インタビュー
初の「オンラインCEATEC」開催直前、エグゼクティブプロデューサー・鹿野氏にインタビュー
10月20日~23日に初の完全オンライン開催 320社/団体以上が出展
2020年10月16日 17:08
「CEATEC 2020 ONLINE」が、10月20日~23日に開催される。初めての完全オンライン開催となる今年のCEATECのスローガンは、「CEATEC - Toward Society 5.0 with the New Normal(ニューノーマル社会と共に歩むCEATEC)」。オンライン上に、「ニューノーマルエリア」、「企業エリア」、「Co-Creation PARK」、「コンファレンスエリア」の4つのエリアを用意。320社/団体以上が出展し、会期中20万人以上の来場を見込む。会期終了後も、12月31日まで、オンデマンド配信を行うことになる。開幕直前を迎えたCEATEC 2020 ONLINEの準備状況や、現時点で公開できる見どころなどについて、CEATEC実施協議会 エグゼクティブプロデューサーの鹿野清氏に聞いた。
【記事目次】
・新規出展者が45% 動画・オリジナルコンテンツなど充実した内容
・オンライン開催だからこそ、「いつでも」「どこからでも」簡単に参加
・新たに「ニューノーマル」エリアを設置 「ダイレクト検索」などツールを活用して新たな発見を
・今年はITソリューション企業が増加 課題解決につながる「共創」に期待
プラットフォームはほぼ完成動画・オリジナルコンテンツなど充実した内容
――史上初の完全オンライン開催となるCEATEC 2020 ONLINEの開幕まで、あと4日となりました。準備の状況はどうですか。
[鹿野氏]現在、出展者数は320社/団体以上となっています。昨年は、787社/団体であったことに比べると半減しているように見えますが、これまでは、1社のブースに複数企業が共同展示している数も含めていたのに対して、オンライン開催となった今回は、共同展示という制度がなくなりますので、申し込み数でカウントすることになります。その点で比較すると、昨年は355社/団体ですから、同じくらいに近付いています。また、昨年は39%だった新規出展者の比率は、今年は45%に拡大しているという点も特徴です。
一方で、オンラインイベントを行うためのプラットフォームは、ほぼ完成しました。当初設計したものに対する完成度も100%近いものになっています。出展者の方々には、10月に入ってから、各社のブースごとに、コンテンツをオンライン上に乗せてもらい、10月13日~15日まで、テストランを行い、来場者からどう見えるのかといったことも検証してもらっています。
この間、出展者からはかなりの数の問い合わせをいただいています。それに対応するために、CEATEC運営事務局だけでなく、協力企業にもすぐに対応できる体制を敷いてもらい、一緒に対応しました。出展する各社は、開催直前まで工夫を凝らしてくれそうです。
出展者の方々に話を聞きますと、動画を積極的に活用されていたり、CEATECのためにオリジナルのコンテンツを用意するといった企業が目立ちます。300社/団体以上の出展ブースを、会期中だけでは訪問できないぐらいの充実したコンテンツが揃いそうです。なかには、会期中に内容を入れ替えるといった出展者があるかもしれません。それもオンラインイベントならではの魅力だと思っています。
また、10月19日には、報道関係者向けに記者会見を行いますが、ここでは、資料や録画で説明するだけではなく、実際に、私がオンライン会場にアクセスし、ブースを訪問して、こんな風に取材をしてほしい、ブースではこんな体験をして欲しいということを説明する予定です。これも初めての経験ですから、うまくいくかどうかわかりませんが、オンラインならでは特徴を生かした取り組みのひとつとして挑戦します。報道関係者向けの説明会も、これまでとは違うものにしたいと思っています。
――今回のCEATEC 2020 ONLINEでは、オリジナル版のイベントプラットフォームの開発にこだわりましたが、それはなぜですか。
[鹿野氏]2020年5月に、オンラインで開催することを決定する以前から、オンライン化を視野にいれて準備を進めてきました。期間は短いですが、約半年あれば、オリジナル版として、CEATECが実現したいオンラインイベントの準備ができると考えたからです。
たとえば、入場登録の仕組みを共通基盤とすることで、来年以降のハイブリッド開催への移行を見据えた対応が可能になりますし、会期前や会期中、会期後までの出展企業、来場者からのフィードバックを集めて、来年以降に活かすことができます。
共同で開発を進めてきたサードパーティー企業は、これまでにも、出展者と来場者の接点をどう効率的に結ぶかといったことに共同で取り組んできた経緯があり、2017年からは、会場内の来場者の混雑度をヒートマップとして表示したり、2019年には公式アプリの開発でも一緒に取り組んできました。2020年の開催に向けても、公式アプリと出展者の管理ツールの連動を試みていたのですが、コロナ禍で、完全オンライン開催となったことで、当初検討を行っていた仕様を反映しながら、オリジナル版としてイベントプラットフォームの構築に取り組みました。
