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2024年(令和6年分)年末調整の書き方を図解<3>「生命保険料控除」を計算するには? サポートツールが簡単で便利!

「令和6年分 給与所得者の保険料控除申告書」の記入手順

年末調整の「生命保険料控除」を計算するには? サポートツールが簡単で便利! 2024年(令和6年分)年末調整の書き方を図解<3>「令和6年分 給与所得者の保険料控除申告書」の記入手順 特集記事の扉絵

 第1回は3枚+1枚の申告書の記入例(早見表)など、第2回は「令和6年分 給与所得者の基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 年末調整に係る定額減税のための申告書 兼 所得金額調整控除申告書」の詳しい(手抜きする?)書き方を紹介した。3回目となる今回は 「令和6年分 給与所得者の保険料控除申告書」 の書き方を見ていこう。面倒・複雑な生命保険料控除の計算・記入は、生命保険会社が提供している“サポートツール”を利用するとグッと楽になるはずだ。

 まもなく「年末調整」の提出期限を迎える人が最も増える時期となる。読者のお手元には生命保険会社などから保険料控除の証明書が届いているはずだ。「令和6年分 給与所得者の保険料控除申告書」の書き方とともに、控除証明書が届いていない、あるいは紛失したときの対処法などもお知らせしよう。

保険料控除証明書のハガキ
保険会社などから控除証明書が届いているはず

今年の変更点

 「給与所得者の保険料控除申告書」の変更点は、生命保険料控除・地震保険料控除・社会保険料控除にあった「あなたとの続柄」欄が削除されたこと。大きな変更ではなく、記入項目が減り簡素化されたのは良いことだと思われる。

「令和5年分 給与所得者の保険料控除申告書」から「令和6年分 給与所得者の保険料控除申告書」への変更点
「保険料控除申告書」の変更点

「保険料控除申告書」とは

 「令和6年分 給与所得者の保険料控除申告書」は、生命保険や地震保険、近年人気のiDeCoなどで支払った金額を申告し、納税する額を減らすための申告書だ。主役となる生命保険は旧制度・新制度など複数に分類されていて、保険料から控除額を算出する式も分かりにくく、(手抜きをしないと)少々手間のかかる作業となる。

 生命保険は一度契約するとそのまま継続する人が多い。前年に記入した申告書のコピーを持っている人は、保険契約の変更がなければそれを見ながら記入すると楽だ。当然、今年書いた申告書はコピーを取るか、スマホで撮影するか、記入したPDFを保存して来年利用したい。

 この申告書は5つのブロックに分かれている。上段は会社名や自分の氏名、住所などを記入する欄。下段の左側、大きなエリアが主役となる生命保険。右側は地震保険、社会保険、確定拠出年金(iDeCo)などを記入する欄が縦に並んでいる。

「令和6年分 給与所得者の保険料控除申告書」の5つのブロック
「令和6年分 給与所得者の保険料控除申告書」の5つのブロック

 最上段のブロックは会社名や自分の氏名、住所など記入する欄となっている。おそらく左端の所轄税務署や会社名、法人番号、会社の住所は会社が記入してくれるだろう。ご自身は氏名と住所を記入すれば終了だ。

主役の「生命保険」は新旧制度あわせて5種類

 現時点で最新の国税庁の令和4年分申告所得税標本調査によると、生命保険料控除を受けている人は78.8%。多くの人が記入するこの申告書の主役だ。まずは生命保険会社などから送られてきた控除証明書を手元に用意しよう。

 生命保険の控除は、平成23年(2011年)以前に契約した保険が「旧制度」、平成24年(2012年)以降に契約した保険が「新制度」となっている。さらに旧制度は「一般生命保険」(医療保険を含む)と「個人年金保険」の2種類、新制度は「一般生命保険」「個人年金保険」に「介護医療保険」を加えた3種類で、新旧あわせて5種類に分類されている。

生命保険料控除の新制度・旧制度の計5種類の分類
生命保険料控除は「旧制度」「新制度」があり、旧制度は「一般生命保険」「個人年金保険」の2つ、新制度は「一般生命保険」「介護医療保険」「個人年金保険」の3つに分かれている

