2018年11月13日 06:10
「CEATEC JAPAN 2018」が、2018年10月16日~19日に、千葉県の幕張メッセで開催された。
今年で19回目を迎えたCEATEC JAPANは、2016年に「CPS/IoT Exhibition」へと大きく舵を切ってから3回目の開催となり、IoTを活用したあらゆる産業、業種による「共創」の場として、国内外からも注目を集め、725社/団体が出展、会期中には15万6063人が来場した。
今回、本誌では、会期前の2018年10月13日午前0時に開始した会場設営から、19日深夜の撤収までの間、関係者への密着取材を敢行した。超スマート社会「Society 5.0」を推進する日本最大規模のイベントである「CEATEC JAPAN 2018」の舞台裏はどうなっているのか。5回に渡ってレポートする。
報道向けの「メディアコンベンション」開催【会期前日】
10月15日は、CEATEC JAPAN 2018の開催前日ではあるが、「Day0」として、CEATEC JAPAN 2018関連のプレイベントがいくつも開催される日である。
それらのプレイベントのなかでも、多くの関係者を巻き込むのが、「メディアコンベンション」である。午後2時から、展示会場を使用して行われるメディアコンベンションは、報道関係者に参加企業の展示内容を公開するもので、その日夕方からのネット配信、夜のテレビ放送、あるいは翌日の朝刊などを通じて、情報が発信される。各社ブースの見どころも、メディアコンベンションを通じて発信され、翌日からのCEATEC JAPAN 2018の集客にも大きな影響を与えることになる。そのため、メディアコンベンションに参加する企業各社は、まさに本番さながらの日を迎えるといっていい。
この日は、午後からのメディアコンベンションを前に、会場には、報道関係者が早い時間から訪れていた。
報道関係者を対象にしたプレス登録は、午前9時から開始され、プレスセンターも午前9時にはオープンしている。その時間に、プレスセンターを訪れてみたが、早くも5人ほどの報道関係者が仕事を始めていた。
午前10時近くになると、プレスセンターは席が埋まり、入りきれないほどの状況になった。というのも、午前10時から、プレスセンター内の会見場で、トヨタとLINEが共同会見を行うことになっていたからだ。
CEATEC JAPAN 2018として、最初のイベントが、このトヨタとLINEの会見であった。だが、会見開始5分前になっても会見場が開かなかったため、会見に出席する予定の報道関係者がプレスセンター内に溢れかえってしまったのだ。トヨタの会見場が開くと、多くの記者が会場に移動。プレスセンター内は仕事ができる環境に戻った。
自動車担当記者は、トヨタの会見でスタートしたが、電機担当記者は別の会見でCEATEC JAPAN 2018のスタートを切った。シャープが、午前10時30分から、国際会議場で記者会見を開催。これが最初の仕事になったからだ。
ここでは、シャープブースの展示内容の紹介とともに、世界初となるチューナー内蔵の8Kテレビが発表された。会見場には製品は持ち込まなかったが、午後2時から開始されるメディアコンベンションにおいて、8Kテレビをシャープブースで公開するとした。
会見およびシャープブースでは、石田佳久副社長が出席。三菱電機、富士通とともに、最大規模のブースを構えるシャープが、CEATEC JAPAN 2018の目玉展示のひとつを、早くも明らかにしてみせたというわけだ。
シャープの石田佳久取締役副社長執行役員は、「CEATEC JAPAN 2018のシャープブースでは、医療、映像配信、AIoTスマートホーム、ホームエネルギー、教育&研究、リテール、AIoTプラットフォーム、ペットという8つのソリューションを展示した。また、シャープの8KとAIoTへの取り組みをもっと理解してもらうために、ブース内では、様々なテーマで、セミナー形式のカンファレンスを用意している。家電メーカーの枠を超えたシャープを見てほしい」と発言。
