イベントレポート

CEATEC JAPAN 2018

“ガジェット好き議員”視点の「CEATEC」見どころガイド 〜「未来の景色を体験して欲しい」〜

 今年の「CEATEC JAPAN 2018」は、多くの政府関係者が視察に来場しているのも特徴だ。経済産業大臣としては初めて会場を視察した世耕弘成大臣をはじめ、関連省庁の幹部も数多く視察に訪れている。

 そうした中、ユニークな視点でCEATEC JAPAN 2018の会場を視察したのが、自由民主党の小林史明衆議院議員だ。

 視察の場合、その多くが、各ブースを2~3分程度で巡回しながら主要な展示だけを見て回るケースとなっているのに対して、小林議員は一般来場者と同じ入場証で来場。自身が興味を持ったブースを中心に、会場内を約5時間かけて視察。展示を体験したり、説明に聞き入るなど、ほかの議員とは異なる手法でCEATEC JAPAN 2018に展示された最新テクノロジーに触れていた。大学卒業後はNTTドコモに入社し、法人営業などを担当。当時からCEATEC JAPANを訪れていた、ガジェット好きという経歴を持つ小林議員に、今回のCEATEC JAPAN 2018を見た感想を聞いた。

今年のCEATEC JAPAN、「体験するものが多いことに、いい意味で驚き」

――小林議員は、以前からCEATEC JAPANに来場していたのですか。

 私は2007年にNTTドコモに入社し、法人営業を担当していました。その際に、CEATEC JAPANに出展している自社ブースを見たり、提案できるソリューションの種を探したりといったかたちで利用していました。

 その後、人事採用担当となったときにも、大学生に向けて次の未来の姿を話す際にCEATEC JAPANの展示内容を参考にするといったこともありました。CEATEC JAPANは未来の姿を見ることができる場ですから、当時の仕事においても重要な意味を持つ展示会でした。

 それと、個人的にガジェット好きですから(笑)。いつもCEATEC JAPANを楽しみにしていましたよ。

――今回は、どんなかたちで視察をしたのですか。

 これは私のスタイルなのですが、どこを見て回るという制限を設けずに、自由に見て回っています。ですから、視察というよりも、一般入場者と同じく登録をして、体験を重視するかたちで回っています。

――入場証の企業名のところには「衆議院」と書いてありますね。まるで、衆議院に務めている事務局の方のような書き方です(笑)。

 「視察」となると相手も構えてしまいますし、ブースを訪れる時間も限られてしまいます。次から次へとブースを回っていかなくてはなりませんからね。私は、来場者の視点で展示を見ること、言い方を変えれば、生活者の視点で展示を見ることが大切だと思っています。ですから、今回も約5時間をかけてさまざまなものを体験するかたちで会場を回りました。

――CEATEC JAPAN 2018の会場を回った感想はどうですか。

 実は、今年のCEATEC JAPANは、例年のCEATEC JAPANよりも楽しかったというのが正直な感想です。これまでのCEATEC JAPANでは、ステージのプレゼテーションを聞いたり、新製品のモックアップの説明を聞いたりということが多かったのですが、今年は体験するものが多いことに、いい意味で驚きました。私自身もいろいろと体験をして学ぶことが多かったですね。

「切実に、これは買いたい」……「家庭用全自動お片付けロボット」

――まずは、ガジェット好きの「小林さん」として見て、最も気になったものはなんですか。

 Preferred Networksの「家庭用全自動お片付けロボット」ですね。私は一人暮らしが長いので、本気で欲しいと思いましたね。しかも、ロボットの動きが可愛い。そして、一番いいのは、家の中のどこに何が仕舞われているかということが理解できるということです。これは、PCの中にデータやファイルを格納して、それを必要なときに取り出すのと同じ仕組みですよね。さまざまなものを自動的に片づけてくれながら、仕舞った場所をちゃんと覚えていてくれる。最新のテクノロジーが身近な生活の中に実装されるということが、理解しやすい事例でもあります。

