インタビュー
ソニーは「テクノロジーで感動」を目指す、CEATEC展示はエンタメ、スポーツから医療まで!
CEATECブースで「体感」を
2020年10月20日 06:32
CEATEC 2020 ONLINEのソニーブースでは、「3R Challenges」をテーマに、同社が追求する「リアリティ(Reality)」、「リアルタイム(Real time)」、「リモート(Remote)」による「3Rテクノロジー」を紹介する。
「ニューノーマル社会にテクノロジーで感動と安心を届ける12の取り組み」と題して、3つの分野から、12のテクノロジーを体感できる内容となっているのが特徴だ。「テクノロジーに裏打ちされたクリエイティブエンタテインメントカンパニー」を標榜するソニーの「いま」と「未来」を見ることができる展示内容だ。
「リアリティ」、「リアルタイム」、「リモート」感動を実現する「3Rテクノロジー」
ソニーは、同社のPurpose(存在意義)として、「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」と定義している。
「感動」は、ソニーの企業姿勢を象徴する言葉として、いまや広く定着している。
ソニー 代表執行役副会長の石塚茂樹氏は、「ソニーは、祖業であるエレクトロニクス事業において、クリエイターとユーザーを『感動』でつなぐ役割を担ってきた。そして、ニューノーマル社会において、世界中で移動が制限されているなかでも、人々がエンターテインメントの『感動』を求める気持ちには変わりがないことを再認識した」と語っている。
ソニーの石塚副会長は、CEATEC実施協議会の会長も務めている。
今回のCEATEC 2020 ONLINEのソニーブースでは、こうしたソニーのPurposeと、感動を実現する「3Rテクノロジー」を数多くの展示しているのが特徴だ。
ソニー 広報部プロダクト広報グループ ゼネラルマネジャーの山藤大地氏は、「ソニーの役割は、感動を作り届け続けること。ニユーノーマル社会において、それを実現する鍵になるのが3Rテクノロジーである」と語る。
3Rとは、「リアリティ(Reality)」、「リアルタイム(Real time)」、「リモート(Remote)」の3つの頭文字を取り、「場所にとらわれず(リモート)、同時(リアルタイム)に、同じ現実感(リアリティ)でコンテンツを共有することで、感動と安心を届けることに貢献する」とする。
ソニーの山藤ゼネラルマネジャーは、「これまでのソニーは、音、映像、通信の技術によって、リアリティやリアルタイムを極めた商品、サービスを展開してきた。だが、人が集まることや移動の制限がある新しい生活様式であるニューノーマル社会においては、これに加えて、人と人、人とモノを遠隔でつなぐリモートの価値が強く求められている」と前置きし、「ソニーは、3つのRのテクノロジーによって、様々なチャレンジを行い、人々にエンターテインメントの感動とそれを支える安心を届けたい。今回のCEATEC 2020 ONLINEでは、その姿を多くの人にお見せしたい」と語る。
「3R Challenges」コロナ禍でもあえて挑戦
ソニーは、CEATEC 2020 ONLINEの展示テーマとして、「3R Challenges」を掲げた。
ここで打ち出した「Challenges」という言葉に大きな意味がある。
「3R Challengesには、ニューノーマル社会において、新しい未来を切り拓くためのソニーの挑戦という意味を込めた。10年前や20年前にはできなかったことを、いまのソニーの幅広いテクノロジーでどう実現していくか、ご覧いただける構成になっている」とする。
3Rテクノロジーは、2020年5月に開催された経営方針説明会で、ソニー 代表執行役会長兼社長 CEOの吉田憲一郎氏が初めて対外的に公表していた。その3Rテクノロジーを広く紹介するのは今回が初めてとなる。そうした機会において、3Rによって新たな未来に挑戦するソニーの姿勢を、「3R Challenges」という言葉に集約したともいえそうだ。
「こういう時期だからこそ、あえてチャレンジという言葉を使った」と、山藤ゼネラルマネジャーは語る。
12本の豊富な映像コンテンツで感じる、ソニーの技術
