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第59回 いよいよ位置情報がキーワード広告の世界にやってきた
[2005/12/06]
第58回 AOLの持つパワーを奪い合う検索エンジン企業たち
[2005/11/14]
第57回 MITの100ドルパソコンとGoogleNetの深い関係
[2005/10/12]
第56回 検索エンジンと中国の関係はどこに向かうのか
[2005/09/20]
第55回 インターネットのコメントとレビュー
[2005/08/31]
第54回 検索エンジンの未来はどうなる?
[2005/08/11]
第53回 RSS検索が市民ジャーナリズムを支えていく?
[2005/07/15]
第52回 ディープWebを浮上させるYahoo!の戦略とは
[2005/07/01]
第51回 検索エンジンの「リミックス」って何だ?
[2005/06/07]
第50回 クリック詐欺がテレビニュースになる日
[2005/05/18]
第49回 ライブドアだけじゃない、すさまじい検索企業の買収劇
[2005/04/04]
第48回 Yahoo!とGoogleの戦争、コンテキスト広告でも勃発!
[2005/03/16]
第47回 「長いしっぽ」が世界に革命を起こす
[2005/03/04]
第46回 検索エンジン最新トレンドは「使い勝手」だ!
[2005/02/14]
第45回 コメントスパムをみんなでやっつけよう
[2005/01/28]
第44回 検索エンジンマーケティング業界が分裂?
[2005/01/14]
第43回 検索エンジンを崩壊させる「クリック詐欺」が撲滅されない本当の理由
[2004/12/08]
第42回 MSN SearchはGoogleを超えたか?
[2004/11/26]
第41回 キーワード広告に定額制が導入される?
[2004/11/12]
第40回 デスクトップ戦争が熱くなってきた!
[2004/10/28]
第39回 Googleがホスティング事業に進出!?
[2004/10/13]
第38回 A9が「検索ヒストリー機能」をひっさげてやってきた
[2004/09/28]
第37回 マイクロソフトはヤフーに法廷闘争を仕掛けるか?
[2004/09/09]
第36回 サーチエンジンオーバードライブの夜
[2004/08/25]
第35回 GoogleとYahoo!の和解で、業界はどう変わる?
[2004/08/11]
第34回 検索エンジン特許から業界展望を読む
[2004/07/29]
第33回 Googleの株価はどうなる?
[2004/07/15]
第32回 ラスベガスのSEO企業にご注意を!
[2004/06/30]
第31回 Googleが裁判で敗れる日!?
[2004/06/16]
第30回 Yahoo! JAPANとGoogleの提携解消が与える影響は?
[2004/06/01]
第29回 GoogleとMicrosoftの「仁義なき戦い」
[2004/05/26]
第28回 新しい検索エンジン「ウジコ」って何だ?
[2004/05/12]
第27回 オークション大戦争、前哨戦が中国で勃発?
[2004/04/21]
第26回 Googleの新しいメールは盗聴システムになる?
[2004/04/07]
第25回 Yahoo!が独自のページランクテクノロジーを開発?
[2004/03/25]
第24回 「ローカルサーチ」という新しいトレンドって?
[2004/03/10]
第23回 Yahoo!の新しい検索エンジンは、アンチスパムを装備
[2004/02/25]
第22回 Googleはネット共同体からイチ抜けた?
[2004/02/10]
第21回 画期的に新しい? MSN Searchの驚くべき戦略とは
[2004/01/28]
第20回 検索結果がビジュアルになるメリットって?
[2004/01/13]
第19回 再編される検索エンジン業界の余波、続々
[2003/12/16]
第18回 ビジネスと政治に翻弄される検索エンジン
[2003/12/02]
第17回 幻に消えた? MicrosoftのGoogle買収報道
[2003/11/18]
第16回 Googleが買収されると検索結果はどう変わる?
[2003/11/04]
第15回 地理感覚のある検索エンジンが登場!
[2003/10/21]
第14回 gooとGoogleの歩んでいく道は……
[2003/10/07]
第13回 OvertureとGoogleはどっちがパフォーマンスが高い?
[2003/09/24]
第12回 オーガニックな検索エンジンマーケティングって何だろう?
[2003/09/09]
第11回 Googleとユーザーたちの間に起きた「ハリウッド風エンディング」
[2003/08/12]
第10回 Yahoo!のOverture買収で浮上した3つの疑問
[2003/07/29]
第9回 ネット広告の値段で人気業種がわかる
[2003/07/08]
第8回 GoogleはNetscapeの二の舞になる?
[2003/06/24]
第7回 商品カタログ検索がネットビジネスを制覇する?
[2003/06/10]
第6回 Googleの進んでいく道の先には(下)
[2003/05/28]
第5回 Googleの進んでいく道の先には(上)
[2003/05/13]
第4回 SETI@homeと検索エンジンをつなぐもの
[2003/04/22]
第3回 狙いは“商品検索”じゃない、AmazonとGoogleの提携
[2003/04/08]
第2回 打ち捨てられた“メタタグ”が復活する日
[2003/03/25]
第1回 相次ぐ買収劇の背景を探れ!
[2003/03/11]
そこが知りたい!検索エンジンの裏側