「CEATEC JAPANの位置づけが変わってきた。かつてのエレクトロニクスショーのような内容から変化し、IoTやソリューション、BtoBなどの要素も増えてきている。一方で、シャープは、キーとなる戦略のひとつにAIoTを掲げている。シャープの戦略がシフトするなかで、CEATECの場を使って、AIoTをもっと訴求していきたいと考えている。シャープの方針と、CEATEC JAPANの方針が合致してきていると判断している」と語る。
CEATEC JAPANは、2016年から、「脱・家電見本市」を打ち出し、「CPS/IoTの総合展」へとシフトしてきた。それから3年目を迎えたCEATEC JAPAN 2018は、シャープの石田副社長が語るように、まさにIoTやソリューション、BtoBなどの要素が増えた展示会へとシフトしている。
「テクノロジー“で”どんな未来を描くのか」を発信したい
その方針転換は、メディアコンベンションの開催を前に、午後1時30分から、会場内のイノベーショントークステージで行われた、CEATEC JAPAN実施協議会によるプレスブリーフィングで、さらに強調された。
ここでは、CEATEC JAPAN実施協議会の吉田俊ディレクター(一般社団法人電子情報技術産業協会企画管理部広報室長)が、CEATEC JAPAN 2018の概要について説明。出展者数が前年を上回る725社/団体に達したこと、会期中に16万人の来場を見込むことなどを示しながら、2015年を底にして成長基調に転じていることを紹介する一方、IT/エレクトロニクス産業の枠を超えた企業が数多く出展し、その象徴ともいえるIoTタウンは、前年比倍増にまで展示スペースを拡大。英国、フランス、インドなどの幅広い国から、ベンチャー企業が参加していることなども説明し、「CPS/IoTの総合展」へと歩んでいることを明確に打ち出した。
そのなかで、吉田ディレクターは、「CEATEC JAPANは、テクノロジーを発信する展示会ではなく、テクノロジーでどんな未来を描くのか、そして、テクノロジーでいかに社会を良くするのかということを見せる展示会」という表現を用いた。テクノロジー「を」ではなく、テクノロジー「で」というところにポイントがある。まさに、ソリューション型の展示会へとシフトしていることを表した言葉だったといえるだろう。
なお、プレスブリーフィングでは、CEATEC AWARD 2018の結果についても発表。総務大臣賞は、京セラの金属上でもアンテナ特性が低下しない2.4GHz帯の小型・薄型の新アンテナ「Amcenna」、経済産業大臣賞は、エアロネクストの4D Gravity搭載 360°VR撮影用ドローン「Next VR」がそれぞれ受賞した。
海外との共創を強く意識した「Global Symposium」を新たに実施
幕張メッセの会場でプレスブリーフィングが行われていた時間、鹿野エグゼクティブプロデューサーは、東京・大手町のパレスホテル東京にいた。
というのも、CEATEC JAPAN 2018のプレイベントとして、午後3時から、「Global Symposium」を開催。その責任者として、現場で陣頭指揮を執っていたからだ。
Global Symposiumは、約250人の経営トップを対象にした完全招待制のシンポジウムとして開催。インダストリー4.0やSociety 5.0など各国が取り組む施策の現状や課題を共有するとともに、知見やアイデアを持ち寄り、課題解決に向けた議論を行う場として、今年初めて開催したものだ。
ドイツ産業連盟のデータ・ケンプ会長、米Salesforce.comの共同創業者兼CTOであるパーカー・ハリス氏、仏ダッソー・システムズの共同創業者兼国際渉外特別顧問であるフィリップ・フォレスティエ氏、CEATEC JAPAN実施協議会会長であり、三菱電機取締役会長の柵山正樹氏がそれぞれ講演。さらに、グーグルの専務取締役兼CMOである岩村水樹氏がモデレーターとなり、この4人の講演者によるパネルディスカッションが行われた。しかも、これらの講演およびパネルディスカッションは、すべて英語で行われ、会場では英語から日本語への同時通訳が行われた。
