イベントレポート

BIT VALLEY 2020

「BIT VALLEY 2020」はオンライン開催へ、9月9日~12日に「BIT VALLEY WEEK」ライブ配信

「BIT VALLEY 2020」キックオフイベントで開催のあいさつをするGMOインターネット株式会社の稲守貴久氏(画像提供:BIT VALLEY 2020実行委員会)

 学生・若手ITエンジニアらに向けたカンファレンス「BIT VALLEY 2020」が9月9日に開幕する。それに先立つ7月22日、キックオフイベントが開催され、コロナ禍を受けてオンライン開催へと変更した狙いとその舞台裏について、関係者が語った。

「BIT VALLEY(ビットバレー)」とは?

 BIT VALLEY 2020はGMOインターネット株式会社、 株式会社サイバーエージェント、 株式会社ディー・エヌ・エー、 株式会社ミクシィの4社共催によるテックカンファレンス。2018年の「BIT VALLEY 2018」を皮切りに毎年開催されており、今年で3回目を迎える。

 例年であれば、東京・渋谷周辺のカンファレンス施設に観客を集め、ワークショップや懇親会も併催していたが、2020年は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)蔓延防止の観点から、テレビ会議ツール「Zoom」でのオンライン中継を実施する体制へと変更した。

 そもそも「BIT VALLEY(ビットバレー)」とは、数多くのIT企業が集う“渋谷”の地名を「ビター(渋い)なバレー」、さらにはビターを電子情報の単位である「ビット」に読み換え、米国IT産業の集積地として名高い“シリコンバレー”になぞらえた表現として、1990年代後半ごろに注目された呼称である。

 イベントとしてのBIT VALLEYは、この呼称を2010年代後半になって復活させた格好だ。主催4社は現在、渋谷に本社を置いており、イベントでは会社の垣根を越えて、社会問題の解決や人材発掘に取り組んでいるという。

 報道関係者向けの説明会では、GMOインターネット株式会社の稲守貴久氏が主催者を代表してあいさつ。コロナ後のいわゆる“ニューノーマル”への対応として、開催テーマを「次世代オンライン会議~次の時代を切り拓くテクノロジーの祭典~」と据えたことなどを明らかにした。

主催4社の関係者が参加した、報道関係者向けの説明会もZoomで開催された

新型コロナの大きな影響、イベント開催の舞台裏

 7月22日のキックオフイベントでは、BIT VALLEYの運営スタッフら4人が対談した。開催にこぎ着けるまで、その舞台裏には、さまざまなドラマがあったという。

 BIT VALLEYが初めて開催されたのは2018年。4社共催というスタイルではあるが、なかでも“発起人”にあたるのはサイバーエージェントだ。「3年前のある日、長瀬(慶重氏。サイバーエージェント取締役で、キックオフイベント当日の別セッションにも登壇)とミーティングをしていると、彼がふと窓の外の渋谷の風景を見ながら『1社でできないことを、この渋谷でできないだろうか』的なことを突然言い始めたんです(笑)」。こう語るのは、同社の野島義隆氏(人事本部全社推進部部長)。

株式会社サイバーエージェントの野島義隆氏(人事本部全社推進部部長)

 3年前は、渋谷再開発に向けた動きの真っ最中。渋谷駅を中心とした半径1kmの地域にはIT企業が実際に多く、主催4社についても、同駅周辺の新社屋への移転表明などが相次いでいた。

 そこで、街としてのブランド力も高い渋谷において、エンジニアがもっと生き生きと働けるようになれば、面白いムーブメントが起きるのではないかと長瀬氏・野島氏らは発想。渋谷区をはじめ、最終的に共催体制をとる3社からも良い返事を得たため、初回開催に至ったという。なお、企画をしたのは2018年5月、開催は同年9月というかなりの突貫スケジュールだったが、参加登録者が1000人を超えるなど、大きな反響を得た。

 続く2019年のBIT VALLEYは開催規模が2500人へと拡大。さらに渋谷区内の小中学生にプログラミング教育を行うための「Kids Valley」プロジェクトも4社で実施するなど、さまざまな成果も出ていた。しかし2020年のBIT VALLEYに立ちはだかったのが、まさにCOVID-19である。

 ここで株式会社ミクシィの杉田絵美氏(開発本部CTO室DevRelグループ)が示したのは「BIT VALLEY 2020」開催に至るまでの“逆ロードマップ”。2019年11月中旬には運営ミーティングが初開催され、12月中旬には後援団体への相談もスタートしていた。杉田氏も「本当にいろいろなことがあった」としみじみ振り返った。

「BIT VALLEY 2020」開催までの“逆ロードマップ”
株式会社ミクシィの杉田絵美氏(開発本部CTO室DevRelグループ)が対談のモデレーターを務めた

 GMOインターネット株式会社の稲守貴久氏(次世代システム研究室兼デベロッパーリレーションズチーム)も「ここまで(開催されるまで)来るのに、長かったのか短かったのかよく分からない」と漏らすほど。大規模イベントの中止・延期が相次いで発表された2~3月ごろには、会場での集客開催からオンライン開催への切り替えを検討し始めたという。

 株式会社ディー・エヌ・エーの大月英照氏(システム本部CTO室)は、3年目にして初めてBIT VALLEYの運営に携わった。「この4社はエンジニア採用でそれこそ競合する関係なのに、それでも一緒に仕事しているのは実にヘンな感覚」だと大月氏は笑うが、しかしBIT VALLEYの現場においては揉め事も少なく、スムーズに話が進むことが新鮮だと述べた。

株式会社ディー・エヌ・エーの大月英照氏(システム本部 CTO室)

9月9日~12日の「BIT VALLEY WEEK」にはビッグネームの登壇も?!

 BIT VALLEY 2020の運営ミーティングは徹底してオンラインで行われており、4人全員が1カ所に集まった機会はまだ一度もないとのこと。とはいえ、それで本当にイベントを開催できるのかという危惧は共通してあったようだが、キックオフイベント当日を無事迎えて「意外とできるものですね」と皆笑い合っていた。

運営スタッフ4人による対談の模様

 BIT VALLEYのオンライン開催が決断された4月上旬ごろは、「会場開催からオンライン開催への切り替え」を行った事例はまだまだ少なかった。それだけに関係者の不安は、もちろんゼロとは言い難いだろう。

 ただ、開催に至って、野島氏はオンライン/オフラインそれぞれの良さを改めて感じているという。「いろいろな地域から参加できるので、なにより距離が一瞬でなくなるのはオンラインの良い点。一方で、参加者の熱量を感じたり、こだわりを議論するのはオフラインが得意。来年のBIT VALLEYでは、そのあたりも含めていろいろ考えたい」(野島氏)。

 稲守氏もこれに同調する。しかし、まずは2020年のBIT VALLEYを完全オンライン開催と決めた以上、腹をくくって取り組んでいきたいと述べた。

 BIT VALLEY 2020は、9月9日~12日に予定されている「BIT VALLEY WEEK」がいわば“本番”。約20のセッションをオンライン配信する予定だ。

 詳細なスケジュールの発表は今後行われるが、ビッグネームの登壇も予定されている。昨年2019年にはヤフー株式会社 代表取締役社長の川邊健太郎氏らを招いての豪華トップ対談などを実現させており、今年もぜひ、セッション登壇者に注目して欲しいと稲守氏は呼び掛けた。

GMOインターネットの稲守貴久氏は、イベントの開会あいさつに引き続いて対談にも参加した