CEATEC JAPAN 2018

ドキュメントCEATEC JAPAN

カラッポの会場と深夜0時、そして始まる……

【設営編】キーワード「混沌」

 「CEATEC JAPAN 2018」が、2018年10月16日~19日に、千葉県の幕張メッセで開催された。

 今年で19回目を迎えたCEATEC JAPANは、2016年に「CPS/IoT Exhibition」へと大きく舵を切ってから3回目の開催となり、IoTを活用したあらゆる産業、業種による「共創」の場として、国内外からも注目を集め、725社/団体が出展、会期中には15万6063人が来場した。

 今回、本誌では、会期前の2018年10月13日午前0時に開始した会場設営から、19日深夜の撤収までの間、関係者への密着取材を敢行した。超スマート社会「Society 5.0」を推進する日本最大規模のイベントである「CEATEC JAPAN 2018」の舞台裏はどうなっているのか。5回に渡ってレポートする。

はじまりは深夜0時、まずは「鍵の受け取り」から【会期 3日前】

12日午後11時40分ごろの幕張メッセ。東2ゲートから関係者は入ることになる
深夜の幕張メッセ、照明が落とされている

 密着取材のチームが、幕張メッセに集合したのは、会期のほぼ3日前、12日午後11時30分だった。

 街灯の電気だけが灯り、車の往来がほとんどない静寂のなか、幕張メッセで、唯一、24時間通用が可能な東2ゲート周りだけ、警備員を含めて数人の人の姿が見える。いよいよCEATEC JAPAN 2018の最初の一歩が始まる瞬間だ。

 深夜0時を少し回る前に、CEATEC JAPAN実施協議会の鹿野清エグゼクティブプロデューサーをはじめとするCEATEC JAPAN関係者が、東2ゲートから幕張メッセの構内に入る。取材チームも同行する形で、幕張メッセのゲートをくぐった。

 暗い道を進むと、幕張メッセを管理する総合管理センターにたどり着く。最初の仕事は、ここで会場の鍵を受け取ることだ。


総合管理センターの前に、電気工事、施工、セキュリティをはじめとする各部門の責任者が集まる

 総合管理センターの前に、徐々に関係者が集まってくる。

 彼らは、電気工事や施工、セキュリティをはじめとする各部門の責任者たち。その数は約10人。この約10人の集合から、会期中15万6063人が来場した大規模イベントの会場準備が始まることになる。

 CEATEC JAPAN実施協議会の鹿野エグゼクティブプロデューサーは、幕張メッセの総合管理センターでひと通りの説明を受けたあと、鍵を受け取り、書類にサインをする。
 鍵は、使用するホール1~3、ホール4~6ごとに、箱に入れられており、会期中、主催者がこの鍵を管理することになる。そして、会期が終了する19日午前0時過ぎまでに、すべてを撤収し、この鍵を返すことが条件だ。

右はCEATEC JAPANとの窓口となる幕張メッセの古林智彦主任。左は、CEATEC JAPAN実施協議会の鹿野清エグゼクティブプロデューサー
セキュリティを担う警備チームも深夜からスタンバイする
電気工事のチームは、会場入りする前から図面を見て作業を確認
幕張メッセを管理するのは「総合管理センター」だ

 鹿野エグゼクティブプロデューサーは、鍵の箱を、まだ準備がなにも整っていないオペレーション事務局に運び、そこで改めて箱を開錠。警備員や担当者がこの鍵を受け取り、搬入口などの扉を開ける。

 鹿野エグゼクティブプロデューサーも、その鍵のひとつを持って、扉の鍵を開けた。

 扉が開錠されると、一斉に搬入が始まる。関係者に聞くと、深夜0時過ぎという時間帯にも関わらず、この時点で約300人が参加しているという。

 鹿野エグゼクティブプロデューサーは、すぐに2階に駆け上がり、まだなにもない会場内が一望できる場所に移った。展示会場には作業を行う人たちが次々と散らばるように入り始め、さらに高所作業を行うための数台のクレーン車や、事務局などに設置するための机や椅子などを積み込んだトラックが何台も入ってくる。