海外との共創を強く意識するCEATEC JAPANにとって、次のステップに向けた試金石になる重要なイベントだったのだ。
「役員以外の代理出席は認めない」という制限をかけた招待制の会場は満席となり、講演やパネルディスカッションの内容についても、各国におけるこれまでの取り組みや経験などをもとにした活発な意見や提案が行われ、実のあるものになったといえよう。
Global Symposiumの開催直前に初めて会うことになった、4カ国にまたがる経済界トップのパネルディスカッションは、どれぐらいの盛り上がりになるのかが注目されたが、それが、予想以上の結果になった。
実は、これだけの盛り上がりみせた背景に、見逃せないひとつのエピソードがある。
Global Symposiumの直前に行われた打ち合わせのなかで、岩村氏から、パネルディスカッションでは、ドイツ産業連盟のデータ・ケンプ会長の名前をどう呼べばいいのかという質問があった。そのとき、ケンプ会長から「ファーストネームで呼んで欲しい」という提案があったという。これに、他のパネラーも同調。ただし、日本人である柵山会長には、「マサ」という呼び方もあったが、日本でのパネルディスカッションということもあり、「柵山さん」と呼ぶことにしたというのだ。
直前に行われたこの対話が、場を大きく和ませることになり、パネルディスカッションでも活発な意見や提案が生まれるベースになったようだ。これは、海外流の手法を持ち込んだパネルディスカッションともいえ、壇上でパネラーたちが見せたコラボレーションのひとつの成果ともいえた。CEATEC JAPANにとっては、初の「Global Symposium」の開催であったが、鹿野エグゼクティブプロデューサーは、「想定以上の出来映え」と自己評価。来年以降の開催にも意欲をみせた。
さらに、Global Symposiumに続いて、同じ場所を利用して、経済産業省主催の「Connected Industries カンファレンス」を開催。
冒頭には、経済産業省の世耕弘成大臣が登壇して挨拶をしたほか、「ものづくり分野における協調領域の拡大」、「AIベンチャーと大手・中堅企業による共創」と題したセッションがそれぞれ行われ、日立製作所の東原敏昭社長、ファナックの稲葉善治会長、三菱電機の山西健一郎特別顧問、DMG森精機の森雅彦社長などが出席。世耕大臣からは、「これだけの人が揃っているのに、1人2分しか喋らせないのは、なんとも贅沢で、なんとももったいない会議である」とのコメントも飛び出した。
Global Symposiumおよび「Connected Industries カンファレンス」に続いて、パレスホテル東京では、CEATEC JAPAN 2018のオープニングレセプションが開催された。
会場には約800人のCEATEC JAPAN関係者が参加。会場には、経済産業省の世耕弘成大臣や、総務省の石田真敏大臣なども出席した。
CEATEC JAPAN実施協議会の会長を務める柵山氏は、「CEATEC JAPANは、昨年に引き続き、日本の成長戦略と未来を世界に向けて発信するSociety 5.0の展示会と位置づけ、『つながる社会、共創する未来』をテーマに開催する。産業界の共創という意味では、昨年の金融、観光、スマートライフなどの業種から出展をしてもらったが、今年は、さらに物流・流通、スマートシティ、農業といった分野からも出展していただき、共創の輪が広がってきている。国際的な共創としては、新たにCo-Creation Parkを設置し、フランスが初めてパビリオンを設置し、米国、英国、インドなどもバピリオンを出す。また、IoT推進ラボが招聘するスタートアップ企業が集結し、さらに共創の輪を広げようとしている。CEATEC JAPANを、内外のプレーヤーがつながる場とし、政策、産業、技術、海外といった観点からも、つながる力を実感してほしい」と語った。
なお、オープニングレセプションでは「CEATEC AWARD 2018」の総務大臣賞および経済産業大臣賞の授与も行われた。
仕上げとしての「色分けされたカーペット」そして「無」……