――2020年9月には、ドイツでIFA 2020が開催されましたが、これはCEATEC 2020 ONLINEの開催になにかしら影響をしていますか。
[鹿野氏]IFA 2020は、人数を限定しながらもリアルだけでの開催を予定していましたが、その後、オンラインでも開催することを発表し、結果として、初の大規模なハイブリッドイベントを開催することになったといえます。会場での徹底した衛生管理への取り組み、そして、オンラインによる世界への発信という点で、すばらしい挑戦でした。ただ、CEATECは、今年5月以降はオンラインイベントとしての開催を目指してきましたから、プラットフォームにもオリジナル性を持ち、様々なものを盛り込むことができました。会期終了後には、お互いに情報交換をする場を設ける予定です。
――来場者の事前登録の状況はどうですか。
[鹿野氏]事前登録は10月1日からスタートしています。例年ならば、8月上旬から登録ができるのですが、それに比べると、今年は2カ月ほど遅れています。いま、登録開始から2週間を経過していますが、数万人規模での登録があります。これが多いのか、少ないのか、あるいは、これから一気に増加するのかどうかはまったくわかりません。幕張メッセで開催していた時には、聴講したいコンファレンスは、先に予約をしないと会場に入れなくなる可能性もあり、早い段階から参加登録をするという傾向があったのですが、オンラインになったことでコンファレンス会場に入れる人数には制限がなくなり、極端にいえば、コンファレンスが始まる直前でも参加登録が大丈夫になりました。
これも、初めてのオンライン開催という難しさのひとつです。会期中に、「いま、CEATECをやってるんだ」ということを知り、登録するという人も多いのではないでしょうか。昨年、CEATECに登録した人は、その際のID番号を使って簡単に参加登録ができますし、初めて参加する方も、簡単に登録できます。私も自分で登録をしてみましたが(笑)、スムーズに完了しましたよ。
オンライン開催だからこそ、「いつでも」「どこからでも」
――CEATEC 2020 ONLINEの開催を知ってもらうための活動として、どんなことに取り組んでいますか。
[鹿野氏]10月14日付で、日本経済新聞に15段のカラー広告を出しました。他にもいくつかの新聞に広告を出稿する予定です。CEATEC 2020 ONLINEが、来週開催されるということを知っていただく狙いもありますが、地方にいて、これまで参加ができなかった人、あるいは、これまでCEATECにはつながりがなかった人にも、今回はオンラインですから、ぜひ参加をしてもらいたいという狙いがあります。
さらに、FacebookやTwitter、LINEにも、この週末から広告を出していきます。そして、海外からの参加を呼び掛けるために、LinkedInも積極的に活用します。紙面とデジタルを活用して、一人でも多くの人にリーチして、多くの人にCEATEC 2020 ONLINEに参加してもらいたいと思っています。
そのほかにも、これまでCEATECに参加していただいた各国大使館、業界団体などにも個々にお願いして、CEATECの開催を伝えてもらうといった活動も行っています。さらに、提携関係にある米ShowStoppersの協力を得て、海外メディアにも参加してもらうための仕掛けも行っています。今年はこれまで以上に海外からの参加者が増えることを期待しています。昨年のCEATEC 2019への海外からは参加者は2069人でしたが、今年は1桁変わる可能性もあると思っています。
――CEATECでは、ここ数年、新規参加者が約3割を占めていますが、今年はどうなりそうですか。
[鹿野氏]これも予測は難しいですが、もしかしたら半分ぐらいは初めてCEATECに来場する人になることも考えられます。私が期待しているのは、オンライン開催ならではの見学方法があり、それを徹底的に活用してもらいたいということなんです。
CEATECでは、年々、滞在時間が増加するという傾向が見られており、昨年の実績では62.5%の来場者が半日以上をかけて見学をしていました。ただ、幕張メッセまで行って、半日かけて会場を見学すると疲れてしまいますし、ましてや、2日間連続で行くということも、なかなかできないといった状況でした。
しかし、オンライン開催になったことで、幕張まで移動する時間がなくなり、いつでも、どこからでも、手軽に参加できるようになります。オンラインですと、PCに向かったまま、3~4時間連続して、会場を回るということは難しいかしれませんが、朝起きて、30分ぐらいCEATEC会場を回って、そのあとに仕事を始めたり、昼ご飯を食べながらブースを訪れてみたり、コンファレンスの時間だけまた参加するといった来場の仕方もできるわけです。スマホでも「来場」が可能ですから、通勤時間にCEATECのコンファレンスに参加するといったことも可能ですし、自宅に帰ってから、自分のPCでじっくり見学してみるといったこともできます。24時間アクセスできますし、会期後もオンデマンド配信が用意されていますから、来場者には参加の自由度が増えます。