 自分がいつ生命保険に加入したかを覚えている人は少ないだろう。「えーっと、子どもが生まれた年に保険に入ったから……」と記憶をたどる必要はない。手元にある控除証明書に適用制度が旧制度か新制度か、一般(生命保険)用、介護医療用、個人年金用などが記載されているので、それを見ながら記入しよう。この証明書は記入を終えた申告書と一緒に提出しよう。

生命保険料控除証明書に記載された生命保険控除の分類
「一般用」「旧制度」と記載された生命保険料控除証明書
生命保険料控除証明書に記載された生命保険控除の分類
「介護医療用」「新制度」と記載された生命保険料控除証明書

保険料控除証明書がまだ来ない、見つからない……というときは

 筆者の手元に届いた保険料控除証明書は10月1日にアフラック、翌週にもう1つのアフラック、最後はソニー生命だった。近年、年末調整の提出日が早くなる傾向があり、人によっては年末調整の提出日までに控除証明書が届かない人もいそうだ。

 事前に生命保険会社のウェブ登録をしておけば、生命保険料控除証明書は電子データのダウンロードができる。アフラックから筆者に届いた「生命保険料控除証明書 電子データ発行のお知らせ」というメールの日付を見ると9月11日、郵送より20日ほど早く電子データは取得できそうだ。

アフラックの「生命保険料控除証明書 電子データ発行のお知らせ」メール
電子データなら9月上旬に控除証明書を受け取ることができた

 お勤めの会社の年末調整の提出日が早い人は、電子データをダウンロードできるようにしておけば、毎年郵送の証明書が届く前に電子データのダウンロードが可能となり、「証明書がまだ来ない」とやきもきすることはなさそうだ。付け加えると、生命保険会社のウェブ登録には証券番号が必要となる。証券番号は控除証明書に記載されている。年末調整に添付して提出する前に、証券番号を控えておくと、控除証明書を紛失した際の対応に役立つと思われる。

控除証明書に記載されている生命保険の証券番号の例

 控除証明書が紛失などで見つからない場合、ハガキの証明書の再発行には、1)オペレーターに依頼、2)自動音声による再発行、3)インターネットによる再発行がある。郵送の場合は数日かかるので、提出期限ギリギリの場合は電子データをダウンロードしよう。お勤めの会社がダウンロードした電子データでそのまま提出できる場合は電子データ、電子データ不可の場合はPDFを印刷して提出しよう。

 筆者が加入していたアフラック、ソニー生命、第一生命の証明書発行の方法は、以前に紹介している。他の生命保険会社も似たような手続きだと思われるので参考にしていただきたい。

「生命保険料控除」の計算

 生命保険料控除の計算は面倒くさい。ここでは計算方法を説明するが、もっと楽な方法を次項で紹介するので手計算をする必要はない。

 一応、面倒な計算方法を紹介しよう。加入している生命保険の1年間の支払額から「生命保険料控除」の額を算出する計算式は、申告書の最下段に「計算式I(新保険料等用)」「計算式II(旧保険料等用)」が用意されている。

生命保険料控除の計算式1(新保険料等用)
計算式I(新保険料等用)

 新制度の保険料の合計額が2万円以下なら、合計額がそのまま控除額となる。例えば1万9860円なら計算は不要で1万9860円となる。8万1円以上なら控除額は上限の一律4万円となるのでこれも計算不要だ。複数の保険に加入しているときは、8万1円以上の保険が1つあれば上限額を超えるので、他の保険は記入不要だ。もし9万円、6万円、3万円の保険があったら9万円の保険だけ記入すればよい。年末調整が意味不明だったサラリーマン時代の筆者は、このことに気付くのに十数年かかった。生命保険2つに加え、長女と長男の学資保険を毎年全部記入していた。

 旧制度の保険料は合計額が2万5000円以下なら、合計額がそのまま控除額となる。10万1円以上なら控除額は一律5万円となる。

生命保険料控除の計算式2(旧保険料等用)
計算式II(旧保険料等用)

