清水理史の「イニシャルB」【特別編】
実効3GbpsのハイエンドWi-Fi 7ルーターがさらに安く! 6GHz帯320MHz対応でWAN/LAN共に10Gbpsを持つTP-Link「Archer BE805」
- 提供:
- ティーピーリンクジャパン株式会社
2024年3月25日 06:00
ハイエンドのWi-Fi 7ルーターの価格帯が一気に1万円も下げられ、実売5万円で入手可能になった。TP-Linkから登場した「Archer BE805」は、無線が320MHz幅対応で最大通信速度 11520Mbps(6GHz)+ 5760Mbps(5GHz)+ 1376Mbps(2.4GHz)、有線もLAN/WANともに 10Gbps対応となるハイエンドWi-Fi 7ルーターだ。
同社からはすでに実売3万円というミドルレンジモデル「Archer BE550」も発表はされているが、Archer BE805と比較すればスペックは抑えられていて、通信速度は半分、LAN/WANも2.5Gbpsまでにとどまる。スペックに対する価格としては、Archer BE805のパフォーマンスが際立つ。
そこで今回はそんな今買っても、あと5年は第一線で戦えそうなハイエンドモデル Archer BE805を実際に試してみた。
最新ハイエンドのWi-Fi 7ルーターが5万円台?
現状のWi-Fi 6/6Eの速度は、条件が整っていても、せいぜい1~1.2Gbpsほど。
これに対して、Wi-Fi 7なら実効3Gbpsも夢ではない。
もちろん、対応する端末(Wi-Fi 7対応PC)や10Gbps対応回線なども必要だが、無線通信のパフォーマンスはWi-Fi 7によって大きな転換期を迎えたと言っていいだろう。
そんなWi-Fi 7環境を、しかもフルスペックで手に入れる。そんなハードルをグッと下げたのが、今回、TP-Linkから登場したArcher BE805と言えるだろう。
昨年末、日本で解禁されたばかりの6GHz帯320MHz幅に対応したWi-Fi 7ルーターで、通信速度は11520Mbps(6GHz)+ 5760Mbps(5GHz)+ 1376Mbps(2.4GHz)と6GHz帯に関しては10Gbps越えを実現する製品となっている。
最大のポイントは、その価格だ。
先行して販売されているハイエンドWi-Fi 7ルーターは、競合含め税込み6~6.5万円ほどで販売されているが、Archer BE805の実売価格は税込で5万800円と、何と約1万円も低い価格が設定されている。
業界関係者が「!?」と頭を抱える姿が思い浮かぶが、解禁されたばかりの最新規格のWi-Fiルーターとは思えない攻めまくった価格戦略と言える。
いち消費者として、ハイエンドのWi-Fi 7ルーターがこの価格で買えることを素直に歓迎したいが、チキンレースを見せられているようで、ワクワクとドキドキが止まらない印象だ。
もちろんスペックに手抜きなし
本製品の魅力は、市場をリードする要素が価格だけではない点にある。
前述したように、無線のスペックは11520Mbps(6GHz)+ 5760Mbps(5GHz)+ 1376Mbps(2.4GHz)のトライバンド対応となっているが、これらは全て4ストリーム対応となっている。価格を下げるなら、2.4GHzを2ストリーム688Mbpsにする選択肢もあったはずだが、そうせずに2.4GHz帯も4ストリーム確保し、上級モデルらしくトータル12ストリームを確保している。
実売価格 | 5万800円 |
CPU | - |
メモリ | - |
無線LANチップ(5GHz) | - |
対応規格 | IEEE 802.11be/ax/ac/n/a/g/b |
バンド数 | 3 |
320MHz対応 | 〇 |
最大速度(2.4GHz) | 1376Mbps |
最大速度(5GHz) | 5760Mbps |
最大速度(6GHz) | 11520Mbps |
チャネル(2.4GHz) | 1-13ch |
チャネル(5GHz) | W52/W53/W56 |
チャネル(6GHz) | 1-93(PSCあり) |
