イベントレポート
CEATEC 2020 ONLINE
ソニー石塚氏が基調講演「長期視点で社会や地球環境への貢献を目指す」
2020年10月21日 11:23
2020年10月20日から開催されたCEATEC 2020 ONLINEで、基調講演のトップバッターとして登壇したのが、ソニー 代表執行役副会長の石塚茂樹氏だ。同氏は、CEATEC実施協議会会長も務めている。
「コロナ終息後も元の価値観に戻ることはない」長期視点で社会や地球環境への貢献を目指す
「ニューノーマル社会にソニーが提供する新たな価値」をテーマに、「Reality」、「Real-time」、「Remote」の「3R」を軸としたテクノロジーによって、社会課題を解決し、新たな価値を創出していくソニーの新たな姿勢を提言する内容となった。
冒頭に、「Envisioning the Future」と題したビデオを上映して、ソニーの企業姿勢などについて紹介。井深大氏と盛田昭夫氏の2人のソニー創業者の写真を映し出しながら、いまでも「社会貢献」という創業時の志を受け継いでいること、「クリエイテイビティとテクノロジーの力で世界を感動で満たす」というソニーのPurpose(存在意義)」を掲げていること、ソニーが持つ様々なテクノロジーが、世界規模で発生している数々の社会課題の解決に貢献し、新たなものを生み出して価値を提供していることなどを示した。
ソニー 代表執行役副会長の石塚茂樹氏は、「新型コロナウイルスは、人々の暮らしや働き方、グローバル経済に大きな影響を与えた。変容した様々な価値観は、コロナが終息したあとも元に戻ることはない。ソニーは、新たな日常のなかでも社会課題を解決し、感動あふれる生活をもたらすために、テクノロジーを用いてなにができるかを徹底的に考える必要があると思っている。ソニーはPurposeに基づき、ユーザーとクリエイターを軸にするとともに、長期視点による事業を通じて、人々が存在する社会や地球環境に貢献することを目指していく」と述べた。
また、東京大学やJAXAと宇宙感動体験事業を向けて、ソニーのカメラシステムを搭載した人工衛星の共同開発を発表したことに触れ、「経営の視野を広げると、地球の外には宇宙がある。この事業は、宇宙飛行士の視点から美しい地球の姿を高画質で人々に届けることができ、地球を大切にする思いを育むことにつながる」とした。
製品1台あたりのバージンプラスチック使用量10%削減を目指す
石塚副会長は、「ソニーの社会的使命は、感動をつくり、届け続けることである。人々が感動でつながるためには、人、社会、地球が健全であることが前提となる」と切り出し、まずは、多様性を守る環境への取り組みについて説明した。
プラスチックゴミによって、海の生態系が大きな影響を受けていることを指摘。「ソニーは、プラスチックを使用している企業として、この問題を重く受け止め、2019年からOne Blue Ocean Projectを開始している。事業所内での使い捨てプラスチックの使用削減や海岸清掃などのほか、製品や包装材のプラスチック使用量削減、再生プラスチックの積極利用を進めている。2025年度までに、製品1台あたりのバージンプラスチックの使用量を、2018年度比で10%削減を目指し、新規に設計する小型製品のプラスチック包装材の全廃を目指す」とした。
「多様性」はソニーのバリュー「すべての事業の軸は人」
一方で、「多様性は、ソニーが、持続的に、社会的価値を創出し続ける上でも、大切にしているバリューのひとつである。ソニーのすべての事業の軸は人であり、感動コンテンツを通じて、人の心を動かし、ソニーが持つ技術を生かして、人と人をつなぎ、安全、安心、健康への貢献を通して、人を支える。これらの幅広い事業を世界11万人の社員で展開している。多様な人材が、多様な事業を作りだし、これらの事業を通じて、多面的に、社会や環境に貢献したい」と述べた。
自動車からライフサイエンスまで、社会で活きるテクノロジー
続けて、社会価値創出への取り組みを、いくつかのテクノロジーをベースに紹介した。
「センシング技術」コンセプトカー「VISION-S」、AI搭載センサーに使用
1つめは、センシング技術だ。ここでは、コンセプトカーである「VISION-S」に、多くのイメージング技術やセンシング技術を活用していること、世界初となるAI機能を搭載した「インテリジェントビジョンセンサー」によって、店舗内での顧客の行動把握などにより、人材や商品の最適配置に生かすといった効率化に活用できることを紹介。「学習後のAIをエッジに配置することで、処理の高速化などを実現できる」などとした。
「メディカル事業」蛍光試薬の素材開発、新型コロナ研究にも応用