新聞やオンラインニュースで話題になったコンファレンスや展示も、自分の都合にあわせて、好きな時間に見に行けるわけです。1日のなかのAnyTime、そして、会期中のAnyTimeが実現されるなかで、自分の時間にあわせて、CEATECに参加してほしいですね。ですから、これまでのリアルの会場では見学することができなかった午後5時以降、あるいは午前10時前の来場という人たちが増加することも期待しています。
また、主催者ではログを取っていますから、それをもとに、人気が集中したものについては、数週間後に「アフターCEATEC」といったオンラインイベントを開催するといった企画もできると思っています。そうしたオンラインならではの柔軟性も生かしてみたいですね。
さらに、学生にとっても、オンライン化したメリットがあります。CEATECの開催時間帯は授業をしている時間ですし、地方の学生たちは参加できませんでした。しかし、オンラインならば、そうした課題も解決できます。CEATEC 2020 ONLINEでは、学生向けのプログラムも多数用意しました。これまでにも、東京医科歯科大学が授業の一環にCEATECを組み込むといった例がありましたが、会期後のオンデマンド配信などをもうまく活用していただければ、最先端のテクノロジーが集まるCEATECの場を教育に利用することが、今後さらに促進されるのではないでしょうか。
新たに「ニューノーマル」エリアを設置「ダイレクト検索」などツールを活用して新たな発見を
――CEATECでは、展示会やコンファレンスを通じて、「見て」「聴いて」「感じて」「考える」という「CEATEC体験」を提案してきました。今回のCEATECでは、どんな体験をして欲しいと考えていますか。
[鹿野氏]CEATEC 2020 ONLINEは、オンライン上に、5つのエリアを構成しました。そのなかで、「CEATEC - Toward Society 5.0 with the New Normal(ニューノーマル社会と共に歩むCEATEC)」というスローガンにあわせて、今年は新たに「ニューノーマルエリア」を用意しました。ここでは、with/afterコロナ時代の新たな社会や暮らしとなるニューノーマルをキーワードに、持続的で、豊かな暮らしを実現するためのソリューションやテクノロジー、サービスを紹介します。
具体的には、「ニューノーマルソリューションズ」、「ニューノーマル社会を支える要素技術・デバイス」、「デジタルまちづくり」の3つのカテゴリーで構成し、課題解決型の提案が行われることになります。医療・ヘルスケア、働き方改革、通信、エンターテイメントといったようにテーマを明確化しながら、それらのテーマと連携したコンファレンスも用意しています。
ニューノーマル時代というのは、いま、多くの人が共通で抱える課題であり、その変化を自ら体験しています。ニューノーマルエリアは、それらの課題の提示と解決のヒントが集まっているエリアです。まずはここに行ってもらいたいですね。そして、これにリンクしたコンファレンスが、コンファレンスエリアのチャンネル2に集約されていますから、そこにも行っていただきたいですね。「見る」ことと、「聞く」ことで、ニューノーマルの世界を体験し、課題を解決していただきたい。これまでは、会場を回っていたら時間が押してしまい、コンファレンスが終わっていたなんてこともあったかもしれません。オンラインではそうしたことがありません。
また、これまでのCEATECは、会場にくると、まずは、お目当ての大手企業ブースに向かったり、人気になっているブースに行くという人が多かったと思いますが、オンラインということを考えると、混雑して入れないということはありませんから、慌てる必要はありません。
オンラインの特徴は、あるテーマに興味を持っていたとしたら、その分野の展示やコンファレンスに、時間の制約がなく参加できることにあります。「見る」と「聞く」を、パッケージとして体験できます。
さらに、「ダイレクト検索」によって、行きたいブースに直接アクセスしたり、トップページに表示される企業のブースを訪れてみたりといった使い方のほかに、「CEATEC GO」を使って、展示会場をブラブラと歩きながら偶然出会うのと同じように、検索やお勧めだけでは出会うことのできない、偶然による出会いの場も提供します。ちょっと時間に余裕ができたり、自宅でゆったりとしながら、CEATECを訪れることができる人には、ぜひ、「CEATEC GO」を使って、新たな発見をしていただきたいですね。
また、マイページには履歴が残りますから、未訪問のブースがすぐに分かります。そして、トップページの上部には、CEATEC GO、履歴、検索といったアイコンが並んでいますから、これをうまく使ってもらいたいですね。
