作、旅行、建築鑑賞、無線、バイク、オープンカー好き。