ストリーム数(2.4GHz) | 4 |
ストリーム数(5GHz) | 4 |
ストリーム数(6GHz) | 4 |
アンテナ | 内蔵(10本) |
WPA3 | 〇 |
メッシュ | 〇(EasyMesh) |
IPv6 | 〇 |
IPv6 over IPv4(DS-Lite) | 〇 |
IPv6 over IPv4(MAP-E) | 〇 |
有線(1Gbps) | 4 |
有線(10Gbps) | 2 |
有線(LAG) | 〇 |
USB | USB 3.0×2 |
セキュリティ | 〇 |
USBディスク共有 | 〇 |
VPNサーバー | 〇(OpenVPN、PPTP、L2TP/IPSec、WireGuard) |
動作モード | RT/AP |
ファーム自動更新 | 〇 |
LEDコントロール | 〇 |
サイズ(mm) | 105×265×295(実測値) |
正直、2.4GHzは混雑が激しくて実用が難しいが、IoT機器やカメラ、ゲーム機など、まだまだつながる機器は多い。こうした機器が多い環境でメリットが生きるだろう。
もちろん、本命の6GHz帯も320MHz対応のおかげで11520Mbpsとなっており、これを生かすために有線LANもWAN/LANそれぞれ1ポートずつが10Gbps対応となっている。
Wi-Fi 7対応の端末(現状はPCのみ)は、同じく320MHz幅で最大で5760Mbpsで通信可能なので、こうしたフルスピードの端末が複数同時に接続しても、10Gbps有線ならボトルネックが発生しない。
最近は、回線事業者のプロモーションによって10Gbps回線の導入が進んでいることもあり、超高速のインターネット接続環境を生かすためにも10Gbpsの有線はWi-Fi 7ルーターに不可欠な装備と言える。
冒頭でも、今後5年戦えると記述したが、ユーザーによってはこれから10Gbps回線の導入を検討しているケースも少なくないだろう。将来的な10Gbps回線の導入時にも心強いのが本製品のメリットと言える。
もちろん、国内回線事業者への対応も万全で、IPv6 IPoE環境でのDS-LiteやMAP-E接続にも対応している。海外メーカーは、こうした対応に苦労してきた(している)が、TP-Linkはしっかりと乗り越えた印象だ。
アンテナ内蔵! LEDオフボタン!
ユーザーの使いやすさに対する配慮も優秀だ。
サイズは実測で幅105×高さ265×奥行295mmほどあり、小型のデスクトップPCくらいはあるが、縦置きとなるため思ったよりも設置場所を選ばない。
また、アンテナが内蔵されているため、見た目もスッキリしているうえ、上部の空間を占有しないのも魅力となる。
アンテナは、筐体内部に全方向にぐるりと囲むように10本が内蔵されており、これにより全方向の通信をカバーできるように工夫されている。外付けアンテナは角度などの調整が思った以上に難しいので、おまかせで済むなら内蔵されている方が好ましい。
全体的なデザインも極端に攻めた部分がなく、日本の住宅環境にも合う印象だが、感心したのは背面にある「LED」ボタンだ。通常時、本製品は全面に青いLEDが点灯するが、このボタンを押すことで簡単にLEDをオフにできる。
部屋に設置する場合、夜間にLEDが気になるケースがあるが、これにより普段はオフにしておいて状態を確認したいときだけオンにすることができる。設定画面でオフにできる製品が多いが、物理ボタンでオフにできるのは、初心者にも分かりやすい。
また、セキュリティ対策としてHomeShield機能も搭載されており、ルーターのセキュリティスキャンや保護者機能なとの基本的な機能を無料で利用できる(有料プランのHomeShield Proへのアップグレードでさらに高度な機能も利用可能)。
このほか、[ワイヤレス設定]で[ゲストネットワーク]や[IoTネットワーク]など特定の用途に特化したSSIDを簡単に作れたり、VPN機能(サーバー/クライアントとも。ただしDS-LiteやMAP-Eでは利用不可)でWireguardが使えたりと、万人受けするわけではないが、必要な人にとっては便利な機能も搭載されている。
