先週の4月7日は「鉄腕アトム」の誕生日。作中でのアトムの生誕5周年と、作者である手塚治虫氏の生誕80周年を記念し、4月7日のGoogle日本語版のロゴに鉄腕アトムが登場しました。
先週は、MicrosoftのYahoo!への買収提案関連で大きな動きがありました。Microsoftが3週間の期限を設定し、Yahoo!はそれに返答。そこにGoogleが登場しました。後半の解説では、2月1日の買収提案から先週までの経緯をまとめます。
◆MicrosoftがYahoo!に最後通告、交渉成立まで3週間の期限を設定
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2008/04/07/19106.html
4月5日、米Microsoftは同社が2月1日に米Yahoo!に対して行なっていた買収提案について、3週間以内に交渉が決着しなければ株主の委任状争奪戦も辞さないとする旨の手紙を送付したと明らかにした。詳しくは後半で解説します。
◆米Yahoo!が「Google AdSense」のテスト開始、Microsoftは懸念を表明
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2008/04/10/19165.html
4月9日、米Yahoo!はYahoo!の検索結果の一部に自社の検索連動広告でなくGoogle AdSenseを表示するテストを開始した。これは米Microsoftからの買収提案に抵抗する施策と見られ、米Microsoftは「米Googleが検索関連広告市場の90%を手中に収めることになる」と懸念を表明した。
◆Winnyなどによる著作権侵害対策、著作権団体とISPの協議会設置を提言
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2008/04/11/19185.html
警視庁の総合セキュリティ対策会議は、同会議の報告書「Winny等ファイル共有ソフトを用いた著作権侵害問題とその対応策について」をサイトで公開。著作権団体とISPが協議会を設置してユーザーへの注意喚起を行なうほか、悪質なユーザーに対してはアカウントの停止や損害賠償請求、告訴などを行なっていくことを提言した。
◆サウンドハウス、不正アクセスでカード情報27,743件流出の恐れ
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2008/04/07/19110.html
4月7日、楽器・音響機器を販売するサウンドハウスは、同社のショッピングサイトが不正アクセスを受け、最大最大97,500件の顧客の個人情報、27,743件のクレジットカード情報が流出した可能性があると発表した。顧客に対してパスワードの再設定を要請している。
◆Googleのインフラ上でWebアプリを構築できる「Google App Engine」開始
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2008/04/08/19134.html
4月7日、米Googleは同社が各種サービスに利用しているインフラを利用できる「Google App Engine」のプレビュー版を公開した。分散ファイルシステム「GFS」や、データベースシステム「Bigtable」などを利用し、一般の開発者もWebアプリケーションが開発できるようになる。
● 期限は4月末!? Microsft、Yahoo!買収騒動この2カ月
米Microsoftが米Yahoo!に対して446億ドルでの買収提案を行なったのは2月1日のこと。それまでも両社の交渉の噂などはあったものの、IT超大手同士の買収のニュースは、大きな衝撃をもたらすニュースでした。
446億ドルとは、Yahoo!が2007年第4四半期の減益と1,000人の人員削減計画を発表し、落ちに落ちた1月31日時点の株価に62%を上乗せしたもの。Yahoo!はこれに対して「安すぎる」と拒否する意志を発表します。
これに対してMicrosoftは反論の声明を発表。「Yahoo!そのものが何と言おうと、我々はYahoo!の株主が我々の提案の価値に気付くように手段をとっていく」といった趣旨のコメントを発表しました。
Yahoo!がMicrosoftの提案を拒否した背景には、Yahoo!幹部のMicrosoftへの嫌悪感・不信感があるのではと言われています。Microsoftはそれを知ってか知らずか、Yahoo!の株主や従業員などを取り込み、包囲網を狭めていこうとしているように見られます。
2月20日にMicrosoftは「買収後にリストラは行なわない」というメールを送ります。Yahoo!のエリック・ヤングCEOも社員に対して2月11日にメールを送って説明をしています。
Yahoo!は一方で、Microsoftの買収から逃れようと、さまざまな手段を模索します。提携企業としてAOLやGoogle、News Corp.といった名前が挙がりますが、しかし具体的は話としてはまとまっていない様子です。一方で一部の株主から訴訟を受ける事態になってしまっています。
4月に入り、Microsoftは4月5日に「あと3週間で交渉が決着しなければ委任状争奪戦も辞さない」とYahoo!に通告しました。Yahoo!はこれに対し、7日に返答の手紙を公開。Yahoo!の企業価値を過小評価していると改めて指摘し、また、Microsoftへの著しい不信感を漂わせました。
また、Yahoo!は9日よりGoogle AdSenseのテストを開始。検索連動広告をAdSenceにアウトソースすると短期的に業績を回復できるというのは証券アナリストから指摘されており、これによって株主価値を高めるテストと見られます。これに対しMicrosoftは法務顧問から懸念の声明を発表しました。
そもそもこの買収提案をMicrosoftが行なったのは、検索広告市場におけるGoogleへの対抗力を強化する狙いがあってのものと見られています。2月1日の買収提案の発表直後には、Googleが「Microsoftは独占しようとしている」とコメントし、Microsoftは「我々はGoogleの(検索広告市場における)独占に対抗するのだ」と反論するといった小競り合いがありました。Yahoo!のAdSense導入は、もしかすると狼を追い払うのに虎を呼び込むようなことになってしまうかもしれません。
MicrosoftとYahoo!の交渉は、このままでは4月末になっても平行線をたどるでしょう。だとすれば、委任状の争奪戦で、どちらがより高い価値を株主に提示できるかという争いになります。Microsoftはその力をもってYahoo!の株主や従業員を懐柔し、一方のYahoo!は株主を納得させられるだけのさらなる施策を打っていくことになるでしょう。
2008/04/14 11:37
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小林祐一郎 プログラマ、編集者、Webディレクター等を経て、ライター・編集者として活動。興味のあるテーマは「人はどうすればネットで“いい思い”ができるのか」 。ごく普通の人の生活に、IT技術やネットのコミュニケーションツールがどんな影響を与え、どう活用できるのかを研究している。近著「Web2.0超入門講座」(インプレス) |
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