2つめは、メディカル事業での取り組みだ。組織や細胞の特徴を分析するために使用する蛍光試薬の素材となる「KIRAVIA Dyes」を独自に開発し、ライセンス供給を行ったり、試薬の販売を行っていることを紹介。「ソニーは、フローサイトメトリー事業には2010年から参入しており、ブルーレイディスク技術などを応用した様々なフローサイトメーターを商品化してきた。米ヴァンダービルト大学メディカルセンターでは、ソニーのセルソーターであるSH-800を用いて、新型コロナウイルスに結合可能な抗体を産出する細胞を分種することに成功した。これは、ワクチンや治療薬の開発につながる可能性がある。今後もライフサイエンス分野に、ソニーの技術を生かしたい」と述べた。
「Reality」、「Real-time」、「Remote」ソニーが貢献する3Rテクノロジー
続いて触れたのが、ニューノーマル時代におけるソニーの3Rテクノロジーの貢献だ。3Rは、「Reality」、「Real-time」、「Remote」を指す。
石塚副会長は、「新型コロナウイルスの影響によって、多くの人が集まることや、高品質な映像および音の制作、ライブやスポーツ観戦を楽しむことといったことが制約されている。一方で、エンターテインメントを楽しみたい、感動したいという人の欲求は変わらない。ソニーは、テクノロジーの力でこれらの課題を解決したい」と前置きし、「高画質、高音質を極めるRealityのテクノロジーは創業時からソニーが得意としてきたものである。ITの普及に伴い、入力側の状況を把握し、出力側に情報として届け、全体の流れをReal-timeに実現することでも、ソニーは新たな価値を提供できる。このReality、Real-timeの価値を、Remoteでも実現できることは新たな提供価値になる。Realityあふれるコンテンツを、Real-timeに、Remoteで楽しむことを実現するだけでなく、テクノロジーによって、Remoteならではの新しい感動を生み出すことにも挑戦している」とした。
3Rテクノロジーの具体的な例として、デジタル空間でRealityあふれるコンテンツをRemoteで制作できる「バーチャルプロダクション」、全天球映像技術によって、臨場感があるコンテンツを制作できる「Volumetric Capture」、劇場などの音響空間向けの音をRemoteで制作できる「360 Virtual Mixing Environment」、映像とデータを活用して新たな価値を想像することができる「Sports Entertainment」について紹介した。
これらのテクノロジーは、CEATEC 2020 ONLINEのソニーブースで公開している。
石塚副会長は、「今回のCEATEC 2020 ONLINEでは、テクノロジーに裏打ちされたクリエイティブエンターテイメントカンパニーである、ソニーの新たな姿を見せたいと考えている」とした。
「宇宙にも視野を広げ、持続可能な社会、環境の実現に貢献していきたい」
石塚副会長は、2021年4月からソニーの商号を引き継ぐことになる、現ソニーエレクトロニクスの代表取締役社長兼CEOを務めている。
「エレクトロニクス事業はソニーの祖業であり、ソニーの歴史の重みと商号を引き継ぐ大きな責任を感じている。創業者が約半世紀前に語った言葉のひとつに、『こういう困難なときに勇気を持って、これに向かっていくのが、いわゆるソニースピリットである、と私は信じている』というものがある。改めてソニー株式会社としてスタートする2021年度に向けて、ソニースピリットで挑んでいく所存である」と語った。
続けて、「長期視点で新たな価値を生み出すためには、世界中の社員と、ソニーは何のために存在し、どこに向かうのかといったことを共有していくことが、極めて重要である。ソニーは技術の力を用いて、人々の生活を豊かにしたいというファウンダー(創業者)の夢から生まれた会社であり、この想いが現在のソニーのPurposeの起源にもなり、ソニーグループのすべての活動の基盤になっている。今日、紹介したテクノロジーによる社会への貢献は、ソニーの多様な人材が担っている取り組みの一部である。長期視点に立ち、地球の先の宇宙にも視野を広げ、今後も持続可能な社会、環境の実現に貢献していきたい」と述べた。
最後に、今回のCEATEC 2020 ONLINEのソニーブースのテーマである「3R Challenges」のビデオを上映し、「Entertainment×3R Challenges」、「Sports × 3R Challenges」、「Society ×3R Challenges」という3カテゴリーにおける12種類の展示内容について紹介した。
なお、基調講演は、日本橋三井ホールからのリアルタイム中継で行われた。
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