第56回 検索エンジンと中国の関係はどこに向かうのか

Yahoo!の巨額のマネーが中国へ

 Yahoo!が中国のAlibaba.comに約17億ドル出資し、同社株の約40%を所有することに同意した。International Herald Tribuneの記事によれば、Yahoo!が出資したAlibaba.comは未公開企業だが、中国のB2Bマーケットプレイス最大手で、中国製品をワールドワイドに送り出している。同社は一般消費者向けのTaobao.comも運営していて、中国ではeBayの好敵手として知られているという。また同じ記事によれば、Yahoo!は中国国内でのYahoo!の運営についても、同社に7億ドルで譲渡することに合意したという。

 この買収が完了すれば、Alibaba.comの株式はYahoo!が40%、日本のソフトバンクが27%、そしてAlibaba managementが33%を分け合うことになる。boston.comの記事によると、「Yahoo!が新たに買収したAlibaba.comは中国のインターネットビジネスの主導権を握る目的で、今後キーとなる新たなビジネスを立ち上げることを目指している。もっとも今のところ、短期的に他社を買収したり、増資を行なう予定は決まっていない」という。

 boston.comの記事では、Alibaba.comのCEOであるJack Maにインタビューしていて、「今のところは、中国市場に資金を投入してシェアを拡大する方が重要で、利益を上げることはそれほど重要ではない」という発言を引き出している。

 振り返ってみると、1990年代の終わりのネットバブルのころは、どの企業も「カネを儲けるより、ニューエコノミーに参加することの方が重要なんだ」と力説していた。要するに勇気を持ってゲームに参戦しておけば、将来に必ず大きな利益を得ることができるという考え方だった。これと同じことが中国で起きつつあるということなのかな? ロイターによれば、Alibaba.comは2003年には3,000万ドルの売上があり、2004年にはそれが6,800万ドルにまで増えた。だから2005年にYahoo!がAlibaba.comを買収した17億ドルは、2004年の売り上げの15倍にもなる。eBayがAlibaba.comの買収に興味を示したことによってYahoo!の買収金額がかさ上げされてしまったという話もあるようだが、いずれにしても、アメリカや日本の企業が中国でのネットビジネスをどう見ているのかということが、これらの事実から見て取れるんじゃないかな?

 中国では最近、ほかにも外国企業からさまざまな投資が行なわれている。

  • 2003年、eBayが上海に本拠のあるEachnetに1億8,000万ドルを出資
  • 2004年、Interactivecorp(現在はAsk Jeevesも所有している企業だ)が、中国のオンラインリテイラーであるElongに6,000万ドルを出資し、筆頭株主に
  • 2004年、Amazon.comが中国のライバル企業であるJoyoに7,500万ドルを出資

 そしてまた、MicrosoftとGoogleが中国での事業展開に関する幹部社員の移籍をめぐって、熾烈な法廷闘争を始めている。これは何とも面白い物語だ。もし皆さんが英語でののしる方法を学びたいんだったら、ぜひMicrosoftのCEOであるSteve Ballmerのやり方を勉強するといい。John Battelle's Searchblogで、法廷に提出されたドキュメントが紹介されているけれど、何ともすごい。まるでハリウッドの映画スターみたいな毒づき方だ。

「Fucking Eric Schmidt is a fucking pussy. I'm going to fucking bury that guy, I have done it before, and I will do it again. I'm going to fucking kill Google.」

 Eric Schmidtというのはご存知のように、GoogleのCEOの名前。BallmerはEric Schmidtという固有名詞を「fucking」という形容詞で修飾し、そして「pussy」(これはまあ汚いスラングで、弱い男という意味だね)という一般名詞を、またもfuckingで修飾している。

 さらにこの「I'm going to fucking kill Google」という表現! この中のfuckingは今度はkillという動詞を修飾する形容動詞で、「本当に」「間違いなく」という意味だ。これは一歩進んだ表現技法だね。

