INTERNET Watch 30周年

【2007年のINTERNET Watch】「ニコニコ動画」「初音ミク」がデビューして人気に、「ダウンロード違法化」議論は紛糾

2007年の出来事

 2007年(平成19年)7月の参院選で、前年発足した安倍政権の自民党が大敗。9月には安倍晋三首相が突然辞任(健康問題が原因だったと言われる)して、福田康夫氏が首相となる。参院選大敗の原因には、年金記録問題への批判、北朝鮮問題への対応に消極的と見られたこと、閣僚の汚職問題などが重なっての大幅な支持率低下があった。

 米国では、翌年のリーマン・ショックにつながる、サブプライムローン問題が7月頃から浮上。11月頃からは原油価格の高騰が起こり、経済不安が広がった。

 この年の新語・流行語大賞およびトップテンには、「消えた年金」「食品偽装」「ネットカフェ難民」といった社会問題のキーワードが多く挙がっている。

2026年2月に30周年を迎えたINTERNET Watchは、1996年2月に有料メールマガジンとして創刊し、1997年1月にウェブサイトを開設した。ここでは2026年の視点から2007年の記事を10本取り上げ、当時を振り返る。

1. 「ニコニコ動画」がサービスを開始

動画上にコメントが載せられる「ニコニコ動画」、ニワンゴがベータテスト

 ドワンゴは2005年11月にニワンゴを設立。「2ちゃんねる」管理人のひろゆきこと西村博之氏を取締役に迎え、話題となった。同社は当初携帯電話向けサービスを提供していたが、2006年12月に実験サービスとして「ニコニコ動画」を開始、2007年1月にベータとして提供を開始した。

 当初のニコニコ動画は、YouTubeなど他の動画共有サイトの動画に重ねて、サービスのインターフェースによりコメントを投稿できるサービスだった。が、翌2月にYouTubeからアクセスを遮断され、いったんサービスを終了。3月に、動画投稿サイト「SMILEVIDEO」と共にサービスを再開した。

 その後、ニコニコ静画など多くの関連サービスも展開。2012年にはサービス群の名称をbn(2020年に「ニコニコ」に変更)、2015年にはドワンゴがニワンゴを吸収合併、といった動きがあった。近年では2024年のランサムウェア攻撃による被害が大きな話題となった。

動画上にコメントが載せられる「ニコニコ動画」、ニワンゴがベータテスト」より、コメントの付けられたニコニコ動画の画面サンプル

2. 「ダウンロード違法化」に向けた議論が起こる

「文化庁の独走を許すな」池田信夫氏らがダウンロード違法化に反対

 私的録音録画補償金制度(私的録音・録画に使われる機器、特にデジタル録音・録画用の媒体に補償金を設定する制度)の抜本的な見直しについて議論していた文化審議会著作権分科会私的録音録画小委員会が8月に、それまでの議論をまとめた資料を提出。この中で、「権利者に著しい経済的不利益を生じさせ、著作物の通常の利用を妨げる利用形態との指摘があった形態」として、著作権法第30条で認められる私的使用のための複製の対象から除外すべきという危険が大勢であったとして、「違法サイトと承知の上で録音録画する場合」や「明らかな違法録音録画物からの録音録画」を例示した。

 同年1月には、文化庁文化審議会著作権分科会で「著作者の許諾を得ずに複製・交換される著作物をファイル交換ソフトでダウンロードする行為について、私的複製の範囲から明文化して除外する規定を設ける必要性」が指摘されている。

 従来、私的使用のための複製は、著作権者に無許可で行うことができ、違法ではなかった。しかし、違法にアップロードされたものと知ってダウンロードする行為を、いわば権利侵害の歯止めとして違法化する、との意見がここで示される(アップロードは従来から違法である)。これが「ダウンロード違法化」と呼ばれた。

 これについて反対意見が多く上がり、上記記事では、12月に行われた、インターネット先進ユーザーの会(MIAU)らによるイベントの様子を紹介している。文化庁では、その後の議論においても「ダウンロード違法化はやむを得ない」との見解を示していた

 結局、この「ダウンロード違法化」は決定され、2010年1月に施行された。この時点では音楽と映像のみが対象だったが、2021年1月からは、すべての著作物が対象となっている。

3. スパムメールによる攻撃の「ビジネス化」が指摘される

“big business”化するスパム、ボットの役割分担は「アルカーイダ並」

 昨今のランサムウェア攻撃は、攻撃ソフトの提供者、攻撃の実行者、身代金供給の実行者などによる一種のエコシステムが形成され、ビジネスとして行われている実態がある。また、サイバー攻撃のビジネス化は、ランサムウェア攻撃に限ったことではない(DDoS攻撃の例)。これに似た指摘が、この年行われた「Email Security Conference 2007」で行われている。

 上記記事では、スパムメールが「big business」になっており、PCを乗っ取ってボットネット化し、そこから特定の株価を釣り上げるスパムメールを大量に配信したり、不正侵入のための踏み台にされたりしており、「もはや趣味の領域ではない」と指摘されている。