ソニーブースに入ると、まずは、同社が取り組む「Reality」、「Real-time」、「Remote」という文字が次々と表示される。
あとは、画面を下方向にスクロールすればいい。多くの企業が定型のツールを活用して出展しているのに対して、ソニーは、自らがサイト作りこんだ独自の画面構成となっており、白を基調としたシンプルな画面デザインは、CEATEC 2020 ONLINEの各社の展示のなかでも、際立って洗練された印象を受ける。
「極⼒⽂字などを少なくして、直感的なUIを使った。映像を視聴して感じてもらい、ソニーの取り組みを知ってもらうことを⽬指した」という。
スクロールをしていくと、そこに、「3R Challenges」による3つのカテゴリーが順番に表示され、合計で12本の映像コンテンツを視聴することができる。気になった映像コンテンツを見つけたら、その動画をクリックすればいい。それぞれの映像コンテンツの時間は、4~5分となっており、技術を開発した現場の社員、技術やプロジェクトに関わったパートナーやユーザーなどが解説をしているのが特徴だ。
また、映像コンテンツの下には、関連するリンクが用意されており、より詳しく知りたい場合には、それらのサイトに飛ぶことができる。また、リアルタイムチャット機能は用意されてい ないが、ソニーにコンタクトをすることができるようになっており、質問や商談の問い合わせは、そこに書き込めばいい。
「3R Challenges」の展示は、3つのカテゴリーで構成される。
「Entertainment × 3R Challenges」エンターテイメントの壁を壊す
ひとつめは、「Entertainment × 3R Challenges」である。クリエイターとユーザーに近づき、グループ総力でリモート環境を活かす制作、視聴ソリューションを提案しているエリアで、エンターテインメントの新機軸を打ち出し、「3Rでエンターテインメントの壁を壊す」ことを狙う。
ここでは、6つのテクノロジーを紹介している。
そのうち3つが制作関連のテクノロジーだ。
「Remote Live Solution」リアル×リモートのハイブリッドライブを開催
「Remote Live Solution」は、新たな時代の熱狂を生み出す、リアルとリモートの融合で進化するライブエンタテインメントを目指すもの。ソニーミュージックと開発を進めている音楽ライブ配信システム。東京・お台場のライブハウス「Zepp」などに常設した撮影・配信設備を活用して手軽にライブ配信を実現できる。
「Virtual Production Lab」時空を超えた映像制作を実現
「Virtual Production Lab」は、コロナ禍でも、時空を超えた映像表現、制作を可能にする高精細の背景特撮スタジオ。米国ソニーピクチャーズで実績あるセンシング技術とCLEDディスプレイを活用し、目黒のソニーPCLに新設したもの。映像ではその取り組みを紹介している。
「360 Virtual Mixing Environment」耳の中にシアターを再現
「360 Virtual Mixing Environment」は、映画などのサウンド制作に用いられている大型スタジオの音を、ヘッドホンで精度高く再現する技術。⽿の中にシアターを再現することができる仮想制作(ミキシング)環境ともいえる技術だ。
残る3つが、ユーザーの利用環境において活用される技術である。
「Volumetric Capture」人力では撮れない場所からも、360度撮影
「Volumetric Capture」は、360度を丸ごと撮影し、かつてない視点で、かつてない映像表現を実現することができる技術である。ボリュメトリックキャプチャと呼ぶこの技術は、実在の人物や場所を3次元デジタルデータに変換することで実世界空間をまるごと取り込み、後から自由に視点を動かして視聴することを可能にする自由視点映像技術として注目を集めているものだ。
Xperiaの高解像度VRで没入体験
また、「Xperia VR」は、ソニーのスマホであるXperiaの21:9シネマワイドディスプレイに合わせて開発した広視野角レンズと、4KHDR OLEDディスプレイを用いた高い映像再現技術、8K 360度ビデオの再生ができる性能を活かして、究極の没入映像体験を追求する実験的な取り組み。
人間の能力を拡張する没入体験によって、本物以上に本物らしい表現を実現することを目指すという。
