mixiとモバゲー、SNSのオープン化を議論。GREEも途中参戦


 「Infinity Ventures Summit 2009 Fall」1日目のオープンSNSをテーマとしたセッションでは、すでにPC、モバイルともにアプリをオープン化したミクシィの笠原健治代表取締役社長と、まもなくオープン化を予定するモバゲーを運営するディー・エヌ・エー(DeNA)の守安功取締役ポータル事業本部長兼COOによるパネルディスカッションが行われた。モデレーターはインフィニティ・ベンチャーズ共同代表パートナーの小野裕史氏が務めた。

mixiアプリ公開でPC、モバイルともに好調なmixi

ミクシィ代表取締役社長 笠原健治氏

 笠原氏はmixiアプリ公開後の状況を紹介。mixiアプリの登録数は公開から2カ月で1500万を超え、2007年から緩やかに減少していたPCのPVがmixiアプリ公開後には2カ月で40%増加し、PV数のV字回復を果たしたという。

 また、既存の日記やコミュニティといったコンテンツのPVも増加するなどmixi全体の活性化にもつながっており、PC版のユニークユーザー数は過去最高の記録を達成したと語った。10月27日に公開したばかりのmixiモバイルはさらに好調で、月間で1億PVを超えるmixiアプリが次々に登場しているという。

 パートナー企業とは、mixiアプリ上の広告収入をPV単価0.03円で支払うほか、ミクシィが用意する課金システムでは、売上のうち20%をmiixが手数料として徴収し、残りをパートナーに支払う仕組み。笠原氏は「現状を踏まえて予想される収益規模は1日100~300万円程度、年間10億円規模のアプリも出てくるのではないか」と予測。mixiアプリ市場全体で「広告収益で200億円、課金で200億円の規模になると期待している」と語った。

mixiアプリで月間PVが30%増加(ネットレイティングス調べ)PCのPVは2カ月で40%増PC版mixiは第2の成長ステージへ
mixiアプリの登録者数は1500万人。モバイル版で利用者はさらに拡大サンシャイン牧場はユーザー数250万人月間1億PVを超えるアプリもmixiアプリでは多数登場
広告ではPV単価0.03円を支払い11月5日から課金支援も開始。回収代行手数料は2割年間10億規模の収益になるアプリが出てくる可能性も

モバゲーは仮想通貨や広告、アイテム販売を開放

ディー・エヌ・エー 取締役ポータル事業本部長兼COO 守安功氏

 DeNAの守安氏はミクシィのプレゼンを受け、「せっかくのオープンプラットフォームで1位のアプリ(サンシャイン牧場)が海外製というのは非常に残念」「mixiモバイルのトラフィックに耐えられていない企業が多く、ベンチャーとして非常に大きな機会損失になっている」と指摘した上で、モバゲーのオープン化についてのプレゼンを開始した。

 モバゲーではすでに仮想通貨「モバコイン」を導入しているが、オープン化にあたりこのモバコインをパートナー企業に開放。モバコインは携帯電話キャリア課金、クレジットカード、WebMoneyで購入でき、売上の3割を回収代行手数料DeNAが徴収する。

 広告メニューも用意しており、モバゲー内にゲーム広告を出稿できるほか、広告を確認することでゲームのアイテムが手に入るといったインセンティブ付与も可能。また、ゲーム内で利用できるアバターもパートナー企業が販売できるが、こちらは回収代行手数料3割に加えて販売手数料を50~100円程度で徴収する。

 このほか、まだ料金面では未定ながらもパートナー企業の支援策も検討。クラウドコンピュータによるインフラサポートや携帯電話端末によるデバッグ、運用サポートなどのメニューを考えているという。

 守安氏は「人気のゲームはPVが1千万から数億へと膨れ上がり、それを運用するインフラも管理が大変だろう」と指摘。「モバゲーは数千台規模のサーバーを持っており、常時数百台程度の空きサーバーがあるために、急激なトラフィック増加にも対応が可能だ」と説明。「完全に検討段階であり、ニーズがあればやる、なければ提供自体をやめるという柔軟な考えでいる」と補足した。

 パートナー企業の収益については自社製のゲーム3タイトルを例に挙げ「10月に公開した3タイトルで3億円を売り上げており、1タイトル1億円は中規模ヒット、大ヒットは3~5億円程度と想定している」とコメント。今後は海外展開も強化していく姿勢を見せた。

 オープン化は「一気に全開放はリスクが高い」との考えから、先行パートナー30社程度のゲームを1月にリリース。2月に先行パートナーを拡大しつつ、3月には全公開するとのスケジュールを示した。

モバコインでは3割を徴収ゲーム内広告でユーザーのインセンティブもアバターは回収代行手数料に加えて販売手数料も徴収
内製の3ゲームで3億円の売上を達成、1ゲーム1億円は「中ヒット」国際事業展開の概要オープン化のスケジュール

SNSオープン化に2社とも期待。GREEは「永遠なる検討中」

 アプリの一般公開による市場規模はミクシィが広告・課金合計で400億円との数値を示しており、モバゲーの想定数値も同程度との予測を見せるが、「課金7割・広告3割」というモバゲーに対し、笠原氏は「PVが思ったより出せているので、広告はきちんと売っていけるだろう」(笠原氏)。

 課金については「mixiでは1ユーザー当たりの課金ボリュームはモバゲーより少ないだろうと考えており、課金は広告より遅れて推移するのでは」とコメント。将来の目標値についてはmixiが「2~3年後に3,000万ユーザー」、モバゲーが「月間で500億PVという規模もあり得る」とした。

 オープン化については守安氏が「やってみなければわからないが、ゲームタイトルを増やすとリソースは厳しくなるものの、面白いゲームは追加しなければならない」という現状を踏まえ、オープン化によるゲームタイトルの拡充に期待していると述べた。

 また、すでにオープン化しているmixiは「自社ですべてをコントロールできるメリットもある」とし、オープン化も一長一短であると指摘。

 会場に参加していたグリーの田中良和代表取締役社長へ、GREEのオープン化に関して予告なく質問が飛ぶ場面もあり、田中氏は「オープン化を絶対にしないという原理主義ではないが、常に検討を続けている『永遠なる検討中』という段階」とコメント。

 また、オープン化したmixiについてコメントを求められると、「サンシャイン牧場では知らない人でも友達を募集し合っており、リアル指向だったmixiがそうではなくなっている」と指摘。「リアル指向のSNSでは同じ価値で対抗できないというのがこの5年間の歴史だったが、mixiにリアル以外の嗜好が入ってきたことで同じ土俵に立てる」との考えを示した。

 「サンシャイン牧場でゲームの楽しみを知り、GREEに興味を持ち始めるユーザーもいるようだ」と述べ、「この期に及んでまだmixiからユーザーを開拓できる。まだまだGREEはいけるのでは」とした。


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(甲斐 祐樹)

2009/11/13 15:50