2018年11月14日 06:30
「CEATEC JAPAN 2018」が、2018年10月16日~19日に、千葉県の幕張メッセで開催された。
今年で19回目を迎えたCEATEC JAPANは、2016年に「CPS/IoT Exhibition」へと大きく舵を切ってから3回目の開催となり、IoTを活用したあらゆる産業、業種による「共創」の場として、国内外からも注目を集め、725社/団体が出展、会期中には15万6063人が来場した。
今回、本誌では、会期前の2018年10月13日午前0時に開始した会場設営から、19日深夜の撤収までの間、関係者への密着取材を敢行した。超スマート社会「Society 5.0」を推進する日本最大規模のイベントである「CEATEC JAPAN 2018」の舞台裏はどうなっているのか。5回に渡ってレポートする。
リニューアルした基調講演はコマツ、Preferred Networks 、ローソン、ファナック【会期 1日目】
2018年10月16日、いよいよCEATEC JAPAN 2018の開幕初日を迎えた。
午前9時過ぎに展示会場を回ってみたが、すべての展示ブースで開幕を迎える準備が出来ていた。短期間でここまで仕上げる日本の展示会の素晴らしさを感じざるを得ない。
だが、この日の注目は、会場展示への注目度もさることながら、各産業にまたがった4社の経営トップによる基調講演であったといえよう。
これまでは、初日の基調講演は、主催3団体である一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)、一般社団法人情報通信ネットワーク産業協会(CIAJ)、一般社団法人コンピュータソフトウェア協会 (CSAJ)の会長が、それぞれ講演するのが、CEATEC JAPANのこれまでの慣例であった。
だが、CEATEC JAPAN 2018では、初日の基調講演に、コマツの大橋徹二代表取締役社長兼CEO、Preferred Networksの西川徹代表取締役兼CEO、ローソンの竹増貞信代表取締役社長、ファナックの稲葉善治代表取締役会長兼CEOが、それぞれ登壇。展示エリアとの連携や、Society 5.0に向けた具体的な取り組み、各社の共創への取り組みなどについて説明する場となり、1000人が収容できる会場は、いずれも満席になる盛況ぶりとなった。
午前11時から始まった基調講演の冒頭には、CEATEC JAPAN実施協議会の会長を務める三菱電機の柵山正樹会長が挨拶。「CEATEC JAPAN 2018は、日本の成長戦略や未来を、世界に向けて発信するSociety 5.0の展示会となる。テーマは、『つながる社会、共創する未来』であり、産業の枠を超えたつながり、国際的なつながり、そして、スタートアップとのつながりもある。また、今年は、昨年を上回る725社が出展している。しかも、新たに参加している企業が多い。CEATEC JAPANにとって、古参といえる企業のブースだけでなく、新たに加わった企業や団体のブース、CEATEC AWARDを受賞した企業のブースをぜひ見てほしい。また、150を超えるカンファレンスを用意しており、さらに、日本のリーダー企業のトップによるキーノートも用意している。みなさんにとって、新たなつながりや、共創を生み出すきっかけになれば、主催者として無上の喜びである」と語った。
基調講演のトップバッターとなったのは、コマツの大橋徹二社長だ。
大橋社長は、「CEATEC JAPANは、CPS/IoTの最先端技術が集結するイベントであり、そのキーノートで講演ができることを光栄に思う」と切り出し、コマツが取り組むスマートコンストラクションについて説明。「もっと安全で、もっと生産性が高く、もっとスマートな未来に向けて、スマートコンストラクション2.0に取り組んでいく」と発言したほか、「進化には、共創が必要不可欠である。現場から未来に向けた取り組みに向けて、多くのパートナーとともに共創に取り組みたい」と述べた。
また、午後2時からは、ローソンの竹増貞信社長が基調講演に登場した。
竹増社長は、「CEATEC JAPANはローソンから、ちょっと遠いところにある展示会だと思っていた。だが、今日のローソンの講演には、これだけ多くの人たちに集まってもらっている」と前置きし、「ローソンは、街が持つ課題に対して、デジタルを巻き付けて解決を図る。そして、ハートを前面に出した、マチの生活プラットォームの役割を担う店舗へと変わり、そこでゲームチェンジをしたい。ただ、マチの生活プラットフォームの役割を実現するには、1社では不可能だと考えている。挑戦するために多くの方々と手を組みたい。私たちと一緒に、温かい未来を開くゲームチェンジャーになってほしい」と呼びかけた。
基調講演後に取材に応じたローソンの竹増社長は、「私は関西人。会場から笑いが出なかったことが反省点」とジョークを飛ばしながらも、「CEATEC JAPANが我々に門戸を開いてくれたのは非常にありがたかった。いままでは一件、一件ノックをして、我々が考えていることをお話ししてきた。こうした機会を利用することで、大手からベンチャー企業、海外企業に至るまで、多くのデジタル関係者に対して、ローソンが考える未来や、それをどう実現したいと考えているのかを話したり、示したりできたと考えている。これから、どんな反応があるのかを期待している。どんな提案でもいい。ハートフルなお店を作るという点で協業できるチャンスがあれば、ぜひ声をかけてももらいたい」と述べた。