「Sports × 3R Challenges」スポーツの可能性を広げる
2つめのカテゴリーは、「Sports × 3R Challenges」である。
映像技術やデータ解析技術で、選手強化と観戦の娯楽性に寄与し、スポーツエンターテインメントの世界市場拡大に貢献。「3Rでスポーツの可能性を広げる」ことを目指すソニーの姿を紹介している。
「Hawk-Eye」バーチャルで選手たちとプレーできる日も近い?高精度トラッキングシステム
このエリアで最初に紹介するのが「Hawk-Eye」である。すでに25種類のスポーツ、年間30,000の試合やイベント、90か国以上、500以上のスタジアムで利用実績がある。トラッキング技術と動きの可視化・分析により、チーム強化だけでなく、新たなスポーツの楽しみ方を体験できるものだ。すでに、テニスのインアウト判定や、サッカーのゴール判定などにも正式に採用。スポーツにイノベーションを与える技術として注目を集めている。
「Society ×3R Challenges」医療、教育、クリエイティブ…3Rで社会課題に立ち向かう
3つめのカテゴリーが、「Society ×3R Challenges」である。
社会と地球環境が抱える課題。とくに医療、教育、クリエイティブなどの領域に、テクノロジーの提案と、継続的なサポートを行い、「3Rで社会課題を解決する」ことを提案する。
人の眼を超える「Intelligent Vision Sensor」
「Intelligent Vision Sensor」のコーナーでは、知能を与えられたイメージセンサーが、捉えた情報や状況をAIにより瞬時に認識することができる様子などを紹介する。ソニーでは、数多くのイメージセンサーを開発し、これが数多くのシーンで利用されている。なかでも、2020年5月に発表したインテリジェントビジョンセンサーは、AI機能を実装したカメラの開発を促進したり、高速なエッジAI処理によって小売業界や産業機器業界における多様なアプリケーションの実現に貢献したり、クラウドとの協調システムの構築にもつながるセンサーとして注目を集めている。
「IP Live Solution」低遅延、リアルタイムで映像伝送
「IP Live Solution」においては、新時代の映像中継を実現し、距離と時間を越えてつながるIP Liveソリューションを提案する。映像や音声、同期信号などの伝送を、ネットワークを利用して確実に伝送するライブ制作の環境を提供する。ここでは、協業するNevionの技術を活用したソリューションも紹介している。
「Medical Solution」映像、認識などの技術で医療現場に貢献
そして、「Medical Solution」では、昨年のCEATEC 2019のソニーブースで話題を集めたソニーの医療関連技術の進化を紹介。細胞解析装置(研究)、医療向けモニター(診断)、4K内視鏡・顕微鏡と院内映像情報システム(治療)などに、ソニーのテクノロジーが活用される様子を体験できる。
「テクノロジーをどう掛け算して、何ができるか」
そして、これらの3つのカテゴリーのコーナーとは別に、「ソニーの取り組み」というタイトルの動画が用意されている。
ここでは、地球のなかで、ソニーがどんな貢献をしているのかといった活動を、テクノロジーに裏打ちされたエンターテイメンメントカンパニーという観点から紹介している。
「ソニーの強みは、多様性の掛け算である。テクノロジーと事業の多様性をどう掛け算して、なにができるのか。その取り組みを、社内外、国内外に広く発信して、3R Technologiesのモーションロゴの様に、うねりから何か新しいものが生まれて欲しい」という。
このように、今回のソニーブースのオンライン展示は、Reality、Real-time、Remoteの「3R」を軸としたテクノロジーの力によって、いまと将来の課題を解決し、新たな価値を創出していくソニーの姿勢を示すものになる。
「これだけの大規模展⽰会が、⽇本において完全オンラインで開催されるのは初めてのことである。まさに、⼿探りの状態のなかで準備を進めてきた。画面上の展⽰では、個々の商品、例えばBRAVIAの映像美やαの高性能はなかなか伝えにくい。ならば技術やソリューション、人の取り組みや思いを映像化するチャンスだと考えた。テクノロジーに裏打ちされたソニーという会社がなにを考えてどちらに向かっているのか、CEATEC 2020 ONLINEでは 3R Challenges という12本のビデオでお伝えしたい」とする。