 その様子を見ながら、鹿野エグゼクティブプロデューサーは、「この風景をみると、『いよいよ来たな』という気持ちになる。だが、その一方で、このまっさらな状態から、思い通りのものが出来上がるのかどうか、という不安を感じる瞬間でもある」と静かに語る。

 図面ではわからない「現物」が、これから目の前に組み上がっていくことになる。そして、ここから、CEATEC JAPAN 2018の「序章」ともいえる始まりを迎えることになる。

【ここから始まる……】
13日午前0時になり、総合管理センターに入る鹿野エグゼクティブプロデューサー
会場となるホール1~6までの鍵について説明を受ける
鍵を受け取り、サインをする鹿野エグゼクティブプロデューサー
施設の現状や開催前までに工事が入る予定などの説明もあった
これが幕張メッセの各ホールの鍵だ
鍵をオペレーション事務局に運ぶ鹿野エグゼクティブプロデューサー
鍵が入った箱を鍵で開ける
鹿野エグゼクティブプロデューサーが鍵で扉を開ける
一方で警備員は別の鍵を受け取り、それぞれの場所の扉を開ける
まだ何もない幕張メッセ

設営開始、電気工事と測量と……

一斉に搬入が始まった。この時点で約300人が参加しているという

 最初に行われた作業は、各小間に向けた電気幹線ケーブルやLANケーブルの敷設、墨だし作業、タペストリーの掲示、そして、一部ブースのカーペット張りや簡易なブースの設営だ。これらは、午前6時までに終えなくてはならない。早くも時間との勝負が始まる。

【CEATEC JAPAN 2018の設営開始】
開錠後、搬入口から何もない幕張メッセの中に作業者が入っていく
小間ごとの電気幹線ケーブルの敷設も同時に行っていく

 小間ごとの電気幹線ケーブルの敷設は、縦横に何本も交差する溝のなかに行う。2本の鉄の棒を使って、重たい鉄板の両端を持ち上げて、蓋を開け、そこにケーブルを引き込んで敷設する。工事者は、大きな紙の図面を何度も見ながら、正しく敷設工事が行われているかを確認する。重たい鉄板と、重たいケーブルを扱う作業はかなりの重労働といえるだろう。溝の深さは大人の下半身が埋まるほどであり、誤って落ちると危険だ。溝の蓋を開けている場所には赤いパイロンを立てて、注意を促している。

ケーブルの引き回しにも技がある
ケーブルは床下に這わせる
溝は意外と深い。作業者が誤って落ちないように赤いパイロンを立てる
あちこちで配線作業が行われている
電気幹線ケーブルの敷設作業が完了した
墨だしと呼ばれる区画作業。ブースごとに区画を切っていく

 一方で、墨だしと呼ばれる作業は、各出展者のブースの場所とエリアを指定する作業だ。横方向に2本の長いメジャーを平行に床に張り付け、縦にもう一本のメジャーを組み合わせて、所定の場所に白いテープで印をつけていく。これを目印に、各社がブースを組み上げることになる。

 小さい小間の場合には、墨だしの終了とともに、ブースの設営作業が始まる。パイプと薄い板を使って、短時間にブースを組み上げていく。会場内に設営する出展者の控え室なども、同じ素材を使って同時に作られていった。

横2本のメジャーの間にもう一本のメジャーを組み合わせて墨だしを行う
カーペットを敷く作業
出展者の名前が入ったタペストリーもある

 また、一部のエリアには、早くもカーペットが敷かれはじめた。それぞれのブースにあわせた異なるカラーのカーペットが敷かれたほか、なかには複数のカーペットの色を組み合わせてデザインしたものもあった。

 天井から吊るすタペストリーも、早い段階で行う作業のひとつだ。幕張メッセは、天井が高いのが特徴。それだけに高さを持ったクレーンを使用する必要がある。ブースが設営されてからではクレーンが入りにくいため、この段階で作業を行うのだ。