実効3Gbpsの世界へようこそ
気になるパフォーマンスだが、優秀だ。木造3階建ての筆者宅の1階に本製品を設置し、各階でiPerf3による速度を計測したのが以下の結果だ。クライアントにはWi-Fi 7対応のMSIのノートPC「Prestige-16-AI-Studio-B1VFG-8003JP」を利用した。
【お詫び 2024年7月22日】
本記事のテストに使用したPCのWi-Fiモジュールは、320MHz幅での通信が許可されていなかったことが判明いたしました。記事の制作において不適切な過程があったことをお詫び申し上げます。
データ自体は意図通りに320MHz幅での通信を行ったものとなっています。詳細は以下の記事もご覧ください。
Wi-Fi 7対応でも「320MHz幅」でつながるPCとつながらないPCがある、謝罪と問題の整理
1F | 2F | 3F | 3F端 | ||
6GHz | 上り | 3230 | 1210 | 695 | 184 |
下り | 2770 | 1150 | 639 | 209 | |
5GHz | 上り | 1730 | 844 | 610 | 229 |
下り | 1750 | 989 | 633 | 360 |
※サーバー:Ryzen3900X/RAM32GB/1TB NVMeSSD/AQtion 10Gbps/Windows11 Pro
※クライアント:Core Ultra 7 155H/RAM 32GB/1TB NVMe SSD/Killer Wi-Fi 7 BE1750w (Intel BE200D2W)/Windows 11 Home
近距離は、Wi-Fi 7の320MHz幅接続の恩恵でかなり高速だ。同一フロアの1階で最大3.23Gbpsを実現できている。文句なしの速さと言えそうだ。2階でも1Gbps越えで通信できているので、木造の壁や床を1枚隔てた程度であれば、1Gbpsの有線よりも速い環境が手に入ると言えそうだ。
ただし、長距離は6GHz帯の特性のためか若干苦手となる。筆者宅の場合、3階の入り口付近は階段も近いため、1階から電波が届きやすく600Mbps以上で通信できているが、3階の窓際(もっとも遠い場所)に移動すると、200Mbpsを切る結果になることも珍しくない。
参考として5GHz帯(100ch使用)の結果を掲載するが、長距離では5GHz帯を利用した方がパフォーマンスは高い傾向がある。
本製品は、標準設定ではスマートコネクト機能によって2.4/5GHzのSSIDが共通で設定され、6GHz帯が個別に設定される仕様になっている。近距離で高い速度が必要なWi-Fi 7端末は6GHz帯のSSID、長距離で利用する端末は2.4/5GHz帯のSSIDと使い分けるようにするといいだろう。
なお、本製品はEasyMeshに対応しているため、同じくEasyMeshに対応した同社製品を組み合わせることで簡単にメッシュ環境を構築可能だ。ただし、現状はEasyMesh接続で6GHz帯がサポートされていないため、Wi-Fi 7ならではMLOを利用したケースでもメッシュのバックホールが2.4+5GHzのみとなってしまう。今後のファームウェアのアップデートで対応予定ということなので、メッシュ構成でフルパワーを発揮できるのはもう少し先になりそうだ。
コスパは文句なし。長期利用を考えれば買って損なし
以上、TP-LinkのArcher BE805を実際に検証してみたが、コスパという点では申し分のない製品と言えそうだ。
通常、最新の規格が登場した当初は、ハイスペックだが価格が高い製品がしばらく続くのが通例だが、今回は価格面でも魅力的な製品がいきなり登場することになった。10Gbpsの回線を利用している場合はもちろんだが、シンプルにWi-Fiの速度を向上させたいというケースにおすすめできる製品と言えるだろう。
Wi-Fi 7対応のPCやスマートフォンも今年登場してくるはずなので、先行して投資しても損のない製品と言える。長期的な利用を考えるとお買い得なモデルと言えるだろう。