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「まんだらけ」も採用したSynologyの多機能な防犯カメラは何が違う?
Synology Solution Day 2023 レポート
2024年2月15日 07:00
NAS製品メーカーである台湾のSynologyが、ビジネス向け製品について紹介するカンファレンスイベント「Synology Solution Day」を、2023年12月21日に開催した。
Synologyの代表製品とも言えるNASは、その上で動くさまざまなアプリケーションで機能を拡張できるのも特徴の1つだ。
そうした機能の1つとして広く使われているものに、監視カメラのソリューション「Synology Surveillance Station」がある。映像をNASに録画するのはもちろん、監視カメラをコントロールし、さらに複数拠点のカメラと映像を集中管理する機能を備える。また、それに向けてSynologyからも監視カメラを発売している。
Synology Japan株式会社の塚田滉之氏のセッションでは、このSynology Surveillance Stationによる監視カメラのソリューションが解説された。その中で、複数拠点のカメラを統合監視している日本の事例として、全国に14店舗を展開する「まんだらけ」の採用事例も紹介された。
240万台以上のカメラと40万拠点以上でSynologyの監視ソリューションを利用
「SynologyはNASでご評価をいただいているが、Synology Surveillance Stationによる監視ソリューションも以前からご評価いただいている」と塚田氏。240万台以上のカメラと、40万拠点以上で使われているという。
一般に監視カメラには、単体のNVR(Network Video Recorder)と、管理システムのVMS(Video Management System)の2種類のソリューションがある。NVRには大規模管理や、カメラの互換性、拡張性などの課題があり、一方のVMSには長期的な支出などの課題がある。
この問題を「統合されたSynology Surveillance Stationで解決する」と塚田氏。そのうえで、評価フェーズ(導入時)と管理フェーズ(運用時)に分けてSynology Surveillance Stationの特徴を紹介した。
140以上のブランドのカメラに対応、Synology自身のカメラも発売
まず評価フェーズについては、カメラの互換性、ストレージの拡張性、費用の3つのポイントを塚田氏は挙げた。
カメラの互換性は、あるカメラがSynology Surveillance Stationに対応しているかどうかだ。これについては、140以上のブランドの8300以上のモデルのカメラが対応し、ONVIF規格にも対応している。これにより、すでに監視カメラを構築していてもSynology Surveillance Stationに統合できる、と塚田氏は説明した。
互換性が最も保証されるものとしては、Synology自身でも「BC500」と「TC500」の2機種のカメラを発売している。
そのほか、2024年度上半期には「C400W」もリリース予定だ。2.4GHzと5GHzのデュアルバンドのWi-Fiに対応して無線接続でき、IP65認証済みで屋外でも設置可能。さらに、双方向オーディオを統合しており、会話や遠隔指示もできる。
ストレージの拡張性としては、もともとストレージソリューションのエキスパートであり、さまざまな機種でシームレスに対応できる。カメラの対応台数でも、ペタバイトクラスの製品では、1台で最大650台のカメラをサポートしている。
費用については、従来のNVRは初期投資は低いが、拡張するときNASの置き換えが発生し、初期投資がまるごとムダになると指摘。さらに個別の設計と管理も必要になると塚田氏は述べた。
また従来のVMSは、ハードウェアに加え、ソフトウェア、ライセンス、技術サポートの費用が発生する。
それに対しSynology Surveillance Stationでは、ハードウェアにソフトウェアが込みで入っており、ライセンス料も1回でよい、というのが塚田氏の主張だ。氏は、完全なソリューションに必要な費用を最初から評価することが必要であり、Synologyソリューションは長期的な運用に合致する、と語った。
マップやタイムラインと組み合わせて直感的な集中管理
続いて管理フェーズでの特徴だ。
監視における主な管理タスクとしては、UIのカスタマイズなどのインターフェイスの管理や、ユーザー権限の管理、複数拠点の中央集中管理などがある。
これについて塚田氏は、Synology Surveillance Stationは直感的な集中管理でヒューマンエラーを最小限にする、と語った。
その機能については、塚田氏はデモをもとに説明した。
カメラの設置場所は、GoogleマップやOpenStreetMapなどの地図、あるいはフロア見取り図と組み合わせて表示できる。向きなどもマップ上で図示される。