 展示テーマごとにエリアを示すタペストリーのほか、一部出展者は自らのブースの上に、ロゴが入ったタペストリーを吊した。

 予定時刻である午前6時前までに、これらの作業はすべて完了した。いわば、ここまでが、ベースとなるインフラを作り上げた状態だ。

 住宅になぞらえれば、宅地分譲のために土地が分割され、電気やガス、水道、通信のインフラまでが整った状況ともいえる。これから、この上に住宅を建てる作業が始まる。いよいよ各出展者のブース施工業者が、幕張メッセのなかに入り、ブースを設営していくことになる。

カーペットが運び込まれる。各ブース用に出展者の名前が書いてある
搬入が始まる様子を見る鹿野エグゼテクィブプロデューサー
色を組み合わせたカーペットもある
天井から吊るすタペストリーを搬入する様子
タペストリーはクレーンを使って取り付ける
高い場所での作業が行われている
様々な種類のタペストリーが用意されていた
数々のタペストリーが吊り下げられた様子
小間が小さなブースは、この段階で設営が始まる
控室などに使われるブースもあっという間に作られた
小さいブースは次々と設営されていった
最大規模の展示面積を誇るシャープブース。カーペットとタペストリー、ケーブル敷設が終わっている
展示会場だけでなく、オペレーション事務局などの事務スペースも同時に設営が進む。約1時間で完成した
設営が完了するとすぐに警備員が配置された
CEATEC JAPAN 2018の目玉展示となったIoTタウン。まだなにも用意されていない段階だ

午前6時、出展者によるブース設営開始大型トラックが会場内に続々と……

ケーブル敷設や墨だし、カーペットが敷き終わると、20小間以上の展示スペースを持つ出展者から搬入を開始する。外にはトラックの長い列ができていた
搬入車両には入れるホールと時間が指定されている
大きなトラックが次々に展示場に入る。出展者ごとの設営が開始されることになる

 電源ケーブルやLANケーブルの敷設や墨だし、タペストリーの設置、カーペットが敷き終わると、出展者によるブース設営がいよいよ開始される。

 午前6時から設営が開始できるのは、20小間以上の展示スペースを持つ出展者である。

 本来ならば、午前8時から、これらの企業による設営が開始される予定であったが、今年の場合は、設営のために用意された日が3日間であり、例年よりも1日少ない。そこで設営開始時間は、当初予定されていた午前8時から2時間前倒しでブース設営が開始された。

 午前6時を前に、荷物を搬入したり、ブース設置のための機器を搬入するためのトラックは、一度、L駐車場と呼ばれる幕張メッセの一番離れた駐車場で待機。指定された時間に合わせて、幕張メッセの構内に入ることになる。

 20小間以上のブースになると、大きなフレームでブースを構成することが多い。天井からフレームを吊して柱を無くす設営方法を取るブース、柱を使いながらしっかりとした構造で作り上げるブース、フレームをカンバンで隠し、ロゴが目立つようなインパクトの強い作りにするブースなど、作り方は様々だ。それによって、フレームの組み上げ方も異なる。リフターでフレームを持ち上げたり、2台のクレーンでフレームを持ちあげたりといったように、手法も異なる。

 また、人の大きさを超えるような造形物を、大型トラックで搬入するブースも多い。ユニークな形状の造形物もトラックで運ばれてくる。各社各様で、それぞれの企業イメージや出展テーマにあわせたブースづくりを進めていた。

天井部に使われるフレームなど、数々の部品が運び込まれる
大型トラックには展示用に作られた棚も積まれていた
人の背丈を超えるような材料も多い
案内板もこのタイミングで搬入された
ブースの設営作業か急ピッチで開始される
ドイツのチームが直接設営したボッシュ、ドイツから荷物一式を大型コンテナで搬入していた。