 さて、Ballmerの毒づきを日本語に訳すと、こんな風になる。

 「くそったれのEric Schmidtのオカマ野郎め! あの野郎、絶対に葬り去ってやる! 今までだって同じようなことをやってきたんだからな、何度でも同じことだ。Googleを絶対にぶち殺してやるぞ!」

 これほどまでにプロフェッショナルな毒づき方ができるのは、アメリカの指導者層にもあまりいない。僕の覚えている限りでは、アメリカの国連大使に就任したJohn Boltonや、副大統領のDick Cheneyなんかがそうかな。彼は昨年、議事堂の中で上院議員に向かって、「Fuck yourself!」と言ってのけた。この表現は、fuckを動詞として使ってる。もっとも一般的な使い方だね。それからこんなニュースの映像もある。先週、ハリケーンの被害にあったミシシッピ州で、被災者がCheneyに向かってこんなことを言っているんだ。

 「Go fuck yourself, Mr. Cheney. Go fuck yourself」(消えろよ、このオカマ野郎のCheneyさんよぉ!)

URL
 International Herald Tribuneの記事
 http://www.iht.com/articles/2005/08/15/business/alibaba.php
 boston.comの記事
 http://www.boston.com/news/world/asia/articles/2005/09/10/alibaba_eyes_growth_no_acquisitions_yet/
 Jack Ma氏のプロフィール
 http://www.alibaba.com/aboutalibaba/jack.html
 John Battelle's Searchblog
 http://battellemedia.com/archives/001835.php
 ハリケーン被害者のニュース映像
 http://www.youtube.com/watch.php?v=V3nuh6mNdH8


オープンスタンダード運動の行方

 eCommerce Timesの記事によれば、世界13カ国の政府幹部職員からなる有志グループが、経済の成長と進歩を促すため、各国がオープンスタンダードなテクノロジーを採用することを求めるレポートを世界銀行に提出したという。ちなみにこのレポートでは、オープンスタンダードはオープンソースソフトウェア(OSS)と同義語ではないと注釈されている。

 プロプライエタリな技術を使って富を蓄積することは、どの企業にとっても究極の目標だと思う。しかし貧困の撲滅という観点から言えば、人々の日々の生活を向上させていくためには、こうした過度の富の集中は行なうべきではない。オープンスタンダードを推進することによって、先進国がその世界を開発途上国と分け合う道をつくりだすことができるというわけだ。そしてさらに言えば、オープンスタンダードの推進によって、Webの世界はさらに大きくなっていく可能性を秘めていて、これはヒューマニズムの実現にも寄与できるということになる。

 自分自身のWebの使い方を振り返ってみると、Webはいったい何を僕自身にもたらしてくれたのだろう? お金を稼ぐ方法や、知識を得る方法や、創造性を高める方法や、あるいはほかの人たちと出会う方法かな。だったらこうした能力を、多くの人たちと分かち合えた方がいいに決まっている。――つまるところ、こうした気持ちが、サイトを作ったり、検索エンジンを開発するという人々のモチベーションにつながっているんじゃないかと思う。でしょう? もし世の中に無料で使える検索エンジンが存在しないという事態を想像してほしい。検索キーワードを入力するたびに、料金を支払わなければならない検索エンジンなんてものが、想像できるかな?

 開発途上国の人々にとっては、オープンスタンダードによって、コンピュータの豊かな世界に参加できるチャンスが増えることになる。そしてコンピュータをうまく使いこなせば、日々の生活をもっと豊かにすることができる。このことに反対する人はいないよね?

 問題は、オープンスタンダードが可能かどうかを論じることではないと思う。だってオープンスタンダードはもうすでにそこに存在しているんだから。問題は、それを政府や企業が採用するかどうかということだ。僕はこの問題の専門家ではないけれど、興味のある人は、Lawrence Lessigのブログを読んでみることを勧めたい。

URL
 eCommerce Timesの記事
 http://www.ecommercetimes.com/rsstory/46052.html
 Lawrence Lessigのブログ
 http://blog.japan.cnet.com/lessig/

(2005/09/20)

【著者プロフィール】
・文=ジェフ・ルート(Jeff Root)
ECジャパン株式会社のSEOチーフスペシャリスト。日本には出たり入ったりで早や10年。メールアドレスは「jeff@ecjapan.jp」。日本語もOKなので、気軽にメールをくれると嬉しい。
・翻訳=佐々木俊尚
元全国紙社会部記者。その後コンピュータ雑誌に移籍し、現在は独立してフリージャーナリスト。築42年の古い家で、犬と彼女と暮らす。ホームページはこちら

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