ミラーリングとかの基礎知識(スマホ動画をテレビで見る方法)
第6回
スマホの画面をテレビに映す方法:簡単にできる「有線ミラーリング」って何? 誰が何のために使ってる?
2025年5月27日 06:00
あるデジタル端末で表示している画面を、もう1つ別の画面にそのまま表示する――これが画面の「ミラーリング」です。会議などでプレゼン資料を手元のノートPCで表示して操作しつつ、プロジェクターにも大きく表示するのは、ミラーリングの一形態と言えます。
このミラーリングに関する記事が、じつはINTERNET Watchで隠れた人気を誇っています。なかでも群を抜いているのが、iPhoneとAndroidスマホのミラーリングに関する2つの記事。スマホと家庭用テレビをどうやって接続すればいいか解説する内容で、掲載から約2年がたった今でもコンスタントに読まれています。
ミラーリングにはさまざまな形態があり、Wi-Fiを使ってワイヤレスでミラーリングすることも可能ですが、変換アダプターを介してスマホのUSB端子とテレビのHDMI入力端子を接続する「有線ミラーリング」が最もシンプルな方法と言えるでしょう。今回は、そうした有線ミラーリングが行えるUSB Type-C/HDMI変換アダプター製品を販売している周辺機器メーカー2社の担当者にお話を伺いました。
子どものいる家庭でミラーリング需要が?――Ankerに聞いてみた
まずお話を伺ったのは、Ankerブランドの日本法人であるアンカー・ジャパン株式会社。同ブランドでは現在、「Anker PowerExpandプラス USB-C & HDMI 変換アダプタ」「Anker PowerExpand USB-C & Dual HDMI アダプタ」などをラインアップしています。
同社担当者によると、ユーザーから寄せられるレビューを分析したところでは、有線ミラーリング用の変換アダプターを購入しているのは30~50代の男性が目立つそう。特にビジネスや出張目的での購入が多いといいます。ただ、Ankerはブランド立ち上げ初期にモバイルバッテリーで有名になった経緯もあり、30~50代男性のユーザーはもともと多い傾向にあるということです。
しかし現在のAnkerは、人気アニメやゲームのコラボデザインの製品も発売し、購入者層に広がりを見せています。最近では、お子さんのいる方・世帯が有線ミラーリング関連製品を少なからず購入しているケースが、レビュー分析から浮かび上がってきているといいます。
街中では、スマホやタブレットでアニメを見ているであろう子どもたちをよく見かけます。自宅に戻ったとき、それをそのまま大画面テレビに表示したいというニーズは意外に多いのかもしれません。
「Nintendo Switch」で利用する人も。――サンワサプライ担当者
続いてお話を伺ったのがサンワサプライ株式会社です。PC周辺機器からオフィス家具まで幅広く取り扱うメーカーとして知られます。直営ECショップ「サンワダイレクト」をご存じの方も多いでしょう。
サンワサプライもまた、利用動向の調査にレビューを活用しており、PCやスマホで広く利用されている実態があることは分かっています。ただし珍しい例として、任天堂のゲーム機「Nintendo Switch」の外部テレビ出力で利用されているケースがあったそうです。
Nintendo Switchでは一部のモデルを除き、専用のドックに本体を装着した状態であれば、テレビ画面に映像を出力することができます。ただ、任天堂の公式サイトなどには案内がないものの、市販のUSB Type-C/HDMI変換アダプターを使えば、専用ドック不要で画面出力できることがユーザーの間では知られています。
今回筆者も試してみましたが、確かにドックレスでの画面出力は可能でした。しかし条件があり、給電しながらでなければ画面出力できません。また、ミラーリング中はNintendo Switch側の画面はオフになるなど、一般的なスマホのミラーリングとは挙動が若干違う点には注意が必要です。
そしてNintendo Switchには、USB Type-C端子が1つしか搭載されていないことも忘れてはなりません。よって、単純なUSB Type-C/HDMI変換アダプターではなく、USB給電対応(電源アダプターを接続するUSB Type-C端子がもう1つ付いたタイプ)の変換アダプターが必要になります。
サンワサプライの担当者は、この「USB給電に対応しているかどうか」は、変換アダプターを比較検討するうえでの重要ポイントになるとアドバイスしてくれました。ほとんどのスマホやタブレットもまた、付いているUSB Type-C端子は1つだけ。有線で画面出力をしつつ、同時に充電もしたいとなると、サンワダイレクトで販売中の「500-KC038」のようなUSB給電対応型変換アダプターは必須になってきます。
こうした製品は機能の多さの分、価格は若干高めで、本体サイズも大きい傾向にありますが、汎用性は一気にアップします。購入の際に比較検討する価値は、十分ありそうです。
「つなぎさえすればOK」の分かりやすさ、そして「ユーザー層の広がり」で需要拡大か
両社への取材前、筆者は、ミラーリング需要は「コロナ禍におけるPPV(ペイパービュー)需要の波及効果」という仮説を立てていました。2020年春から約3年間、アーティストによるライブや集客型イベントは密集回避のために大きな制約を受けました。そこで多く実施されたのがPPVです。会場に人を集めず、パフォーマンスを映像のみで有料配信する手法は、緊急手段として大いに活用されました。しかし、その緊急性とは無関係に、PPVは消費者側として単純に利便性が高いサービスでもあるため、コロナ禍が収束した今でも一定の普及を見ています。
コロナ禍のPPV実施は緊急性が高く、興行主側には「とりあえずスマホやタブレットにだけ配信できればいい」という面が少なからずあったでしょう。海賊版映像の流出も避けたかったはずです。しかし、ファンとしては大きな画面でPPVを楽しみたい――そこでなんとかできないかと探し当てた方法が、有線ミラーリングだったのではないか、と。
残念ながら両社とも個別商品の売上動向については非開示とのことで、コロナ禍のPPV事情の影響は検証できませんでした。しかし一方でお話に耳を傾けると、ミラーリングが幅広い世代に認知されており、結果として高いニーズを示している可能性はありそうです。以前はミラーリングの用途といえば、それこそプレゼンに代表される業務目的だったはず。それが家庭で、子どもたちのアニメ視聴やゲームプレイといったエンタメ目的でも使われるようになって、潮目が変わったのかもしれません。
また、変換アダプターを介して「ケーブルでつなぎさえすればミラーリングできる」という分かりやすさも、重要なポイントでしょう。ワイヤレスでミラーリングする仕組みとしてはMiracast、Chromecast、AirPlayなどがありますが、スマホとペアになる機器をわざわざ準備しなければならなかったり、あるいは同一のWi-Fiネットワークに機器を接続させなければならないなど、準備のハードルはやや高めでした。しかし変換アダプターなら、教室でも友達の家でも旅行先でも、HMDI対応のテレビさえあればミラーリングできます。この事実は、 なじみのなかった道具(機器)を初めて購入する方にとって、とても大きな安心材料となるはずです。未体験の方は、ぜひ、ご注目を。1つ手元に用意しておけば、仕事から遊びまで、さまざまな場面で活躍してくれると思いますよ!
- 有線ミラーリングをするには、スマートフォンのUSB Type-C端子がディスプレイ出力に対応している必要があります。また、HDMI変換アダプターを購入するにあたっては、接続するスマートフォンなどの端末に対応している製品かどうか確認してください。
- アプリ/サービスによっては有線ミラーリングに対応していないものもあります。表示したいアプリ/サービスが対応しているかどうかも必ずご確認ください。