 記事で紹介する事例は5万円、10万円など切りの良い金額となるが、実際の保険料はそうではない。難しい計算ではないが、新旧で計算式が違うので勘違いによる間違いもありそうだ。例えば3万3580円の介護医療保険(新制度)は以下の計算となる。

  3万3580円×1/2+1万円=2万6790円

 このように少々面倒な生命保険料控除の計算に役立つのが、生命保険会社が提供しているサポートツールだ。

保険会社の「生命保険料控除申告サポートツール」を活用しよう

 端数のある実際の生命保険料で複数枚の計算が面倒な人は、生命保険会社のサポートツールを利用しよう。「生命保険料控除 サポートツール」で検索すると、多くの保険会社の計算サポートサイトを見つけることができる。自分が加入している保険会社でなくても結果は同じなので、積極的に利用していただきたい。

 実際に使用してみた。旧制度の一般の生命保険料に8万9420円、新制度の介護医療保険料に4万8320円、旧制度の個人年金保険料に6万8920円と入力し[計算する]をクリックすると、それぞれの控除額が4万7355円、3万2080円、4万2230円となり、合計が上限の12万円を超えたので生命保険料控除額は12万円となった。保険会社のサポートツールは自動計算も楽だが、記入例も表示されるので迷わず申告書に記入できる。

保険会社が提供している「生命保険料控除申告サポートツール」の入力画面の例
各保険に保険料を入力して[計算する]をクリック
保険会社が提供している「生命保険料控除申告サポートツール」の計算結果画面の例
自動計算に加え、記入例も表示される

「生命保険料控除」の記入

 生命保険料控除は納税者の約8割が控除を受けているので、記入例はシンプルな例と複雑な例の2つを用意した。

記入例1:旧制度の生命保険のみの場合

 1つめはシンプルに旧制度の生命保険(+旧制度の医療保険)に加入している例だ。この例は死亡保険などの一般生命保険(旧制度)に12万円、入院給付金などの医療保険(旧制度)に9万円を支払っている。旧制度では介護医療保険の分類がないので、医療保険は一般生命保険と同じ分類となっている。

生命保険料控除の記入手順の図解(旧制度の生命保険のみの場合)
旧制度の生命保険のみの記入例

 矢印に沿って「(a)のうち旧保険料等の金額の合計額」をB欄に21万円(12万円+9万円)と記入し、下段の「計算式II(旧保険料等用)」に照らし合わせ控除額の5万円を算出し、その後も矢印に沿って記入すれば完成となる。

 記入例では保険料の合計が10万円を超えているので、控除額は上限の5万円。計算式を見ると10万1円以上は一律に5万円となっている。この記入例は生命保険だけで12万円なので、医療保険の9万円は記入する必要はない。前述のようにサラリーマン時代の筆者はこの記入例のように、10年以上、複数の保険を記入して無駄な労力を掛けていた。

記入例2:旧制度の一般生命保険+新制度の介護医療保険+旧制度の年金保険の場合

 2つめの記入例は新旧の保険がてんこ盛りだ。旧制度の一般生命保険に12万円、新制度の介護医療保険に7万5000円、旧制度の年金保険に12万円となっている。内容も図も複雑になったので、旧制度の一般生命保険は青文字/青実線、新制度の介護医療保険は赤文字/赤点線、旧制度の年金保険は緑文字/緑実線とした。

旧制度の一般生命保険、新制度の介護医療保険、旧制度の年金保険の記入例

 一般の生命保険料は、先ほどの記入例と同じだ。青の実線矢印に沿って計算し、控除額は5万円(イ)となる。新制度の医療保険は、下段の介護医療保険料の欄に記入する。赤の点線矢印に沿って7万5000円の保険料を「計算式I(新保険料等用)」の40,001円から80,000円までの計算式「7万5000円×1/4+20,000円=3万8750円」と算出し、控除額の3万8750円を(ロ)に記入する。

 旧制度の個人年金保険料は、記入例の緑の実線矢印に沿って計算すると、控除額は5万円(ハ)。一般生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料の控除額の合計は13万8750円となるが、生命保険料控除の全体の上限が12万円なので合計の欄は12万円となる。

