CEATEC JAPAN 2018
「超スマート社会」への注目がさらに増す、政界からの視察も続々と……
大臣もさらに2人来場、3人に
【会期中】キーワード「光明…」そして「光」
2018年11月15日 06:10
「CEATEC JAPAN 2018」が、2018年10月16日~19日に、千葉県の幕張メッセで開催された。
今年で19回目を迎えたCEATEC JAPANは、2016年に「CPS/IoT Exhibition」へと大きく舵を切ってから3回目の開催となり、IoTを活用したあらゆる産業、業種による「共創」の場として、国内外からも注目を集め、725社/団体が出展、会期中には15万6063人が来場した。
今回、本誌では、会期前の2018年10月13日午前0時に開始した会場設営から、19日深夜の撤収までの間、関係者への密着取材を敢行した。超スマート社会「Society 5.0」を推進する日本最大規模のイベントである「CEATEC JAPAN 2018」の舞台裏はどうなっているのか。5回に渡ってレポートする。
初日の来場者は大幅増、基調講演の成果?【会期 2日目】
会期2日目の10月17日朝、主催者事務局で行われた会議は、明るい報告のなかで始まった。
初日の来場者数が、前年実績を3953人上回る、3万5594人に達したからだ。CEATEC JAPANの場合、初日から日を追うごとに徐々に来場者数が増え、最終日となる金曜日に最大の来場者数を記録するというのが恒例だ。
初日が前年実績を上回ったことは、まさにギアが変化したことを証明するようなものだ。3万5594人という初日の来場者数は、会期を通じて前年実績を上回り、16万人という目標を達成するには十分ともいえるスタートだったといえるだろう。
この出足の良さを支えたのは、基調講演の成果だと、鹿野エグゼクティブプロデューサーは分析した。初日の基調講演では、恒例だった主催3団体の会長による講演をやめ、コマツ、Preferred Networks、ローソン、ファナックといった「CPS/IoTの総合展」を象徴する企業のトップが講演。1000人が収容できる会場は、いずれも満席になる盛況ぶりだった。
「基調講演を聞くために、来場している人たちが多かった。狙ったものが成果につながっている」と、鹿野エグゼクティブプロデューサーは強い手応えを口にする。
もうひとつ、明るい出来事が報告された。それは、メディアの報道内容のほとんどが、CEATEC JAPANの新たな方向性を好意的に受け止めていたということだ。
2015年にCEATEC JAPANの来場者数や出展者数が過去最低にまで落ち込んだ際、メディアはこぞって、CEATEC JAPAN不要論や限界説を打ち出した。2016年に、CPS/IoTの総合展に舵を切ってからも、その行方に疑問を投げかける声は途切れず、あくまでも家電見本市という流れのなかでCEATEC JAPANを捉えるメディアが多かった。
だが、前日のネット記事や、この日の朝刊各紙の取り上げ方は、CEATEC JAPANが目指してきたCPS/IoTの総合展としての成果や、Society 5.0の展示会としての役割を評価したり、今後の発展を期待するものが多かった。日本経済新聞では、社説にCEATEC JAPANを取り上げるという異例の扱いだ。
そして、なににも増して、CEATEC JAPANを「家電見本市」と表記する新聞が1紙もなかったことが、CEATEC JAPANの変化が、正しく評価されたことを裏付けるものになったといえるだろう。
CEATEC JAPAN 2018では、毎日、日別にテーマを設定した。
この試みも初めてのものであった。
たとえば、Day1となる10月16日は、「共創が生み出すCPS/IoTの世界」、Day2の10月17日が「2020年、世界の展望」、10月18日のDay3が「近未来の社会・街・暮らし」、そして、最終日となる10月19日のDay4が「新たな市場創出の可能性」だ。
それぞれのテーマにあわせて、講演やセミナーを用意しており、来場者が目的にあわせて、どの日に来場するのがいいのかがわかるようになっている。
毎日異なるテーマを設定した背景には、より目的を持って来場してもらうことで、効率を高めたり、より深く情報を得てもらうといった狙いがある。そして、先にも触れたように、CEATEC JAPANは、どうしても最終日となる金曜日に来場が集中してしまう傾向がある。午後からCEATEC JAPANを見学して、そのまま直帰するというビジネスマンも多いからだ。
その結果、最終日には、会場内が混雑し、ゆっくりと見られないという事態が発生することになる。
テーマを設定することで、来場が分散するということを狙ったのだ。体験型の展示が増えるなかで、よりじっくりと見てもらうための仕掛けともいえよう。