各社のトップも続々来場トップ同士が談笑する姿も
一方、展示会場には、出展各社のトップが来場していた。
パナソニックは、昨年に比べて、展示面積を大幅に縮小。テレビや家電は展示せずに、オートモーティブ&インダストリアシステムズ(AIS)社による車載向け部品やセンサーなどを展示していたが、パナソニックの津賀一宏社長は、出身母体のAIS社の展示ということもあってか、ひとつひとつの展示を時間をかけて視察。予定を大きく上回る30分近くを費やして、自ら体験したり、説明員に細かく質問をしていた。
シャープブースでは、石田佳久副社長と西山博一執行役員が、ブースを訪れる経営トップを出迎えて、最新の8Kテレビなどを説明。富士通ブースでは、山本正已会長と田中達也社長が、午前10時から自社ブースを視察。その後、会場内を視察したり、富士通ブースを来訪する他社の経営トップを出迎えた。
富士通の山本正已会長は、一般社団法人電子情報技術産業協会の会長時代に、CEATEC JAPANを視察する政財界トップをエスコートするなどの役割を担ったが、今年のCEATEC JAPAN 2018の会場を見て、「CEATEC JAPANの大きな変化を感じることができる内容になっている」と、新たなCEATEC JAPANの成功に期待を寄せていた。
CEATEC史上初、経済産業省の世耕大臣が視察に来場14ブースを回る
午後4時30分からは、経済産業省の世耕弘成大臣が視察のために、幕張メッセを訪れた。現職の経済産業大臣が、CEATEC JAPANを視察するのは初めてのことだ。
前日のオープニングレセプションで、「これまでの経済産業大臣は、レセプションには出席しても、CEATEC JAPANの展示は見たことがなかった。私は、初めて会場展示を視察する」と発言、会場を沸かした世耕大臣は、この日は、青いスーツに赤いネクタイで登場。各ブースを3分間隔で視察し、会場内の14のブースを訪問した。
シャープブースでは、まずは、8Kテレビの前に行き、「これを見たかったんだよ」とコメント。「ただ、うちに入るのは60型ぐらいかな」などと語って、周りの笑いを誘っていた。
展示会場は午後5時で終了するが、世耕大臣はその時間を過ぎても視察を続け、出展者に熱心に質問する様子も見られた。
「絡んだ糸」 ~うまくいったことと、すぐに改善すべきことと……~
会場を閉めた後の午後6時からは、国際会議場で出展者を対象にしたレセプションを開催。
CEATEC AWARD 2018の審査員なども参加し、CEATEC AWARDの部門賞の表彰式も行われた。審査員の間からは、「今年は、118点もの応募があったが、大賞や部門賞を決めるのにとても苦労した。それだけ拮抗した優れた内容の応募が多かった」と振り返った。開催初日の最後のイベントとなったのが、この出展者向けレセプションであった。
この会場で中締めが終わった後、鹿野エグゼクティブプロデューサーに、初日を総括するひとことを聞いた。
返ってきた言葉は、「絡んだ糸」であった。「開催初日は前向きな言葉を選びたかった」とする鹿野エグゼクティブプロデューサーだが、成功したことと、失敗したこと、あるいはうまくいったことと、うまくいかなかったことが、入り交じっている状態が、この言葉につながったようだ。
4人の企業トップによる基調講演は毎回満席となり、成功を収めたといっていいだろう。また、経済産業省の世耕弘成大臣の視察をはじめとするVIPが数多く来場したことも、CEATEC JAPANの盛り上がりを意味するものだったといえる。そして、IoTタウンは期待を超えた展示内容となり、多くの来場者が詰めかけた。だが、その一方で、視察の段取りで調整がうまくいかなかったり、伝えようと思っていたものが来場者に伝わらなかったりという反省も数多くあったという。「たとえば、色分けしたカーペットが、どういう意図を持ったものであるのかを伝え切れていないという反省がある。雰囲気が明るくなったという効果だけではないことが、伝わっていなかったのではないか」と自らに疑問を投げかける。
早くも、来年に向けた改善点が、山のように出てきたという。
この日から、鹿野エグゼクティブプロデューサーは、すべてのスタッフに、メモ帳を携行するように指示した。そこに改善点をひとつひとつ記し、来年の改善につなげようというのだ。もちろん、すぐに改善できる点は、すぐに改善に取り組んだ。そうした状況が、「絡んだ糸」という言葉につながっているのだろう。
果たして、この絡んだ糸は、明日には、きれいにほどけるのだろうか。
「CEATEC JAPAN 2018」イベントレポート記事一覧
- 「CEATEC JAPAN 2018」いよいよ開幕
- 「Society 5.0」の最新動向が分かる解説冊子を無償配布
- “ガジェット好き議員”視点の「CEATEC」見どころガイド
- 「ローソンが考える2025年のコンビニとは」 ~竹増貞信社長が基調講演~
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