不審者などを発見するとマップ上にイベントウィンドウが表示され、そこから複数の地点を一覧したり表示を切り替えたりしてクロスサイト管理ができる。
さらに、イベントが発生した地点の画面を選んで拡大したり、リモートで警報機を慣らしたり、タイムラインをドラッグして遡り過去の画面を確認したりできる。
余分なPCを設置することが好ましくない場合には、PCのかわりにVisualStationシリーズ製品を利用できることも、塚田氏は紹介した。VisualStationをNASとスクリーンにつなぐだけで、監視用ビデオウォールを構築できる。
Synology NASのCMSで監視カメラも中央集中管理
主な管理タスクの2つめとして挙げられたユーザー権限の管理については、すべての従業員が勤務時間だけ再生できるなど、適切な人が適切な時間に適切な機能を利用できる、といった最小権限の原則にもとづいた権限設定が必要になる。
こうした権限設定がSynology Surveillance Stationでは可能、と塚田氏。ユーザーごとの権限設定に加え、詳細なログですべてのアクティビティログを管理できるという。
また3つめの複数拠点の中央集中管理については、拠点が急速に増えるときに複数拠点の監視が問題になると塚田氏は説明。こうした場合において、複数拠点のSynology NASを中央で集中管理できるCMS(Central Management System、集中管理システム)が、監視デバイスにおいても活用できる。NAS 1台をエントリーポイントにして、1000箇所の1万台のカメラ映像を集中管理できるという。
まんだらけ、14店舗の900台弱の監視カメラ映像をいつでも本社から見られるように
ここで、日本最大級のコレクターズショップである「株式会社まんだらけ」における、中央集中管理の事例が紹介された。
まんだらけでは、14店舗に設置した合計900台弱の監視カメラを、以前は店舗ごとで管理していた。そのため映像は店舗ごとに分散し、本社からの管理が難しく後から録画を見るのも難しい状態だったという。
この問題に対して、まんだらけではSynology Surveillance Stationを導入。本社のNASをCMSとし、各店舗にNASとカメラを設置して、本社の担当者がCMSホストにログインするだけですべての映像を管理し、見られるようにした。また、過去の映像を簡単に確認できるので、たとえば釣り銭のトラブルなどでも、レジに設けたカメラの映像記録が役立っているという。
監視のセキュリティにも配慮
一方で監視カメラの動画には、潜在的なリスクもある。不正アクセスや、災害による映像の損失などだ。
こうした監視のセキュリティに関するSynology Surveillance Stationの取り組みについても、塚田氏は紹介した。
デバイス(カメラ)のセキュリティについては、NDAAとTAAのセキュリティ基準に準拠している。システムのセキュリティについては、セキュリティインシデント対応チームPSIRTを設立し、重要な脆弱性について24時間以内に解決するという。接続性のセキュリティについては、HTTPSとSRTPをサポートして通信を暗号化している。
スマート監視システムにもアップグレード
そのほか塚田氏は、AIで映像を認識して監視するスマート監視システムの需要への対応について解説した。
Synology Surveillance Stationでは、既存の管理システムをスマート監視システムにアップグレードする2つの方法を提供している。
1つめは、AIを内蔵したSynologyカメラだ。エッジ録画に対応しており、NASから切り離してもSDカードに録画でき、接続回復時にNASに録画を復元する。Synologyカメラを利用する場合、追加のデバイスライセンスも不要だ。
2つめは、AIを搭載したNVRソリューションであるSynology DVAシリーズだ。顔認識やナンバープレート機能、人数計測などの分析機能をサポートでき、追加のライセンス料は不要。
Synology Surveillance Stationによるスマート監視システムの事例も塚田氏は紹介した。
Synologyと同じ台湾の企業で、ボッシュやシーメンスのサプライヤーでもあるアルミ製品加工のAL-TRON(鋁創科技)では、専任の監視担当者がいないため、工場内に人やクルマを入れるときには、作業の手を止めて訪問者の確認作業をする必要があり、生産性が低下していた。そこで、クルマのナンバープレート認識や顔認識によって自動で入場と退出を管理するようにしたという。
このように、監視カメラの映像を見るだけでなく、入退管理システムや煙感知器など複数のデバイスの機能に対応。アクションルールを設定することによって、検知したときに警報機を鳴らすといったことを自動化して、スムーズなユーザー体験を提供する、と塚田氏は語った。
最後に塚田氏は、Synologyはデータ保護の会社であり、製品単体ではなく包括的なワンストップソリューションを提供すると説明。これからも、デジタル資産や物理的な資産を保護する包括的なソリューションを提供していく、と語った。