開催初日のテーマである「共創が生み出すCPS/IoTの世界」は、初日に行われた4人の基調講演によって、大きな成果を生んだといえよう。また、展示会場でも、ローソンブースに長蛇の例ができるなど、様々な業種が出展するIoTタウンに多くの人が集まり、終日、歩きにくい状況を生んだのも「共創」の成果を示すものになった。
それに続く、2日目のテーマが、「2020年、世界の展望」であり、それぞれの国が抱える課題を浮き彫りにし、新たなテクノロジーを用いて、海外企業との共創を進めていこうという狙いがあった。
国際会議場で行われるセミナーの内容も、海外企業による講演を増やしたほか、米国、英国、フランス、インドなどの11ヶ国80社/団体が出展するCo-Creation Parkでも、ステージでセミナーを開催したり、海外の出展者と英語で会話ができるように、日英通訳者を配置したりして、ビジネスマッチングを支援する体制も敷いた。
CEATEC JAPANは、今後、「海外」を強化していくことになる。その取り組みに対して、現時点で、どこまで「海外」に対してインパクトを持っているのか。その立ち位置を推し量る日であったともいえそうだ。
実は、鹿野エグゼクティブプロデューサーは、この日、会場を走り回っていた。
表現上の言葉ではなく、まさに走っている姿を見た。海外企業によるセミナーや記者会見、米国、英国、シンガポールなどの大使館関係者などの視察も相次いだこの日は、確かに、「海外」を意識した日になった。
そして、海外企業との対話のなかで、来年は規模を拡大して出展する姿勢をみせたり、自分の国に戻って、新たな企業に対する出展提案を行うことを約束してくれた海外出展企業もあったという。
では、総括すると、この日の成果はどうだったのだろうか。
この日の終わりに、いつものように鹿野エグゼクティブプロデューサーに時間を取ってもらった。
この日の言葉は、「光明...」であった。
「少し光が射してきた」と鹿野エグゼクティブプロデューサーが語る背景には、開催初日の来場者数、基調講演の盛り上がりという手応えに加えて、メディア各紙の好意的な記事が多かったこともある。
だが、問題は、そのあとに続いた「...」という表現であった。このとき、鹿野エグゼクティブプロデューサーは、「...」を付け加えるのを忘れないで欲しいと繰り返した。そのときには、その意味がわからなかったが、「光明が見えた」とは言い切れない、なにかがあるのだろうということは感じられた。
翌日、その「...」の意味が現実のものになった。
一転、課題が判明……【会期 3日目】
10月18日朝の会議は、残念ながら、前日の明るい雰囲気とは一転していた。
発表された開催2日目の来場者数は、3万3670人。2日目の来場者数としては、前年実績を822人も下回る結果になってしまったのだ。鹿野エグゼクティブプロデューサーは、「2日目の狙いが、来場者にしっかりと伝わっていなかった」と反省する。
主催側は、2日目に「海外」というテーマを設定したが、テーマ設定そのものを理解して、来場した人が少なかったのは確かだ。「場を作っただけであり、それが本当に発信できていたのかという点に多くの反省があった」と、鹿野エグゼクティブプロデューサーは語る。
実は、朝の会議で、海外からきた来場者が、セミナーを聴講しようと会場を探したが、その会場を見つけることができずに参加できなかったという報告があがってきたのだ。
セミナーの多くは、国際会議場で開催されたが、セミナー全体のスケジールや開催場所を一覧できるような看板がなかったり、セミナー会場の入口にはセミナーを分類する番号が表示されるだけで、セミナーの内容が表示されておらず、わかりにくいものになっていたのも原因だ。
事務局では、改善できる部分は改善できるようにした。
たとえば、海外ベンチャー企業が出展しているCo-Creation Parkでは、ピッチエリアを使用したセミナーが随時行われていたが、この告知が不十分であったとして、ピッチエリアのスピーカーを使って、Co-Creation Parkにいる人たちに、セミナー内容を積極的に告知をする形に変更したのも、改善のひとつだ。だが、「もっと多くの人に知らせることができる仕掛けを用意すべきだった」と、ここでも反省を口にする。
鹿野エグゼクティブプロデューサーは、「これらの告知不足は、事務局の不手際と言わざるを得ない」と素直に認める。
また、メインの入口となるホール5のエスカレーターを降りた場所には、CEATEC Dailyや新聞各紙、会場案内図などを配置したが、これが白いテーブルに置かれていたことについても、鹿野エグゼクティブプロデューサーは反省材料にあげた。