「地震保険料控除」の記入

 右側の上段、「地震保険料控除」も証明書を手元に用意しよう。保険会社の名称、保険の種類、保険期間など証明書を見ながら記入すれば完了だ。

「社会保険料控除」の記入

 地震保険の下の「社会保険料控除」の欄は、毎月の給与から天引きされている厚生年金、健康保険などは会社が把握しているので自分でこの欄に記入する必要はない。記入が必要なのは、年の途中で就職し、それまでプー太郎(就職活動)をしている期間に自分で国民年金、国民健康保険を支払った場合や、20歳を超えた大学生の子の国民年金を代わりに支払った場合はこの欄に記入する。

「小規模企業共済等掛金控除(iDeCo)」の記入

 最後は下段の「小規模企業共済等掛金控除」。「iDeCo、何それ?」という人はスルーだ。近年急増している個人型確定拠出年金(iDeCo)に加入している人はこのブロックに記入しよう。

確定拠出年金(iDeCo)の小規模企業共済等掛金控除証明書ハガキ
確定拠出年金(iDeCo)の小規模企業共済等掛金控除証明書

 iDeCoに加入している人は控除証明書の合計金額に記載された金額を申告書に記入する。事例は個人型年金加入者掛金に証明書の合計金額12万円を記入している。

小規模企業共済等掛金控除証明書ハガキの合計金額の欄
合計金額を申告書に記入する
「令和6年分 給与所得者の保険料控除申告書」の小規模企業共済等掛金控除の記入ブロック
個人型年金加入者掛金に証明書の合計金額12万円を記入

「令和6年分 給与所得者の保険料控除申告書」の記入手順<まとめ>

 生命保険料控除で紹介した2つの記入例の申告書全体の画像を掲載しておくので、参考にしていただきたい。

※記入例の画像はクリック/タップで拡大。さらにPCで閲覧している場合は、拡大画像の左上にある「+」アイコンをクリックすると、より高解像度な元画像を表示できる。

「令和6年分 給与所得者の保険料控除申告書」の記入例1
年末調整の書き方「令和6年分 給与所得者の保険料控除申告書」記入手順の図解
「令和6年分 給与所得者の保険料控除申告書」の記入例2
年末調整の書き方「令和6年分 給与所得者の保険料控除申告書」記入手順の図解

 第1回で紹介したが、国税庁のサイトから年末調整の申告書の入力用ファイル(PDF)がダウンロードできる。手書きが苦手、小さい文字が書けないという人は、お勤めの会社がPDFデータ、あるいはPDFを印刷したものを受け付けてくれるなら、この入力用PDFファイルを利用しよう。前年のPDFを保存しておけば、家族、加入している生命保険会社の社名など翌年コピー&ペーストできるので効率アップが可能だ。

「令和6年分 給与所得者の保険料控除申告書」入力用PDFファイルの画面
「令和6年分 給与所得者の保険料控除申告書」入力用PDFファイルの画面

 繰り返しとなるが、生命保険は10年、20年と変更なく加入し続ける人が多い。税制改正がなければ、ずっと同じ内容を記入することとなる。転職すると企業により提出時期は10月下旬~12月上旬と変わるかもしれないが、保険料控除の記入内容は同じなので、前年の申告書のコピー、スマホ写真、PDFなどを保存しておくと楽に記入ができる。もちろん転職先が年末調整ソフト/サービスなどを導入していれば、手書きの年末調整とは晴れてお別れだ。「令和6年分 給与所得者の保険料控除申告書」の記入はこれで完了だ。

 今回はここまで。次回第4回は最後の1枚(+1枚)、「令和7年分 給与所得者の扶養控除等異動申告書」および「【簡易対応様式】令和7年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の記入手順を紹介しよう。

「INTERNET Watch」ではこのほかにも、サラリーマンと個人事業主がぜひ読んでおきたい税金に関する記事を多数掲載しています。まとめページ『サラリーマンと個人事業主の税金の話』よりご参照ください。