 一番前に座り込んで、10分以上見ていましたよ。切実に、これは買いたいなぁと思いましたね(笑)。

――シャープでは、8Kテレビの展示もしていましたが。

 すばらしい技術だと思います。ただ、私のいまのライフスタイルでは、ゆっくりと8Kテレビを楽しんでいる余裕がないんです。目の前の課題解決という点では、片づけをしてくれるロボットの方に注目してしまいますね(笑)。片づけが終わったら、テレビです。

Health Techで「国全体の景色が変わる」、災害対策へのテクノロジー活用にも期待

――一方で、政治家の「小林議員」として見た場合には、どんな展示に注目しましたか。

 Health Techの部分が面白くなってきたと感じました。例えば、ライオンのブースでは、歯や歯ぐきの状態をすぐに診断してくれるソリューションを展示していましたが、これは大きな価値を提供するものに発展すると感じました。口腔ケアは虫歯予防や歯周病予防という点でも大切ですが、実は糖尿病予防にもつながるのです。口腔環境を良くすることで、生活習慣病を無くすことができる。

 テクノロジーを使って、これだけ簡単に診断ができるようになると、治療することよりも、予防をすることに意識が移りやすくなるでしょうね。国民の意識が変わる提案につながるわけです。そうした新たな行動が始まると、国全体の景色が変わることになります。医療費の削減というレベルの話ではなく、社会のあり方や生活の仕方全体が変わってくるのです。その可能性をテクノロジーで見せてもらったと思いました。

 また、KDDのIブースでは、スクワットのフォームが正しいかどうかを検証するデモストレーションを体験したのですが、これも、身近なことにテクノロジーを使って手軽に健康になるための提案の1つだといえます。

 私は「健康オタク」の側面もあって(笑)、スクワットは毎日欠かさないのですが、そのフォームがインストラクターよりもいいと言われましたよ。




 さらに、経産省がリードする「J-Startup」のコーナーでは、エコーとPCをつないで自分で血管の状況を見たり、映像をそのまま病院に持ち込めば、それをデータとして活用することもできるデモストレーションに驚きました。

 ローソンのブースでの意欲的な新提案にも驚きましたね。私も無人レジを使って実際に買い物をしてきました。人を並ばせないための無人レジの提案だったのですが、あまりの人気で長蛇の列ができてしまいましたね(笑)。それだけ、来場者の注目度が高かったといえます。

 いま、私が強い意識を持って取り組んでいることの1つに災害対策があります。例えば、広島県は西日本豪雨のあと、復旧に向けてさまざまな取り組みを進めていますが、ボランティアで参加していただく方々の管理がうまくいっていない部分を感じます。せっかくボランティアに来たのに、事前に登録されていないから断られるというようなこともあるようです。

 災害対策の領域においては、なかなかテクノロジーが活用されにくい状況にあるのが実態ですが、今回のCEATEC JAPANに出展していたNECのブースでは、2019年のラグビーワールドカップのボランティアを管理するための顔認証システムが展示されていました。ブースの担当者に聞きましたら、これは災害時のボランティア管理にも利用できると言われました。これは、素晴らしい技術と出会えたと思いましたね。

 今後、この技術について、ぜひ自民党内のセミナーで説明をしていただきたいと思いましたし、そうした技術とボランティアにおける課題とをすりあわせて、どう実装し、どんな解決につながるのかということを考えたいですね。もちろん、ここにはNEC以外の技術もあるでしょうから、そうしたところにも視野を広げていきたいと考えています。

 私は、国民の気持ちを変えて、初めて社会の姿を変えられると思っています。そのためには、国民とどんなコミュニケーションを取ればいいのかを常に考えています。CEATEC JAPANでの体験ができたことはとても大きなメリットでしたし、そうしたことを体験を通じて、実感しながら、みなさんに話をしていきたいと思っています。そして、ぜひ、多くの人にCEATEC JAPANに来て、体験をして欲しいと思っています。

「未来の景色」をCEATEC JAPANで体験して欲しい

――多くの人にCEATEC JAPANに来て欲しいのはなぜですか。

 一言でいえば、「未来の景色を見ることができる」からです。これからの未来を感じることができますし、新たなテクノロジーを身近な生活に使うというのはこういうことか、ということも実感できるはずです。こんなにいい機会はありませんよ。各社の展示ブースを見て、社会を変えることができるテクノロジーが数多く集まった展示会であることを感じました。私は、今年1月に米ラスベガスで開催されたCESを視察してきたのですが、今回のCEATEC JAPANを見て、日本のテクノロジー企業やスタートアップ企業も「結構、イケてる」と感じました。これらの展示を見て、その可能性に、私自身も力をもらった気がしました。

