地図と位置情報

リクルートが新たな屋内測位システム、イスラエルの位置情報スタートアップと共同開発

連載「趣味のインターネット地図ウォッチ」からの派生シリーズとして、暮らしやビジネスあるいは災害対策をはじめとした公共サービスなどにおけるGISや位置情報技術の利活用事例、それらを支えるGPS/GNSSやビーコン、Wi-Fi、音波や地磁気による測位技術の最新動向など、“地図と位置情報”をテーマにした記事を不定期掲載でお届けします。


 株式会社リクルートテクノロジーズがイスラエルのinfuse Locationと共同で、屋内測位技術を活用した検証プロジェクトを開始した。将来的にリクルートが持つさまざまなビジネス領域に応用できるよう、実利用を見据えたサービス開発の可能性を探ることを目的としている。

屋内地図上に現在地を表示

 両社が展開する屋内測位システムは、スマートフォンを活用し、Wi-Fi測位や地磁気測位、ジャイロセンサーによるPDRなどを組み合わせることで屋内の現在地を推定する方式。BLEビーコンや可視光、超音波、IMESなどの屋内測位方式と異なり、事前の機器設置を必要としないのが特徴だ。同社の検証によると、Wi-Fiや地磁気を単独で活用した場合の測位に比べて、30%の精度向上を実現しているという。

 利用にあたっては、最初にエリア内の複数の場所を「ベースステーション」として電波強度を計測するだけで準備完了となる。プロジェクトのエンジニアを務めたリクルートテクノロジーズの西村隆宏氏(ITソリューション統括部ビッグデータ部ビッグデータプロダクト開発グループ)は、「ベースステーションは、約2000平方メートルの広さの場合は20カ所ほど必要です。最初に一度計測するだけで、あとはそのベースステーションとの電波強度の差を演算し、現在地を推定することが可能となります」と語る。

 主な活用シーンとしては、複数フロアを使用したり、大型の屋内施設を貸し切って開催したりする規模イベントを想定している。開発にあたり、大規模イベント施設やオフィス、ショッピングモールなど計6会場において計10回にわたって検証したところ、屋内測位は平均誤差3メートル程度のレベルを実現したという。

 3月18日に行われた報道関係者向けの説明会では、実際にスマートフォンを手に持ってリクルートテクノロジーズの社内を巡るデモを体験することができた。スマートフォンの画面で屋内地図を見ると、現在地が表示され、自分の身体の向きも表示される。そのまま歩くと、現在地を示すマーカーが追随して表示される。

デモの会場となった、リクルートテクノロジーズが入るビル内
事前計測時の画面

 デモではナビゲーション機能は実装されておらず、ルートに沿ってマップマッチングなども行われない。そのため、廊下を歩いているときに現在地のマーカーが部屋の中に入り込んでしまうなど、多少の誤差の発生も見られたが、突然大きく離れたところに飛ぶような現象は見られなかった。誤差が発生した場合でも、歩き出すとすぐにまた正常な位置に戻り、エレベーターでフロアを移動した場合も、エレベーターのドアが開き、外に出ると同時にすぐフロアが切り替わり、レスポンスの良さが感じられた。

 同技術を利用することで、最小3メートル四方の任意形状でジオフェンス(仮想境界線で囲んだエリア)を設定することも可能で、廊下の一部エリアや会議室に足を踏み入れたときにプッシュ通知が送られてきた。この機能は、特定の店舗に入った際にショップ情報やクーポンを配信するといった使い方が可能だ。

現在地および進行方向が分かる
エレベーターで移動したときの画面
ジオフェンスを設定して特定エリアに入ったときに通知することも可能

 リクルートテクノロジーズではこの技術の活用法として、屋内イベント会場において来場者が自分の場所を確認し、行きたいブースにナビゲーションを行う機能を提供したり、ブース形状に合わせたジオフェンスを張って、進入・滞在・離脱を検知し、その情報をもとに、利用者にブース情報などのプッシュ通知を送ったりするといった使い方を検討している。

 また、リアルタイムに来場者の移動ログを把握することで、来場者の関心が高いエリアを情報収集することが可能だ。来場者のイベント内とウェブサイト内の行動傾向を掛け合わせることで、イベント運営の改善やウェブサイトのサービス改善につなげるといった取り組みも検討している。

 プロジェクトの担当者であるリクルートテクノロジーズの野村健氏(ITソリューション統括部ビッグデータ部ビッグデータインフラグループ兼ビッグデータプロダクト開発グループ)は、今後について、「イベント型・来店検知型の双方において複数の事業と検証を重ねて、本取り組みの磨き込みを行います。ロードマップを細かく引いているわけではありませんが、検証においてさまざまな改善点が出ると思うので、1つ1つ潰して行きたいと考えています」と語る。同技術が今後、リクルートグループが開催するイベントなどにどのように活用されるか注目される。

(左から)株式会社リクルートテクノロジーズの野村健氏と西村隆宏氏

片岡 義明

フリーランスライター。ITの中でも特に地図や位置情報に関することを中心テーマとして取り組んでおり、インターネットの地図サイトから測位システム、ナビゲーションデバイス、法人向け地図ソリューション、紙地図、オープンデータなど幅広い地図・位置情報関連トピックを追っている。測量士。インプレスR&Dから書籍「こんなにスゴイ!地図作りの現場」、共著書「位置情報ビッグデータ」「アイデアソンとハッカソンで未来をつくろう」が発売。