先週は、米国のオバマ新大統領就任に日本も沸いた1週間となりました。就任式の動画中継を行ったアカマイは、2Tbpsを超える歴史的なトラフィック量を記録したと発表。同時に発表したHD動画ストリーミングソリューションの良いPRにもなったようです。また、ホワイトハウスのサイトも刷新され、ブログも開始。今後のIT活用にも期待が集まります。
国内では、Winny裁判の控訴審が開始となりました。先週も同人誌即売会の情報漏えい、年始にあったIPA職員の情報漏えいでは処分に批判多数、とWinnyでの情報漏えいによるニュースが絶えません。これらWinny関連については、後半でこれまでの流れをまとめます。
◆Winny開発者の控訴審開始、弁護側は改めて無罪を主張
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2009/01/19/22129.html
1月19日、「Winny」開発者である金子勇氏の控訴審第1回公判が大阪高等裁判所で開かれた。弁護側は改めて無罪を主張し、技術を悪用する者が現れた時に、技術者がその罪に問われることがあってはならないとした。次回公判は6月の予定。
◆欧州委員会、米MSに対してIEバンドルを問題視する異議告知書
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2009/01/19/22125.html
1月17日、欧州委員会は米Microsoftに対し、WindowsにIEを抱き合わせで配布していることが欧州競争法に反するとする異議告知書を15日付けで送付したと発表。Microsoftはこれに対して、現在調査中であると発表した。
◆著作者情報の検索ポータル開設、著作権保護期間の延長実現に向け
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2009/01/23/22197.html
1月23日、「著作権問題を考える創作者団体協議会」は著作物の権利者情報を検索するためのポータルサイトを開設した。著作権保護期間延長の問題とされた、権利継承者との連絡の困難さをポータルによって解消する。これによって、保護期間延長を引き続き求めていく考えだ。
◆アカマイとMS、SilverlightによるHD動画ストリーミングで協業
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2009/01/21/22162.html
1月21日、アカマイはSilverlightを利用した法人向けHD動画ストリーミングソリューション「AdaptiveEdge Streaming for Microsoft Silverlight」を発表した。同社の分散型コンテンツデリバリーネットワーク「Edge Network」経由で配信し、マイクロソフトのサーバー技術「IIS7 Smooth Streaming」により配信帯域を自動で最適化できる。
◆ウィルコム、おサイフケータイや新定額サービス発表
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2009/01/22/22183.html
1月22日、ウイルコムは発表会を実施し、新機種・新サービスの発表を行った。おサイフケータイ「ウイルコムICサービス」は2月下旬より提供。対応端末2機種も合わせて発表となった。また「どこでもWiFi」が2月19日発売。新料金プラン2種も合わせて発表された。
● 「Winny裁判」は控訴審へ。弁護側は改めて無罪を主張
ファイル共有ソフト「Winny」開発者である金子勇氏が、2004年5月、京都府警に著作権法違反幇助の疑いで逮捕され、2006年12月に有罪判決が出ていた、いわゆるWinny裁判の控訴審が始まりました。
「Winny」は「2ちゃんねる」発祥のソフトで、2002年5月にベータ公開が開始されています。ユーザーの匿名性の高さが特徴のひとつで、それが人気の理由でもあり、また、そこを問題視する声もありました。
そうした中、2003年11月に京都府警がWinnyユーザー2名を著作権侵害の疑いで逮捕。次いで翌年5月に金子氏が逮捕になります。
裁判では、Winnyを開発したことが罪に当たるのか(悪用可能な技術が罪なのか、また配布意図に犯意はなかったか)、という点が争点となりました。コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)は逮捕直後に、「(著作権侵害を)を予見した上で敢えてファイル交換ソフトを配布した場合には、開発・配布した者にも一定の責任が生じるものと考えている」とのコメントを発表。また、慶應義塾大学の村井純教授は裁判に証人として出廷し、「効率の良い情報共有のメカニズムが、著作権法違反行為を助長させることに結び付くということは理解できない」といった発言を行っています。
2006年12月、京都地裁は「Winnyの技術の価値は中立的」とした上で、「著作権侵害行為を認識しながらWinnyの開発・公開を続けてきた行為は独善的かつ無責任」として、罰金150万円の有罪判決が言い渡しました。これに対し、金子氏側、検察側は共に控訴し、今回の控訴審が行われています。
Winnyは、金子氏が逮捕された2004年5月から開発が停止。その一方では、Winnyユーザーを狙ったウイルスによる情報漏えい事件が多発しています。こうした現状に対し、金子氏は控訴審時の記者会見で「情報漏えいは私が開発を止めてから出てきた問題で、悔しく思っている」、「無罪判決を得て情報漏えい問題などに対応したい」とコメントしています。
今後の裁判は、3月に検察側、5月に弁護側がそれぞれ裁判官に対してWinnyについてのプレゼンテーションを行い、6月に第2回公判の予定となっています。
2009/01/26 12:28
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小林祐一郎 プログラマ、編集者、Webディレクター等を経て、ライター・編集者として活動。興味のあるテーマは「人はどうすればネットで“いい思い”ができるのか」 。ごく普通の人の生活に、IT技術やネットのコミュニケーションツールがどんな影響を与え、どう活用できるのかを研究している。近著「Web2.0超入門講座」(インプレス) |
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