4. NTT東西の光回線シェアが7割超え、ソフトバンクが解放訴える

FTTHのNTT東西のシェアが7割超える、総務省調査

 総務省が12月に発表した2007年度第2四半期のFTTH(光回線)のシェア調査結果において、NTT東西が70.5%となり、前期の69.9%から微増し、70%を超えた。

 同じく12月に実施された、総務省と通信3社(NTTコミュニケーションズ、KDDI、ソフトバンク)が参加したシンポジウムにおいて、ソフトバンクは、FTTH市場ではNTT東西が圧倒的なシェアを持ち、競争による料金低減・サービス向上が見込めないと指摘。光アクセス回線の開放ルールをソフトバンクやKDDIが求めているように1分岐単位での開放に改めるか、アクセス回線網機能の分離により同等性を確保することで、他事業者の参入を容易にして競争を促進すべきだと訴えた。

 2011年11月にソフトバンクは1分岐単位での開放などを求めてNTT東西を提訴したが、2014年6月に棄却されている。一方でNTTはフレッツ光回線の卸売りサービス「光コラボレーションモデル」を発表。2015年2月に開始した。

5. Winnyを介した情報流出続く、自衛隊では対策実施後も複数件

陸上自衛隊の内部資料がWinnyで流出、隊員を処分へ

 Winnyを介したウイルスによる情報流出事件はこの年も続いている。防衛庁では、自衛隊員の私有PCから秘匿性の高い情報が流出したことを受け、2006年4月にWinnyが動作しないPCを5万6000台支給し、私有PCの持ち込みを全面禁止とする対策を行っていたが、2007年2月の上記記事で明るみに出たのは2006年8月頃の陸上自衛隊での情報流出。2008年10月にも、陸上自衛隊での情報流出が明らかになっている。

6. 「Amazonプライム」日本で始まる

年会費3,900円で配送料完全無料、Amazon.co.jpが会員制プログラム 最速で注文当日に商品が届く「お急ぎ便」も使い放題

 6月にAmazon.co.jpが有料会員制プログラム「Amazonプライム」を開始した。「お急ぎ便」が無料になり、配送料が常に無料になることが特徴とされた。

7. 「初音ミク」がデビュー

やじうまWatch(2007年9月6日)

 バーチャルシンガー「初音ミク」は、クリプトン・フューチャー・メディアから2007年8月に発売され、直後から「ニコニコ動画」などで人気となった。INTERNET Watchで初めて紹介しているのが、上記の「やじうまWatch」の記事。10月には画像検索で初音ミクが表示されないとのトラブルを紹介するなどもしている。

8. 「Second Life」日本語版が公開される

「Second Life」日本語版公開、登録から運用まで日本語表示に

 3Dバーチャルワールド「Second Life」は、2003年にLinden Labが公開。多くの企業とコラボレーションするなど話題作りが行われ、INTERNET Watchでは2007年末に関連記事のまとめを作って振り返っている。

9. 「ネットカフェ難民」が問題に。業界団体からは苦言も

「お客様は難民ではない」ネットカフェの業界団体が声明

 この年の新語・流行語トップテンにも入った「ネットカフェ難民」。2000年代に入り都市部に増えていたインターネットカフェを、経済的に困窮し、住居を持たない人が利用していた。上記記事は、8月に日本複合カフェ協会(JCCA)が「ネットカフェ難民」との呼称の使用やセンセーショナルな報道により利用者が減少しているため、使用をやめてほしいとの声明を出したとのニュース。

 同じく8月に厚生労働省はネットカフェやマンガ喫茶への調査による「住居喪失不安定就労者」の実態調査を行い、ネットカフェ難民は全国で約5400人との推計を発表した。INTERNET Watchでは、JCCA会長のインタビューも行っている。

 ネットカフェは身元を隠してインターネットを利用できる場にもなっており、同年3月には、警察庁が事業者に対して利用者の本人確認の徹底などを求める報告書を公開している。

10. 「Twitter」が注目集める

やじうまWatch(2007年4月11日)

 Twitter(現X)は2006年7月にサービスを開始。2007年に入って日本でも注目を集めるようになる。上記の「やじうまWatch」の記事では、話題になりだしたTwitterについて「日本では9日頃から『Twitter』なるWebサービスが急速に普及中だ。今何をしているのかを1行で書くと、友人に知れ渡る、という簡単なものだ。日本でも類似のサービスがもういくつか立ち上がっているらしいので、今はなんだかわからなくても、とりあえず注目しておいたほうがよさそうだ」と、いささか投げやりな雰囲気もある紹介がされている。

 当時、SNSやブログ、その他のCGM(Consumer Generated Media)サービスが次々と公開され、ヘビーユーザーはとりあえず(継続利用しなくても)登録して自分の好みのユーザー名を押さえる、という動きがあり、そうした風潮からのものかもしれない。

 Twitterは2008年4月に日本語版サービスの提供を開始。「米国内が40%で他国が60%。この他国のトラフィックでは39%を日本が占める」と、世界の中でも特に日本で人気になっていることを紹介している。