■ディープWebを検索する
検索エンジン各社はどこも、インデックスのサイズを大きくすることに苦心しているのはご存じの通り。そしてGoogleは、最近スタートさせた2つのサービス――Google SitemapsとGoogle Scholarによって、動的に生成されたWebページをもっとたくさんインデックスしようと考えているようだ。動的ページが数多くインデックスされれば、当然のようにインデックス全体のサイズもかなり大きくできる。
Yahoo!は最近、有料会員制のWebサイトを検索できるサービスの実験を始めた。会員制サイトはこれまで、検索エンジンが検索できない対象の1つだった。検索エンジンのクローラーからは見えない存在だったから、「ディープWeb」なんて呼ばれていたんだ。会員制サイトのコンテンツはタイトルやサマリー程度は見ることはできるけれど、内容を全文読むためには、コンテンツプロバイダーに料金を支払ったり、入会登録をする必要がある。
これは何年も前に、Northern Lightがやっていたビジネスモデルとよく似たサービスだ。Northern Lightは、Special Collectionという名称で、有料のコンテンツを検索できるサービスを提供していた。Special Collectionでは記事のタイトルやサマリーは無料で見ることができるが、全文を読むのには1~4ドルの課金が行なわれるシステムだった。
SearchEngineWatchBlogの記事によると、Yahoo!が今回のような有料コンテンツへの“ゲートウェイ”を提供しようと考えたのは、これが初めてではないという。2002年にもNorthern Lightと契約し、同様のサービスの提供を発表していたのだ。
「Northern Lightは以前、今回Yahoo!が始めたような有料検索を自社でスタートさせたことがあった。しかし同社はこのビジネスを展開させるほどの収益を上げることができず、2002年にはWeb検索自体を終了させてしまっている。」
今のところYahoo!の有料検索にコンテンツを提供しているのは、Wall Street Journal OnlineやConsumer Report、thestree.com、Forrester Research、The New England Journal of Medicine、Financial Timesといったところ。サービスはアメリカとイギリスの国内に限られているが、今後、例えばアメリカの法曹界で有名な情報サイトであるLexisNexsなど、コンテンツプロバイダーをさらに増やすことが検討されている。
■URL
Google Sitemaps
https://www.google.com/webmasters/sitemaps/docs/en/about.html
Google Scholar
http://scholar.google.com/scholar/about.html
SearchEngineWatchBlogの記事
http://blog.searchenginewatch.com/blog/050616-000001
■邪悪なバンドル?
GoogleがGoogle Deskop SearchやGoogle Toolbarなどのプログラムに、アーカイバのWinzipをバンドルし始めた。もっともバンドルはオプトアウトではなく、オプトインで提供されている。こういうのをバンドルするのって、邪悪だろうか?
まあ「邪悪」というのはちょっと言い過ぎで、主観的すぎる言い方かもしれない。もちろん世界は白と黒に決めつけられるほど単純なものじゃなく、あるいはブッシュ政権がさかんにアピールしているみたいに、「善と悪」などというものに二分できるものでもない。しかし少なくとも言えるのは、ソフトをこんなふうにバンドルするというのは、かなり馬鹿げたマーケティング戦術であるということだ。
こういうバンドルのやり方は、スパイウェアやアドウェアの会社がもともとは好んで使っていた手法だ。あなたのパソコンのハードディスクに、普通なら絶対インストールしてもらえないようなアプリケーションを放り込むために行なっていた手法である。
こういうことをGoogleがやっているというのはきっと、同社の企画部あたりにスタッフがあり余っているからに違いない。スタッフがたくさんいてすることがないから、何かすることはないかと暇な時間にあれこれ考えた挙げ句、こういうことを思いついたのだろう。
彼らの目指しているのは、市場を100%制覇することなんだろうか? 今や彼らは「口コミによる普及こそがもっとも効果的だ」というあの素晴らしい戦略を忘れてしまっているのだろうか? それともこれもGoogleの新規株式公開「以前」「以後」の変化の1つなんだろうか?
■テレビが凋落し、SEMが浮上する
AOLがテレビやラジオの広告を減らして、再びSEM(検索エンジンマーケティング)に力を入れ始めている。キーワード広告のOvertureやGoogle AdWordsを使って、トラフィックをAOLのさまざまなコンテンツに誘導しようとしているんだ。おまけにAOLは自社の検索エンジンの改善にも取り組んでいて、これはかなりいい傾向だ。
他の企業を見ても、例えば生活用品大手のP&Gが、テレビ広告に使うカネを減らし始めている。これは非常に重要な事態だ――なんといってもアメリカの広告業界では、P&Gはトレンドセッターとして知られているからだ。ロイターの記事によれば、「同社は2004年にはアメリカ国内で最大の広告主となっており、30億ドルの広告予算のうちテレビ広告に25億ドルも使っている」という。
そのうち日本もこういう状況になってくるんじゃないかな。
(2005/07/01)
【著者プロフィール】 |
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・文=ジェフ・ルート(Jeff Root)
ECジャパン株式会社のSEOチーフスペシャリスト。日本には出たり入ったりで早や10年。メールアドレスは「jeff@ecjapan.jp」。日本語もOKなので、気軽にメールをくれると嬉しい。 |
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・翻訳=佐々木俊尚
元全国紙社会部記者。その後コンピュータ雑誌に移籍し、現在は独立してフリージャーナリスト。築42年の古い家で、犬と彼女と暮らす。ホームページはこちら。 |
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