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【使いこなし編】第188回
パーソナルクラウド「BeeStation」に、スマホの写真をバックアップできる「BeePhotos」
2024年3月21日 06:00
本連載では、Synologyのパーソナルクラウド「BeeStation」の活用を第185回から実践している。今回は、写真を管理するスマホアプリ「BeePhotos」を使ってみる。
BeeStationは、大きな製品カテゴリーとしては「NAS」だが、自宅のLAN内だけでなく、インターネット経由(つまり自宅外から)でも利用できることが特徴だ。これにより、自分や家族専用のクラウドストレージのような役割を持たせることができる。初期投資(3万6000円前後)は必要だが、4TBで月額無料の「自宅クラウド」を利用できる。どのような機能を持っているかの詳細は、第185回を参照してほしい。
通知メールは必ず確認しよう
本題の前に、通知についての基本的な注意を。前回、システムの自動更新をオンにし、メールによる通知もオンにする設定を行ったが、こうしておくと、最新システムへの自動更新時などに通知メールが来る。メールが届いたら、内容をざっと確認しておこう。なお、広告やDMの類が届くことはないので、安心してほしい。
多くの場合、メールをざっと確認するだけでいいが、不正アクセス検知や内蔵ディスクの異状など、早急な対応が必要な通知が来ることもある。手間だと感じるかもしれないが、自動で開封済みにしたりせず、都度確認しよう。
BeePhotosをセットアップする
今回使うBeePhotosは、Android/iOS対応の写真管理アプリで、動画も扱える。BeeStationのスマホ向けアプリは、このアプリと、次回以降に紹介するファイル操作アプリ「BeeFiles」の2種類が提供されている。
どちらのアプリも、BeeStationのポータル(セットアップポータル)にあるリンクからダウンロードできるので、そちらからダウンロードしておこう。もちろん、Google PlayやApp Storeで検索してダウンロードしても構わない。「BeeFiles」も次回使うのでついでにインストールしておくといいだろう[※1]。
[※1]……アプリインストール時のページ内に、Synology製アプリとして「Synology Photos」や「DS Photo」など、ほかにもたくさん表示され気になるかと思うが、これらは同社製のほかのNAS向けで、BeeStationでは利用できない
BeePhotosを立ち上げたら、BeeStationと同じSynologyアカウントでログインする。この段階では、自宅のWi-Fiにつないで操作している。権限の許可確認は適宜行ってほしい。iOSでは、ローカルネットワークでの検索を許可するシーンがあるが、これは必ず許可する必要がある。また、AndroidとiOSの両方で、写真と動画へのアクセス許可を与えておく必要がある。ほかの通知などは好みに応じた許可で構わない。
BeePhotosから写真をアップロードする
BeePhotosが使えるようになったら、テストでBeeStationへアップロードしてみよう。うまくいったら、スマホの写真と動画を全てアップロードしてしまってもいい。
モバイル回線からの接続も確認してみよう
ここまでの操作はWi-Fiに接続して行ったので、一時的にWi-Fi接続をオフにして、モバイル回線から(インターネット経由で)も閲覧やアップロードができるかを確認してみよう。右上の[≡]から[アップロード]を選んでアップロードしてみる。このとき、写真を重複してアップロードしないように注意しよう。
もし、うまくいかなかったら、いったんBeePhotosアプリを終了させて再度アプリを起動してみれば、接続できるはずだ。筆者の環境では、「フレッツ 光ネクスト」IPoE接続回線の自宅にBeeStationを設置し、外出先からドコモやau、楽天モバイル回線を使ったスマホで接続して、問題なく利用できている。
少々専門的な話になるが、日本の多くインターネット接続サービスで使われている「IPv6 IPoE」(IPv4 over IPv6)という接続方式では、特殊なアプリを使うときに、必要なポートを利用できず、トラブルになってしまうことがあるのが、気になっていた。
BeePhotosアプリは「TCP 6601番」というポートを使用していて、一応ポート開放が推奨されてはいるのだが[※2]、接続テスト中はIPv6 IPoEの一種であるMAP-E方式の利用可能ポートに6601番ポートは含まれていない状態になっていたため、ルーターではなにもポート開放設定は行っていない。それでも、ここまで行ったセッティング状態にて[※3]、QuickConnectの転送機能で安定して接続できている。別のIPv6 IPoEの一種であるDS-Lite接続では未チェックだが、ほとんどのIPv6 IPoE方式の回線でも問題なく利用できるようだ。
[※2]……本連載ではポート解放をして使用することは推奨しないが、BeeFilesとBeePhotosがTCP 6601番を、デスクトップ向けBeeStation(BeeStation for Desktop)がTCP 6690番のポートを使っている。これらをルーターのポート転送に設定すると、QuickConnectでの切り替えや転送も高速になるだろう。ただし、アタックを受ける可能性も格段に高くなるので注意。逆にポート解放をせずにQuickConnectサーバー経由で使っているぶんには、アカウントをハックされてしまうこと以外で、外部から直接攻撃されることはないはずだ。利用ポートの詳細は、以下のナレッジベースで公開されている
[※3]……IPoE回線で外からうまく繋がらない場合、前回の連載でIPv6を利用するセッティングも行っている点に注意してほしい。この設定でIPv6を利用する設定にするとIPv6のIPアドレスが割り振られ表示されるようになる
接続時に若干のタイムラグがある
BeeStationでは、Synologyアカウントにログインして使用することに特化しているので、常時Synologyが提供するQuickConnectサーバーを介した接続になっている[※4]。アプリ使用時に意識して見ていないとわからないが、LAN内(自宅Wi-Fi)か外(モバイル回線)かをチェックし、切り替えつつ接続を維持している。
そのため、接続時にワンクッション入るタイムラグを感じるはずだ。速度より確実に接続できることを強制的に選んでいることになる。そのためQuickConnectという用語はセッティング時にも一切出てこないし、特に知らなくても問題はない。LAN内外の通信が変わってうまく転送できないときは、このスイッチがうまくいっていない状態なので、アプリを再起動させ現在のネットワーク状態をチェックさせればいい。
[※4]……Synologyの一般NASモデルでは、NASがQuickConnectを使うか使わないかは、OSの設定で明示的に切り替えることが可能になっていて、ユーザーに委ねられている。つまり、DDNSと利用ポート開放で、 Synologyが提供するアプリ以外もさまざまなサービスで活用できるようになる
これで外出時でもBeePhotosが使える状態になった。4TBもの広大なストレージなので、思う存分動画を撮りまくっても大丈夫だ。BeeStationでBeePhotosが使えることが確認できたら、スマホ内の写真は全てアップロードしてしまい、スマホ本体からは削除してしまっても構わない。古くてあまり重要でない(見返す機会が少ない)写真や動画は、スマホから削除してもいいだろう。必要になったらBeePhotosから掘り出せばいい。
ちなみに、iPhoneで撮影できる「Live Photos」(シャッターを切った前後1.5秒ずつの映像を記録するショート動画のような機能)もBeeStationにアップロードできる。このLive Photosのバックアップ方法は意外に選択肢が少ないのだが、BeeStationではある程度満足できる方法で実現できている。次回はこのLive Photosの挙動を含め、もう少しBeePhotosの使いこなしを見ていこう。写真や動画を撮影したら自動でアップロードする設定も可能だ。