 CEATEC JAPAN 2018で、静かに注目されていたのが、ボッシュの設営だ。今回のボッシュのブースは、日本法人が担当したのではなく、ドイツ本社のイベント専門チームが直接設営に携わったからだ。

 船で輸送する40フィートコンテナ2台で、設営のための材料を持ち込んでおり、会場にも、このコンテナを運び込むことができるトレーラーを使って、直接コンテナを運び込んできた。
 欧米の大型イベントの場合、1週間程度をかけて設営することが多い。だが、今回のCEATEC JAPAN 2018で設営に使える時間は、わずか3日間。半分以下の短期間という条件で設営に挑戦することになったのだ。

 周りでは日本人による設営が進むなか、ボッシュのドイツ本社のメンバーは、慣れない土地で、短い時間内に、急ピッチでブース設営を進めていった。15日夕方までにはボッシュは予定通りにブースを設営。日本のイベントならではともいえる、短時間での高品質なブースの設営をボッシュは見事にクリアしてみせた。

カーペットもドイツから持参。日本で使用しているカーペットよりも大きい
トレーラーのなかからは大きな荷物も
ボッシュブースは初日でほぼ組み上がった

 13日午前6時から始まった20小間以上の出展者によるブース設営に続き、午前11時には、すべての出展者がブース設営を開始し、展示会場はトラックやクレーン、設営機器、多くの作業者などでごった返した。通路にも様々な機器や材料が置かれ、通行するのにも注意が必要だ。

 そうしたなか、13日の作業は午後6時で終了した。この時点で多くの企業が外観を完成しつつあった。続く14日は、午前8時から設営作業が開始され、この日になって、電話接続やネット接続の確認作業や、装飾違反の確認作業なども行われた。一部の出展者では、14日午後から、コンパニオンによるナレーションの練習もはじまっている。

 ブースの設営作業は、16日の開場前まで行うことができるが、15日午後2時からは、報道関係者を対象にした事前公開「メディアコンベンション」が開催されるため、報道関係者をブースに招く企業は、それまでに完成させてなくてはならない。

 とくに、大きな小間を設置した企業の多くは、メディアコンベンションに参加するため、15日午前中がリミットとなる。出展者によって、展示の規模が異なり、さらに、タイムリミットも異なるが、最高のブースづくりを目指して各社が作業を進めている姿があちこちでみられた。