実は、昨年は、コンコースにテーブルを設置して、テーブルから自由に新聞を取れるようにしていたが、風が強いコンコースでは、新聞が風で飛んでしまい、来場者が取れなくなってしまっていたり、周りの見栄えが悪くなるという問題が発生していた。それを改善するため、今年は、新聞などが収納できる箱を作り、これを会場入口や展示会場内に配置した。
だが、展示会場内ではこの箱とともに、白いテーブルの上に無造作に新聞が置かれるということも行われていた。しかも、そのテーブルの下には、むき出し状態で、梱包された追加用の新聞が置かれていたのだ。
「会場に入って一番最初に見る場所に、無造作に新聞が置かれている。そんな展示会でいいのか。入口から期待感を高めるこだわりができていなかった」
そして、入口付近で、案内図を広げて、訪れたいブースの場所を確認したり、ペンで案内図に記入する人が多いことも気になった。
「そうした行動パターンをする人が多いのであれば、案内図に書き込むための場所やテーブルを用意すべきではないのか」
会期2日間を終えて、細かい部分を含めて、数多くの反省点が浮き彫りになってきたのだ。
「いま改善できるもの、来年に向けて改善を検討するものがある。『CEATEC体験』という言葉を打ち出している以上、こうしたことを含めて、体験にこだわっていきたい」と、鹿野エグゼクティブプロデューサー。そして、「CPS/IoTの総合展にも関わらず、入場証をプリントアウトして持参するアナログの仕組みでいいのか。これも、『CEATEC体験』への期待を高めるという意味では、真剣に検討しなくてはならない」と続ける。
20周年の節目となる2019年のCEATEC JAPANでは、新たな「CEATEC体験」を実現するための仕掛けも増えることになりそうだ。
政界や出展企業トップの視察が相次ぐ総務省 石田大臣や平井 IT担当大臣の姿も
一方、この日も政界や出展企業のトップの来場が相次いだ。
午前10時の開場前から、NECの新野隆社長が自社ブースを訪れて、東京オリンピックでの採用が決まったNECの顔認証システムなどを体験したり、展示している最新技術の説明を受け、社員に積極的に質問する様子などが見られた。
午前中には総務省情報流通行政局の山田真貴子局長が、1時間30分をかけて視察。NECブースでは新野社長と歓談しながら、ブース内を視察していた。
総務省 石田大臣、平井 IT担当大臣など、有力者が次々と視察に
午後からは、さらに多くの国会議員や官僚が視察した。
午後2時前に開場に到着したのは、総務省の石田真敏大臣。1時間以上をかけて会場を視察した。実際に展示を体験したり、説明員に活発に質問をする姿が印象的だった。
そのほかにも、この日は、平井卓也IT担当大臣(科学技術、クールジャパン、知的財産、宇宙政策)も視察。さらに、佐藤ゆかり総務副大臣や、公明党の井上義久副代表なども視察を行っていた。
初日に視察をした経済産業省の世耕大臣を含めて、会期中、現職の大臣が3人も視察に訪れるのは、これまでに例がないことだ。それどころか、過去18回の開催のなかでは、2013年に当時の総務大臣であった新藤義孝氏が唯一の現職大臣として視察したに過ぎなかった。まさに異例ともいえる視察ラッシュになったのだ。さらに、大臣の視察に影響を受けて、多くの国会議員が視察に訪れていたのも、今回のCEATEC JAPANの大きな特徴だといえるだろう。
国会議員にとっても、自民党総裁選後という、比較的、時間に余裕があるタイミンクだったことも、これだけ多くの国会議員が来場するきっかけになったといえるが、今回の視察ラッシュを通じて、CEATEC JAPANと、政府の動きや政策との連携が緊密になったのは間違いない。
こうした動きは、CEATEC JAPANが、これまでの家電見本市とは違った意味を持ったイベントへと進化していることを裏付けるものになったといえるだろう。
注目の中での「光」
この日、鹿野エグゼクティブプロデューサーは、「光」という言葉を総括に使った。
反省材料はあったものの、大臣をはじめとする政府関係者の視察が相次いだことや、課題だった海外企業のカンファレンスへの参加者が増加傾向にあったことなどが、その理由だ。全体の来場者数は大きく増加しているわけではないが、この日の三菱電機ブースでは、来場者数が2割増という独自集計の数字も出ており、人気ブースへの集客が増えている点も「光」と表現する理由のひとつだ。
そして、早くも、来年の出展に向けての話し合いが始まり、すでに参加を決意してくれた企業が出始めたことも、光が見え始めたとする背景でもある。
ただ、完全に「光」が見えたとは言い切れないところもある。この言葉には、「少し光が射し始めた」という意味の方が強かったようだ。
光が見え始めた状況で、CEATEC JAPANは、いよいよ最終日に突入する。