 それと、かつての家電見本市時代のCEATEC JAPANは、モノ起点の展示が多かったのですが、2016年にCPS/IoTの総合展示会に舵を切ってから、生活者起点、あるいは人起点の展示が増えてきています。テレビそのものを見せるというよりも、テレビがある生活の中でさまざまなものがつながって生活者の利便性を高め、こんなに豊かな生活ができるということを見られる展示会になってきたのではないでしょうか。この背景にあるのは、テクノロジーの劇的な進化だといえます。

 CESとは展示の規模感が全く違いますが、私の印象としては、CES以上に体験型の展示密度が高かったと思います。これは、CEATEC JAPANにとってこれからの大きな特徴になると思います。

――一方で、CEATEC JAPANの課題のようなものは感じられましたか。

 従来以上に「海外」「グローバル」を意識したイベントになっていることは強く感じています。しかし、CESに比べると、まだまだグローバルという点では薄いですね。もっと海外企業の出展や来場者が増えるといいですね。

 私は、(先日まで務めていた)総務大臣政務官兼内閣府大臣政務官として、電波・放送・通信関連の規制改革に取り組んだ際に、研究開発用途やマーケティテング用途であれば、一定数量に限定して技適を取得をしないで済むように法改正を決めました。こうした仕組みを生かして、海外のセンサーやモジュールといったIoT関連の技術を試しに活用してもらうこともできますから、CEATEC JAPANをそうした場にしてもらうことも視野に入れると、さらにグローバル化が進むのではないでしょうか。政府の規制緩和の動きと、CEATEC JAPANのグローバル化が連動するようなかたちになるといいですね。日本は5Gのインフラ環境がいち早く整う見込みですし、海外の企業から見ても魅力的な市場であり、同時に、日本の先進的な技術にも海外企業から関心が集まっています。こうしたチャンスを生かせる展示会に発展して欲しいですね。

 一方で、CESでは多くの商談ブースが設けられていますが、CEATEC JAPANでももっと気軽に商談ができるエリアがあるといいのではないでしょうか。従来の家電見本市とは違う展示会となったわけですから、こうした工夫にも期待しています。

 もう1つ感じたのは、これだけ体験型の展示が多いイベントですから、もっと子どもたちにも体験をしてもらいたいと思いました。平日の授業の一環としてCEATEC JAPANを見学し、最先端の技術を体験してもらうことで、未来の生活や新たな技術に対する興味や関心が高まるはずです。ライオンの予防歯科の展示も、子どもたちにとってはとても興味深い体験になるはずですよ。実は、私が技術系に進んだのは、駅前にあった「もみじ饅頭」を自動的に焼く機械を幼稚園のときに見てとても感動したからなんです。毎日、2時間眺めるのが子どものときの私の日課でした(笑)。CEATEC JAPANの展示を通じて若い世代に未来をアピールしたり、エンジニアになりたいと思ってもらうといいですね。

――これからCEATEC JAPANを訪れる人たちにメッセージはありますか。

 ぜひ、「未来の景色」をCEATEC JAPANで体験して欲しいですね。これが自分たちが過ごす数年後の社会であり、そこでどう生活するか、どう働くか、どう生きていくべきかということを感じることができるはずです。

 ただ、CEATEC JAPANに来る方々はテクノロジーに関心がある方々や、それを動かす現場の方々が中心です。会社の場合であれば、新たなテクノロジーを活用したり、協業したりするには、必ず上司などを説得しなくてはならないという作業が発生するはずです。それならば、まずはCEATEC JAPANに連れてきてしまって、いまこんなことが起こっているということを見せてしまうのが手っ取り早いと思います。景色を見せると意識が変わります。そうした活用方法ができるようになったのも、新たなCEATEC JAPANの魅力の1つではないでしょうか。

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