【コンビニ、金融】
初出展のローソンは、カーペットの張り替えから作業をスタート
MUFGブースでも急ピッチで準備が進む
Japan Digital DesignのATM搭載自動車も搬入
ユニークな形の材料が多いのがローソンブースの特徴
これらの材料を組み合わせてどんなブースができあがるのか
骨組みができあがってきたローソンブース
LAWSONのロゴが入り、外観はほぼ完成
ローソンはまさにコンビニを会場に作り上げた
目玉展示となった無人レジを体験するための商品を搬入
無人レジを体験するための商品を並べ始めた
外では、ユニフォームを着た説明員との打ち合わせがスタート
ローソンクルー あきこちゃんもスタンバイが完了
【電機・通信・部品メーカー】
シャープブースでのロゴの取り付け作業
ロゴがついたフレームを持ち上げたところ
8K WorldとAIoT Worldの文字も掲げられた
目玉となる8Kテレビの搬入も始まった
8Kテレビの展示が完了した
A-PAB/JEITAのブースは8K/4Kテレビの展示を行うため、大規模なブースを設営
パナソニックブースのロゴ取り付け作業の様子
パナソニックのロゴと、タペストリーが掲げられた
パナソニックブースも初日に外観を完成させた
KDDIは初日にブース外観を完成させ、開催2日前となる日曜日午後からはナレーションの練習を開始するという素早さ
KDDIでは、バッターボックスを作り上げていた。この時点では、一体何が行われるのかはわからない………
富士通ブースは最大規模の展示面積を誇る
太陽誘電のブースではクレーンを2つ使ってフレームを吊り上げた
太陽誘電も初日にブースを組み上げた
【CEATEC JAPAN 2018設営の様子】
天井部分のフレームの持ち上げ作業は全員でタイミングをあわせて機械で行う
【工作機器・建機メーカー】
いち早く天井部分を作り上げたのが2年連続での出展となるアマダホールディングス
ほぼ完成したアマダブース。ベンディングマシン「HG-1003ATC」も展示済み
作業を行うファナックブースの様子
約4時間後にはロゴが入った看板が取り付けられた
ファナックブースは初日の工期でほぼ外観を完成させた
あちこちでクレーンが利用され、天井から吊るすための鉄製ロープを固定する
コマツも2台のクレーンを使って天井のフレームを持ち上げた
油圧ショベルとダンプを搬入
【ベンチャーや学術系エリア、そして海外ブースなど】
スタートアップ&ユニバーシティエリア。四角いブースをたくさん作り上げる
スタートアップ&ユニバーシティエリアは最初に100Vの電力を供給する装置を設置
外観が完成したスタートアップ&ユニバーシティエリア。電源装置はこんな形で、目立たない形で設営された
海外企業の出展ブースも初日に設営された
こちらは台湾企業ブースの設営の様子
【共通部など】
ホール5前の入口はメインゲートになる
コンコース上に設置されたセルフレジストレーションカウンターは、開催前日午前に設置済み
コンコース上で組み立てていたのは、入場発券カウンター
入場発券カウンターはこのように完成
鹿野エグゼクティブプロデューサーが手を入れて動くかどうかを確認
プレスセンターも完成した
プレスセンターの横に設置されたパナソニックの顔認証システム。報道関係者を対象に実証実験を行った
IoTタウンのステージも設営完了

うまく行ったものと、行かなかったものと……【会期 2日前】

主催者企画となるイノベーショントークステージの設営もはじまった

 設営2日目となった14日午前。

 鹿野エグゼクティブプロデューサーは、ホール4~5に設置した主催者企画/特別テーマエリアの出来上がりつつあるブースを見て、一瞬、表情を曇らせた。

 主催者企画となるイノベーショントークステージは、広いステージとともに、後方には段差を持った席を用意してステージが見やすいように工夫。入口には118型のLEDディスプレイを2台設置し、ここに講演の様子やスケジュールなどを表示する仕組みが完成した。そして、IoTタウンのステージも明るい雰囲気で設営が完了したことには、合格点を与えた。

前面には118型のLEDディスプレイを2台設置。講演の様子やスケジュールなどを表示した
イノベーショントークステージの後方には段差を持った席を用意してステージを見やすいように工夫
今回のイノベーショントークステージのデザインには、鹿野エグゼクティブプロデューサーの思い入れがあったが、実は一度もステージに立つ機会がなかった。設営中にお邪魔した際が、ステージ上に立った唯一のシーンに

Co-Creation Parkでプレゼンテーションを行うピッチエリア。当初は、カーテンのような装飾が施されていた

 だが、一部には、思い通りに出来あがっていないものもあった。設計図上はうまくできていても、実際に出来上がってみると、思惑とは異なるものになっているというのはよくあることだ。

 鹿野エグゼクティブプロデューサーが、とくに気になったのは、数多くの海外企業が出展するCo-Creation Parkのピッチエリアだ。

 ピッチエリアは、出展企業各社がプレゼンテーションを行うステージで、Co-Creation Parkの中央部にある。このステージの後ろ側には、カーテンのような装飾が施されていたが、それが周りからの視認性を妨げてしまい、目立つようなステージづくりにはなっていなかったのだ。そこで、鹿野エグゼクティブプロデューサーは、ステージ上を目立たせるためのデザイン変更の提案を行い、すぐに修正を加え始めた。

 最初はカーテンの色変更という提案もあったが、最終的には、カーテンのような装飾を取ることを決定。あらゆる方向からプレゼンテーションが行われていることがわかる形にした。