当初から、テクノロジーを見せるという狙いで出展するコンテンツを考えていたことから、11月に発売を控えているプレイステーション5などの新製品や、話題を集めている「鬼滅の刃」などのコンテンツの展示はない。
一方で、当初は数本程度と考えていたテクノロジーの題材は、議論を進めていくうちに徐々に増加。最終的に12本になったという。また、ソニーグループが持つコンテンツづくりのノウハウが活用されて、映像コンテンツが作成されている点も見逃せない。
「新型コロナウイルス感染症の拡大で世界が一変し、人が集まることや移動が制約され、高品位の映像や音楽の制作、ライブやスポーツイベントの開催も制限されている。このような新しい生活様式のなかでも、人が安心してエンターテインメントを楽しみ、感動を求める欲求は変わらない。そうした社会において、ソニーは何に貢献できるのかといったとことを提言したのが今回の展示。ブースを訪れて、ソニーは、こんなことをやっているんだ、こんな技術を持っているんだ、そして、技術をこんな風に活用できるんだということを知ってもらいたい。ぜひ、CEATEC 2020 ONLINEに来場する様々な企業の方々と協業するきっかけの場にしたい」としている。
ニューノーマル社会において、ソニーは、テクノロジーに裏打ちされたクリエイティブエンタテインメントカンパニーを目指している。その姿を感じることができる展示内容になっている。
石塚副会長による基調講演:20日午前10時15分から開催
一方、開催初日となる10月20日午前10時15分から、ソニー 代表執行役副会長の石塚茂樹氏による「ニューノーマル社会にソニーが提供する新たな価値」と題した基調講演が、コンファレンスエリアのチャンネル1で行われる。ソニーブースの展示テーマでもある「3R」を軸としたテクノロジーの力で、ニューノーマル社会における課題解決や、新たな価値創出への取り組みを提言することになるほか、「Purpose」、「People」、「Planet」という3の観点から、ソニーの事業を通じた社会価値の創出についても言及。さらに、2021年4月から、ソニーの商号を引き継ぐ、ソニーエレクトロニクスの貢献に対するコミットなども示されると思われる。
「宇宙感動体験の幕開け~JAXA J-SPARC partnership with Sony~」ソニー、東京大学、JAXAの共同プロジェクトについて解説
また、10月20日午後3時からは、「宇宙感動体験の幕開け~JAXA J-SPARC partnership with Sony~」と題した講演が行われる。ここでは、ソニーと東京大学、JAXA(国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構)が共同で取り組むプロジェクトについて解説する。
同プロジェクトは、地上から自由にリアルタイムでカメラを遠隔操作できる人工衛星とサービスを通じて、宇宙から地球や無数の星を眺める環境を実現するもので、これまで宇宙飛行士にしかできなかった特別な「宇宙感動体験」を届けることを目指している。
ソニーからは、同社事業開発プラットフォーム新規事業化推進部門宇宙エンターテインメント準備室の中西吉洋氏が登壇。プロジェクトのキーパーソンたちが、「宇宙を解放する」をテーマに、宇宙の視点を活かしたエンターテインメントや事業など、様々な可能性について語ることになる。ここでは、twitterキャンペーンも実施。自由に遠隔操作できるカメラを搭載した人工衛星の使い道をtwitterで募集。ハッシュタグ「#私の宇宙カメラの使い道」を付けて投稿されたアイデアを、コンファレンス当日に出演者がピックアップして、独創性や実現性について議論するという。
なお、CEATEC 2020 ONLINEのソニーブースのコンテンツは、会期中は24時間視聴が可能だ。また、10月24日以降は、ソニーの公式YouTubeチャンネルでも一般公開予定される予定だ。
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