各社のブースには、かなりの情報量が入っています。ブースあたりの滞在時間は今までよりも長くなるかもしれません。それもオンラインによる新たな体験ですね。もしかしたら、あまり目的意識を持たないで会場に入ってしまうと、あったという間に多くの時間を費やしてしまうといったことも想定できます。ぜひ、ツールをうまく活用していただき、CEATECに来場することによるメリットを、多くの人に感じていただきたいと思っています。
オンラインはいわば「ホームグラウンド」チャット機能などによる「共創」のきっかけに期待
――CEATECは、2016年に「脱・家電見本市」を打ち出しました。その年から、開催テーマとして「つながる社会、共創する未来」を掲げ、異業種企業を巻き込んだ「共創」の場が創出されてきました。今年は、異業種企業の参加が減少しています。「共創」の役割が減ってしまったのではないでしょうか。
[鹿野氏]昨年までのCEATECでは、展示会が始まる前から、様々な企業同士が共創を行い、その結果を展示会場で公開するといったことが数多く見られました。共同出展が多かったというのも、そうした背景がありました。また、異業種企業が参加した「Society 5.0 TOWN」も同様で、出展者同士が、開催前から共創を行うという動きが見られていました。もちろん、展示をきっかけにして、新たな共創が生まれるといったことも、ここ数年はずいぶん増えてきました。
ただ、今年は、CEATEC 2020 ONLINEの会場で、さらに多くの共創が生まれることを期待しています。オンラインになったことで、より多くのブースを回ることができますし、理解を深めることもできます。出会いの数が増えますし、リアルタイムの「コミュニケーションチャット機能」を使っていただき、ぜひ、共創のきっかけにつなげてほしいですね。
初めてCEATECに出展する企業が5割近くなり、新たに来場する人が同様に5割近くなれば、新たな共創が生まれる可能性はさらに高まります。また、CEATEC 2020 ONLINEでは、これまで以上に、ITソリューションの企業の参加が増えていますから、課題解決につながる共創も生まれやすいのではないでしょうか。それも今年のCEATECの特徴といえます。
――電機大手8社(日立製作所、パナソニック、ソニー、東芝、富士通、三菱、NEC、シャープ)のなかでは、今年は東芝が復帰したものの、パナソニックが昨年に引き続き、出展を見送りました。なかなか足並みが揃いませんね。
[鹿野氏]しかし、パナソニックの子会社であるパナソニックソリューションテクノロジーが初出展します。電機大手8社の「ブランド」がすべて出揃うのは、7年ぶりのことになります。
――CEATEC実施協議会を構成するのは、一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)、一般社団法人情報通信ネットワーク産業協会(CIAJ)、一般社団法人コンピュータソフトウェア協会(CSAJ)の3団体です。「オンライン」によるイベント開催は、いわば3つの団体が対象としているITやエレクトロニクス、情報通信、ソフトウェアの技術を融合することによって成り立っています。「地元開催」ということもできるのではないでしょうか(笑)。
[鹿野氏]その点では、オンラインイベントは、ホームグラウンドといえますね(笑)。そして、この環境をシームレスに世界につないでいくということにも挑戦します。CEATEC 2020 ONLINEでは、オリジナル版のイベントプラットフォームを開発し、多くの人が直感的に体感できることを目指しました。
出展者は、動画などのコンテンツも見やすく配置することができ、豊富な情報を提供できます。さらに、来場者は様々なツールを活用して、効率的に見学したり、より深くコミュニケーションを図ったりできます。まだまだ改善点があることは承知していますが、ぜひ、CEATEC 2020 ONLINEを楽しんで欲しいと思います。
――ちなみに、これまでは、先端テクノロジーを持つ業界であるにも関わらず、事務処理は紙やハンコの文化と聞いていましたが、それは、今回のオンライン化で改善されましたか。
[鹿野氏]実は、完全オンライン開催を決定する前から、今年は、出展申し込みのデジタル化を進めてきました。ネット上から申し込みに変え、自動的に請求書が発行できるようにしました。昨年は、来場者登録のフルデジタル化を行い、今年は出展申し込みのフルデジタル化を実現するといったように少しずつ進めています。
ただ、それ以外のプロセスにおいては、まだまだハンコが多いのが現実です。契約書、請求書といったところをいかにデジタル化するかが課題です。デジタル分野は、私たちのホームグラウンドですから、来年に向けて、さらにデジタル化を進めてきたいですね。
出展案内や開催結果報告などは、これまで紙で制作していましたが、これをデジタル化するということも、今回から実現できましたし、出展説明会も、オンラインで開催する方が、多くの方々に参加していただけるということがわかりました。来年の出展説明会は、オンラインだけで開催するつもりです。ハンコの話だけでなく、デジタル化への挑戦は様々な角度から取り組んでいくつもりです。こうした内側からのデジタル化もCEATECが挑むテーマのひとつですね。