一方の幕張メッセでは、午後5時でメディアコンベンションが終了。会場内は、一度、全体清掃が行われた。
その清掃後、展示会場では大きな仕事が残っていた。それは、会場内の通路にカーペットを敷くという作業だ。
それも単にカーペットを敷くという作業ではない。細かく色分けしたカーぺットを会場内に敷くのだ。
鹿野エグゼクティブプロデューサーは、「CEATEC JAPANの来場者からは、会場に到着しても、目的のものがどこにあるのか、どこに行ったらいいのかが、わかりにくいという声が出ていた。そこで、今年のCEATEC JAPAN 2018では、展示テーマごとに色分けをしたり、それを案内図に色分けして表示したりといったことを行った。そして、会場内の通路のカーペットも色分けして、そこに向かっていけば、目的のものに到達できるようにした」とする。
これは今年から導入したキービジュアルとも連動したものとなり、まさに様々な「色=テーマ」が組み合わさることによって、共創を実現する展示会になることを示したものだ。
テーマごとに色を変えたカーペットを敷くことは、共創の展示会の会場を完成させるための総仕上げといっていいだろう。
とくにホール3は、様々なテーマの展示が入り組んだエリアだ。作業者は図面と睨めっこしながら、色を組み合わせたカーペットを敷き詰めていった。
鹿野エグゼクティブプロデューサーは、午後8時過ぎに大手町のパレスホテルをあとにして、幕張メッセへと戻った。通路に色分けされたカーペットが敷き詰められた会場を見て、明日から迎える本番に手応えを感じたようだ。
この日、鹿野エグゼクティブプロデューサーが表現した言葉は、「無」であった。
「いよいよ明日から、CEATEC JAPANが開幕する。これまでの準備やプレイベントの開催で積み上げてきたものや、それに伴って生まれていたプレッシャーやストレスを、一度、リセットして、明日に臨みたい。課題はたくさんあるし、不満も、不安もある。だが、明日に向けて、無になって、すべてのエネルギーを開幕に注ぎたい」と語る。
開幕に向けて、全エネルギーを注ぎ込む姿勢を強調してみせた。
「CEATEC JAPAN 2018」イベントレポート記事一覧
- 「CEATEC JAPAN 2018」いよいよ開幕
- 「Society 5.0」の最新動向が分かる解説冊子を無償配布
- “ガジェット好き議員”視点の「CEATEC」見どころガイド
- 「ローソンが考える2025年のコンビニとは」 ~竹増貞信社長が基調講演~
- 「日本の中小企業」を世界に発信、東京五輪にも関わる「東京ビジネスフロンティア」とは?
- 【まとめ】「水没PC」に「森林用の3Dマップ作製ツール」「AIガードマン」「顔認識」…
- 【まとめ:決済・小売サービス】顔認証による“手ぶら決済”など
- 【ローソン】“ウォークスルー決済”店が期間限定で出現、弁当やおにぎりを購入可能
- 【バンダイナムコ】「ザクではない!」ジオニック社公式の「MS講習キット」登場
- 【竹中工務店】免震構造をVRで体験可能、「人の流れのビジュアル化」は赤外線で?
- 【LIXIL】集荷もできる「宅配ポスト」を実際に体験
- 【MUFG】「MUFGコイン」は日々の生活で
- 【Japan Digital Design】ミニバンに入る「移動式ATM」が展示、実際に引き出しOK
- 【Origami】「折紙駅」でQRコード決済体験、車内販売風のカフェも
- 【コマツ】巨大ロボのコクピット? 建機を5G通信で遠隔操作、現場のVR体験も
- 【JTB】スマートスピーカーでチケット購入、旅行者から自治体までをカバー
- 【ACCEL-LAB】スマートホーム用デバイスが一堂に、一般家庭向けから店舗・オフィス向けまで
- 【三菱地所】VRスコープで施設を仮想内覧、回避困難なフィッシングメールも目の当たりに
- 【豆蔵】ルンバが探し物を見つける、DJ/VJになれる、最新ノイズキャンセリングも体感
- 【Origin Wireless】Wi-Fi電波で呼吸や動きを検出、精度50cmで追跡
- 【SMBC】キャッシュレス/カードレス社会に向けた新しい取り組み