フランスパビリオンは政府主導の「LA FRENCH TECH」と「LA FRENCH FAB」でスタートアップの出展を支援
英国パビリオンは、英国政府が推進する「INNOVATION IS GREAT」の文字
カーテンのような装飾は、周りからの視認性を高めるために最終的には撤去する形にした
Co-Creation Parkのミーティングルームも完成した

ホール5にキービジュアルを設置することになったが、鹿野エグゼクティブプロデューサーの想定とは違うものになり急きょ作り直し
横にはその材料が置かれており、これを生かして再設計することに
ホール5入口付近のタペストリーも吊るされた。これは急きょ発注されたものだ

 もうひとつ、鹿野エグゼクティブプロデューサーが表情を曇らせた場所があった。それはメイン入口となるホール5に設置するキービジュアルのイメージだ。

 キービジュアルは、今年から採用した新たな取り組みだ。

 青や紫、緑、黄色、ピンクなどの色が混ざり合ったこのキービジュアルは、様々な産業が枠を超えて出展したり、会場内の様々な展示が融合したりといった新たなCEATEC JAPANの様子を表現している。そして、「今後のCEATEC JAPANのシンボルに育て上げたい」と、鹿野エグゼクティブプロデューサーが考える重要な意味を持ったものだ。

 だが、最初にできたものは、残念ながら、象徴といえるようなデザインにはなっていなかった。

 設計では、5ホールの会場入口から、色を配した布のタペストリーを用いて、それらが重なり合って、キービジュアルに到達し、キービショアルはその融合として輝くようなイメージで、立体感を持たせることを狙った。そして、その場所が、CEATEC JAPANのアイコンとして、あるいは最大のフォトスポットとして利用されることを意図したのだが、出来上がったものは、そのコンセプトとは大きくかけ離れたものになっていたのだ。ここでも、鹿野エグゼクティブプロデューサーは急きょ作り直しを指示。ピンスポットを当てるようにし、このキービジュアルをCEATEC JAPAN 2018の象徴となるように、よりデザイン性を高めるようにしたのだ。

 15日に行われた報道関係者向けのメディアコンベンションか始まるまでには、このキービジュアルは完成したが、鹿野エグゼクティブプロデューサーにとっては決して100点満点の出来映えといえるものではなかったようだ。

 「CESやIFAには、来場者や出展者が、記念に写真を撮りたくなるような、ロゴを入れたスポットがある。CEATEC JAPANにも、そうしたスポットを作りたい」と、鹿野エグゼクティブプロデューサー。ここは、来年に持ち越す最初の課題になったのかもしれない。

完成したキービジュアル。今回のCEATEC JAPANの象徴となる

イベント開始と「混沌」と……

 まだ会期が始まる前だが、14日までの設営期間を振り返って、CEATEC JAPAN実施協議会の鹿野エグゼクティブプロデューサーに、これまでの状況を、ひとつの言葉で表現してもらった。

 鹿野エグゼクティブプロデューサーが発した言葉は、「混沌」だった。

 「大きな課題はないが、小さな課題は数多く発生している。それらを解決しながら、15日に開催されるDay0の各種イベントや、16日から開幕に向けた最終準備も着々と進めている。この時点では、準備が予定通りに完了するのだろうか、なにか問題は発生しないだろうかといった不安もあり、混沌とした状況のなかで時間が経過している」とする。だが、「これはネガティブな意味ではない」とも付け加える。

 「新しいことに挑戦するワクワク感、これから始まるという期待感もある。明日からのスタートに向けて、全体の機運が高まっていることを感じている」とも語る。

 これまでの経験上、開幕を迎えるまで、不安は消えないと鹿野エグゼクティブプロデューサー。14日の設営は、午後6時で終了し、会場内から人の姿は消えた。しかし、様々な課題を解決するために指示を出したり、議論を続けるために、オペレーション事務局に午後10時まで残る、鹿野エグゼクティブプロデューサーの姿があった。

10月14日午後の様子。多くのブースで外観が完成しはじめていた

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